世界におけるLTE普及状況The Global mobile Suppliers Associationの調査に基づく、LTEの普及状況。この時点で67カ国で163商用ネットワークがLTEの商用サービスを行っている。

【ドコモセミナーレポート①】LTEの普及へ向けた取り組み

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by [2013年6月28日]


5月29日から5月31日まで東京ビッグサイトで開催されていた様々な最新無線通信技術を紹介する展示会、『ワイヤレス・テクノロジー・パーク 2013』では、「セミナー・プログラム」と題して現在無線通信技術の第一線で活躍する様々な人々を講師に迎えたセミナーが多数開講されていました。

(株)NTTドコモ無線アクセス開発部担当部長 安部田 貞行 氏

今回はその中から(株)NTTドコモ無線アクセス開発部担当部長の安部田 貞行氏を迎え、『LTE-Advancedの導入に向けたドコモの取り組み』と題して5月31日に行われたセミナーの内容をご紹介します。

その2は【ドコモセミナーレポート②】LTE-Advancedの技術仕様
その3は【ドコモセミナーレポート③】LTE-Advancedの導入に向けた課題

概略

セミナー会場の様子
開場の時点で既に超満員で、予約者で既に満席である旨が案内の係員によって何度も案内されるほどの盛況ぶりだった。

今回の講演では、現在のLTEの普及状況と、LTE-Advancedの簡単な技術説明、それにLTE-Advancedの展開に向けたNTTドコモの考え方が解説されました。

会場は開始5分前の時点でほぼ満席で、空席も講演開始後どんどん埋まっており、LTE-Advancedに対する関心の高さや期待の大きさが窺える状況でした。

LTEの状況

世界におけるLTE普及状況
GSA(The Global mobile Suppliers Association)の調査に基づく、2013年4月時点でのLTEの普及状況。この時点で67カ国で163の商用ネットワークがLTEの商用サービスを行っている。

まず、3GPP陣営(※Third Generation Partnership Project。GSM・W-CDMA-HSPA系、つまり日本ではNTTドコモやソフトバンクモバイルの採用している通信規格を採用している通信事業者の属する陣営)の業界団体であるGSA(The Global mobile Suppliers Association)が公表している、2013年4月時点での普及状況が示されました。

ここでは赤で塗られているのが既に商用LTEサービスが開始されている国、青に塗られているのが商用サービス開始に向けたLTEのトライアルを実施している国で、現在163のオペレータ(通信事業者)による商用LTEネットワークが67カ国で商用サービスを展開している、としました。

2011年の時点でのLTEの普及状況

続けて同じくGSAが公表している2年前の商用LTEサービス普及状況が示されましたが、この時点ではたった20のオペレータが14カ国で商用サービスを実施しているに過ぎませんでした。

GSA(The Global mobile Suppliers Association)によるLTEの普及速度を示すグラフ。二次曲線的なカーブを描いて世界中で急速に導入事業者数が増えている。

つまり、わずか2年の間に143ものオペレータがLTEを新規採用して世界各国で利用されている、ということで、その伸び率は2009年が2オペレータ、2012年が47オペレータ――なお、NTTドコモは2010年にLTEサービスを開始しています――で、2013年4月の段階では163オペレータだが今年の夏には248のオペレータで商用LTEサービスが開始されると言われている、という普及の見通しが説明されました。

この普及速度はワイドバンドCDMA、つまりNTTドコモが3G通信で採用しているW-CDMA技術が普及した際の速度と比較しても圧倒的に速い由で、そればかりかそのW-CDMAの拡張規格であるHSPA(High Speed Packet Access:HSDPAあるいはHSUPAとも。NTTドコモではFOMAハイスピードとしてHSDPAを採用しています。)よりも速い速度で普及している、と安部田氏は語りました。

GSAの調査による世界におけるLTEサービス加入者数の変遷図
こちらも導入時業者数と同様に、いやそれ以上に急激なペースで増加し続けている。

また、このLTEサービスの加入者数も当然に急増しており、特に北米、日本、そして韓国での伸びが大きい、としました。

LTEの普及へ向けたNTTドコモの取り組み

続けて、このような状況を前提として、NTTドコモのLTEサービスへの取り組みが語られました。

NTTドコモのLTEサービスであるXi(クロッシィ)の今後の展開を示すロードマップ
急激な普及の進捗と回線速度の向上が計画・予定されている。

NTTドコモは2010年にLTEの商用サービスを開始しましたが、3G通信とLTEのインターオペラビリティ(Interoperability:相互運用性 ※この場合はネットワーク接続時の3G通信で接続する端末とLTE通信で接続する端末との間の相互通信可能性を示します)はサポートされていたため、当初はユーザーのニーズ(トラフィック)に合わせてエリア展開を進めて行こう、という方針であったとされます。しかし、実際には高速通信を求めるユーザーの欲求はNTTドコモ側の予想よりも高く、エリア展開が当初予定より前倒しのスケジュールで急ピッチで進められている、と安部田氏は説明しました。

