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無料版で収益化に成功した、作画過程が見えるソーシャル機能付きペイントソフト

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by [2013年8月01日]

イラストの作成過程を動画として公開でき、レイヤー機能なども備えた高性能なiOS向けペイントアプリ『ibisPaint(アイビスペイント)』は、ユーザーがスマホを使って手軽に「描いてみた」を実現できるソーシャルお絵かきアプリです。

レイヤー機能や機能が充実

カラー選択も自由自在。その他ブラシ、消しゴム、指先ツール、ぼかしツール、塗りつぶし、スポイト機能なども充実。

お絵描きアプリ – ibisPaint X
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ペイントソフトとしての完成度が高いと評判のibisPaintですが、それだけでなく、作画工程をYoutubeに公開できたり、参考にしたい作品のベクターファイルをダウンロードしてアプリに取り込むことで、その作品のレイヤー構造を知ることができます。また、ユーザーの投稿作品が集められてるibisPait公式サイトにて、ユーザー同士で絵の書き方を教えあったり、評価しあえるコミュニケーションの場も提供しているのがこのアプリの特徴です。

ibisPaintの公式サイト(http://ibispaint.com/)にユーザーが作品を投稿します

絵の描き方を解説した動画も人気。ソーシャルペイントソフトらしく、ユーザー同士で使い方を教えあう風潮がある。

▼『ibisPaint(アイビスペイント)』で描かれたユーザーの作品(クオリティ高い!)

はじめはiPad版の有料アプリのみのリリースでしたが、その後iPhone版や無料版の展開などのビジネスモデルの変更を経て2年越しで収益化に成功したそうです。

今回は、ibisPaintの軌跡について、株式会社アイビスの代表取締役・神谷栄治氏にお話を伺いました。

漫画家の作画過程の動画にインスピレーションを受け、自ら企画!

株式会社アイビス
代表取締役・神谷栄治氏

──なぜ「お絵かき工程を動画にするペイントアプリ」を作るに至ったのか、経緯を聞かせて頂けますか?
アスキーさんに、プロの漫画家さんがSAI(PC用有料ペイントソフト)で絵を描いて、その様子を動画を撮って解説する記事があったんです。それを見て面白いと感じました。まだiPadが出ていない頃でしたね。
iPadが発売されて、ある時iOSのアップデートで、動画変換ができるAPIが公開されたというニュースを見ました。これだったらお絵かき工程を動画として再現できるなぁと思い、私が自ら企画をし、開発をスタートしました。

──最初はiPadだけだったんですね。
iPhoneだとiPadに比べてお絵かきするには画面が小さいと感じました。他社さんのお絵かきアプリはiPadだけでなくiPhone向けにも出していたんですが、うちはまずiPadのみでリリースしました。

──開発に着手する前に、お絵かきアプリの競合調査をされていたんですね。
はい、していましたね。10本ぐらいでしょうか。ただ、どれもがアプリ内でお絵かきが完結するものでした。私が企画したibisPaintは、工程を再現できる点、描いた絵と工程を共有できる点で、競合調査したお絵かきアプリとの差別化はできていると考えました。
初めてiPhoneで絵を描くと、紙やPCと勝手が違うので、ヘタクソな絵ができるわけです。それを見たユーザーも「まぁiPhoneで描いたから仕方ない」と思ってしまうんです。でもibisPaintは違う。ibisPaintを使って他のユーザーが描いた絵を見たら、みんなそのレベルの高さにびっくりする自分も頑張ればこんな絵を描けるんじゃないのかって思い始めるんです。他人の作品を参照できないお絵かきアプリでは、多くのユーザーが飽きてしまっていたところが、ibisPaintでは上手い人のお絵かきの過程を見ることができるので、自分もやる気になるんです。

トラブルはなし!ユーザー同士で和気あいあいとしたコミュニティ

──ibisPaintはただのペイントツールではなく、絵が上達できる場としての意義も持っているのですね。コミュニティが育っているという実感はありますか?
それは、「いいね!」やつぶやきの数でわかりますね。会員同士のトラブルもなく助かります。
ただ、想像以上にトレース作品を公開する人が多かったと思います。アニメなどのスクリーンショットを読みこんで、上から自分の線でなぞっているんです。元の作品の著作権を侵害してしまいますし、あがってくる作品すべてをチェックすることも不可能なので、困っているところです。
トレース作品がランキング上位を占めてしまうと、真面目に何時間もかけて絵を描く人のやる気がなくなってしまうんですよね。
完成品だけが展示される場ではトレースして描いていてもわからないですが、ibisPaintだとお絵かきの過程がすべて録画されているので、トレース作品がわかってしまうんですよ。

──ユーザーがトレース作品を発見した場合、通報は受け付けていますか?
はい、使われた本人から「私の作品が使われています」というような通報を受け、削除対応しています。

