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知っておきたい著作権、知らなかったは通用しない特許権。模倣アプリにまつわるリスクを考える

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by [2013年9月05日]

数多くのスマホ・アプリが登場する中で、他の人気アプリのアイデアやデザイン、さらには、コードをそのまま流用したアプリが見られるようになってきた。他社のアプリを不当に模倣する行為は道義的に問題であるだけでなく他社の知的財産権の侵害にもなり得る。また、開発者が気づかないうちに他社の知的財産権を侵害してしまうこともあり得る。
本記事では、スマホ・アプリ開発者が知っておくべき知的財産権制度の基本的ポイントについてまとめ、特にパクリアプリにまつわるリスクについて考えてみよう。

知っておきたい著作権の重要性

まずは著作権から見ていこう。著作権は著作物を独占的に利用できる権利である。
著作物は「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されている。スマホ・アプリの世界で言えば、イメージ、動画、BGM、そして、プログラム(ソースもバイナリも含む)が著作物の例だ。プログラムは前記の定義にそぐわないようではあるが、歴史的経緯もあって著作権法で保護されている。
著作権は著作物の創作によって自動的に発生し、原則的に著作者の死後50年後まで存続する。50年+アルファというのは、めざましいスピードで進化する今日のITの世界では永遠に近い長期間と言えよう。
著作権者は、他人の著作物の利用を禁止できる。ここで、利用とは複製(コピー)、譲渡(販売等)、公衆送信(ネットでの配布等)などの行為だ。無断利用に対しては、差止め請求、損害賠償請求などを求めることができる。もちろん、ライセンス契約を結び(通常はライセンス料の支払等の何らかの条件と引き替えに)他人の利用を許諾することもできる。

きわめて厳しい著作権侵害の罪

著作権侵害は安易に考えないことが重要だ。著作権侵害をされた者は販売や製造の差止め、損害賠償を請求できるが、損害賠償は販売個数に逸失利益をかけた額として計算されることが多いので、アプリの場合にはダウンロード数に応じた損害賠償が請求され、結果的に賠償額が巨額になり得る。P2P等でCDやDVDのコンテンツをネットで配布した個人が巨額の賠償金を請求されることが多いのはこれが理由だ。
また、故意の著作権侵害は刑事罰の対象となることにも注意すべきだ。著作権侵害罪の罰則は原則10年以下の懲役や1千万円以下の罰金であり、きわめて重い(CDを万引きした場合よりも違法コピーした場合の方が最高刑は厳しいのである)。
そもそも刑事罰があるということは、警察権力が介入し得ることを意味する。もし最終的に不起訴になったとしても、警察に逮捕されたり、会社に警察の捜査の手が入ったりするだけでも社会的ダメージは相当なものになるのが現実だ。民事と刑事の違いはきわめて大きい。著作権侵害を主張された場合には、のらりくらり戦法は通用しない、借金を返さないという民事レベルの話ではないのである。
では、プログラムの著作権の観点からパクリ行為がどこまでならOKなのかを見ていこう。

デッドコピー:完全にアウトのパターン

他人が著作権を持つソースコードを無断でコピーしたり、バイナリを無断で配布したりすることは確実に著作権侵害となる。先日ご紹介したように、アプリがソースコードごとコピーされたという事例※もある。仮に、オリジナルのバイナリを逆コンパイルして、別の広告を貼り付けただけだとしたならば、著作権侵害であり、刑事罰の対象にもなるだろう。
※関連記事:パクり・ダメ・絶対!開発者泣かせの盗作アプリの現状を徹底検証!
このような極端なケースではなくても、開発者がつい著作権侵害を行なってしまうケースもある。プログラムの著作権者が誰なのかを常に意識していないとこのような問題が生じる。
先に、著作物を創作することで自動的に著作権が発生すると書いた。しかし、著作権法には職務著作と呼ばれる既定があり、従業員が企業の業務として創作を行なった場合には、原則として企業が著作権者になる。たとえば、従業員が会社を退職後に前の会社で作ったプログラムを個人あるいは別の会社で利用すれば著作権侵害になる。権利者は自分ではなく前の会社だからだ。
また、受託開発したプログラムを複数の発注先で使い回すと、契約内容によっては著作権侵害になり得る。納品したプログラムの著作権を譲渡する契約になっていた場合には、もうそのプログラムは別の発注先では使い回せない。著作権の帰属を明確に定めておくことが重要だ。例えば、製品の根幹にかかわる部分は著作権を委託元に譲渡し、共通ライブラリ的な部分の著作権は開発者側に残す、などの対応が必要だろう。

