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ランダム・シーケンス機能が楽しいシンセアプリ! 進化した“レガシー”『KORG iWAVESTATION』

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by [2016年12月13日]

 先日、KORG社から名機ARP ODYSSEYがiOSに最適化されたアプリ『ARP ODYSSEi』がリリースされたばかりですが、今度は同社のデジタルシンセの名機として名高いWAVESTATIONがiOSアプリ『iWAVESTATION』となってリリースされました。
 WAVESTATIONは、これまでもパソコン版のソフト音源として2004年に『KORG Legacy Collection -Digital Edition-』として製品化されていますが、どのようにiOSアプリ化されたのか、早速紹介したいと思います。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

KORG iWAVESTATIONとは?

 KORG iWAVESTATIONは、1990年にリリースされた同社デジタルシンセの名機WAVESTATIONをiPad/iPhone用に最適化したシンセ音源アプリで、同機の全PCMを搭載したサウンドエンジンに加え、ハードウェア部は実機の回路図を解析し、細部のパラメータに至るまで忠実にソフトウェア上で再現されています。

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KORG iWAVESTATIONのメインGUI

 同機が持つサウンドデザインのポテンシャルを誰でも体感できるようにデザインが一新されたのを始め、iOSならではのメリットであるタッチ操作に加え、同機の特徴である時間的な音色変化の視認性を向上させたGUI“ウェーブ・シーケンス・ビュー”を採用するなど、実機のサウンドや機能を再現しつつも、実機では難しかったスピーディかつ直感的なサウンドデザインが可能になっているのが大きな特徴です。
 このiWAVESTATIONでは、WAVESTATIONシリーズ(WAVESTATION、WAVESTATION EX、WAVESTATION A/D、WAVESTATION SR)の全モデルのプリセット1,500音色以上、700種類以上の波形、55種類のエフェクトを内蔵すると共に、6種類のオプションPCM/プログラム・カード、KORG Legacy Collectionで新規追加されたKLCカードを加えた合計7枚分のサウンドが収録され、多彩なサウンドを最初から使用することが可能です。※トータル1,500以上のプリセット・サウンドは、アプリ内課金を含めた全オプションPCM/プログラム・カードの総数。
 サウンドデザイン面では、新機能のランダム・シーケンス機能を搭載しており、ワンタップで予想外、かつトリッキーなサウンドを作り出すことができるのも魅力となっています。
 なお、同アプリは、Audiobus、Inter-App Audioに対応し、Cubasis、GarageBandの音源として利用可能な他、同社KORG Gadgetとの連携が可能で、『Milpitas』というガジェットインストゥルメントとしてiWAVESTATIONを使用可能です。加えてCore MIDI、Virtual MIDI、Bluetooth MIDIに対応していますので、音源として各種MIDIコントローラを使用して演奏することもできるなど、拡張性も十分に備えているアプリです。

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KORG Gadget上でガジェットインストゥルメントとして使用した状態


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Inter-App AudioによるCubasis上でKORG iWAVESTATIONを起動した状態。Inter-App Audioによる接続を行うと右上に接続が行われていることを示すメニューバーが表示される

