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PC版を超えた!? iOSでのタッチ操作が快適過ぎる『Mobile VOCALOID Editor』

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by [2015年5月18日]

 2010年にiVOCALOIDがリリースされてから5年が経とうとしていますが、遂にパソコン版同等の編集機能を備えたアプリ『Mobile VOCALOID Editor』がリリースされました。本稿では製品の概要を紹介すると共に、PC版との違い等も含めて解説したいと思います。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

iPad/iPhone版の本格的なVOCALOIDアプリが遂にリリース!

 Mobile VOCALOID Editorは、従来のiVOCALOIDのようにPC版の機能を簡略化したものではなく、ほとんど同等の機能を備えています。しかも単なるプラットフォーム間の移植ではなく、PC版では行なえないMIDIキーボードによるリアルタイム入力やステップ入力も可能となっている等、今後のボーカロイド製品における進化を期待させる要素を含んでいる点にも注目です。

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Mobile VOCALOID Editorのメイン画面

 まずは本アプリの基本的な機能や性能について紹介しましょう。主な仕様は、最大演奏小節数999小節、最大同時演奏16パート、コントロールパラメータ編集機能はPC版のVOCALOID3 Editor(以下、PC版バージョン3)同等の性能を持っています。既発製品のiVOCALOIDでは最大演奏小節数は17小節、コントロールパラメータ編集機能は3種類でしたので、アプリとしての本気度がひしひしと感じられます。それ故、iVOCALOIDのバージョンアップ版という位置付けではなく、新たにリリースされた別製品だと言えるでしょう。
 コントロールパラメータ編集機能については、PC版のバージョン4から装備されたGrowl、Cross-Synthesisが非装備な点は今後のバージョンアップに期待したい所ですが、オーディオトラックもPC版バージョン3同様にモノラル、ステレオトラックを装備していますので、カラオケやマイナスワンのオーディオファイルをバッキングトラックにメロディを歌わせることも可能で、2種類のエフェクト(V3Comp、Reverb)もPC版同様に装備しています。なお、PC版とのファイル互換という点では、VSQXファイル(バージョン3、4版)の読み込みと書き出しが可能です。iTunes経由でのやり取りに加え、ボカロネット経由(※)でもやり取りが行なえます。※ボカロネット経由でのやり取りには、ボカロネットへの会員登録が必要。
 また、Mobile VOCALOID Editorには最初に購入すると歌声ライブラリのVY1-Liteが標準搭載されていますので、アプリを購入すればすぐに使うことができますし、アプリ内課金による別売のオプションライブラリで歌唱キャラクターを増やすことも可能です。現時点ではVY1やVY2を始め、蒼姫ラピス、メルリ、ZOLA PROJECT(KYO、YUU、WIL)、Mew、ギャラ子(BLUE、RED)が既にラインアップとしてリリースされていますが、今後もサードパーティー各社による歌声ライブラリがリリースされる予定となっています。

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追加歌声ライブラリはアプリ内課金で購入可能

入力の容易さはPC版以上

 続いてMobile VOCALOID Editorの使用法を紹介しましょう。Mobile VOCALOID Editorを起動するとソングの選択画面が表示されますので、新規にソングを作成したい場合には画面左上の「+」をタップします。

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新規ソングを作成する場合は、黄色で囲んだ部分をタップする

 続いてソング画面が開き、ボーカロイドのトラックに作成されているブロックをダブルタップするとピアノロールエディタが表示されますので、この画面でメロディを作成します。

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黄色で囲んだ部分をダブルタップすると……

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……ピアノロールエディタが開く

 音符入力を行なうには、入力したいタイミングと音程の位置を指でタップすると入力が行なえるだけでなく、画面下部で鍵盤を表示させ、タップして弾きながら入力することも可能です。

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GUI上で入力用キーボード画面を表示した状態。SUB TOOLメニューバーの「KEYBOARD」を選ぶと表示される

