Apple iPhone 6s(左)・iPhone 6s Plus(右)外装デザインは新色であるローズゴールド(左)が追加された以外、前世代のiPhone 6・6 Plusとほとんど変わりなく、同色の場合は型番と機種名の表記を見ないと見かけでは区別がつかない。

順当なる正常進化モデル~Apple、iPhone 6s・6s Plusを発表~その1「高強度となった筐体」

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by [2015年9月24日]

Apple iPhone 6s(左)・iPhone 6s Plus(右)外装デザインは新色であるローズゴールド(左)が追加された以外、前世代のiPhone 6・6 Plusとほとんど変わりなく、同色の場合は型番と機種名の表記を見ないと見かけでは区別がつかない。

Apple iPhone 6s(左)・iPhone 6s Plus(右)
外装デザインは新色であるローズゴールド(左)が追加された以外、前世代のiPhone 6・6 Plusとほとんど変わりなく、同色の場合は型番と機種名の表記を見ないと見かけでは区別がつかない。

秋にiPhoneの新モデルが出るのは当たり前になった感がありますが、今年もこのほど新型iPhoneが2機種発表されました。

機種名はiPhone 6sとiPhone 6s Plus。

現行のiPhone 6とiPhone 6 Plusの改良モデルであることを示す「s」をサフィックスとして与えられたことが示すように、これらはそれぞれiPhone 6sが画面解像度1,334×750ピクセルの4.7型液晶搭載モデル、iPhone 6s Plusが画面解像度1,920×1,080ピクセルの5.5型液晶搭載モデルで、このあたりの仕様は現行の2機種から変わっていません。

また、一部で期待する声のあったiPhone 5sの後継となる4型ディスプレイ搭載モデルは登場せずこれまで通りiPhone 5sが続投し、さらにiPhone 6・6 Plusもストレージ容量の種類やカラーバリエーションを減らされつつも継続販売されることが明らかになっています。

Appleにとって最初の64ビットプロセッサ搭載iPhoneであるiPhone 5sのデビューが2年前の話で、同サイズの液晶パネルを搭載しiPhone 6と同じA8プロセッサを搭載するiPod Touchが既に存在する現状を考えると、根強いニーズのある4型液晶搭載iPhoneもそろそろ更新しても良さそうなものなのですが、前回に続き今回もこのクラスはiPhone 5sが据え置かれたままとなっています。

これはiOSデバイスとしてのiPhoneの基本的な部分の機能がiPhone 5sの時点で(バッテリーの持ちや処理能力の問題を別にすれば)おおむね完成に近い状態になっていたことを示唆するものではあるのですが、これは言い替えれば今後発売されるiPhoneは何かよほど大きな技術革新が無い限り、当面はiPhone 5sで確立された基本構成を踏襲しつつ量的・質的な拡充が図られる方針である(≒当分はiOSでiPhone 5sがサポートされ続ける)ことを示すものであるとも言えます。

そこで今回は3回に分けて、これらiPhone 6sとiPhone 6s PlusについてiPhone 6とiPhone 6 Plusから何がどう変わったのか、あるいは何が変わらなかったのかを基本に考えてみたいと思います。

▼順当なる正常進化モデル ~Apple、iPhone 6s・6s Plusを発表~
その1「高強度となった筐体」
その2「プロセッサの性能向上」
その3「カメラと3D Touch」

主な仕様

iPhone 6sとiPhone 6s Plusの公表されている主な仕様は以下のとおりです。

●共通部分:

  • OS:iOS 9
  • チップセット:A9+M9(仕様非公開)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:容量非公開
    • フラッシュメモリ:16/64/128 ギガバイト
    • 拡張スロット:なし
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:12 メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5 メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac MIMO対応
    • 対応周波数:2.4GHz、5GHz
  • LTE:
    • 4G LTE-Advanced
  • 対応バンド:
    • モデルA1633(iPhone 6s)・A1634(iPhone 6s Plus):
    • (LTE)1・2・3・4・5・7・8・12・13・17・18・19・20・25・26・27・28・29・30
    • (TD-LTE)38・39・40・41
    • モデルA1688(iPhone 6s)・A1687(iPhone 6s Plus):
    • (LTE)1・2・3・4・5・7・8・12・13・17・18・19・20・25・26・27・28・29
    • (TD-LTE)38・39・40・41
    • Bluetooth:Ver.4.2
    • 電池容量:容量非公開

