Apple AirPodsアップルが「ワイヤレスヘッドフォンを再発明」したとまで豪語するワイヤレスヘッドフォン

iPhoneはガラパゴスの夢を見るか?~iPhone 7/7 Plusを考える~「カメラと端子類編」

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by [2016年10月05日]

前回はiPhone 7/7 PlusのGPUとディスプレイ等を見てきました。今回はカメラや音声出力、接続端子について考えてみたいと思います。

機能の底上げが図られたカメラ

iPhone 7(右手前)とiPhone 7 Plus(左奥)の背面。両機種の左上に見えるメインカメラ部分の形状が異なる

iPhone 7(右手前)とiPhone 7 Plus(左奥)の背面。両機種の左上に見えるメインカメラ部分の形状が異なる

iPhone 4s以来、iPhoneのメインカメラは長らく画素数8 メガピクセルのモジュールが搭載されていて、昨年のiPhone 6s/6s Plusで久方ぶりに画素数が 12 メガピクセルに引き上げられていたのですが、他社製スマートフォンで急速にカメラ性能の向上が図られている状況に対応するためか、画素数を変えずに基本性能を引き上げる方向での改良が加えられました。

元々、iPhone 6/6 Plusの時点で光学手ぶれ補正の有無によって差別化されていた2機種のカメラ機能ですが、その光学手ぶれ補正がiPhone 7のメインカメラにも搭載され、レンズそのものの開放絞り値がF1.8と一段明るくなり、フロントカメラが7メガピクセルへ画素数引き上げが実施される一方で、これまでの差別化要素がなくなったiPhone 7 Plusではワイド(広角)とテレ(望遠)の2組のカメラが搭載されるデュアルカメラ構成(※注15)となって2倍の光学ズーム機能が実現され、今後のソフトウェアアップデートによって撮影した画像の露出を後から変更できる機能の搭載が予告されたのです。

 ※注15:光学手ぶれ補正機能はワイド側のみ搭載。

HTC J butterfly HTL23背面。上部中央にタンデムに配されているのがサブ(上)・メイン(下)の2つのカメラモジュールよりなる「DUO CAMERA」

HTC J butterfly HTL23背面。上部中央にタンデムに配されているのがサブ(上)・メイン(下)の2つのカメラモジュールよりなる「DUO CAMERA」

複数のカメラを搭載して同時に撮影を行い、それぞれの画像を演算処理することで三角測量の要領で被写界深度制御、つまり絞りの制御に相当する効果を実現するこの機能は、実のところAndroid搭載スマートフォンではもう何年も前に搭載した機種があった技術(※注16)です。

 ※注16:日本では2014年に発売された台湾HTCのHTC J butterfly HTL23に搭載されていたメインカメラが画素数 13 メガピクセルと 2 メガピクセルの2つのカメラによって構成され、これにより後から被写界深度の調整を行えるようになっていたことをご記憶の方もおられるでしょう。なお、後で触れますがHTCはこの機種に1年先行して発表されたHTC J One HTL22でもステレオスピーカーの内蔵とその配置について今回のiPhone 2機種に先鞭をつけています。

スマートフォン用のカメラモジュールの場合、薄型化の要求が強いことやそもそもレンズサイズが小さく絞り機能をつけた際の問題が多かったことなどから、絞り値を開放で固定の機種がほとんどです。

このため、被写体とカメラモジュールの間の前後の間でのピントの合う領域が狭く何を撮っても周囲のボケたポートレート写真のようになりがちだという問題を抱えてきました。

そのため、変えられなかった絞り値を変えるのと同等の効果をもたらすこの技術は、iPhoneでの写真撮影に表現力の向上という大きな福音をもたらすことが期待できます(※注17)。

 ※注17:もっとも、この方式の採用は良いことばかりではありません。1枚の写真を撮るのに1枚分+αの情報が保存されることになるため、内蔵ストレージ容量を圧迫するからです。また、それらの写真データで露出を変える操作を行う度にいわゆる「現像」処理が必要となることから、変更操作の度にプロセッサへ負担をかけ消費電力が増大するという問題もあります。

さらに、異なる特性のレンズを搭載したカメラモジュールを2基搭載することから、iPhoneでは初となる2倍光学ズームが実現をみたことも無視できません。

これまでの機種では、撮影した画像データに対して拡大縮小処理を行うことでデジタルズーム機能を実現してきたため、拡大時には粗さが目立つことがありました。

それが、2倍の範囲内とはいえ光学的なレンズ設計によるズーム機能が実現したのですから、粗さにそこまで神経質にならずにズーム機能を利用できるということで、このカメラの使い勝手向上に大きく貢献するでしょう。

絞りも光学ズームも、ある価格帯以上のコンパクトデジカメやデジタル一眼レフカメラなどではできて当たり前の機能だという話もありますが、それが筐体の厚みに制限されレンズの光軸の長さが確保できないなどハードウェア的な制約の非常に厳しいスマートフォンで、となると話が違います。

