iPhone 7・iPhone 7 plusでのSuica対応を予告するApple製品紹介ページ事前にある程度リーク情報があったが、こうした形で現実となると、感慨深い

iPhoneはガラパゴスの夢を見るか?~iPhone 7/7 Plusを考える~「ガラパゴス機能編」

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by [2016年10月06日]

前回は、iPhone 7/7 Plusのカメラと端子類を見てきました。今回は防水防塵、それにFeliCa機能への日本向け限定での対応について考えてみたいと思います。

遂に実現した防水防塵機能

iPhone 7/7 Plusの防水性能に触れるAppleの製品紹介ページここでの記述においても、「みずがこぼれたり、はねたりしても」とあり、水中に落としてしまったりホースで高圧の水を浴びせかけるような状況を想定していないことが見て取れる

iPhone 7/7 Plusの防水性能に触れるAppleの製品紹介ページ
ここでの記述においても、「みずがこぼれたり、はねたりしても」とあり、水中に落としてしまったりホースで高圧の水を浴びせかけるような状況を想定していないことが見て取れる

ヘッドフォン端子の廃止が問題視される一方で、この廃止のおかげで実現が容易になった機能もあります。

それは防水・防塵機能です。

スマートフォンで水や埃の筐体内への浸水を防ぎたければ、極力一体成形で継ぎ目のないバスタブ状外装に収め、端子等の穴を可能な限り減らしてやるのが一番です。浸入孔や継ぎ目が少なければ、その分だけその孔や継ぎ目1つ1つへの防水・防塵対策にコストをかけやすくなるからです。

特に、最低でも3本、iPhoneのようにリモコン付きケーブルを使用する場合は4本以上の配線をコネクタから引き出さねばならないヘッドフォン端子は(現在のAndroid搭載スマートフォン/タブレットでは既に技術的にクリアされているものの)USB端子などと共に防水防塵の難度が高い部品の1つで、これを1つ省略するだけでも防水防塵対策は飛躍的に容易になります。

そのため、今回AppleがiPhone本体からヘッドフォン端子の廃止に踏み切った最大の理由は、恐らくこの防水防塵対策面でのコスト増を嫌ってのものであったと推測できます。

日本のAndroid搭載スマートフォン/タブレットでは、いやガラケーと呼ばれ揶揄されたフィーチャーフォンの時代から日本の携帯電話では既に防水防塵の技術が確立され実現していた状況を考えると、今回のiPhoneでの防水防塵対応実現は嬉しい反面、やっとかよという感想があるのも確かです。

なお、今回のiPhoneが対応する防水・防塵規格は国際電気標準会議が標準化している「エンクロージャによる保護等級」、通称「IPコード」でIP67となる規格です。

このコードでは2桁の数字の10の位が固形物に対する、1の位が水に対する耐性の等級を示しており、数字が大きいほどより厳しい環境での利用に耐えることになります。つまりIP67であれば固形物への耐性、つまり防塵で下から6番目、水への耐性では下から7番目の等級の条件を満たしていることを意味します。

ちなみに防塵の6等級は最上位で、「塵埃の侵入が無いこと」という試験条件が満たされていることを意味します。一方、防水の7等級は「機器の最上部が水面下150mmより深く、最下部が水面下1mより深い位置になるようにして30分間水中に放置」という試験条件の下で「定められた条件で水中に没しても内部に水が入らないもの」、つまり防浸形であることを意味するのですが、これには1つ誤解を招きかねない要素があります。

それは、この7等級が動きのほぼ静止した水槽内で条件を満たすように沈めて、その状態で測定した結果によって認められるルールとなっていることです。

国産の防水防塵対応スマートフォンで防水の欄に「IPX5/IPX7」と2つの等級(※注23)が併記してある例を見て不思議に思った方もおられるかも知れません。実はこれは前者の5等級が噴流水、つまり例えばホースから圧力のかかった水を浴びせかけるような状況への耐性を示すもので、静止状態での防浸性能を示す後者と合わせて異なった2つの状況での耐性を併記してあるのです。

 ※注23:IPコードでは2桁で等級表記を行いますが、防塵単独の場合は「IP○X」、防水単独の場合は「IPX○」(○は等級の数字)と表記します。つまり、その場合に関係の無い規格の等級表記部分をブランクを示す文字「X」で埋めているわけです。

言い替えれば、その表記なしにIP67やIP68(※注24)と表記されている今回のiPhoneやサムスンのGalaxy Note 7の場合、そうした噴流水に対する耐性が低く漏水して故障する可能性が無いとは言えません。

