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強烈なる80年代テイスト~タイトー「タイムギャル」を遊ぶ~前編

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by [2017年6月01日]

タイトー タイムギャル トップ画面ロゴデザインや色使いに時代を感じさせる

タイトー タイムギャル トップ画面
ロゴデザインや色使いに時代を感じさせる

1980年代中盤から後半にかけての時期、筆者を含むアニメや映画の好きな人間にとって、レーザーディスク(Laser Disc:LD)は喉から手が出るほど欲しい映像メディア・機器の規格でした。

物理的にはLDは、LPレコードと同じ直径30cmの大きなアクリル樹脂製ディスクを2枚貼り合わせ、その内側の面にアルミによる反射層を設け、2枚のアクリル樹脂層にピットを設けてFM変調したアナログ映像・音声信号を記録する「アナログメディア」です。

CDの親玉と言うべき巨大で両面記録可能なこのメディアは、意外に思えるかも知れませんが、信号の物理的な記録方法や読み出しに使う技術などはほぼCDと同じであるにもかかわらず、記録される信号そのものはCDのような0と1のデジタル信号ではなく、時間軸に沿って信号がリニアに変動するアナログ信号となっています。

LDのアドバンテージ

この規格が実用化された当時の技術では映像を30フレームあるいは24フレーム/秒のペースでデジタルデータ化するのは難しく、またそもそも動画を時間軸方向に圧縮するMPEG系の映像圧縮技術もほとんど実用化されていませんでしたから、素直にアナログ映像信号のままでコンテンツを記録するLDの仕様は当時の技術で実用的な光学ディスク方式映像記録メディアを実現する、恐らく唯一の手段であったと言えます。

また当時水平解像度がNTSC方式によるテレビ放送と同様にせいぜい240本程度しか出なかったβ/VHS方式のビデオカセットレコーダーとは異なり、最初からその1.5倍に迫る水平解像度330本以上と圧倒的な高画質を実現、当初は角速度一定(Constant Angular Velocity:CAV)タイプで1面あたり30分しか記録できなかったのが、途中でCDと同じ線速度一定(Constant Linear Velocity:CLV)タイプが開発されて1面あたり1時間の収録が可能になることと、ピックアップの構造を工夫することで両面再生に対応したプレーヤーが開発されることで実用上ビデオテープに対する弱点の改善が図られました。

こうして後の規格拡張で信号の空き領域を利用することにより、本来のアナログ音声とは別にCD相当の44.1KHz 16ビット2chのPCM音声トラックが追加されたことで、結果として画も音も他を圧する夢の高画質メディアとなったLDは、特に高画質・高音質を愛するアニメファンを中心に熱烈な支持を集めました。

CD/LDコンパチブルタイプのレーザーディスクプレーヤー(LVD-Z1/KENWOOD:下)とレーザーディスク(LD)ご覧のとおりLDは直径30cmとDVDやCD等と比較して大変巨大で重く、プレーヤーもその重いディスクを駆動・回転させるために相応のコストを要した

CD/LDコンパチブルタイプのレーザーディスクプレーヤー(LVD-Z1/KENWOOD:下)とレーザーディスク(LD)
ご覧のとおりLDは直径30cmとDVDやCD等と比較して大変巨大で重く、プレーヤーもその重いディスクを駆動・回転させるために相応のコストを要した

しかも、このLDはその名のとおり映像・音声信号読み出しにレーザー光源※注1を使用していて、ディスクそのものには読み出し用のピックアップなどが一切接触せず理屈上は半永久的に使用できる※注2という、大きなアドバンテージを持っていました。

※注1:ただしCD等と同様にディスクの材料であるアクリル樹脂あるいはポリカーボネート樹脂の経年変化による白濁や、反射層に用いられているアルミ系の金属材料の酸化による信号読み出し不良や、2枚のディスクを貼り合わせている接着剤の劣化によるディスクの反りの問題があるため、実際にはLDのディスクはそこまで寿命が長くないと考えられています。
※注2:最初に発売されたパイオニアLD-1000とその廉価モデルであるLD-700は波長632.8nmのヘリウムネオンレーザー管を光源として搭載、以後の機種ではコストダウンのため波長780nmの半導体による赤外線レーザーに変更されました。ちなみに後者は当時シャープが主にCDプレーヤー用をターゲットとして開発・量産化にこぎつけたばかりの部品で、これがCD用と共通であったことが後のCD/LDコンパチブルプレーヤーを実現可能としました。