具体的には、昨年度末くらいの時点で40パーセント程度のエリア展開を見こんでいたものが、最終的には総務省の定義に従う人口カバー率で75パーセント程度のエリア展開が達成された、としました。

その時点でさえ、2015年頃にエリア展開を完了、人口カバー率を100パーセントとする、という見通しだったのですが、その後更に前倒しが図られ、現時点では2014年末には人口カバー率100パーセントを達成しよう、という方向でエリア展開が進められている由です。

また、速度についても、当初は5MHzでの通信を行い、最高37.5Mbpsとなっていましたが、現在は10MHzでの運用を開始して最高75Mbps、あるいは一部領域では15MHzでの運用を行い、最高100Mbps、一部の端末では最高112.5Mbpsでの運用を実現していることが説明され、今年度中には20MHzでの運用を開始して、最高150Mbpsを実現する見通しが示されました。

なお、ここで言う5MHz、10MHz、15MHzというのは各キャリアに割り当てられた周波数の内、どれだけの周波数の幅(帯域)を利用して通信を行うか、を示す値です。つまり、同じ通信方式ならば利用する周波数帯域が広ければ広いほど、より多くのデータを同じ時間で送受信可能となる訳で、実際にもこの帯域幅に比例してLTEの(理論計算上の)最高通信速度が引き上げられています。

NTTドコモのLTE「Xi」サービスの基地局数や高速通信モード対応エリアの増加状況
当初計画よりも早く、しかも事実上倍増の劇的なペースで整備が進められ、これにより山手線での通信継続率が大幅に引き上げられている。

Xi(クロッシィ)の基地局については、達成を1年前倒しし、当初予定のほぼ倍の数が整備されています。また通信エリアについても、通信継続率向上、ということで山手線に乗り続けてもほぼずっとLTEで接続され、LTEから3Gに落ちても、通信を3Gにハンドオーバーをすることにより、その後LTEへ戻れるという機能をサポートしていますから、かなりの接続率が実現されていることになります。

エリアについても、75Mbpsに対応するエリアを一気に増やしています。

ここで安部田氏は、正直半年から1年ほど前だと、東京でLTEの75Mbpsを扱えるエリアは余り広くなかったが、最近はかなり広くなっており、速度自体も上がっていると思う、と発言、112.5Mbps対応についても、計画より予定を早めているとしました。

日経BPの調査による、国内3キャリアの主力機種でのLTE接続状況
日本国内では割り当ての関係で、電波が飛びにくく高周波数でしか通信できず、基地局整備のハードルの高いiPhoneと、電波の飛びやすい800MHzを使用するXperia Zを比較対象としている。そのため、意図的な印象操作というべき数字のマジックにより、見かけ上はNTTドコモの圧勝とされている。

ここで、日経BPコンサルティングの調査によるLTEのエリア調査結果が示されました。

これによるとNTTドコモのエリアが最も広い、ということなのですが、蛇足ながら、この調査結果については鵜呑みにせず、比較条件を充分検討した上で評価する必要があります。

というのも、確かに各社主力機種の比較、ということなのでau・ソフトバンクモバイル共にiPhone 5が比較対象に出るのは致し方ないのですが、そもそもiPhone 5は日本のキャリア各社に対する電波割り当て状況では搭載ベースバンドモデムの都合上、回折しにくく「電波の飛びにくい」2.1GHz帯しか利用できません。そのため、NTTドコモについて、より「電波のよく飛ぶ」800MHzをはじめ複数の周波数を利用できるXperia Zを比較対象とするのであれば、他の2社についても同クラスのAndroid搭載スマートフォンを比較対象とすべきだ、ということになります。そしてその場合、他の第三者機関の調査結果や、800MHzで、という但し書きを付けてauが公表している各種データなどを踏まえると、この結果とは全く異なった様相を呈する可能性が非常に高いと言えます。

流石に、この調査結果の恣意性については安部田氏も十分承知しているらしく、NTTドコモのLTE基地局整備が進んでいることの傍証として示されたに留まり、具体的なデータについてはほとんど触れずにスルーされました。