 ※注24:なお、防水で最上位の等級であるIPX8の保護の程度は「指定圧力の水中に常時没して使用できるもの」なのですが、試験条件が「受け渡し当事者間の協定による」となっていて、その協定の内容が公開されていない限り、その防水性能を正しく評価する術はありません。

そのため、対応する等級が高いと言っても実際には腕時計の生活防水レベルの実用耐性しか実現されていない可能性も充分あり得ます。

とりあえずこの種の機種では防水防塵の謳い文句を真に受けず、なるべくホースの水が浴びせかけられるような使い方は避けた方が良いでしょう。

日本へのローカライズでSuica対応が実現

iPhone 7/7 PlusでのSuica対応を予告するApple製品紹介ページ事前にある程度リーク情報があったが、こうした形で現実となると、感慨深い

iPhone 7/7 PlusでのSuica対応を予告するApple製品紹介ページ
事前にある程度リーク情報があったが、こうした形で現実となると、感慨深い

今回のAppleの発表会は例年通り盛り上がる演出をあちこちに仕込まれた、見所一杯の内容で、観衆もその演出にきれいに反応して盛り上がっていたのですが、そんな中、たった1つだけ会場が白けきった発表がありました。

それは日本の非接触型ICカード通信規格であるFeliCaに日本市場向けモデルのみ対応し、Apple Payの機能の一部としていわゆるモバイルSuica相当の機能を実現する、という発表でした。

正直、ここまで無反応でスルーされるとは思わなかったのですが、ワールドワイドで同一機種が販売され、周波数帯・通信方式、それに使用言語に関わる以外のローカライズを認めてこなかったAppleが特定の国固有の既存サービスに対応したことは間違いなく重要な1つのトピックであったにもかかわらず、みごとに静まりかえった会場が映し出されるのを見る限り、そのことは会場の参加者には全く意識されていなかったようです。

ちなみに、このFeliCaは現在では無線通信規格の1つであるNFCの1方式という扱い(※注25)なのですが、NFCに対応している機器でもFelicaに対応したチップと「セキュアエレメント」というその名のとおり料金支払いに必要となるセキュアな情報を保持するためのハードウェアが搭載されていなければ、モバイルSuicaなどのFelicaの仕組みを利用するサービスに対応することができません。

 ※注25:TYPE-A・Bと区分してTYPE-Fと命名されています。

ハードウェア的にはApple Payでの利用を前提にセキュアエレメントを搭載し、しかもNFCに対応する従来のiPhone 6/6 Plus・iPhone 6s/6s Plus・iPhone SE・iPad Pro・iPad Air 2・iPad mini 3・iPad mini 4の各機種でSuica(そして同じ仕組みを利用する「iD」や「QUICPay」)が利用できないとされているのは、まさにこのFeliCaのための専用ハードウェアが欠けているためなのです。

言い替えれば、FeliCaの機能に依存しないサービスであれば、ここに挙げた各機種はハードウェアレベルでは問題なく利用できるということで、Apple自身は特に大々的に宣伝はしていませんが、Apple Payの「始め方」のページではこっそりこれらの機種での対応状況が案内されています。

iPhoneの既存機種についてはiPhone 7/7 Plusに機種変更して全部使えるようにした方が何かと便利なのですが、問題は先日発売されたばかりで対応する機種のない4インチのiPhone SEです。

これについてはサービス開始後にでも構わないので、FeliCaチップ搭載のマイナーチェンジバージョンを提供して欲しいところ(※注26)です。

 ※注26:可能であれば、既存機ユーザーに対するアップグレードサービスもあるとなお良いのですが。

ちなみに、支払いに利用可能なクレジットカードの種類もこのページで案内されているのですが、問題は、そこに列記された主立ったカード会社の社名の中に、業界最大手であるVISAの名がないことです。

これについては現状、様々な噂がネット上を流れていますが、少なくとも「まもなく登場」とされているこのサービスの日本での開始時点では、VISAカードが利用できないということで確定となりそうです。

このあたり、カード会社のブランディング戦略や自社で提供しているサービスとの整合など色々難しい問題があるようなのですが、VISAカードしか持ってない筆者としては、このままでは機種変更してもFeliCa関係の機能が満足に使えないということになってしまうため、何とか早急に対応して欲しいところです。

日本市場へのローカライズは嬉しいが…

Apple iPhone 7(右)手前・iPhone 7 plus(中央奥)・AirPods(左手前)

Apple iPhone 7(右)手前・iPhone 7 Plus(中央奥)・AirPods(左手前)