これはβ・VHS方式のビデオテープや、当時LDと競合したもう一つの映像ディスクメディア規格であるビクター開発のVHD※注3にはない優位点であり、映像作品をコマ送りで見て確かめたいオタク層から「テープがすり切れてすぐ駄目になるビデオと違って何度コマ送りしても何度繰り返し見てもディスクが傷まない」ことで非常に強い支持を集めました。

※注3:ディスクにヘッドが接触し、針の無い静電容量方式で映像・音声信号を読み出す26cm径ディスクメディア規格。ディスクがカートリッジに収まっていて、再生時などに直接手で触れなくて済むというLDにはない大きなメリットがありました。しかし解像度がLDより低く当時のビデオテープ並みであったことや、そもそもその製品開発が遅れたことなどから、当初パイオニア1社のみだったLD陣営に対し、VHD陣営は開発元であるビクターや松下など大手メーカー13社が参加していて規模の面では圧倒的に優位にあったにもかかわらず完全に敗北、80年代後半までに事実上終焉を迎えています。

ちなみにこの「何度繰り返し見ても、それどころかコマ送りを執拗に繰り返しても原理的にディスクが傷まない」ことを重視したのはアニメオタクだけではありませんでした。毎日毎晩のように同じ客が同じ曲を再生することが当たり前のカラオケスナックなどでも強い支持を集め※注4たのです。また仕組み的に同じ箇所を繰り返し再生することになる大形筐体による動画再生を利用したインタラクティブゲームタイトルなどへの利用・応用も進みました。

※注4:規格の仕様としてVHDのメディアは同じ部分を1,000回、2年程度は繰り返し読み出せるだけの耐久性を確保していることになっていました。しかしタバコの煙が充満したカラオケスナックなどで毎日2回も3回も同じ曲が再生されると2年どころか1年と経たずにメディアが駄目になるケースがあって顧客の信頼を喪い、一方LDの方は機械はともかくディスクは店の客が乱暴に扱わない限り一切摩耗・破損しなかったため、短期間でのディスク摩耗でVHDを見限ったユーザーから熱烈な支持を集めました。こうして手堅いビジネスの筈のカラオケ市場でユーザーの信頼を喪って敗北したこともVHDの将来を閉ざす一因となりました。

そして1980年代当時、LDとVHDとの市場競争でVHD側にとってとどめの一撃となったのが、1984年にパイオニアがCLD-9000以降CDとLDの再生に対応するいわゆるコンパチブルプレーヤーを市場投入し、1台でどちらでも再生できるようになったことでした。

この大変お買い得感の強い新機能の実現は当時非常にインパクトがあって、アニメ雑誌でも紹介されるなど大変話題になったものでした。

LDゲームの登場

ともあれ、こうして画質・音質にうるさいマニア層を中心に強い支持を集めるようになったLDですが、開発元であるパイオニアはその初期からこのメディアをインタラクティブゲームなどへ応用することを考えており、プレーヤーにシリアルポートを搭載してパソコンなどからディスクのチャプター操作を実行することで、アドベンチャーゲーム的なコンテンツを作れるようにする仕組みを開発していました。

「LDゲーム」という、何というか身も蓋もないそのものずばりの名で呼ばれた、この種のリモート制御機能付きLDプレーヤーによるチャプター制御を利用するゲームは、まだパソコンでフルカラー表示も夢のまた夢だった当時※注5、アニメや特撮の映像を高画質を保ってゲームで利用できるほぼ唯一の手段でした。

※注5:例えば1990年代初頭に高解像度フルカラー画面表示を実現した、NeXT ComputerのNeXT Dimensionボードを搭載するNeXT Cubeはモニター込みで300万円以上もするという大変高価な機材で、LDゲームが登場した当時のパソコンではごく限られた機種を除くと16色あるいは256色程度の表示ができれば上等という状況でした。

そんなLDゲームでは、恐らく制作コストの関係もあったのでしょうが、初期には既存の特撮作品やアニメ作品の映像をそのまま流用したタイトルが少なくなく、その中には角川映画の同名作品の映像を使用したデータイーストの「幻魔大戦」なんて作品もありました。

