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80年代に大ヒットしたFMシンセをiOSアプリで『DXi FM synthesizer』

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by [2015年11月20日]

 今回は、シンセサイザーの音色作りのしくみについて着目する観点で、FM音源の入門的なシンセアプリ『DXi FM synthesizer』をピックアップしたいと思います。
 1983年にリリースされ、一世を風靡したデジタルシンセサイザー「DX7」に搭載されていたFM音源は、登場してから30年以上経過した現在もハード、ソフト問わず様々なシンセの音源方式として採用されています。FM音源の基本と共に解説していきましょう。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

80年代に大ヒットしたFMシンセを再現

 DXi FM synthesizer(以下、DXi)は、シンプルな操作性でFM音源による音色作りを楽しむことが可能なシンセ音源アプリです。
 前述の80年代に大ヒットしたFMシンセをコンパクトに集約し、手軽かつ簡単に使えるのがウリとなっています。また、本アプリの大きな特徴は、当時のFM音源シンセの音色パラメータをそのまま移植するのではなく、音色作りのポイントとなるパラメータを厳選して再構築されている点です。FM音源方式による音色作りは、いわゆるアナログシンセの作法と異なる点が多く、基本的なパラメータの役割を理解していないとやや難解さを伴いますが、本アプリでは、それらを意識することなく使えるのも魅力となっています。
 そのため、FM音源固有の特徴的な音色はもちろん、少し凝った音色の変化を伴う効果音など、自由なサウンドデザインを行うツールとしても役立つでしょう。

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初代DX7やDX9をイメージさせるデザインが印象的なDXiのメインGUI


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発音中の音色の状態がSPECTRUM表示されるなど、シンプルな操作性ながらも本格的な音色作りが行える機能が充実している

FM音源でありながらアナログシンセ風の音色もイケる

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FM音源ではオペレータをどのように組み合せて音色作りを行っていくかを決定する「アルゴリズム」を最初に設定する必要がある。アルゴリズムの選択は左上部コーナーに配置されているこの部分で行う。この中で数字が書かれている4個の四角いボックスがオペレータと呼ばれるものだ。ちなみにこの図を例にすると1番オペレータのように最下段に位置するオペレータを「キャリア」、2段目以上に配置されているオペレータを「モジュレータ」という

 続いてDXiの主な機能について紹介しましょう。
 DXiは、8アルゴリズム、4オペレータ仕様のFM音源が採用され、各オペレータでは、エンベロープ、周波数(Ratio or Fixed)、ウェーブフォーム(12種類)が設定可能です。当時のFM音源シンセでいうとオペレータ波形がサイン波のみだったDX9やDX21系の音源システムよりは、その後発であるV2、V50やTX81Z系の音源システムに近いものと考えられます。
 しかしながらレゾナンス付きのローパスフィルターとディレイを装備しているため、FM音源ながらもアナログシンセ風のサウンドテイストを持った音色を作ることが可能です。

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鍵盤部分の上にある2番のEFFECTボタンをタップするとローパスフィルターとディレイのパラメータが表示される。音色作りを行う際に、少し派手目に元となる音色を作成しておき、最終的な質感をフィルターで調整するのが使いこなしのポイントとなる

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4番のRECボタンをタップすると演奏をオーディオレコーディングすることができるレコーダーが表示される。録音されたオーディオは、WAVフォーマットのデータとして保存され、iTunesの共有機能経由でコンピュータへ転送可能となっている

 この他、厚いサウンドを作るのに欠かせないユニゾンモードに加えて、本アプリの独自機能である16ステップのループシーケンサー、オーディオレコーディング機能を装備しているなど、シンプルなGUIながらも必要十分な機能を備えている点も評価したいポイントです。

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鍵盤部分の上にある3番のSEQボタンをタップすると16ステップのパターンシーケンサーが表示される

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パターンシーケンサーは3フレーズメモリ可能。更にパターンシーケンサー上部で黄色の枠線で囲んだ部分をタップするとパフォーマンスパッドが表示され、パターンの再生中に別のパターンを重ねた演奏や、フィルターのカットオフとレゾナンス、ディレイのディレイタイムとデプスをそれぞれリアルタイムで変化させることが可能なX-Yコントローラを使用してのパフォーマンスを行うことが可能

 また、他のアプリとの連携に欠かせないAudiobusに対応している他、Core MIDI対応のMIDI機器も使用できるため、iOSベースでの音楽制作にも十分活用することができます。
 なお、DXiでは上記の機能の他、以下のような機能を備えています(App Storeのアプリページ記載より引用)。

オペレータ4番のみにフィードバックを設定可能
スペクトラム、オシロスコープ表示
URL スキーマ文字列にて作成音色データのインポート、およびエクスポート可能
オーディオレコーディング機能で録音されたオーディオファイル(.wav)は、iTunesの共有機能経由でコンピュータへ転送可能
録音された波形は、クリップボード経由で他アプリで使用可能。 等

