iPhone SEiPhone 6sなどに準じてローズゴールドが追加され、4色展開となった

4インチディスプレイ再び! ~Apple、iPhone SEを発表~

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by [2016年3月24日]

iPhone SEiPhone 6sなどに準じてローズゴールドが追加され、4色展開となった

iPhone SE
iPhone 6sなどに準じてローズゴールドが追加され、4色展開となった

2014年秋にiPhone 6・6 plusが発表されるまで、iPhoneのディスプレイサイズは衣服の胸ポケットへの収まりが良い3.5インチ~4インチサイズの期間がそれなりに長く続いていました。

初代機からiPhone 4sまではiPhone 4で画素数が従来比2×2=4倍になったものの画面サイズは変わらず対角線長3.5インチ、iPhone 5からiPhone 5s・5cまではそれまで縦横比が2:3であったものを短辺の画素数は変わらず640ピクセルとしたままで、長辺の画素数を増やすことによって40:71に引き延ばした形状のものとなっていました。

つまり縦画面としたときの本体の背丈は伸びましたが、横幅はほとんど変化のないまま(※注1)に初代からiPhone 5s・5cまで続いてきたのです。

 ※注1:厳密に言えば初代の2.41インチ(≒61mm)から一旦2.44インチ(≒62.1mm)に微妙に増えた後、iPhone 4で2.31インチ(≒58.6mm)に減ってそれがiPhone 5sまで踏襲されてきました。

これはつまり、このクラスの横幅が「携帯電話」としてのスマートフォンのベターなサイズであるとAppleが考えていたことを示唆する状況なのですが、それだけにiPhone 6・6 plusでディスプレイ解像度向上の必要性があったにせよ、また前世代の廉価版であるiPhone 5cが(営業的に)事実上の失敗作となってハイエンド狙いに戦略が転換されたこともあったにせよ、横幅が一気に2.64インチ(≒67.0mm)あるいは3.06インチ(≒77.8mm)クラスにまで増えた事に対する既存ユーザーの違和感あるいは抵抗感は結構大きなものがありました。

実際、筆者の周囲でもiPhone 6・6 Plus発売時に「どうしてiPhone 5sと同じサイズでiPhone 6と同等の性能の機種を出さない?」という声が結構あって、iPhone 6s・6s Plusの発表時にも4インチディスプレイ搭載機種が2世代前のCPUを搭載するiPhone 5sがそのまま続投となったことに対する大きな失望の声が聞かれたものでした。

特にこのときは、iPhone 6s Plusの販売価格が10万円を突破して分割払いでの購入が拒否される事態が続出したこともあって、「Appleは儲けを大きくするためにわざと4インチの新型iPhoneを出さないのだ」という厳しい批判の声すら出るような状況でした。

まぁ、Appleにすれば儲けの大きい機種をより沢山売りたいのは同社が営利企業である以上は当然の話なのですが、こうした強気のハイエンド指向販売戦略が採れるのは、何を出しても順調に売れるような幸せな状況であればこその話です。

高価なiPhone 6 Plus・6s Plusの出荷台数増大にかなり大きく寄与してきた中国市場が冷え込みAppleの経営に黄色信号が灯るような状況になってくると、むしろローエンドの機種に魅力的な製品が存在せず(※注2)、数が出るローエンドでの市場シェア拡大が難しい状況にあることは致命的な弱点になってきます。

 ※注2:Android搭載端末で考えてみればわかりやすいのですが、大画面モデルにどんどん新型機種を投入し、小型ディスプレイ搭載モデルだけ形落ちの機種をいつまでもラインナップし続けていれば、普通「このメーカーは小型モデルを求める客をなめてかかっている」と見なされるようになります。このあたりのブランドイメージ低下については、そうならないためにソニーやシャープといった日本のメーカーがどれほど神経質に大型の新世代機種に準じた機能・性能で4.5インチ~4.7インチクラスディスプレイを搭載する小型モデルの開発を続けているかを見ればその悪影響の大きさは明らかです。いかにiPhone 5sが登場時の水準を超える機種であったにせよ、これだけ技術の革新ペースが速い今のスマートフォン市場で特定のクラスのモデルだけ2世代前の機種を平然とラインナップし続けるのは怠慢のそしりを免れうるものではありません。特に、Appleの場合は通話機能を持たないiPodでiPhone 6相当の機能をiPhone 5s並のサイズの筐体に搭載した4インチディスプレイ搭載モデル(第六世代iPod touch)を2015年7月に発売しているため「できるのに/客が強く望んでいるのに、やらない/やらなかった」と見なされても弁解の余地はないでしょう。