    ●iPhone 6s:

  • サイズ:67.1 × 138.3 × 7.1 mm
  • 重量:143g
  • メインスクリーン
    • 種類:3D Touch搭載Retina HDディスプレイ
    • 解像度:750×1,334 ピクセル
    • 画面サイズ:4.7 インチ(対角線長)

    ●iPhone 6 Plus:

  • サイズ:77.9 × 158.2 × 7.2 mm
  • 重量:192g
  • メインスクリーン
    • 種類:3D Touch搭載Retina HDディスプレイ
    • 解像度:1,080×1,920 ピクセル
    • 画面サイズ:5.5 インチ(対角線長)
  • モデルがA1633・A1634とA1688・A1687の2系列4種存在しますが、各系列の相違点はLTEのバンド30(2.3GHz帯)サポートの有無で、ソフトバンクモバイル・au・NTTドコモの大手3キャリアはいずれもバンド30非サポートのA1688・A1687を販売する予定となっています。

    このバンド30の周波数帯は日本では携帯電話に割り当てられておらず使用されていない(※注1)ため、少なくとも国内で利用する限りは、このバンドをサポートしないことによる実害はほとんどないと考えてよさそうです。

     ※注1:アメリカではAT&Tが今後この帯域をLTEサービスで利用する予定となっています。このため、今後渡米する際にこれらの機種を携行し、かつ国際ローミングサービスなどでAT&Tの回線を使用する様な場合に限っては、この帯域をサポートしないことによる不利益が生じる(ただし最悪でも十分高速な通信速度が確保できない程度の話ですが)可能性があります。

    iPhone 6・6 Plusを素直に拡充・改良・強化した基本的なハードウェア

    上掲の主な仕様からも明らかなように、今回のiPhone 6s・6s PlusではiPhone 6・6 Plusと比較して筐体サイズが縦横厚さが0.1mm~0.2mm程度拡大し、重量がiPhone 6sがiPhone 6と比較して14g、iPhone 6s PlusはiPhone 6 Plusより20g、それぞれ重くなっています。

    材料が変更された筐体

    筐体サイズが縦横厚さの全てについて、ごくわずかにですがほぼ同率で大きくなっていることから、筐体構造やその材質、あるいはその双方について何らかの変更があったことが見て取れます。

     このため、既存のiPhone 6・6 Plus用耐ショックケースなどでも形状・構造によって利用できるものと利用できないものに二分されることになります。タイトに筐体にはめ込むようなタイプのケースは利用できないと考えた方が無難です。

    公式ページではこの微妙に大きくなった新筐体について「航空宇宙産業で使われているものと同じグレードの7000シリーズアルミニウムが採用されています」と記しており、先行するApple Watch Sportと同様、7000番台のアルミニウム・亜鉛・マグネシウム系合金かアルミニウム・亜鉛・マグネシウム・銅系合金のいずれかの系列の合金が主材料として採用されていることがわかります。

    これは、恐らくiPhone 6・6 Plusがその発売当初、筐体に手で力を加えると簡単に折れ曲がってしまうことが問題視されたことへの対応あるいは対策と考えられます。

    つまり、大きな製造コストの増大なしに従来のものとほぼ同じ形状・同様の加工法でより高い強度・剛性の確保が期待できることから、高強度の7000番台アルミニウム合金が採用されたものと推測されます。