実のところ、ディスクはともかくその制御機能付きLDプレイヤー(業務用)の耐久性が低く故障が多発したこともあってLDゲームの絶頂期は日本では非常に短く、オリジナル作品もろくに創られない内に衰退してしまった観があります。むしろナムコの「ギャラクシアン^3」シリーズなど、純粋なLDゲームではなくシステムが提供する映像出力の一部としてLDの映像を使用せざるを得ない状況にあった超大型体感ゲームアトラクション※注6の方が、LD再生による動画を使用するゲーム/アトラクションとしてはずっと長命を保ったような状況でした。

※注6「ギャラクシアン^3」シリーズ、中でも初期に作られた28人筐体版、および16人筐体版と呼ばれる床ごと油圧駆動で動かすタイプの大形筐体の場合は、重戦闘艇ドラグーンの砲塔を模した円筒状の室内の壁内面にプロジェクターから「外」の様子が投影される構造だったのですが、その「外」の宇宙空間とそこに迫り来る機械知性体UIMSの艦艇の攻撃の映像を全てリアルタイム生成するのは当時の技術・機材ではコスト的に難しく、そのためインタラクティブに変化する敵の攻撃や各砲座の照準、スコア表示などだけをリアルタイム生成し、背景の映像はそれぞれ予め生成し専用のLDに収録したものを同期再生・合成表示するようになっていました。こうした事情からこの「ギャラクシアン^3」シリーズは日本で稼働したアーケードゲームとしては恐らく最後のLD映像利用タイトルとなりました。

そんな短くも儚いLDゲームの歴史にあって、一際目立つオリジナル作品が3タイトルありました。

タイムギャル ヒロインのレイカ1980年代のSFアニメにありがちだったコスチュームデザインだが、今見てもインパクトは大きい

タイムギャル ヒロインのレイカ
1980年代のSFアニメにありがちだったコスチュームデザインだが、今見てもインパクトは大きい

内2つは、先に挙げた幻魔大戦のヒットの余勢を駆ってデータイーストが送り出した「サンダーストーム」「ロードブラスター」※注7、そして最後の1つが、今回ご紹介するアーケードゲームの老舗タイトーの「タイムギャル」です。

※注7:データイーストの2作はサンダーストームに亀垣一、湖川友謙、白土武、本橋秀之といった当時一線級のアニメーターが参加し、ロードブラスターも恩田尚之、北爪宏幸、大森英敏、うるし原智志といった当時の若手気鋭アニメーターが多数参加しており、彼らが参加した異色作として語り継がれることになりました。ちなみにサンダーストームは移植にあまり恵まれておらず、21世紀に入ってからだとWindowsおよびシャープX68030版(!!)として自転車創業から発売されたに留まっています。

これらは当時の大形筐体タイトルの常としてプレイ料金が通常のアーケードゲームよりも高かったにもかかわらず、いずれも後々語りぐさになったほどの強烈なインパクトをプレーヤーに残しました。

32年の歳月を経て

特にロードブラスターとタイムギャルはパイオニアが1993年に発売した、プレーヤー本体にこの機種専用のカートリッジ構造化されたセガのメガドライブあるいはNECホームエレクトロニクスのPCエンジン本体を組み込み可能な構造とした家庭用LDゲームプレーヤー(兼LD/CDコンパチブルプレーヤー)である「Laser Active」、その中でもこのプレーヤー本体にカートリッジ化されたメガドライブ本体を組み合わせて動作させるMEGA-LD向けのタイトルとして移植されるほどの人気※注8でした。

※注8:これより前にも、ビクターがLDゲームと同様のコンセプトで提唱。提供していた、対応VHDプレーヤーとシャープX1、あるいはMSX規格パソコンのいずれかを組み合わせて動作させる「VHDpc INTER ACTION」規格対応タイトルとして、これら3本は市販されていました。

もっとも、これら3作の中でもタイムギャルは当時のタイトーの大形筐体ゲームにありがちなことに元々の出荷台数が恐ろしく少なかったとされ※注9、また1990年代に入ってメガCDやセガサターン、それにPlayStationなどに移植されたものの、それらは採用メディアであったCD-ROMの容量不足と当時利用可能だったビデオ圧縮CODECの画質が不十分であったことなどから、かなり頑張って移植されていたとは言うものの、オリジナルのLDのような満足の行く画質は得られませんでした。