最近はAndroid搭載端末を製造販売する中国メーカーの技術力やデザイン力もかなり向上し、かつてAppleと鎬を削った韓国メーカー各社の地位を脅かすほどになっていますから、中国国外の市場を狙うそういった中国メーカーとの対抗上も、Appleはきちんとしたローエンド機種(※注3)が必要とされる状況となってきています。

 ※注3:もっとも、ローエンドと言ってもAndroidやTizen、あるいはWindows 10 Mobileを搭載したそれはそれなりにまともな性能の端末が1万円前後で販売されていることを考えれば、Appleの製品ラインナップにおける「ローエンド」はAndroid搭載端末で見れば充分過ぎるほどのハイエンド機種だという話もあります。それでも、「頑張って少し背伸びすれば手が届く」レンジの価格帯の機種が存在するというのは実際のユーザーを増やす意味でもマインドシェアを拡大する意味でも、凄く重要なことなのです。

こうした状況下、このほどiPhone 5sの後継機種としてiPhone SEが発表されました。

世代を示す数字を型番に含めず、基幹機種の代替わりに無関係に長期間販売することをあらかじめ宣言するようなネーミング(※注4)ですが、今回はこのiPhone SEについて考えてみたいと思います。

 ※注4:余談ですがこの「SE」というモデル名はかつてのApple Macintoshシリーズにもあって、ディスプレイ分離型で拡張スロットを備えたMacintosh II系が一般化する中で誕生した、初代以来伝統のディスプレイ一体形コンパクトモデルに与えられた名でした。このMacintosh SEの立ち位置と今回のiPhone SEの立ち位置を見比べてみると、今回のそれは古参のApple支持者に向けたメッセージとも取れる、なかなか意味深な命名と言えます。ちなみにMacintosh SEは次世代で32ビットMPUであるMC68030を搭載し名機と謳われたMacintosh SE/30に発展し、以後直接の後継機種が誕生しなかったこともあって長期間にわたり熱烈な支持者を抱えていた事で知られます。

iPhone SEの主な仕様

iPhone SEの記事執筆時点で公表されている主な仕様は以下のとおりです。

  • サイズ:58.6 × 123.8 × 7.6 mm
  • 重量:113g
  • メインスクリーン
    • 種類:Retinaディスプレイ
    • 解像度:640×1,136 ピクセル
    • 画面サイズ:4 インチ(対角線長)
  • OS:iOS 9
  • チップセット:A9+M9(仕様非公開)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:容量非公開
    • フラッシュメモリ:16/64 ギガバイト
    • 拡張スロット:なし
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:12 メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:1.2 メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
    • 対応周波数:2.4GHz、5GHz
  • LTE:
    • 4G LTE-Advanced
  • 対応バンド:
    • モデルA1662:
    • (LTE)1・2・3・4・5・8・12・13・17・18・19・20・25・26・29
    • モデルA1723:
    • (LTE)1・2・3・4・5・7・8・12・17・18・19・20・25・26・28
    • (TD-LTE)38・39・40・41
    • Bluetooth:Ver.4.2
    • 電池容量:容量非公開

    iPhone 5sのそれを踏襲した筐体設計

    iPhone 5sカラーバリエーションと表記を除くと、全くと言って良いほどiPhone SEと同一のデザイン・筐体サイズである。

    iPhone 5s
    カラーバリエーションと表記を除くと、全くと言って良いほどiPhone SEと同一のデザイン・筐体サイズである。

    まず、一番気になる筐体デザインから。

    高さ123.8mm、幅58.6mm、厚さ7.6mmという変化の一切ない外形寸法を見るまでもなく、これはiPhone 5sの筐体をほぼそのまま踏襲した設計です。

    つまり、iPhone 6以降のエッジ部分に丸みを持たせた新しいエクステリアデザインではなく、エッジの部分に角が立ったiPhone 5s以前のデザインを基本としているということで、ボディカラーでiPhone 5sには設定されていなかったローズゴールド以外の3色のモデルの場合、裏面中央下部の「iPhone」という表記が「iPhone SE」に変わったのを見なければ、まずiPhone 5sと区別できないことでしょう。

    正直、ここまで変えないのは予想外だったのですが、現在iPhone 5やiPhone 5sを使用している方ならば操作感がほとんど変わらないまま高性能化された機種に乗り換えられるということで、これは歓迎できる、あるいは喜ばしいデザインの墨守です。

    ちなみに、重量もiPhone 5s比でわずか1g重いだけですから、誤差の範囲と言ってよろしいでしょう。

    ここまで変えないというのはデザイナーの仕事として考えると非常に勇気の要る決断なのですが、生産ラインの側からすればこれまでとほぼ同じ治具やラインで生産できるということで、量産ライン構築コストが低減できる=製品単価を低く抑えることが期待できます。