 さらにiOS対応のUSB-MIDIキーボードやBluetooth MIDIデバイスを接続することで、キーボードでフレーズ入力もできるため、鍵盤演奏が得意な人なら、使い勝手は非常に良いでしょう。
 なお、特にマニュアルなどを見ないで使い始めたところ、画面に表示されるキーボードやMIDIキーボードを弾いてみると歌声が聴こえず、サイン波で発音するので、誤動作なのかと勘違いしましたが、これは正常な動作です。画面表示のキーボードでもMIDIキーボードでも、入力時に鳴る音はVOCALOIDによる歌声ではなく、サイン波で発音されます。
 実際にフレーズを入れてみると、クリックを鳴らしてリアルタイム入力してクオンタイズするのも、もちろん便利なのですが、シーケンサー同様の感覚で行なえるステップ入力が非常にやりやすいと感じました(図7参照)。

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ステップ入力は、SUB TOOLメニューバーのSTEP INを選ぶ → 音符の長さはキーボードの上に表示されているメニューバー中央にある「SNAP」をタップし、入力したい音符の長さを選ぶ → 画面上に表示されているキーボードかMIDIキーボードを使用して音程を指定する の手順で行なう

 フレーズを入力した後には歌詞入力を行ないます。手順は歌詞を入力したい音符を選んで、LYRICボタンをタップすると文字入力用のキーボードが表示されますので、文字を指定して完了をタップします。

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歌詞を入力するにはまず、入力した音符をタップして指定し、メニューバーの「LYRIC」を選ぶと……

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……歌詞入力状態になるので、同時に表示される文字キーボードで発音させたい文字の入力を行なう

 歌詞を入力したい文字を長押しタップすると編集メニューが表示され、そこで「歌詞」を選んでも入力は同じように行なうことができます。

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文字を入力したい音符を長押しタップすると、図のような編集メニューが表示される

 歌詞を入力する際にPC版のように流し込みを行ないたい場合は、歌詞を入力する音符の範囲を選択しておくと、その選択範囲のみに連続して文字が割り付けられるようになりますが、範囲選択を行なう際に重要なポイントがあります。
 PC版のような範囲選択を行なうための矢印ツールが実装されていないので、指で範囲選択しようとすると音符が入力されてしまいます。範囲選択を行なうコツは文字を入力する最初の音符をタップして選択しておいてから、最後の文字の音符までを指で囲んでいくように操作することです。
 同様の理由でエディタ画面をスクロールしたい場合には2本指でスワイプする必要があることも覚えておくと良いでしょう。

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文字の流し込みを行なっている状態

 ひと通り歌詞入力が終わったら、コントロールパラメータ編集を必要に応じて行ない、アーティキュレーションを調整します。CP LISTボタンをタップするとパラメータ名が表示されますので、調整したいパラメータをタップすると、ピアノロールエディタ下部のエリアで調整を行なうことができます。

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「CP LIST」(コントロールパラメータ編集リスト)を表示した状態。PC版バージョン3相当の調整を行なうことができるのがここで確認できる

 パラメータはPC版と同様の機能ですが、明らかにその操作性は指で自由に描ける分、Mobile VOCALOID Editorの方が圧倒的にラクです! PC版の場合にはマウスでドラッグしながら調整するため、なかなか思うようなカーブや入力ができなかったので、これだけでも使う価値はあるように思いました。

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CPのダイナミクスをフリーハンド入力を選んで編集を行なっている状態。実際に指でドラッグしながら入力を行なってみると、かなりの精度で記録されるのを実感した

 ちなみにPC環境で細かい調整を行なう場合には、タブレット入力デバイスをつなげて作業することもありましたが、それに近い精度と言えます。また、iPad上でもペン先の細いスタイラスペンを使うと、それに近い感覚で作業できます。タブレット入力デバイスに慣れていた人は、この方法もアリでしょう。
 さて、Mobile VOCALOID Editor上で曲作りを完結させるのであれば、最初にオーディオトラックにオケをインポートしておいてから一連の作業を行なうとスムースです。オケとボーカロイドパートのバランス調整などはMIXER画面で行ないます。