──人的な運営コストがかかっているんですね。
そうですね。私は出勤中も携帯でランキングをずっとチェックしていますよ。

──工程の公開を嫌がる人もいませんか?
そうですね。作品をうちのサイトに公開せずに静止画をTwitterやLINEで共有している人もいます。ただ、作品の工程をあえて見せるためにibisPaintを使っている方も多く、「お絵かき講座」という形式で絵の描き方を解説する動画は特に人気を集めています。

──ibisPaintのソーシャル性を活かしたイベントを仕掛けられそうですね。
ペンタブで有名なワコムさんからお声掛けを頂いて、入賞者にスタイラスペンをプレゼントするコンテスト企画を行いました。
また、ユーザーさんの方で、ibisPaintで描いた絵のみの個展を開催しているようで、都内で開催されているものに私も何度か足を運んでみたのですが、既に個展の常連のお客様も数名いらっしゃっていて、今では「あー神谷さんだー」と声をかけてもらえるのが嬉しいです。とても和気あいあいとした雰囲気の個展で素敵でした。
他にも、アイビス非公式のibisPaintユーザーオフ会はいくつか開催されているようですが、公式ではまだオフ会を主催できていないので、これから企画してみたいですね。

ウェブでなくアプリならではの手軽さにこだわる

──手書きブログ、略して手ブロと呼ばれている、ブラウザ上でお絵かきと投稿が出来るWebサービスが人気ですよね。ibisPaintもWebサービス化すればPCユーザーも対象になり利用者は広がっていくと思うんですが、それでもやはりアプリのみでやっていこうとお考えですか?
マウスだけで絵を描く人って少ないじゃないですか。PCで絵を描く人ってやっぱり本格派で、ペンタブなど最低限のの機材を揃えなくてはいけない。それを敷居が高いなぁと感じています。とにかく、絵を描くことの敷居を下げたいという気持ちが強いので、アプリでやっていきたいと思っています。ibisPaintのユーザーさんの中には通勤途中にiPhoneで絵を描いてる人も居るんですよ。

無料版の広告収益で収益化に成功!

──最初から今のような収益構造のイメージを持って企画を立てられたんですか?
当初の企画ではiPadだけ、かつ売り切りでした。
リリース直後は有料総合ランキング1位をとったんですが、売上が大したことなくてですね。これじゃあ大変だということで、iPhone版や、広告をつけた無料版を出したりしました。
最初は無料版に機能制限をしていたんですけど、制限を外したところ年明けにiTunesで特集されまして。これでユーザーも増え、約2年越しになりましたが収益化できました。

──有料ユーザーと無料ユーザーの割合は?
有料1に対して無料が9くらいです。ほぼ無料のユーザーさんですね。

──アプリの機能をあげていくというよりは、コミュニティを育てていくというものですか?
本当は両方やりたいですが、現在はアプリの機能拡張に注力しています。PhotoshopやSAIに比べれば、ibisPaintは機能面で後れをとっています。まだまだ開発しなければならないことが山ほどあります。まずは、ブラシ機能にもソーシャル機能を与えて、共有できるようにしていきたいです。

文字は要らない。こだわりのUI

──ibisPaintの操作メニューには、ほとんど文字が無いですね。
それがiPhone、iPadのユーザインターフェースなんじゃないですかね。ツールバーが多いと、ユーザーさんは押すのが不安になってくるんです。だから、押すと文字が出てくるような独自のユーザインターフェースにしています。
OSが用意しているユーザインターフェースはほぼ使っていなくて、OpenGLを利用して自前で用意しています。最初のユーザインターフェースの作成工程だけでも、ものすごく時間がかかりました。

──どのくらいまで会員数をのばしたいとお考えですか?
収益的には、来期には今の4~5倍売上が増えると考えています。PCの時代からタブレットの時代になってきているので、絵を描くことの敷居は下がり、もっと多くの方に親しんでもらえると思います。プロフェッショナルな方向けというよりは、あくまで日ごろから趣味で楽しんでいる方向けにやっていきたいです。

──ありがとうございました。


★編集部コメント★
一人で絵を描くのでなく、絵が好きな人同士で描き方を教えあったり、作品を評価しあったりと、和気あいあいとした雰囲気でお絵かきが楽しめるのがこのibisPaintの特徴ですが、そんな「あたたかい」アプリの作り手らしく、神谷社長自身もとても柔らかい雰囲気の方でした。
最初はiPadのみで、しかも有料のみ、という非常に狭いターゲット向けにリリースされたアプリでしたが、その後、iPhone版、広告つきの無料版、と徐々にそのターゲットを広げることで収益化に成功したというお話は、無料アプリで儲ける、という今のアプリビジネスが王道であることを物語っているかと思います。
なお、無料アプリでの広告収益化最大化にあたって、アプリに実装する広告ネットワークの一つ「AdMob(提供元Google)」のアカウントが理由もわからず突然停止されてしまったりと、実はトラブルも色々あったようで…。その際のお話についても、こちらの記事で語ってくださっていますので、是非ご覧ください。
【垢バン】アカウント停止の直後、なぜか営業電話をするオチャメなGoogle先生【AdMob】

 

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