利用者側のリスクは?

違法アプリを開発・配布する側ではなく、使用する側のリスクはどうだろうか?

2012年10月1日より、違法なインターネット配信から、その事実を知りながらダウンロード(録音・録画)する行為が刑罰の対象となった。これは、2002年ごろより始まった、P2P方式のファイル共有ソフトを使用した著作権違反行為の増加を受けてのもので、当時、Winnyをはじめとするこれらのソフトは、その匿名性の高さが話題となり、ユーザー数を爆発的に増やしていった。画像は文化庁のサイト「違法ダウンロードの刑事罰化について」。

まず気になるのはダウンロードだ。著作権者の許可なく著作物をアップロードする行為は、かなり以前から著作権侵害行為であったが、最近の著作権法改正により、アップロードだけでなく、ダウンロード行為も違法、さらには、条件によって刑事罰適用対象になったことをご存じの方も多いだろう。ダウンロード行為が違法となる要件はいくつかある。第一に、著作物が違法にアップされたことを知った上でダウンロードしているということだ。第二に、デジタル方式の録音・録画であることだ。たとえば、P2Pから市販のCD音源をダウンロードすることは違法とされる可能性が高い。
では、アプリについてはどうだろうか?ダウンロード違法化の適用は録音・録画に限ることから、原則的にはプログラムのダウンロード自体は違法ではないとされている。しかし、ゲーム・プログラムの多くは「映画の著作物」であるという判例が確定していることから、ゲーム・アプリのダウンロードは「映画の著作物」の録画であるという解釈を行なう人もいるので注意が必要だ。著作権侵害アプリをそれと知ってダウンロードする行為によって法的責任を追求される可能性は低いがゼロではない。
なお、ほとんどの場合、アプリを使用する者に法的責任が生じることはない(もちろん、道義的な問題は別だ)。著作権法がコントロールするのはあくまでも(ダウンロードを含む)複製、譲渡、(ネット配信を含む)公衆送信等の行為であって著作物の使用そのものをコントロールすることはないからだ。

パクリの被害者は何ができる?

苦労して開発したアプリを違法コピーされた開発者は何ができるのか? まず、App StoreやGoogle Playに著作権侵害を報告することだ。これにより、迅速に違法アプリの公開を停止してくれるはずだ(速やかに対応しないとアップルやグーグルが法的責任を負う結果になるので、これは当然である)。
本来的には違法開発者を著作権侵害で訴えることもできるのだが、特に侵害者が国外にいる場合には、現実的には難しいことが多い。裁判に持ち込んでも裁判費用の方がかさむ可能性もある。もし侵害者の住所がわかっているのであればまずは警告状を送って様子を見ることも考えられる。