DXiで音色を実際に作ってみた

 実際にDXiで音色作りを行ってみたところ、結論から言うと「かなり本格的な音色作りができる」という印象でした。
 例えばDX7のような32アルゴリズム、6オペレータ仕様のFM音源シンセに慣れている人だとやや物足りなさを感じるかもしれませんが、足りない2オペレータ分は、各オペレータでウェーブフォームが12種類から自由に選べることで十分カバーされると思います。これらのウェーブフォームには、FM音源では2オペレータを組合せないと作り出せないアナログシンセ波形のノコギリ波や矩形波も含まれており、1オペレータでも十分な音色を作ることができるからです。
 音色作りにおいて重要なパラメータの一つであるエンベロープジェネレータは、アナログシンセ的に言うとアタックタイム、ディケイタイム、リリースタイムを設定する3点方式によるシンプルなものなのですが、DXi独自のパラメータ「EG LOOP」を備えているため、4オペレータそれぞれの設定を異なる設定にすると、3点方式ながらも複雑な時間的な変化を作り出すことができます。

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各オペレータのエディット時にWAVEボタンをタップすると内蔵オペレータ波形のリストが表示され、サイン波以外の波形を選択可能。サイン波以外の波形が選べるという点がV2やTX81Zに近い部分の大きな特徴となる

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図中の黄色の枠線で囲んだ部分がそれぞれエンベロープの設定ポイント(1=アタックタイム、2=ディケイタイム、3=リリースタイムに相当)となり、ドラッグして位置を設定することができる。ちなみにアナログシンセでいうところのサスティンレベルは、2と3の間の持続している部分が相当すると考えられる。なお、各エンベロープとも縦軸が出力レベルの量で、上に行くほど最大値に近づくように設定されている。オペレータの役割がキャリアの場合は、音量レベルの変化に相当するため、大きくするほど(=縦軸の上に行くほど)各ポイントにおける音量も大きくなり、モジュレータの場合は、主に音色変化に相当するため、大きくなるほど派手な音色となる

 このEG LOOPは各オペレータで設定でき、設定したエンベロープにおいて打鍵開始(ノートオン)のタイミングからディケイタイム相当の2点目の設定位置までを、鍵盤を押している間のエンベロープによる変化を繰り返して演奏し、鍵盤を離したタイミングでリリースタイム相当となる3点目の位置からの設定を演奏するというものです。これによって何度もアタックがリピート再生される音色や、複数のアタックを持ったような音色などを作ることができます(7b、7c参照)。ちなみにDXシリーズの後に発売されたSYシリーズのSY77などには、同様の機能が装備されていたことも付け加えておきましょう。

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EG LOOPボタンは、アルゴリズムの下に配置されており、タップするとオン・オフが切り替えられる

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EG LOOPボタンをオンにすると1の範囲が打鍵中は繰り返して演奏され、離鍵後と同時に2の位置から演奏される設定となる

 さらに効率よい音色作成機能も用意されており、あるオペレータのエンベロープを別のオペレータにコピーできる機能は非常に便利です。手順はコピー元となるエンベロープを長押しタップするとメニューが表示されるので、そこでCopyを選択します。続いてコピーしたいオペレータの上で長押しタップして、同様にPasteを選ぶと同じエンベロープの設定がそのオペレータへ一瞬でコピーされます。

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1番オペレータで設定したエンベロープを2番オペレータにコピーする手順。1番オペレータのエンベロープうぃタップするとメニューが表示されるので、Copyを選ぶ

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2番オペレータ上でタップするとメニューが表示されるので、Pasteを選択する

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1番と同じエンベロープが2番に設定される。なお、OP Offを選択するとそのオペレータの出力がミュートされる。音色エディット時のサウンド比較などの際に便利な機能だ

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ユニゾンモードの設定は、Settings&Informationsメニューで行う。メニューは、右上コーナーにある「i」ボタンをタップすると表示されるので、オン・オフを切り替えて設定する

 もう一つのポイントはエフェクトセクションにあるローパスフィルターの設定です。DXiのサウンドは正真正銘のFMサウンドなので、FM音源固有の色が強く出ているのですが、場合によっては、アナログシンセライクな温かみのあるファットな音色にしたいこともあるでしょう。その際にこのフィルターを使って少し倍音を削ることでアナログシンセ風のテイストを出すことができるワケです。もちろんレゾナンスもありますので、アクの強いシンセサウンドにすることもできます。また、アナログシンセ風という点では、ユニゾンモードもアナログシンセ的な厚みやサウンドを出すのに効果的です。同時発音数は減少するのですが、厚みを持ったサウンドがほしい時などにはバッチリ期待に応えてくれる機能だと思います。

初期DXシリーズの音色キャラクター

 一通り音色作りを試してみて感じたのは、DXiの音色キャラクターは初期のDXシリーズ(DX7、DX9、DX100など)のような雰囲気があるサウンドに思われました。
 実際にそれらのモデルの音色をイメージしてエレピやブラスなどを作成してみたのですが、少ないパラメータながら、かなり近い雰囲気までDXiで出せたことがその理由です。そういったクオリティを持ったアプリですので、FM音源未体験の人もFM音源について十分に知ることができるでしょう。

アプリ基本情報

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DXi FM synthesizer

配信元:Takashi Mizuhiki

iOS価格:240円

  • バージョン iOS:3.8.0

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年11月20日)の情報です。

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