※注9:1980年代中盤から後半にかけての時期のタイトーによるアーケード向け大形筐体ゲームタイトルはLDゲーム以外でも出荷台数300台弱と公称される「ナイトストライカー」(1989年)を筆頭に直営店(タイトーステーション)にしか出荷されなかったのではないかと疑われるほど極端に生産・出荷数の少ないタイトルが多く、そのタイトルの知名度の高さにもかかわらず当時稼働する実機をプレイした、実見したユーザーが少なくなっています。ちなみにLDゲーム版タイムギャルは1992年にメガCDへ移植された時点で、移植を担当したウルフチームが動作を確認するため日本中手を尽くして探したもののどこにも稼働機が残っておらず、そのため移植に当たってはタイトー本社に唯一残されていたLDが使用されたと伝えられています。

しかし、純粋に技術的な事を考えると、画質的にはMPEG2圧縮と大容量メディアの採用により、これらを用いれば少なくともLD並のクオリティでの動画再生はDVDで充分可能なはずでした。

そのため、PlayStation 2以降の次世代家庭用ゲーム機の「タイムギャル」の移植がなされれば、より快適にLDゲームの移植作が遊べると期待されたのですが、丁度この時期にタイトーがスクウェア・エニックスの傘下に収まり、さらに改組を繰り返した末に分割吸収合併されたりしたことの影響もあってか、これまで長らく実現してきませんでした。

そしてそうであったが故に、このゲームの主人公であるタイムギャルこと「レイカ」にインスパイアされた「霧島零香」というキャラクターが「式神の城III」(2006年)に登場した際※注10には、「…ああ、そういやそんなキャラクター、昔のタイトーのゲームにいたね」程度にしか思い出して貰えないという悲しい状況となっていました。

※注10:「高機動幻想ガンパレードマーチ」で一躍有名になった、熊本のアルファシステムが開発した縦スクロールシューティングゲームの第三作。このシリーズはタイトーからの販売となるためか、同社の過去作品から引用・インスパイアされたキャラクター・アイテムが登場しており、例えば式神の城から式神の城IIIまでの3作でメインヒロインである結城小夜はアーケード向けアクションゲーム「奇々怪界」(1986年)のメインキャラクターであった「小夜ちゃん」に由来し、式神の城IIIに登場する少女、伊勢薙乃の背負うリュックはバブルボブル(1986年)、パズルボブル(1994年)に登場する泡はきドラゴンの「バブルン」をデザインしたものであったりします。なお、霧島零香はタイムギャルのレイカさんと同様にタイムジャンプによる時間移動能力を備えていて、これが式神の城IIIのゲーム本編でも結構重要な意味を持っていたりします。

しかし、それから更に10年以上が経ち。LDゲーム版がリリースされてからだと実に32年の歳月を経て十分に高速化し大容量ストレージも内蔵されるようになったこともあってか、このほど遂にiOS/Androidスマートフォンという新しいプラットフォームで、そしてタイトーの旧作タイトルをそれらの機種へ移植する「タイトークラシックス」の第1弾として、遂にオリジナルのタイムギャルが帰ってきました。

LDゲーム華やかなりしあの頃のように100円玉をコンパネ上に山のように積み上げておき、レイカさんが倒される度に湯水のようにそれらを硬貨投入口へ投げ込んで何度もコンティニューを行うような乱暴な物量戦を行わなくても、ただ画面をタップするだけでこの歴史的ゲームを遊べるようになったというのです。

そして財布の中身を心配しつつ目を血走らせながらプレイせずとも、主人公たる我らがレイカさんが飛び、跳ね、かわし、タイムジャンプし、タイムストップをかけ、さらにドジって倒され憎きルーダのオッサンに高笑いされるあのシーンの数々を何度でも、しかもこれまでの移植では一度も無かった高画質で楽しめるようになったのです。

以下、後編へ続きます。

アプリ基本情報

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タイムギャル

配信元:TAITO Corporation

Android価格:840円 / iOS価格:840円

  • バージョン Android:4.0以上 / iOS:7.0以降

  • 備考

    アプリ内購入によりナビゲーション機能、開発資料が購入可能。

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※記事内の情報はすべてレビュー時(2017年06月01日)の情報です。

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