アイデアのパクリ:著作権法的にはOKであることが多いパターン

プログラム・コードのデッドコピーが明らかな著作権侵害である一方でもう少し微妙なケースもある。著作権法の重要ポイントに「表現を守るものであってアイデアを守るものではない」という点がある。
ゲームのルール、画面の全体的デザイン、世界観といった要素は著作権法では保護されない。それを実現したプログラムや画面の具体的デザインが保護されるのだ。とは言え、両者の間にはグレーゾーンがあり、裁判で問題になることがある。
スマホ・アプリの世界ではGREEとDeNAによる釣りゲーム訴訟が有名だ。DeNAが配信する『釣りゲータウン2』がGREEの配信する『釣り★スタ』の著作権を侵害するとして訴えたのだ。今年4月の最高裁による上告棄却によりGREEの敗訴が確定した(著作権侵害が認められなかった)。
両者の画面を見てみると確かに似ている部分はある。しかし、釣りゲームにおいて釣れそうな魚の周りに円を描き、釣ったタイミングで得点を決めるというのはアイデアの領域であり、そのアイデアの表現パターンは限られている。その表現を保護するということは実質的にアイデアを保護することになってしまう。著作権侵害としなかったのは妥当だろう。

左:釣り★スタ(GREE) 右:釣りゲータウン2(DeNA)
東京地方裁判所の判決全文より

例えば、落ち物パズルのアイデアが著作権法で保護されるのだとしたら、ほとんどの落ち物パズルのメーカーはテトリスの作者の許諾が必要になってしまうだろう。これがあるべき姿でないのは当然だ。
もちろん、これはアイデアをパクることが著作権的にOKということであって、道義的な問題がまったくないと言っているわけではない。過去の製品の基本アイデアを踏襲しつつ、新たな間や表現を加えていくべきだ。他社の模倣しか行なわないような企業であれば、企画能力を疑われ信用を失うというビジネス的な面での弊害もあるだろう。

知っておきたい特許権のリスク

著作権に加えて特許についても簡単に検討しておこう。
特許も重要な知財のひとつだ。アップルとサムスンの間で熾烈な特許紛争が行なわれているのはご存じだろう。
特許権は今までになかった斬新な技術的アイデア(発明)を約20年間にわたり独占的に使用できる(他社の実施を禁止できる)権利である。創作によって自動的に権利が発生する著作権とは異なり、特許権は特許庁に出願を行ない審査の結果、認められた場合にのみ権利が発生する(費用もそれなりにかかる)。しかし、特許の権利はアイデア自身に及ぶため著作権よりも強力だ。
著作権はプログラム・コード自身にのみ及ぶため、同じ機能を行なう別のプログラムに書き換えれば侵害を回避できるが、特許権は機能的に同じであればどのようなプログラム・コードを使っていようが侵害することになる。
スマホではないがゲーム間連の特許訴訟としては、2012年12月にセガがレベルファイブのゲームソフト「イナズマイレブン」の販売差止めと損害賠償9億円を求めて提訴した事件がよく知られている。
スマホ・アプリの世界でも同様の事件が起きないとは限らない。特に特許の世界では「知らなかった」は通用しないので注意が必要だ。裁判の場で「そのような特許があるとは知らなかった、侵害する意思はなかった」と言っても差止めや損害賠償から逃れることはできない。特許法自体が「技術分野でビジネスをするものは他社の特許の状況を知っていて当然」という作りになっているからだ。
また、パテント・トロール(特許ゴロ)と呼ばれる特許権行使そのものを生業としている企業にも注意が必要だ。
パテント・トロール問題は、特許権者の力が強く、かつ、訴訟社会の米国で起きることが多い。しかし、スマホ・アプリの場合は、日本企業が作成したソフトであっても、App StoreやGoogle Playを通じて世界各国で容易に販売することができる。このことにより、日本の開発者が米国の特許を根拠に訴えられるリスクもある。実際、Lodsysというパテント・トロールにはスクエア・エニックスも訴えられている。
特に小規模企業にとってはパテント・トロールに訴えられるケースは非常にやっかいだが、まずは専門家に相談するしかないだろう。和解条件を少しでも有利に運べる可能性もある。

text:栗原潔
弁理士/テックバイザー国際特許商標事務所

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▼参考リンク
平成24年10月1日施行 違法ダウンロードの刑事罰化について
GREEとDeNAによる釣りゲーム訴訟判決全文(東京地方裁判所)

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