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iPadとDAWアプリ『Cubasis』で音楽制作を始めよう 第7回「エフェクト」

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by [2015年12月04日]

 近頃ではタブレット端末やスマートフォンで使用できる音楽アプリが充実してきましたが、その中でDAWやソフト音源などの充実度には目覚ましいものがあります。
 本連載はタブレット端末で動作する音楽アプリを使ってDTMを行うための様々なノウハウを紹介していこう、というコーナーです。今回は「エフェクト」についての解説を進めたいと思います。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

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Cubasisで音楽制作を始めよう

Cubasis上でエフェクトを使用する

 Cubasisのトラックに割り当てられるエフェクトは、これまでに説明してきたようにインサートエフェクトとセンドエフェクトという用途で使用することができます。まずはインサートとセンドの違いを改めて説明しましょう。
 インサートエフェクトは、特定のパートに任意に割り当てていくエフェクトで、主にEQ、コンプレッサー、リミッターなどのダイナミクス系エフェクター、オーバードライブ、ディストーションなどの歪み系エフェクター、コーラス、フェイザー、フランジャーなどのモジュレーション系エフェクターなどを使用したい場合に用います。例えば実際の曲作りを進めていくと、エレピのパートにだけフェイザーをかけたい、とか、メインボーカルのトラックだけディレイをかけたい、というように「○○のトラック(パート)にだけ○○をかけたい」という場合に利用するのがインサートエフェクトということになります。
 それに対してすべてのトラックやパートに同じ設定のリバーブやディレイなどの空間系エフェクトを使用したい場合もあります。また、同じ設定で各トラックでかかり具合を個別に調整したい、という場合にもセンドエフェクトを利用することによって、例えばリバーブのように質感の同じものを使用したい時などに効率よく設定が行えるワケです。このセンドエフェクトについては、他にもメリットがあるのですが、少し補足しておきましょう。

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MIXER画面を表示させるには、左上部にあるMIXERボタンをタップすると、下部に表示される。尚、MIXER画面の一番右側にはGrobalトラックがあり、全てのトラックのミュートソロなどを設定可能となっている

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MIXER画面の各トラックにある「e」ボタンをタップすると、そのトラックのインサートエフェクトの設定が行える

 ちなみに、Cubasis上でのエフェクト設定は、トラックのインスペクタで行うだけでなく、MIXER画面でもインサートエフェクトの設定を行うことができます。

センドエフェクトのメリット

 センドエフェクトを使用するメリットには、以下のような理由があります。

(1)個別にインサートで使用すると、設定を変更したい場合、インサートした分だけ変更が必要になり作業が煩雑になる

 例えば2~3トラック程度のトラック数であれば、それぞれのエフェクトの設定の調整は、さほど煩雑にならないと思いますが、24トラック位で同じことをしようとすると、1つのパラメータを変更する場合でも、そのトラック数分だけ手間が増えます。時間の限られた作業ではもちろんですが、アイディアを膨らませながらスピーディに作業を進めたい場合などにもスムーズにいかないので、曲作り自体にも支障を生じることが理由です。

(2)プラグインの処理が増えるのでCPUへの負荷も同時に大きくなり、動作が不安定になりやすい

 (1)にも関係することですが、PCベースのDAW同様、iOS環境でも使用するプラグインの数が増えればそれに比例してCPUへの負荷も増えてきます。そうすると演奏のモタリや音飛びを生じるなど、スムーズな演奏を行うことが難しい状況になります。

(3)各トラックの原音とエフェクトのボリュームバランスを個々に調整できるメリットがある

 これも重要なポイントですが、各トラックに直接エフェクトをインサートすると、原音とエフェクト音のバランスを調整することと、エフェクトがかかった状態での音量バランスを調整することはできますが、原音のボリュームを変えずにエフェクトだけを小さくすることは基本的にできません。
 そういった場合でもセンドエフェクトを使用すると、トラックのボリュームとは別個にエフェクトのかかり具合を調整することができますので、よりイメージに近いミキシングを行うことができます。

ドライ/ウェットバランスについて

 もう一つエフェクトを使用する際の基本知識として、原音(ドライ)とエフェクト音(ウェット)のバランスについて補足しましょう。
 リバーブを始めとして多くのエフェクトでは、原音とエフェクト音のバランスを調整するパラメータを持っている場合があり、設定できる場合の目安は、おおよそ以下のような状態となります。

(1)ドライ100%:ウェット0%

  1. エフェクト音を絞りきった状態で原音のみの状態
  2. エフェクト成分がないので、バイパスされたのと同じ状態となる
  3. この状態から徐々にウェット成分を大きくしていくと、それに比例してエフェクト音のボリュームが大きくなる

(2)ドライ50%:ウェット50%

  1. 原音とエフェクト音が同じバランスとなっている状態
  2. インサートエフェクトとしてエフェクターを使用する場合にはこの状態からバランスを整えると調整しやすい

