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EDMでおなじみのウォブルベースもお手のもの!Sugar Bytes『Cyclop iPad Edition』

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by [2015年6月04日]

 マニアックなシンセサイザー音源やエフェクターの開発で知られているドイツのSugar Bytes社から先日リリースされたシンセベース音源「Cyclop iPad Edition(以下Cyclop)」を紹介しましょう。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

パンチの効いたシンセベースサウンド

 Sugar BytesのPC版の製品は、日本国内では株式会社銀座十字屋さんのディリゲント事業部が輸入代理店となっているので、楽器店などで見かけたことがあるでしょう。今回紹介するCyclopは、ウォブルベースを始めとするシンセベースのサウンドメイキングに特化したソフトシンセで、エッジの効いたパンチのあるベースサウンドを作るのに適しています。今回のiPad EditionはPC版のほとんど全ての機能を搭載していますが、PC版と比較してみると以下の点が異なるようです。

  1. キーボード部分がiPad EditionではGUIの最下段に配置
  2. エディットを行うパラメータを表示するスクリーン部分のレイアウトが一部異なる
  3. Main Knob Recorders Pageのステップ分解能がiPad Editionでは16ステップ
  4. HotKey SystemがiPad Editionでは非装備
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Cyclopのメイン画面。基本的に全ての操作はこの画面のみで行える

 アプリに収録されているプリセット音色のリストを見ると、Mouse on MarsやSiriusMoといった同社を支持しているエレクトロニックミュージックアーティストによるサウンドも収録されており、まさにEDM系のサウンドメイキングのために誕生したアプリと言っても良いでしょう。

充実した他アプリとの連携機能や拡張性

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iTunesを経由してPCとファイル共有を行っている状態。iTunesでは図のようなファイル管理が行われている。図中右側の書類リストに見えるContentフォルダはオーディオサンプルデータ共有用のディレクトリとなっている

 こうなると外部機器や他のアプリとの連携が気になる所ですが、CyclopはVirtual MIDI、Network、ExternalといったMIDI機能だけでなく、オーディオ機能においてもInter-App Audio、Audiobusをサポートしており、制作環境に柔軟に対応することが可能です。
 ちなみにPC版を使用しているユーザーであれば、iPad版で作成した音色データやオーディオサンプルデータをiTunes経由でファイル共有することが可能です。PC版で、iPadで作成した音色を読み込んで再現することもできますので、サブシステムとしてiPad版を使うのもアリでしょう。

とにかくパラメータが豊富過ぎる!

 それではCyclopの各部の機能を紹介しましょう。
 まず、画面上半分は中央のスクリーン部分を挟んで両脇に各2個の合計4コントロールノブが配置され、それぞれウォブルノブ、アマウントノブ、FXノブ、サウンドノブとなっています。

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Cyclopの上半分の全体像。黄色で囲んだ部分がメインのコントロールノブで、左上がウォブルノブ、左下がアマウントノブ、右上がFXノブ、右下がサウンドノブとなっている

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ウォブルノブ:Cyclopの核とも言えるコントロールセクション

 ウォブルノブは、12種類の波形と周期が異なるLFOを設定し、シンプルなワウ効果から過激なウォブルサウンドを作り出します。ダイアルを右に回す程LFO周期が速くなる。12個のLFOは16種類の波形から選択可能で、右上のダイスボタンをタップするとランダムにLFO波形がそれぞれにアサインされる。また、一番下の波形ボタンをドラッグすると全てのLFO波形を同一波形にすることも可能です。

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アマウントノブ:機能については本文参照

 アマウントノブはページAとページBの異なるウォブル設定をモーフィングしながら切り替えるコントロールセクションで、更に複雑な音色変化を伴ったウォブルサウンドを作成可能です。

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FXノブ:FXページの設定が円形に配置され、中央スクリーンに表示されている各パターンのエフェクト設定をダイアルで切り替えて変更可能

 FXノブはフェイザー、コーラス、ディレイ、リバーブそれぞれを組合せたエフェクト設定が8種類作成でき、これもステップシーケンサーで連続変化させながら複雑なエフェクトサウンドを作り出します。

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サウンドノブ:機能については本文参照

 サウンドノブはモジュレーションアサインメントのページで行ったパラメータ設定を連続変化させることができます。

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図中で黄色の枠線で囲まれたボタンの左が録音ボタン、右が再生ボタンとなる。図はアマウントノブの場合だが、その他のノブでも同様となる