    また、形も寸法も全く変わっていないということは液晶保護フィルムやダンパー、ケースなどのアクセサリ類についてiPhone 5sのそれがそのまま流用できることになります。そのため、実機による装着状態の確認は必要となりますが、そういったアクセサリのメーカーにとってこのiPhone SEは旧製品の在庫がはけてしかも廃番製品の復活でも商売ができる、大変に「おいしい」新製品であるということになるでしょう。

    筆者個人の感想としては、このサイズ、この形状でこれ以上のデザインをするのは何かよほど新しい技術なりデバイスなりが出てこない限りは難しいと思います。

    iPhone 6s/6s Plus並となったプロセッサ

    さて、このiPhone SEでは統合プロセッサおよびコプロセッサとして、iPhone 6s・6s Plusと共通のA9プロセッサおよびM9プロセッサを搭載しています。

    A9プロセッサはiPhone 5sに搭載されたA7プロセッサに始まるARM v8系命令セットに対応する64ビットCPUコアを2基内蔵しています。

    CPUコア数だけならばA7も2基内蔵なので変わらないのですが、A8がA7比でCPUが25パーセント、GPUが50パーセントの性能増、A9がA8比でCPUが70パーセント、GPUが90パーセントの性能増を謳っているため、計算上A7比でCPUは112.5パーセント、GPUは185パーセントの性能増ということになります。言い替えると、A9のCPUコアは1コアでA7のCPUコア2コア分以上の仕事がこなせるということです。

    もっとも、iPhone SEの公式ページではCPUはiPhone 5s比で2倍、GPUは3倍とラウンドな数字で性能向上を謳っており、CPUは控えめ、GPUはやや盛った倍率としています。

    いずれにせよ、iPhone 5s比では飛躍的な性能向上が実現しており、またメインメモリも2GBのLPDDR4となってA8やA7の1GB LPDDR3よりも大幅なパフォーマンスアップとなっているため、今後のOSバージョンアップでも比較的長期にわたってサポートされることが期待できる仕様であると言えます。

    また、iPhone SEでは3Gでの連続通話時間が公称で4時間伸びて14時間に、ビデオ再生は3時間伸びて13時間に、オーディオ再生は10時間伸びて最大50時間に、と劇的な連続稼働時間の延長が実現しています。

    ビデオ再生やオーディオ再生の場合はほぼそのままA9プロセッサの内蔵するCPUコアやGPUの低消費電力化が連続稼働時間延長の主因と考えられますが、ほとんどA9プロセッサが介在しない3G連続通話時間が延びていることから、コミュニケーションプロセッサやRFトランシーバの性能向上・低消費電力化もまた実現していることが見て取れます。

    なお、同じプロセッサを搭載するiPhone 6sやiPhone 6s Plusと比較すると画面解像度が高い分、処理すべきデータ量が多く負担の大きなiPhone 6sがビデオ再生でやや劣り、画面解像度がさらに高いものの筐体サイズの大きさを利して大容量バッテリーを搭載するiPhone 6s Plusが全ての面で一頭地を抜く性能を実現しています。

    つまり、これまでだと小型だけど連続稼働時間は不利なiPhone 5sか連続稼働時間では有利だけどサイズが大きいiPhone 6sか、というある意味究極の選択を強いられていたのが、iPhone 5sが小型で連続稼働時間でもiPhone 6sと同等かそれ以上のiPhone SEに置き換わったということですから、価格的な問題を別にすれば実用的な携帯電話としてのiPhoneを求める層には大いに歓迎されることでしょう。

    強化されたメインカメラ、iPhone 5s相当のまま据え置かれたフロントカメラ

    iPhone SEをiPhone 5sと比較した場合に特に目に付く強化点の1つに、メインカメラの解像度アップがあります。

    これは恐らくソニー製のExmor RS for mobileと考えられる画素数12メガピクセルの、つまりiPhone 6sに搭載されているのと同等の裏面照射形CCDセンサー搭載カメラモジュールを搭載したことによって実現したものです。

    このカメラの素性の良さについては既にiPhone 6sの紹介記事などであちこちで語られているためここでは省略しますが、搭載プロセッサの性能が向上したからこそ実現した機能強化であることは指摘しておきたいと思います。