(3)ドライ0%:ウェット100%

  1. 原音を絞りきった状態で、エフェクト音のみとなる
  2. この状態から徐々にドライ成分を大きくすると、それに比例して原音のボリュームが大きくなる
  3. センド&リターンでエフェクトをかける場合にはこの状態にするのがミキシングの定石である
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Cubasisに装備しているエフェクトにおいても、図のようにreverbにエフェクトバランスを調整するパラメータが用意されている。このエフェクトの場合は、上に行くほどエフェクト音が大きくなり、下に行くほど原音が大きくなる仕様となっている

マストアイテムとなるエフェクトについて

 さて、前回の最後に紹介した楽曲制作におけるマストアイテムとなるエフェクトについて解説しましょう。まずはCubasisに内蔵されているそれらのエフェクトで何ができるかを紹介したいと思います。

(1)EQ(イコライザー)
 EQは、特定の周波数帯域の音量のブーストやカットを行うためのエフェクトで、ステレオコンポについているトーンコントロールのように音質を調整するためのものです。それ故、EQは、個々の楽器パートの音質調整から、トータルエフェクトとして楽曲全体の音質補正まで様々な用途で使用します。Cubasisに内蔵されているStudioEQの場合は、eq1から4まで4バンドの調整が可能ですので、低域から高域に渡る広い帯域の調整を行うことができます。また、これらの4バンドはいずれも特定の帯域だけを調整できるように固定されていないので、eq1から4までのいずれか1つだけを使用することで、特定の周波数成分だけを増減するなど好みの音質調整も可能です。また、Preview機能も備えているので、調整した音質をその場でモニターすることができます。

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StudioEQの4バンドは、画面上部のグラフ上の部分にある1~4までの黄色の枠線で囲んだ数字が設定位置の目安となり、黄色の直線で結んだ下の設定部分がそれぞれの調整を行うセクションとなる


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StudioEQを設定した例。各バンドの設定では、イコライザーのタイプを選択することができ、この例のようにeq1にハイパスフィルタータイプ、eq4にローパスフィルタータイプを選ぶことで、不用な低域や高域をカットすることができる

(2)コンプレッサー
 コンプレッサーは、入力レベルの不安定なオーディオ入力信号の音量を一定に揃えるためのエフェクトですが、1990年代後半位からはアタック感の強調や、音圧感を得るために用いられるようになったエフェクトです。そのため、演奏音量のばらつきが目立つエレキギターのレベルを整えるといったオーソドックスな使い方から、重厚でエッジの効いたアタック感を持つサウンドに仕上げるためにバスドラムにかけたり、という今日的な使い方があります。
 Cubasisに内蔵されているコンプレッサーは、パラメータの過不足のない標準的なモデルになっていますので、この使い方を覚えれば、他のコンプを使用した際にも応用しやすいでしょう。
 コンプを使用する際にポイントとなるパラメータは、Attack(アタック)とRatio(レシオ)、それにThreshold(スレッショルド)です。Attackは、入力された音にコンプレッサーの効果がかかり始めるまでの時間を設定します。Attackを速くすると入力された音にすぐ効果がかかりますので、レベルを均一化したい場合などには速く設定し、遅くすると音が入力されてから一定時間経って効果がかかりますので、原音のアタックを活かしつつ、音量を一定にできるため、結果的にアタック感が増したようなサウンドを得ることができるワケです。Thresholdは、コンプレッサーをかけ始める音量レベルの設定を行うパラメータです。Ratioは、Thresholdで設定した値を超えたレベルをどの程度圧縮するかを設定するパラメータで、おおよそコンプレッサーのかかり具合はこれらのパラメータによって決まってくると考えてよいでしょう。

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Cubasis内蔵のコンプレッサーエフェクト。黄色の枠線で囲んだ部分が本文中で解説しているパラメータが配置されている箇所となる

(3)リバーブ
 リバーブは、「お風呂場エコー」のように呼ばれることもあるように、まさにお風呂場で歌を歌った時のような残響効果を得るためのエフェクトです。
 リバーブを使用していると、残響時間を変更したいと思う場合が多々ありますが、その際に調整するパラメータは「Time」で行います。このパラメータは、いわゆるリバーブタイムのことで、「**.**s」のように表示されますが、sが単位となり、秒で残響時間を表しています。
 リバーブタイムを設定する場合の目安として、1.0sと設定した場合、残響時間は1秒となりますが、テンポがBPM=120だとすると、2拍分の長さの余韻が残ると考えられます。テンポの速い曲だと2拍以上後までその響きが残ることになるため、2拍ごとにコードが変わるような進行だと、リバーブの残響が次の小節の原音成分と混ざり合って濁った響きになる場合も出てきます。もちろんリバーブのウェット成分のレベルなども関係してきますので、ケースバイケースではありますが、「演奏は合っているのに全体のサウンドの響きが濁っている」というような場合には、リバーブのかかり具合をチェックしてみると良いでしょう。

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Cubasisに内蔵されているリバーブエフェクト。黄色の枠線で囲んだ部分が本文中で解説している残響時間を調整するパラメータが配置されている箇所だ

アプリ基本情報

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Cubasis

配信元:Steinberg Media Technologies GmbH

iOS価格:6000円

  • バージョン iOS:1.9.5

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年12月04日)の情報です。

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