 各コントロールノブの下部左コーナーには録音ボタン、下部右コーナーには再生ボタンが用意されており、それぞれのノブの動きをレコーダーエンベロープページのステップシーケンサーへ録音し、再生することが可能です。

 本アプリでの音色設定としては、モジュレーションアサインメントページでシンセ、フィルターのパラメータ変調量を設定し、レコーダーエンベロープページのステップシーケンサーで、それらが時間経過に沿ってどのように変化するかを設定する、という流れがわかりやすいでしょう。
 中央のスクリーン部分では、各ノブの動きのエディットを行うための各種パラメータが表示され、それらの時間的な変化を設定、調整することができます。

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中央スクリーン部分。スクリーンを挟んで両脇に3個ずつ並んだボタンでエディットページを切り替え、それらのページの設定状態がスクリーン部分に表示される。各ボタンは左上からウォブルセッティングページ、スタンダードモジュレータページ、モジュレーションアサインメントページ、右上からFXページ、メインノブレコーダーページ、MIDIセッティングページとなる

 画面下部に用意されているキーボードスイッチを押さえると、現在選択されている音色はノブの動きの変化を伴った演奏が行えます。
スクリーン上部中央には選択されているプリセット音色名が表示されています。

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プリセット名が表示されている部分

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ブラウザ状のリスト

 音色名をタップするとプリセットの音色選択を行うブラウザが開きますので、一番左のTRACEセクションでタグ付けされたキーワードを絞り込むとRESULTSセクションに音色がリストアップされます。

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自分でエディットした音色等をまとめてリスト化しておきたい場合は、このようにパッチリストとして保存しておくとよい

 良く使う音色は一番右側のMIDI PRG LISTセクションに音色名をドラッグするとオリジナルのパッチリストが作成できます。なお、自分でエディットした音色もこのブラウザ上で保存を行います。

 下半分はシンセ音源部となっており、左から右に2系統のオシレータセクション、ルーティングセクション、2系統のフィルターセクションとなっています。

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Cyclopの下半分の全体像。左側がオシレータセクション、中央がルーティングセクション、右側がフィルターセクションとなる

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オシレータセクションでシンセシスのタイプを選択している状態

 このオシレータセクションは音源方式が非常に充実しており、Saw Regiment、Analog Sync、FM、Transformer、Spectromat、Phase Stressorという6種類の音源方式が選択可能で、マルチシンセシスといっても過言ではない仕様になっています。それぞれのオシレータタイプの特徴は以下の通りです。

  1. Saw Regiment:トランス系の曲で多用されるSuper Sawサウンドを作り出す
  2. Analog Sync:アナログシンセのシンク系サウンドを作り出す
  3. FM:3オペレータ仕様のFM音源
  4. Transformer:サンプル波形を使用したウェーブテーブル音源で、iTunes経由でサンプル波形をインポート可能
  5. Spectromat:内蔵32オシレータを使用した倍音加算シンセシス音源
  6. Phase Stressor:サイン波を使用したフェイズディストーションシンセシス音源
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2系統のフィルターセクション

 これら2系統のオシレータは中央のルーティングセクションで設定した接続に沿って10種類のフィルタータイプを持った2系統のフィルターで加工されます。

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ルーティングセクション

 オシレータからフィルターへのルーティングは、以下の4種類があり、同じオシレータからの出力でもルーティングを変えることによって様々な音色バリエーションが得られます。

  1. パラレル:シンセ1(S1)とシンセ2(S2)のミックスされた信号が、フィルター1(F1)、フィルター2(F2)へ同時に出力され、それらの信号が最終段でまとまって出力される
  2. シリアル1:S1とS2のミックスされた信号がF1に入力され、ディストーションユニットを通過してF2へと流れる
  3. シリアル2:S1とS2のミックスされた信号がF2に入力され、ディストーションユニットを通過してF1へと流れる
  4. スプリット:S1→F1、S2→F2と独立して信号が流れ、最終段でまとまって出力される
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フィルターセクション。黄色で囲んだ部分が、VOWELモードを選択した状態を表している

 Cyclopの各フィルターは「VOWEL」スイッチをオンにすることで母音の発音を連続的に変化させるモーフィングフィルターとして機能するマニアックな仕様になっています。

 このようにCyclopはモノフォニックのベースシンセサイザーながら、ベースという楽器のカテゴリーに留まらない超本格的なサウンドメイクを行うことができます。

DAW系アプリと連携させてみた

 続いて実際の音楽制作でどのように活用できるかをチェックしました。
 前述の通りVirtual MIDIなどのMIDI機能、Inter-App Audio、Audiobusなどのオーディオ機能に対応していますので、各種DAW系アプリと組合せたトラックメイクがオススメです。