WAVESTATIONとはどんなシンセサイザーだったか

 ここで、本アプリの元となったWAVESTATIONとはどのようなシンセサイザーだったかを解説しましょう。
 WAVESTATIONは、1990年代初期に登場したアドバンスト・ベクター・シンセシス・システムのデジタルシンセサイザーとして、Sequential Circuit社『Prophet5』やSeer Systems社のソフトシンセ『Reality』の開発を始め、今日のシンセサイザーメーカーDave Smith Instruments社の『Poly Evolver』などの開発で有名なデイブ・スミス氏によって開発されました。アドバンスト・ベクター・シンセシス・システムとは、複数の音色の波形やフィルターなどのバランスを連続的に変化させることで、音色の時間的変化を緻密かつ複雑に設定できる音源方式です。
 WAVESTATIONではベクターコントロールを行うための専用ジョイスティックが用意されており、リアルタイムの演奏で使用したり、音色作りの変化具合を設定するなどの用途として使用することができました。ちなみに、このジョイスティックタイプのコントローラをどのように動かすかが、時間的な動きを設定、変化させる上での重要なポイントでした。
 また、WAVESTATIONには、もう一つの特徴的な機能“ウェーブシーケンス”を装備しており、刻々と波形が変化するに摩訶不思議なループサウンドを作ることができ、4オシレータをベクター合成したモーフィングサウンドと相まって多彩な音色変化を生み出すことができました。加えて、当時はアナログシンセでも高額の機種にしか搭載されていなかった「マトリックスモジュレーション」機能も搭載されていたため、モーフィングしていくサウンドに更なる複雑な変調を伴ったサウンドデザインを行えましたので、大掛かりなモジュラー型シンセサイザー並の音色作りが行える最強のデジタルシンセだと言えるでしょう。
 なお、WAVESTATIONは、難波弘之、小室哲哉らの国内アーティストの他、ASIAのジェフ・ダウンズなどが使用していました。また、1993年頃の夏のジャズフェスではマイケル・ブレッカーがブレッカーブラザーズの再結成バンドで来日の際、WAVESTATIONのリズムループ風サウンドをバックにEWI(ウインドシンセ)でソロを吹きまくるといったソロパフォーマンスも当時の記憶として残っています。
 このようにWAVESTATIONは個性的なキャラクターを持ち注目を集めながらも、発売当時、大ブレイクに至らなかった要因は、当時の取り巻く状況が大きかったと考えられます。当時は、PCM音源のオールインワンシンセサイザー全盛期で、今日のような楽曲制作スタイルで作品制作を行う黎明期でもあったため、WAVESTATIONのようなシーケンサー非装備、汎用性ある楽器音色のプリセット数が少ないなどから用途が限定されたこともあり、優れた性能を持ちながらあまり注目されなかったのが惜しまれます。
 しかしながら、最近のパッド音色のネタ元や様々なソフトシンセのパッドサウンドの源流を遡ると、WAVESTATIONに辿り着くことからもわかるように、WAVESTASIONのパッド系音色やループサウンドを含んだ音色は今日でも色褪せていないクオリティを持ったサウンドだと言えるでしょう。
 WAVESTATIONシリーズには、いくつかの製品ラインアップがありましたので、それらについても簡単に紹介しておきましょう。1990年に365基本波形と32ウェーブ・シーケンス波形を合わせた397種の音素材、47エフェクトを装備した鍵盤タイプの『WAVESTATION』がリリースされ、翌年、PCM波形を119波形、エフェクトを8エフェクト追加、更にアナログ入力端子を装備して外部オーディオ信号の加工、ボコーダー機能などが搭載された2Uのラック音源『WAVESTATION A/D』がされました。その後、1992年4月に鍵盤モデルへ『WAVESTATION A/D』同様の119波形、8エフェクトを追加した『WAVESTATION EX』、同年の秋にはパフォーマンス550、パッチ385音色をプリセットした1Uタイプのラック音源『WAVESTATION SR』がリリースされました。これらのモデルは、いずれも基本スペックは同じであるため、用途に応じてモデル選びができる点も魅力となっていました。

iWAVESTATIONを早速試奏してみた

 続いて本製品を試奏してみました。まずはプリセット音色をひと通り試奏して、サウンドの質感を確かめたところ、パソコン版のソフト音源と同様に、実機のサウンドキャラクターや質感は損なわれることなく再現されているように思います。

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当時リリースされていたサウンドが全て網羅されたプリセット音色群。アプリ内課金によって購入可能なオプションカードも揃えたいところだ

 改めて実感したのは、ベクター音源は一つの音色が時間的に変化するものが多く、単純な白玉コードの演奏でもドラマチックに聴こえることです。やはりこの手の音はWAVESTATIONの真骨頂と言えるでしょう。
 冒頭でも紹介していますが、本アプリの一番の良さは、ランダム・シーケンス機能でしょう。新規に音色を作成する際のテンプレートに3種類のランダムタイプが選択できるだけでなく、プリセット音色を選んだ後にRANDOMボタンをタップして使用することもできるため、実機では非常に手間と労力が必要だった音色作り、中でもウェーブシーケンスの設定が非常にラクに行えます。実際に選択される波形や設定はその時々の運任せにはなるものの、1から作るよりはランダムで作成して手直しする方が非常に効率が良いように感じました。

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ランダム・シーケンスは、新規音色作成の場合ならFILEメニューのテンプレートで選ぶと、初期状態でパラメータがランダム設定された状態のサウンドが生成される


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ランダム・シーケンスを使用した音色。この状態から自由にエディットができるので、素早く音色作成を行うことができる


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この状態からも画面上部中央の音色表示部分の左にあるRAMDOMボタンをタップして更にランダムな設定を行うことも可能

 特にウェーブシーケンスを始めとする各種エディット画面は視認性も良く、実機でメモを取りながら音色エディットを行っていた当時にこの機能があったら、間違いなくもっと数多くの音色作りが行えたことでしょう。

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ウェーブシーケンスの詳細なエディット画面


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モーフィングの設定画面

 また、先日紹介したARP ODYSSEiと同様に、バーチャル・キーボードとX-Y Padを装備すると共に、ベクターコントロールをリアルタイムで行えるベクタージョイスティックも装備しているため、iPad本体での演奏性も十分確保されています。MIDIキーボードで外部音源として使用するだけでなく、本体のこれらのコントローラによるパフォーマンスもオススメです。

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バーチャル・キーボードを表示した状態


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ベクタージョイスティックとX-Y Padを表示した状態

 WAVESTATIONでの音色作りにもう一度トライしたい人はもちろん、パッドサウンドやループサウンドを強化したいサウンドクリエーターには間違いなくオススメのアプリだと言えるでしょう。

▼参考リンク
KORG iWAVESTATION
WAVESTATION – KORG

アプリ基本情報

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KORG iWAVESTATION

配信元:KORG INC.

iOS価格:3600円

  • バージョン iOS:1.0.1

※記事内の情報はすべてレビュー時(2016年12月13日)の情報です。

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