    JR西日本 500系新幹線電車新幹線では国鉄時代の東北・上越新幹線用200系(1982年)以来、車体構造材としてA7003やA7N01など溶接性と強度に優れた7000番台アルミニウム合金の利用が一般化した(A5083やA6N01、それにA6951など5000・6000番台のアルミニウム合金も用途に応じて利用されている)。中でもこの500系(1996年)は外板についてA6951をハニカム(蜂の巣状)構造の断面を持った押し出し材として成形し銀ロウで溶接するなど押出加工の容易な6000番台アルミニウム合金を多用する一方で、強度が必要な構体側柱と台枠横梁に限っては高強度のA7N01が特に使用されている。同時代にはJR東日本で航空機と同じ銅を配合した7000番台アルミニウム合金(ジュラルミン)をリベット組み立てした車体構造の新幹線試作車(953形:STAR21)も造られたが、軽量化が特に重要で選択肢の無い航空機と違ってこれによるメリットが少ない新幹線では量産採用されることはなかった。

    JR西日本 500系新幹線電車
    新幹線では国鉄時代の東北・上越新幹線用200系(1982年)以来、車体構造材としてA7003やA7N01など溶接性と強度に優れた7000番台アルミニウム合金の利用が一般化した(A5083やA6N01、それにA6951など5000・6000番台のアルミニウム合金も用途に応じて利用されている)。
    中でもこの500系(1996年)は外板についてA6951をハニカム(蜂の巣状)構造の断面を持った押し出し材として成形し銀ロウで溶接するなど押出加工の容易な6000番台アルミニウム合金を多用する一方で、強度が必要な構体側柱と台枠横梁に限っては高強度のA7N01が特に使用されている。
    同時代にはJR東日本で航空機と同じ銅を配合した7000番台アルミニウム合金(ジュラルミン)をリベット組み立てした車体構造の新幹線試作車(953形:STAR21)も造られたが、軽量化が特に重要で選択肢の無い航空機と違ってこれによるメリットが少ない新幹線では量産採用されることはなかった。

    今回のAppleによる公式サイトでは「航空宇宙産業」とわざわざ特筆していることと、「外側から鍛え上げました」としていることから、具体的にどのような配合の合金を使用しどうやって加工を行っているのかは明らかではないものの、iPhone 6s・6s Plusでは7000番台アルミニウム合金でも特に、新幹線をはじめとする鉄道車両で利用されているA7N01のような溶接性と強度に優れた構造材用合金ではなく、かつてあの零式艦上戦闘機(A6M)に採用されてその高性能発揮を支えた超々ジュラルミン(Extra Super Duralumin:ESD。A7075)などと同系の銅を配合した系統のアルミニウム合金を採用し、それを成形後に焼き入れ処理などの熱加工を施して強度を引き上げている可能性があると考えられます。

    銅を配合した7000番台アルミニウム合金は熱加工をした場合にアルミ合金中でも最強級の高い強度が得られる他に、ただでさえ溶接が難しいアルミニウム合金の中でも特に溶接が難しく(※注2)、焼き入れ処理後に時効硬化という現象により時間経過と共に表面硬度が高まり、その一方で耐食性が著しく低く切削性が高いという、構造材としてみるとある意味非常に「尖った」、用途を極端に選ぶ特性が備わっています。

     ※注2:このため現在でもこの系列の材料を使用した部材を接合して組み立てる際には、航空宇宙産業に限らず、溶接ではなく専用のリベットやボルトとナットなどによる接合が行われるのが一般的です。

    もっとも、iPhone 6系の筐体はアルミニウム合金の板材を削り出してバスタブ状に一体成型されており(※注3)、また最終的に耐食性向上のための表面処理も行われるため、仮に銅配合の7000番台アルミニウム合金が使用されていたとしても、このあたりの弱点が表面化することは恐らくほとんどないでしょう。

     ※注3:加工性のあまり良くない銅配合の7000番台アルミニウム合金ですが切削性だけは良く、ESDを主翼桁材など重要部に採用していた零式艦上戦闘機の場合、この切削性の良さを生かして軽量化のためにいわゆる「バカ穴」を強度に影響しない範囲で部材のあちこちに開口する加工が行われていました。