以上、iPhone 7/7 Plusについて見てきましたが、これまで日本のユーザーが切望してきた防水防塵やFeliCa対応によるSuicaサービスへの対応実現は本当に喜ばしいですし嬉しくもある一方で、実用性を大きく損なうヘッドフォン端子の廃止とどう考えても音質が良くなる要素のない単純かつ非常に安価な変換アダプタ添付によるこれの代替は困るというのが筆者の感想です。

正直、日本初上陸以来、それまで栄耀栄華を誇っていた日本の「全部入り」高機能フィーチャーフォン(ガラケー)をあっという間に駆逐していった当のiPhoneが、よりにもよってガラパゴス化の象徴のように言われていたFeliCaに、それも日本市場向け限定とはいえ本格対応し、さらにそれらのフィーチャーフォンがそうであったように防水対策として標準的な音声端子を廃止して専用端子との変換アダプタを付属する、という状況に陥ったことは、歴史は繰り返すと言えば良いのか、複雑な気分です。

これは、求められる機能・性能を満たすため設計に最適化を図っていくと、生物の収斂進化のように出発点は異なっていても近しい着地点に到達してしまうということなのかも知れません。しかし、これまであれほど各国向けローカライズを拒んできたAppleがわざわざ日本市場向け限定でFeliCaをサポートしたあたり、むしろAppleのワールドワイド規模のマーケティング戦略で一体何があったのかと心配になってしまいます。

特に、ここ数年同社ではマーケティング戦略的に中国シフトが続いていたことを思うと、ここへ来て唐突に日本シフトになったことには中国経済の失速などの事情を勘案するとある程度は納得できるものの、それでも市場規模の差を考えるとここまで日本市場の要望に寄り添われる現状には、やや違和感があります。

まぁ、このあたりについては昨今の総務省による携帯電話市場への締め付け強化に対する一種の政治的ジェスチャーなんじゃないか、なんて話もありますが、こうまで掌返し状態になろうとは筆者がAndroid搭載スマートフォンからiPhone 6 plus2機種変更した2年前には夢にも思わなかったことでありました。

ともあれ、Appleのこれまでの方向性から言うと、今後もコネクタ廃止の動きは続き、また、ヘッドフォンについてはAppleはユーザーをワイヤレスヘッドフォンに誘導したいようです。これまでも、AppleはiPhoneをはじめとするiOSデバイスで30ピンコネクタのLightningコネクタへの変更をはじめ幾つかの規格を強引に変更・切り替えしてきましたが、それらにユーザーが(例え渋々でも)付き合ってきたのは、その変更にそれはそれで納得の行くメリットがあって、通常使用で致命的な問題が発生しなかったためでした。

その観点では、今回のステレオミニジャック音声出力端子の廃止は「あったものが無くなる」上に「これまで当たり前にできていたことができなくなる」という問題を引き起こしており、音質の低下もさることながらその利便性悪化は音質の議論以前の話であると言えます。「前より何かの質が低下する」のはある程度まで辛抱できても、「前にできたことが同じようにできなくなる」ことを我慢できる人というのはそう多くありません。

このあたりの諸問題については、その性能や機能に満足できたiPhone 6 Plus購入から2年が近づき機種変更を検討している筆者でさえ、iPhone 7 Plusへの機種変更を一旦止めて他のAndroid搭載スマートフォンへの機種変更を検討してしまうレベルです。

発売開始以降、日本では例年どおり販売店で好調な売れ行きを示しているようで、今は秋葉原のヨドバシカメラなどを中心に即納在庫が上位のiPhone 7 Plusを中心にあっというまに品切れになっていますし、実機を触ってみると単純にiOS端末としてみるとこのiPhone 7/7 Plusが本当に高性能な機種なのは疑う余地も無いのですが、いずれにせよ、ユーザーの目線に合わせた製品作りというものを今一度改めて考えて欲しい、と切に願うばかりです。

▼参考リンク
iPhone 7 – Apple(日本)
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple、iPhone 7およびiPhone 7 Plusを発表 — これまでで最高かつ最も先進的なiPhone
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple Pay、iPhone 7と共に日本に登場
Apple (日本) – Apple Press Info – Apple、AirPodsによってワイヤレスヘッドフォンを再発明

HTC J One スペックとレビュー | HTC 日本
HTC J butterfly HTL23 スペックとレビュー | HTC 日本
W44S | ソニーモバイルコミュニケーションズ

技術資料 保護構造について(PDF)
Sony Japan | FeliCaウェブサイト
Sony Japan | FeliCa | NFCについて | NFCの定義
Sony Japan | FeliCa | NFCについて | NFCとFeliCaの関係

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