LTE-Advancedの標準化

3GPP標準仕様のリリースの変遷図
3GPPではLTEはRelease 8、LTE-AdvancedはRelease 10という位置づけとなる。

次に、LTE-Advancedの標準化について、3GPP標準仕様の変遷図が示されました。

この図によれば、Release 99がNTTドコモの採用したW-CDMA、Release 5は同じくHSDPAに相当し、LTEはRelease 8となります。

この後、小規模な改良・拡張を行ってRelease 9となり、更に改良を施してRelease 10の制定が進められたのですが、ちょうどそのタイミングでITU(International Telecommunication Union:国際電気通信連合)の1部門であるITU-R(International Telecommunication Union Radiocommunications Sector:国際電気通信連合 無線通信部門)によって、IMT(International Mobile Telecommunication:国際移動通信)の後継規格としてのIMT-Advanced(International Mobile Telecommunication-Advanced:先進的国際移動通信)の提案について募集があったことから、このRelease 10をLTE Advancedと定義して、仕様化を行っている、と安部田氏は説明しました。

元々、ITU-Rでは第4世代移動通信という呼び方をしていて、2000年代初頭より次世代通信をどうするか、という検討が行われていました。

IMT-Advancedに関するピークデータレートとユーザーの移動速度の2つのパラメータを軸としてプロットした、IMT-Advancedの想定性能レンジ
IMT-AdvancedはLTEの正常進化形態として構想・性能要求されていることがこのグラフからも見て取れる。

ユーザーの移動速度を縦軸に、ピークデータレートを横軸に取って各通信方式をマッピングしたグラフにより、高速移動時で100Mbps、低速移動時で1Gbps、というIMT-Advancedのターゲットとなる性能レンジが示されました。

このIMT-Advancedについては、まず2008年に外部からの提案募集が開始され、ITU-Rの標準化プロセスが始動しました。

LTE-AdvancedがIMT-Advancedとして承認されるまでの経緯
LTE-Advancedは3GPPからの「提案」によって規格の大枠が定まっている。

ここでW-CDMA・LTEの仕様を作成した3GPP陣営が、LTEの発展形としてのLTE-Advancedを提案、“Release 10 and beyond”、つまり「リリース10とその先」と定義の上でITU-Rに提出しました。

その後、ITU-R内での評価・承認プロセスを経て、2012年1月にLTE-AdvancedはIMT-Advancedの正式技術である、と承認されています。

LTE-Advancedの性能目標

LTE-Advancedの基本コンセプト
LTE-AdvancedはLTEの拡張・発展形にあたるものとして、規格制定のための議論がスタートした。

このLTE-Advancedについては、3GPPでの最初の検討段階で、まず要求条件が議論されました。

その要求条件では、LTEの発展形であること、LTEの全ての機能は包含していること、それを基本に更に機能拡張して高機能化を実現すること、などが提示された、と安部田氏は説明しました。

LTE-LTE-Advancedの間の互換性イメージ図
LTE-Advanced端末とLTE端末を(性能がフルに発揮できないケースがあるものの)特に区別せず混在可能である。

そのため、LTE-AdvancedはLTEとのバックワード(Backward:後方)とフォワード(Forward:前方)のコンパチビリティ(Compatibility:互換性)を持ち、具体的にはLTEの基地局があった場合にこの基地局にLTEとLTE-Advancedの双方の端末が接続可能で、その基地局がLTE-Advancedにアップグレードした場合にも、LTEの端末とLTE-Advancedの端末の双方が接続可能となります。

また、LTE-Advancedは新周波数でなく既存の周波数でも、LTEをアップグレードしてゆくことが可能で、スムーズで柔軟なシステムの展開が可能である、と安部田氏は語りました。

LTE-Advancedの基本コンセプト
IMU-Rの提示した標準化プロセスに合わせる形で、IMT-Advancedの要求条件を満たすことでIMU-R側に承認されている。

この最初の要求条件の検討過程では、当然ながら性能の議論もあったとのことで、Release 10でできることがLTE-Advancedの最終目標ではなく、それはあくまで発展過程の1ステップである、として、Release 10で定義されている「LTE-Advanced」は、ITU-Rに規定されているIMT-Advancedの要求条件を全て満たすことが最低条件とされました。

さらに、今後の技術発展を見越してRelease 11・Release 12と時間をかけながらどんどん性能を向上させて行く、としています。
(以下、その2に続く)

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