    ともあれ、iPhone 6s・6s Plusが筐体材料の変更によってiPhone 6・6 Plusよりも「折れ曲がりにくい」、高強度の筐体となったことは歓迎すべき改良です。

    カバーガラスも強化された

    iPhone 6s・6s Plusでは筐体が強化されただけでなく、ディスプレイパネルのカバーガラスも強化されました。

    公式ページによれば「iPhone 6sの新しいガラスは、特殊な二重イオン交換プロセスを使って作られます。これにより分子レベルで強化された、スマートフォン業界の中で最も丈夫なガラスが生まれました」とのことで、これも恐らくApple Watch Sportに採用されたアルミノケイ酸ガラスをイオン交換により強化した「Ion-X」と同じか同系の材料によるものと推測されます。

    Corning Gorilla Glass製品紹介ページCorning社が製造販売している強化ガラス、「Gorilla Glass」シリーズの公式紹介ページ。製品名にちなんでページ上がゴリラの画像で埋まっているのはご愛敬。

    Corning Gorilla Glass製品紹介ページ
    Corning社が製造販売している強化ガラス、「Gorilla Glass」シリーズの公式紹介ページ。製品名にちなんでページ上がゴリラの画像で埋まっているのはご愛敬。

    スマートフォン用カバーガラスでは、初期のiPhoneに採用され、その後各社のAndroid搭載スマートフォンに爆発的に普及したコーニング社の「Gorilla Glass」(1962年)を筆頭に、旭化成の「Dragontrail」シリーズなど、アルミノケイ酸ガラスを基本とすることで靱性を大幅に向上させ表面を化学処理することで硬度を増した強化ガラスが採用されることがほとんどなのですが、実のところその「Gorilla Glass」も件の「Ion-X」と同様にアルミノケイ酸ガラス素材をカリウム塩でイオン交換して製造されており、各社がしのぎを削ってこの種の強化ガラスについて組成・配合の改良を続けてはいるものの、基本的な強化のメカニズム・原理は鼻祖である「Gorilla Glass」からほとんど変わっていません。

    この種の化合物ではごくわずかな組成・配合・加工法の変化で特性ががらりと変わってしまうことが多々あって、発表時に「宇宙一信頼性の高いカバーガラス」だと豪語したコーニング社最新の「Gorilla Glass 4」(2014年)や、それよりはやや控えめに「世界最高レベルの強度」と主張した旭化成で最新の「Dragontrail X」(2014年」)よりも丈夫だと暗に主張するAppleの宣伝文句を果たしてどこまで信じて良いものか正直悩むところではある(※注4)のですが、とりあえず「iPhone 6・6 Plusのカバーガラスよりは丈夫になった」という理解をしておけば大丈夫でしょう。

     ※注4:他の例から言って、Appleが自社でカバーガラスを生産しているわけではないと考えられるため、案外これらのいずれかをOEMで採用している可能性もあります。

    もっとも、丈夫なこの種の強化ガラスでも埃や塵に含まれる微細な石英片などによる擦り傷には総じて弱く、全ての環境・条件で万全の強さを発揮するというわけではないことには注意する必要があります。

    不意に擦り傷がつくのを避ける意味では、従来通りいわゆる液晶保護フィルムをディスプレイ面に貼付しておくべきでしょう。

    ちなみに、こうしたアルミノケイ酸ガラス系以外にも、Apple Watchに採用されたサファイアガラスなど強化ガラスには様々な種類があって、それらの中にはそうした擦り傷に強いものもあるのですが、製造コストや製造できるガラスのサイズなどの制約からスマートフォンへの採用に適さないものが多く、結果として現在のスマートフォンをはじめとする小型モバイル機器では「Gorilla Glass」を筆頭とするアルミノケイ酸ガラス系化学処理強化ガラスの天下となっています。

    その2へ続きます。

    ▼参考リンク
    iPhone – Apple(日本)

    先達との出会い 金研物語 第二部(PDF)
    CORNING® GORILLA® GLASS |
    AGC Dragontrail™

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