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見ためも楽しい無料のミニマル音楽制作アプリ『Volotic』

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by [2015年3月20日]


 今回は、ミニマル風ミュージックや環境音楽などの音楽制作が手軽に楽しめるアプリ『Volotic』を紹介しましょう。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

思いもよらないフレーズで曲作り

 Scott GarnerのVoloticはメーカーサイトによると「エクスペリメンタル・ノンリニア・シーケンサー」と紹介されています。直訳すると「実験的非線形シーケンサー」ということで、要は演奏結果が予測できないフレーズ生成を行いつつ、それを曲として演奏させることができるアプリです。元々Voloticは、2012年に発表されたBoxBeatというアプリがプロトタイプだったのですが、今回再構築を行ってリリースされたとのことです。BoxBeatについてはメーカーサイトのデモ動画を見ると、確かに本アプリの源流となっていることがうかがい知ることができました。ちなみにVoloticはVolleyとHyptonicを組合せてMelodicという単語になぞらえて命名したということですが、確かにグリッド上で延々とビートが跳ね返るように打ち続けられ、眠気を誘うような淡々と奏でられるサウンドを見事に言い表しているネーミングだと思いますが、いかがでしょうか。

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Voloticのメイン画面

 尚、Voloticは基本的に無料アプリなのですが、無料状態の場合は作ったソングを保存しておくことができません。アプリを完全に終了してしまうとグリッドがクリアされてしまいますので、作った曲を残しておきたい人はアプリ内課金(100円)でアンロックすることが必要です。
 それでは続いてアプリの各部を紹介しましょう。

iPadならではのシンプルな操作性を活かした直観的な曲作り

 Voloticの曲を作るシーケンサー部分は、横長にした碁盤のように縦16マス×横20マスのグリッド状態になっています。このグリッド上の任意のマス部分にGUI左部分にある「タワータイプ」と呼ばれるカラフルな円形アイコンで作られた音色、音程、動作など各要素を自由にドラッグして配置して積み上げていくと、その並んだタワータイプのルールに従って演奏が行われる、というのがおおよその操作法です。

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黄色の枠線で囲んだ部分が演奏の基となるタワータイプで、これらを自由に積み上げて配置するとフレーズを作成できる

 しかし、このアプリは、単にグリッド上に演奏の要素を並べて終わり、というのではなく、グリッドを指でドラッグして自由に動かしながら演奏ボリュームや音の定位を変化させることができる、というユニークな特徴があります。
 この特徴を活かして、演奏を行うグループを複数作れば、グリッド面を自由に動かすことによって複雑かつ立体的なサウンドの変化を表現できます。これによって曲やフレーズの印象を変えることができるので、シンプルなフレーズのシーケンスが繰り返されながらも聴き手や作り手を飽きさせないパフォーマンスを奏でることが可能です。
 下図はフレーズをいくつか作成した後に指でグリッド面をドラッグしてサウンドを変化させている状態。最初にaの状態を作り、自由に画面上をドラッグしてb、cのように動かしている。

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a

Volotic_03b

b

Volotic_03c

c

タワータイプの機能と使い方

 演奏を構成する要素となるタワータイプは9つのカテゴリーに分類され、GUI左部にツールバー的に用意されています。これらの中から、使いたいものを選んでドラッグするだけです。
 公式なマニュアルは無いようなので、自分で試奏してみての推測ですが、それぞれのカテゴリーはおおよそ以下の通りとなります。

Volotic_04EMITTER
 演奏の元となるビートを作り出して射出するタイプ、射出されたビートを止めるタイプの2種類があります。

Volotic_05ROUTING
 EMITTERから射出されたビートを3方向に分岐したり、方向を変更させたりするタイプなど進行方向を設定するものが9種類あります。

Volotic_06DRUMS
 VoloticはEMITTERから射出されたビートにヒットされることによって音が演奏されますが、DRUMSはその発音体となるもので、ドラムの各打楽器やパーカッションなどが9種類あります。

Volotic_07INSTRUMENTS
 前述のDRUMS同様の発音体なのですが、INSTRUMENTSはピアノ、ビブラフォン、アコースティックギターといった減衰音系の音色がそれぞれ3種類あります。

Volotic_08TONES
 TONESも同じく発音体ですが、こちらは減衰するエンベロープが設定されたアナログシンセ波形(おそらくサイン波、三角波、ノコギリ波)がそれぞれ3種類あります。

Volotic_09SCALES
 EMITTERから射出されたビートがSCALESを通過して発音体をヒットすると音階が演奏されます。
 基本的にCメジャー(ハ長調)のスケールで上行形、下行形、上下行形、ランダムなど5種類が選択できます。

Volotic_10ARPEGGIOS
 EMITTERから射出されたビートがARPEGGIOSを通過して発音体をヒットすると分散和音フレーズが演奏されます。
 アルペジオのタイプは8種類から選ぶことができます。