    一方、フロントカメラはiPhone 5sと全く同じスペックの画素数1.2メガピクセルのモジュールが搭載されています。

    iPhone 6s・6s Plusではここは画素数5メガピクセルのカメラを搭載していますから、これはAppleがこの機種のユーザーとしていわゆる「自画撮り」を楽しむ層を想定していないか、重視していないことを示すと解せます。ちなみに、iPhone 6・6 Plusも画素数1.2メガピクセルのフロントカメラ搭載なので、iPhone全体の流れの中で見ればこの機種だけが取り立てて低解像度のフロントカメラを搭載しているわけではありません。

    なお、このフロントカメラのレンズ絞り値はF2.4で、iPhone 6などのそれがF2.2となっているのと比較すると1段暗いレンズを搭載しています。実はiPhone 5sまでのフロントカメラは1/6.4インチサイズとかなりセンサーサイズの小さなモジュールを搭載していて、それでいて画素数を1.2メガピクセルに抑えることで1画素あたりのサイズを大きくし、これによって高感度特性とするという設計を採用していました。一方、iPhone 6・6 Plusのフロントカメラの絞り値がF2.2になったのは、この設計コンセプトのままでセンサーサイズを1/4.8インチサイズに拡大、さらに1画素あたりの光量を増やして高感度特性を改善したことによるものです。

    このあたりの仕様で予想できると思いますが、iPhoneのカメラは総じて「画素数は低めに抑えるが感度特性に優れる」方向で設計・チューンされる傾向が強く、Appleが考えるスマートフォン内蔵カメラのあり方がかなり明瞭に示されています。

    筆者個人としては「(他社と比べれば)低解像度だけど高感度」という方向性はむやみにスペック向上に走らず、ユーザーが撮影に失敗する可能性を極力減らす実利優先の設計と言え、こうした方向性は悪くないと考えています。

    省略された機能と維持された機能

    ご覧の通りiPhone SEはiPhone 5sそのままと言っても過言では無いエクステリアデザインであるが、内部的にもiPhone 5sの搭載パーツをそのまま踏襲した部分が少なくない

    ご覧の通りiPhone SEはiPhone 5sそのままと言っても過言では無いエクステリアデザインであるが、内部的にもiPhone 5sの搭載パーツをそのまま踏襲した部分が少なくない

    ここまで見てきたように、iPhone 5s以前のユーザーの妄想を実現したかのようなこのiPhone SEにもあえて言えば弱点となる要素が2つあります。

    それは、iPhone 6s・6s Plusで新機能の目玉とされていた3D Touchと通信でのLTE-Advanced対応が省かれて、これらについてはiPhone 6・6 Plus相当となっていることです。

    3D Touchの非搭載は、iPhone SEの搭載液晶パネルがコントラスト比800:1で広視野角のためのデュアルドメインピクセルをサポートせず、マルチタッチ機能も従来通りの仕様の、つまりiPhone 5sと何ら変わらないタイプのものとなっていることから、恐らくはその関係で非搭載となったものと考えられます。

    言い替えると、AppleはiPhone SEのために新規に液晶パネルを開発するのを避けたということで、筐体がほとんど変更されなかったことや設計面で制約の多いフロントカメラをiPhone 5sのそれをそのまま踏襲再用したことと合わせ、このあたりで開発・生産コスト削減を図っていると推測できます。

    一方、LTE-Advanced対応の省略は、これも恐らくはiPhone 5sまでの筐体設計を踏襲した結果、MIMOに必要となる複数アンテナの搭載ができなかったことが主因と考えられます。iPhone 6s・6s PlusでのLTE-Advanced対応はMIMOサポートによる通信速度引き上げが全てと言っても過言では無いような状態でしたから、これはある意味当然の結果であると言えます。

    もっとも、iPhone 5sとの比較で見ると、同機種の4G LTE通信速度は搭載するRFトランシーバやコミュニケーションプロセッサの世代が古かったために75Mbpsが上限値となっていました。それが150Mbpsに引き上げられてさらに対応するLTEのバンド数も増加、またWi-FiもIEEE 802.11acがサポートされ433Mbpsでの通信が可能となりますから、MIMOサポートがなくとも充分すぎるほどに高速化や接続性の改善を実感できる性能向上が得られることになります。

    Wi-Fiを含めMIMOサポートは実効通信速度の上限引き上げに大きく貢献する一方で、送受信アンテナが増えてRFトランシーバなどの搭載数が増える分、通信系の消費電力増大につながる要因であるので善し悪しです。そのあたりも勘案すると、筐体を下手にいじらずアンテナ本数を増やさなかったこのiPhone SEの設計は1つの落としどころと言えるのではないでしょうか。

    無くならなかったイヤフォンジャック

    Appleによる正式発表前にこのiPhone SEについて流れていた噂の1つに「イヤホンジャックが廃止され、音声入出力はLightningコネクタ接続に変更される」というものがありました。