異なる特性のレンズで撮った画像を用い、ソフトウェア的に色々難しい処理が必要なためか、発売の時点では露出変更機能は未実装のままとなっていて、また光学ズーム機能でテレ側カメラモジュールを利用するのもアプリ側の対応が必要となるためアップデートの度にApple純正アプリでの対応が徐々に進みつつある状況ですが、今後のカメラ機能の拡充に期待が持てます。

増強されたスピーカー、廃止されたステレオミニジャック

iPhone 7とAirPods恐らく今期のApple一押しの組み合わせだが、実用面では様々な問題が残っている

iPhone 7とAirPods
恐らく今期のApple一押しの組み合わせだが、実用面では様々な問題が残っている

今回のiPhoneで恐らくもっとも物議を醸しているのは、アナログ音声出力に関わる部分でしょう。

なぜなら、従来モノラルだったスピーカーが縦持ち時上下端、横持ち時左右端となる位置に各1基搭載されてステレオスピーカー化され、その一方で初代iPhone以来延々と搭載され続けてきたステレオミニジャックによる音声出力端子が廃止されたためです。

前者は、これまでも結構苦情の多かったモノラルスピーカーのステレオ化で一歩前進(※注18)となって大いに歓迎できます。

 ※注18:ただし筐体設計及びその部品艤装の制約によるものでしょうが、完全に上下/左右対称となるような構造・配置にはなっておらず、筆者が店頭デモ機で確認した範囲では左右の音質、特に低音の出方には差があります。無論、それでもこれまでよりは格段に迫力が出るようになっていますが。

ソニー・エリクソン W44s2006年12月に発表された、縦横2方向いずれかにディスプレイが開く「デュアルオープン」対応フィーチャーフォン。下の本体左右(縦持ち時は上下)にスピーカーが内蔵され、ステレオサウンド出力が行えた

ソニー・エリクソン W44s
2006年12月に発表された、縦横2方向いずれかにディスプレイが開く「デュアルオープン」対応フィーチャーフォン。下の本体左右(縦持ち時は上下)にスピーカーが内蔵され、ステレオサウンド出力が行えた

スマートフォンでも既にHTCから2013年に発売されたau向けのHTC J One HTL22など他社で何例か採用例のある、そして異形の縦横開きディスプレイ搭載で話題になったソニー・エリクソンW44sなどでガラケー時代の後半にはもう既に採用例のあったレイアウトですが、iPhone本体を横持ちにして自室などプライベートな場所でゲームを遊ぶ場合や動画を視聴する場合を考えると、これは本当に大変有り難い改良です。

それに対し、後者は少々厄介な問題をはらんでいます。

というのは、本体からアナログ音声出力端子を廃止してもヘッドフォンやヘッドセットを使用したいというニーズが無くなるわけではありませんから、何らかの形で外部音声出力機能を実現する必要があるためです。

その問題に対して、今回Appleは付属のインナーイヤーヘッドフォンであるEarPodsについては「EarPods with Lightning Connector」としてこれまで主に母艦となるWindows PCやMacとの接続、あるいは充電などに利用されてきたLightning端子に直接接続できる構造へ変更、他の3.5mm径ステレオミニプラグ接続タイプのヘッドフォンとの接続については、「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」を付属することで対処し、さらに「AirPods」としてワイヤレスインナーイヤーヘッドフォンを10月上旬から発売することを発表しました。

Apple公式サイトのiPhone向けアクセサリ商品紹介ページ左端が問題の「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」

Apple公式サイトのiPhone向けアクセサリ商品紹介ページ
左端が問題の「Lightning – 3.5 mmヘッドフォンジャックアダプタ」

筆者自身、この発表会を自分のiPhoneでリアルタイム視聴していたのですが、ここで同時起動していたパソコン上のTwitterのタイムラインが悲鳴めいた失望の言葉で埋め尽くされました。

日本のユーザーはガラケー時代から専用リモコン接続や防水などの都合で音声出力端子が充電コネクタと排他利用の変換アダプタ併用を強いられてきましたから、恐らくは他のどこの国のユーザーよりもこの種の変換アダプタ経由での接続がもたらす問題点について知悉していると言えます。だからこそ、今回のこのAppleの発表でそうした失望の言葉が出てきたものと思います。

筆者愛用のLightning -- USBケーブルのLightningコネクタこの写真では判りづらいが長年の酷使で先端の金属コネクタ部が変形しており、接触不良が起きやすくなっている。

筆者愛用のLightning — USBケーブルのLightningコネクタ
この写真では判りづらいが長年の酷使で先端の金属コネクタ部が変形しており、接触不良が起きやすくなっている。

そもそも筆者の経験上、表裏リバーシブルで配線接続が二重に冗長化されているとはいえ、けっして丈夫とは言えず長期使用で接触不良が出やすくなる傾向がある(※注19)Lightningコネクタで、充電して変換アダプタを挿し、バッテリが切れたらアダプタを抜いて充電用ケーブルをつないで、というサイクルを、例えば2年延々繰り返して耐えられるかは疑問です。