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Audiobus上でCyclopとGarage Bandを接続した状態

 まず、Audiobus経由で、Garage Band上で使用した場合です。Audiobus上のINPUTにCyclopを起動し、OUTPUTにDAWとしてGarage Bandを割り当てます。

 両者の画面上には右横にAudiobus接続を表すメニューバーが配置され録音、再生などシームレスに行うことができます。

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Cyclopを起動すると右側にAudiobusのメニューバーが表示されているのが確認できる。ここでRecボタンをタップすると演奏の録音が開始される

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その結果、Garage BandのトラックにCyclopのフレーズがオーディオ録音された状態

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Cubasis上にInter-App Audio接続でCyclopを割当てた状態。Cyclopを割り当てるにはMIDIトラックを作成した後、INSTRUMENTSから使用したいシンセ音源を選択すればOKだ

 続いてCubasis上で、Inter-App Audio接続で使用した場合です。この場合はCubasis上でMIDIトラックを作成し、インストゥルメントを選択する際にCyclopを選べばOKです。

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Cyclopを割当てたMIDIトラックに表示されているCyclopのアイコンをタップした状態

 Cyclopを操作したい場合には、作成したMIDIトラックのインストゥルメントを表すアイコン部分をタップすると画面下部にInter-App Audio接続の状態が表示されますので、この表示部分のCyclopアイコンをタップすると呼び出されます。

 Inter-App Audioで接続されている場合、右下部分にその接続が行われていることを示す「IAA」ボタンが追加され、タップすると操作を行うためのコントロールバーが表示されます。

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右下部分にInter-App Audio接続で起動しているCyclopであることを示すボタンが追加され、黄色の枠線で囲んだ部分をタップするとその上のコントロールバーが表示される

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Cubasis側でのMIDIルーティングはトラックのルーティング部分で表示され、タップするとこのように割当て可能なポートが表示される

 Cyclop側のLFOの周期やステップシーケンサーのテンポはVirtual MIDIによる接続も同時に行われているので、Cubasisの設定テンポと同期した曲と一体感のある演奏となります。特にウォブルベースのワウ変化がテンポにシンクロしているので、打ち込み系の曲ならゴキゲンなサウンドになります。

アプリの動作チェックを兼ねたミニゲーム

 Cyclopはこのようにマニアックなアプリながら、PC版と同様にアプリの動作チェックを兼ねたミニゲーム機能を装備している点が非常にユニークです。
 シンプルなシューティングスタイルのゲームで、攻撃してくるタンクをヒットするとランダムにプリセット音色プログラムが変化し、選ばれた音色によってゲームの効果音が付けられる、というものです。ゲームを行うには画面上部中央の製品ロゴの横にあるロボットアイコンをタップします。基本的にゲームオーバーはないので、ゲームを終了する際にはもう一度ロボットアイコンをタップしましょう。

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Cyclopのゲーム機能をオンにした状態。レトロ調のキャラクターデザインなど、付加機能ながらディテールにこだわりが感じられる

音作りの自由度は群を抜く

 一通りアプリを試してみて感じたのは、久々に気合を入れた音色作りが行えるシンセだということでした。最初はマニュアルも見ずに直感的な操作だけで音出ししていたのですが、コントロール可能なパラメータの数が非常に多いので、やみくもに各所を変更してしまうと、どのパラメータがどんな働きをしているのかが把握し辛く思いました。
 シンセサイザーの音色作りに慣れていない人は、一度に複数箇所を変更するのは避け、できる限り一つずつパラメータを変更してどんな変化になるのかを確かめながら操作すると良いでしょう。特にモジュレーション設定の自由度が高いので、まずはここから攻略することをオススメします。
 またPC版と違い、画面の大きさの制約があるのことは承知の上ですが、細かいパラメータ操作や数値変更の操作性は今一つです。しかしながら、CubasisなどDAWとの連携は大変スムースに行えたので、前述の操作性を差し引いてもEDM系のトラック制作にはマストアイテムとして用意しておきたいシンセ音源です。

▼参考リンク
Sugar Bytes Cyclop iPad Edition

アプリ基本情報

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Cyclop iPad Edition

配信元:Sugar Bytes GmbH

iOS価格:3000円

  • バージョン iOS:1.0.1

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年06月04日)の情報です。

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