    Apple MacBook(2015)ご覧の通り入出力コネクタは本体左側面の後端付近に設けられたUSB Type-Cソケットしかない。このコネクタ1つでデータ入出力・Display Port互換の映像出力・ACアダプタからの電力供給の3つの機能が実現される

    Apple MacBook(2015)
    ご覧の通り入出力コネクタは本体左側面の後端付近に設けられたUSB Type-Cソケットしかない。このコネクタ1つでデータ入出力・Display Port互換の映像出力・ACアダプタからの電力供給の3つの機能が実現される

    MacBookの最新世代モデルで外部入出力端子を充電も含めUSB Type-Cソケット「だけ」にするという、実にチャレンジャーな決定を下してしまったAppleですから、その噂には無駄に説得力があって筆者は不安視していたのですが、幸い(?)なことに実際に発表されたiPhone SEでは本体下部のLightningポート脇にステレオミニジャックが健在でした。

    冷静に考えてみれば、ヘッドセット毎にマイク用のADコンバータとヘッドフォン用のDAコンバータ、それにLightningインターフェイスの通信用コントローラといった部品が必須で、それだけでも結構なコスト引き上げ要因となる(※注5)ことを考えれば、ローエンドモデルとして極力「有りもの」のコンポーネントやパーツを流用する必要があったこのiPhone SEがその初適用例となるというのは合理的ではなかったのです。

     ※注5:アナログ接続の場合は本体内蔵スピーカー・マイクと回路を共用できるので、コスト的にはかなり低廉にできます。

    AppleのUSB Type-Cコネクタ(およびUSB 3.1)へのコミット振りから考えると、今後USB 3.1の採用に伴うコストが充分低下すればiPhoneのLightningポートがUSB Type-Cソケットで置き換わっても不思議はない状況で、そうなるとヘッドセット/ヘッドフォン/イヤフォンをLightningポート接続に切り替えるのはある意味悪手となる可能性があります。

    そのため、このあたりのオーディオ入出力については、今後もAppleの動向を注視する必要があるでしょう。

    正常進化を果たしたiPhone 5s

    右から順にiPhone SE・6s・6s PlusiPhone SEの登場でiPhoneのラインナップは隙が無くなったと言える

    右から順にiPhone SE・6s・6s Plus
    iPhone SEの登場でiPhoneのラインナップは隙が無くなったと言える

    以上、iPhone SEについて見てきましたが、これはiPhone 5sの美点を引き継ぎつつその弱点であった部分を大幅強化した、正常進化版と言うべき機種です。

    少なくとも、公表されているスペックを見る限り、致命的な弱点となるような要素はほとんどなく、また価格もAppleストア扱いのSIMフリー版でさえ内蔵ストレージ容量が16GBのモデルが52,800円、64GBのモデルでも64,800円とかつて廉価版として(筐体を樹脂製とするなどのコストダウン策を講じて)発売されたiPhone 5cの発売時大手3キャリアの販売価格よりも安くなっています。

    これこそが、筐体その他でiPhone 5sの設計やパーツを流用したことの最大の効果であると言え、(値段的に)「枯れた」部品を可能な範囲で使い生産ラインもほぼそのままiPhone 5sのそれを流用して設備投資を極力小さくすることで、低廉な価格で十分なパフォーマンスの得られる機種ができたわけです。

    そろそろ32ビットCPU搭載機種のiOSサポートが(性能的に)厳しくなり始めていることや、そのあたりの機種からの乗り換えならば使い勝手を含めて何らネガティブな要因が存在しないことを考えると、これまで辛抱してiPhone 5などを使用してきたユーザーが雪崩を打ってこの機種への機種変更に踏み切りそうな印象を受けます。

    先にも触れましたが、この機種はAppleの製品ラインナップではローエンド機種の価格帯に位置づけられる機種です。しかし、Android搭載端末など他のOSを搭載するスマートフォンを含めたスマートフォン市場全体を見渡せば、これはむしろミドルレンジの機種と言うべき性質・価格帯の機種です。そのため、そうした既存のiPhone各モデルからの乗り換え組を別にすると、正直一体どのような層に受け入れられるのか、判然としない部分があります。

    もっとも、この機種の売れ行きの成否が今後のAppleのiPhone販売戦略に大きな影響を与えることになるのは必至で、どこでどのように売れるのかが大いに注目されます。

    ▼参考リンク
    Apple (日本) – Apple Press Info – Apple、iPhone SEを発表 — 4インチディスプレイの最もパワフルなスマートフォン
    iPhone SE – Apple(日本)

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