 ※注19:あくまで筆者所有のiPhone 6 PlusとApple 純正の「Lightning – USBケーブル」での一例ですが、2年酷使してきた結果、「Lightning – USBケーブル」のLightningコネクタが少し傾いただけでUSB経由での通信機能が切断される現象が頻発するようになっています。ケーブルのコネクタの接点を清掃しても改善されないため、iPhone 6 Plus側のコネクタ内部接点の板バネ状部品が塑性変形を起こしてコネクタの傾きに追従できなくなってきている可能性があります。

また、この変換アダプタはその名のとおり3.5mm径ステレオミニプラグ付のヘッドフォンなどを直接Lightningコネクタに接続するための機能しか持っておらず、これまでの機種ならばできた、「外部バッテリからLightningコネクタへ給電しつつヘッドフォン端子で音声聴取」という使い方ができません。

昨今の「ポケモンGO」を巡る一連の騒ぎの中で外部バッテリーが飛ぶように売れ、電車の車内などでもヘッドフォンをつけて外部バッテリーとセットでスマートフォンを携行し「ポケモンGO」を遊ぶ人を見かける機会が増えたことを考えると、他の何はともかく、これができないことを問題視する人は少なくないことでしょう。

個人的には、Appleはどうしてステレオミニジャックと並べてLightningコネクタを搭載し、充電その他を行いつつ音楽聴取などを行えるような変換アダプタを開発・同梱しなかったのかと不思議に思います。

また、この変換アダプタは日本では税別900円で販売されていて、OSをiOS 10以降にアップデートした、あるいは最初からiOS 10以降をプリインストールされたLightningコネクタ搭載iPhone・iPad・iPodで利用できるのですが、値段が安く入手しやすい反面、この値段では音質が全く期待できないということになります。

正直、通常の「Lightning – USBケーブル」のお値段が税別2200円~3800円する状況で、少なくとも片方のコネクタは同じものを使用し「Lightning – USBケーブル」にはないUSB接続のDAコンバータを内蔵して、何故最短タイプの「Lightning – USBケーブル」の半分以下の価格で販売できるのか、筆者には不思議でなりません(※注21)。

 ※注21:いかに44.1/48.0kHz 16ビットステレオ音声対応までのDACといえど、チップ1つの部品価格は電子部品の店で買う場合USBなしでも最低でも200円前後はするのが通例で、大量購入で相応のディスカウントが期待できることを考慮しても、他の部品のコストを勘案するとまともな音質の変換アダプタとなることは期待できそうにありません。

Apple AirPodsアップルが「ワイヤレスヘッドフォンを再発明」したとするワイヤレスヘッドフォン

Apple AirPods
アップルが「ワイヤレスヘッドフォンを再発明」したとするワイヤレスヘッドフォン

ちなみに、今回の発表会では「AirPods」が一押し状態だったのですが、これとて仕様的にはlosslessではなく今更のように256Kbps AACエンコーディングの音声データを基準にして音質が云々されており、このことからBluetoothの標準的なプロファイルを利用する仕様である可能性が非常に高く高音質のプロファイルを使用することは想定されていないことが見て取れます。

言い替えると、Android搭載スマートフォン/タブレットで現在QualcommのAptXやソニーのLDACなどハイレゾ音源まで対応するコーデックのサポートの普及が徐々に進みつつある中で、Appleの製品ではそうした方向性が全く考慮されていない状況にあるということなのです。

このあたり、AppleがiTunesを中核に据えた音楽ビジネスを一体どのように考えているのか、今後どのようにサービスを展開するつもりなのでしょうか。

つまるところ、無線タイプのAirPodsを使え、というのが究極的な主張であるように見えますが、ただケーブルが無くなることによる利便性(※注22)やAirPods本体にW1と命名されたプロセッサが内蔵されてSiriによる音声操作が(バッテリ残量の確認を含めて)できる、ノイズキャンセリングに対応した、といった点ばかりを一押しされて根本的な音質は二の次三の次というのではユーザーとしては困るというものです。

 ※注22:これとて内蔵バッテリ容量を使いきったらケースに戻して充電、というサイクルを一定時間毎に行わねばならず、そのバッテリーの持ちも音量50パーセントでの動作時間でしかないのですから、ユーザーからすれば明らかな後退です。、

無論、ワイヤレスヘッドフォンの操作系のあり方に一石を投じることになるこのAirPodsの音声指示によるユーザーインターフェイスは非常に興味深いものですが……。

次回へ続きます。

▼参考リンク
iPhone 7 – Apple(日本)
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple、iPhone 7およびiPhone 7 Plusを発表 — これまでで最高かつ最も先進的なiPhone
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple Pay、iPhone 7と共に日本に登場
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple、AirPodsによってワイヤレスヘッドフォンを再発明

HTC J One スペックとレビュー | HTC 日本
HTC J butterfly HTL23 スペックとレビュー | HTC 日本

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Sony Japan | LDAC™で高音質ワイヤレスリスニング

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