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メインのトラック表示状態で下部メニューバーの右にある「MIXER」を選ぶと……

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……MIXER画面が表示される

 MIXER画面では各パートのボリュームバランス、定位の他にコンプレッサーとリバーブの設定が行なえます。

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コンプレッサー(V3Comp)をボカロのトラックへインサートエフェクトで割当てた状態

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リバーブ(V3Reverb)をセンドトラックに割当てた状態

 この調整が終わったら、画面下部の「ACTION」メニューにあるMIX DOWNを選択し、オーディオ書き出しで曲の完成となります。

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オーディオ書き出しを行なう際には、トラック表示状態で下部メニューバーの「ACTION」をタップし「MIX DOWN」を選ぶ

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表示された設定画面で書き出し範囲やファイルフォーマットを指定し「開始」をタップするとオーディオ書き出しが行なわれる

作成ファイルの互換性は?

 今のところMobile VOCALOID Editorは、Inter-App AudioやAudiobusには非対応ということで、iOS上でGarageBandなどのDAWアプリと連携させるためにはAudio Copyを利用してやり取りを行ないます。
 手順は、ピアノロールエディタ上で、入力したパートを選び、前述の「ACTION」メニューをタップし、Audio Copyを選びます。

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トラック表示状態で黄色で囲んだ下部メニューバーの「ACTION」をタップし、「Audio Copy」を選んでいる状態。

 ファイル名をつけた後、Copy Audioをタップするとコピーが行なえます(図18参照)。

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ファイル名を入力したら「Copy Audio」をタップするとAudio Copyを開始する

 続いてGarageBandを立ち上げ、トラック上でタップして表示される動作選択メニューでペーストを選べば完了です。

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GarageBandを起動したら、トラック表示部分でタップすると、編集メニューが表示されるので「ペースト」を選ぶと……

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……Audio CopyしたデータがGarageBand上に読み込まれる

 PCのDAW環境でメロディパートを編集したい場合には、同じく「ACTION」にあるMIX DOWNを選択するとオーディオ書き出しが行なえます。オケのトラックは不要で、ボカロパートだけ必要だという場合には、そのトラックをソロ再生にしてMIX DOWNを行なうと、そのパートだけがオーディオファイル化されます。

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MIXER画面のトラック上で黄色で囲んだボタンがソロボタン。これをタップすると赤くボタンが点灯し、選んだトラック以外の音はミュートされる

この手順を繰り返せばボカロパートが複数ある場合でもパラのオーディオトラックができあがりますので、iTunes経由でPCに取り込めばオーケーです。

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iTunesでMobile VOCALOID Editorを同期すると、ファイル共有の状態はこのように表示される。PCのDAWなどで編集を行ないたい場合には、ここに表示されているオーディオファイルをPCの任意のディレクトリにコピーすればオーケーだ

PC版ユーザーにもオススメ

 以上の説明でお分かり頂けたと思いますが、Mobile VOCALOID EditorではPC同等の作業がiOS環境で行なえますので、今までiVOCALOIDでは物足りなく感じていたPC版ユーザーにとっても馴染みやすいアプリになったと言えるでしょう。
 しかし、外部アプリとの連携を行なうためのInter-App AudioやAudiobusに非対応であることや、歌詞の流し込みへの対応、ピアノロール上での選択ツールの実装など、まだまだ欲しい機能はありますが、ボーカロイドの編集がここまでiPad上でできるようになった点は大変評価できると思います。今後のバージョンアップでの対応に大いに期待したいと思います。

アプリ基本情報

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Mobile VOCALOID Editor

配信元:Yamaha Corporation

iOS価格:4800円

  • バージョン iOS:1.0.1

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年05月18日)の情報です。

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