Volotic_11TUNNING
 EMITTERから射出されたビートがTUNNINGを通過して発音体をヒットすると選んだ数字の音程で演奏されます。
 例えば「2」を選ぶとCメジャーの場合であれば「レ」に音程が変更されて発音します。
 なお、EMITTERから射出されたビートがSCALESやARPEGGIOSを通過後、更にTUNNINGを通過するとこちらが優先される仕様のようで、音階やアルペジオの演奏にはならずに固定音程になるようです。

Volotic_12STEPS
 発音体の音程を半音単位で音程を調整するもののようです。
 半音上げるものと下げるものがありますが、いずれのものでもグリッド上に12個連続して通過するように並べると上下1オクターブの範囲を半音調整できます。

 以上のタワータイプを自由に積み上げることで演奏を組み立てるのですが、まずは自由にやってみると良いでしょう。ただ、良くアプリのルールがつかめないという人は、最初にプリセットされているデモソングを読み込んで、どのように組み合わせるとどういう演奏になるのかをじっくりチェックすることをオススメします。

フレーズ作成例

8ビート風ドラムパターン
 まずはどんなフレーズになるのかイメージしやすいように基本的な8ビートのドラムパターンを設定した例です。下図のように積み上げると、1、3拍がバスドラム、2、4拍がスネア、各拍の8分ウラにクローズドハイハットが発音します。ここでは3方向に分かれてビートが射出されるROUTINGを連続して使用して複数の方向へビートが流れるようにしているのがポイントです。
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 下図のようにEMITTERをタッチするとカラーが消えた状態になるとEMITTERであれば演奏停止の状態となり、発音体であればミュートの役割となるなど、その機能が無効化されていることを表します。
 この機能を活用すると曲作成後のパフォーマンスを行う際に、シンプルなフレーズをバリエーション豊かに表現させることができます。
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 下図のように×印のタワータイプを選ぶとそこから先にビートは流れないようになります。不要な流れを止めたい場合にはこの方法で止めるのもアリです。
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シンプルなアルペジオ風フレーズ(基本編)
 続いて音程感のあるフレーズの作成例です。下図のように積み上げると、ド、オクターブ上のド、ソ、レと連続して演奏されます。
 Voloticは基本的に音程感のある音はデフォルト状態がドの音で発音しますので、違う音程にしたい部分の手前でドから数えて何度の音程になるのかをTUNNINGで指定します。
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シンプルなアルペジオ風フレーズ(応用編1)
 先程のアルペジオ風フレーズの発音体を1マスずつグリッドをずらし、その手前にARPEGGIOSのタイプの異なるものを差し込んだ例です。
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 ARPEGGIOSの異なるものを差し込むことによって常に異なるフレージングになるため、ミニマルミュージック的なシーケンス感を加えることができます。
 ポイントはランダムタイプのものを含めることです。これによって単なるドミソのアルペジオが不規則に変わることで、アルペジオらしさを希薄な感じにすることができます。

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黄色の枠線で囲んだ部分がランダム再生となるように配置した状態を表す。尚、黄色の実線はEMITTERから射出されたビートの流れを示している。

シンプルなアルペジオ風フレーズ(応用編2)
 応用編1の状態から更に手を加えて本格的なミニマル風フレーズを作りました。基本的にはシンプルなフレーズを元にしているのですが、音色はINSTRUMENTSのものを選び、異なる音程で演奏させる音に設定しています。ここでのポイントは3方向に分かれて流れるタイプのROUTERを2つ直列で積み上げていますが、下にあるものを3方向の中の1方向のみに順番に流すタイプにしています。これによって1フレーズのサイクルが同時に3方向へ行くものよりも長くできるため、まとまった長さの曲らしく仕上げることができます。
 Voloticの使いこなしはまさにこのROUTERの並べ方の工夫による部分が大きいと思いますので、ぜひ、色々な流れを試してみてほしいと思います。

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黄色の枠線で囲んだ部分が3方向の中の1方向のみにビートが流れるタイプを配置した場所を示している。

 このようにしてフレーズができたら、グリッド面を自由にドラッグしてボリュームバランスや定位を自由に変化させ、さらに曲らしい動きを加えてみると良いでしょう。

データを保存しておきたい場合はアプリ内課金でアンロック

 一通りチェックして得た感想は、非常にシンプルな操作性だけに作ったその場でフレーズも再現され、そのままプレイバックしながらフレーズを曲らしく仕上げることができるアプリだな、という印象です。
 実際にできあがった曲も残しておきたいと思えるものも結構多くできましたので、やはり保存機能は追加したいと思いました。
 細かい仕様では、テンポの設定パラメータがなかったりとか、Audiobus未対応であるなど、欲しい機能はあるのですが、メーカーサイトを見ると今後もアップデートを行っていく様子なので、更なるバージョンアップに期待しましょう。

アプリ基本情報

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Volotic

配信元:Scott Garner

iOS価格:無料

  • バージョン iOS:0.2.10

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年03月20日)の情報です。

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