「江ノ電なび」ホーム画面

江ノ電に乗って『江ノ電なび』を使ってみた

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by [2015年2月25日]

江ノ電2000形2051今回乗車した電車の一つ。

「江ノ電なび」メイン画面

「江ノ電なび」メイン画面

「江ノ電」こと江ノ島電鉄線は、藤沢を起点として江ノ島を経由しマリンスポーツのメッカとして知られる湘南の海岸線を走り古都鎌倉に至る路線で、テレビドラマやCM、映画にも登場することから観光路線として有名です。

実はこの路線、その最初の区間(藤沢-江ノ島)の開業時期が明治35年(1902年)で、旅客営業を目的とする電気鉄道・電気軌道としては日本で6番目、その当時開業した区間が現在もなお営業を続けている路線としては日本で2番目に古い(※注1)、由緒正しく歴史ある路線であったりします。

 ※注1:電化・開業は京都(明治28年開業)、名古屋(明治31年開業)、川崎大師(明治32年開業)、東京(明治33年電化)、小田原(明治33年電化)、そして江ノ島の順で、移設や線形改良などがあったにせよ当時の路線が現存するのは大師電気鉄道→京浜急行電鉄大師線と江ノ電の2路線のみとなります。

この路線は、路線長10.0kmで駅の数が15、単線で立て込んだ住宅地の間を縫うようにして路線が敷設されているため急曲線区間が連続し、しかも途中には道路上を電車が走る併用軌道区間まであるという、古い電気軌道の様式を今に伝えています。

連接車の連結部連接車の場合、2つの車体がそれぞれの連結面寄り端部で1つの台車に乗りかかり、この台車が車体支持と連結の役割を兼ねる。

連接車の連結部
連接車の場合、2つの車体がそれぞれの連結面寄り端部で1つの台車に乗りかかり、この台車が車体支持と連結の役割を兼ねる。こうすることで連結面部のオーバーハングがなくなり急曲線通過が容易になる

ちなみにこの江ノ電、一見車体長12m程度の短い車体の普通の電車(2軸ボギー車)2両を連結して運転しているように見えるのですが、普通の車両だと半径28mという極端な曲線区間が通過困難なため、2つの車体の両端と連結面で合計3台の台車を装着し中央の台車が2つの車体をつなぐ連結器および関節の役割も果たす、連接車(Articulated Car)という特別な構造の車両を使用しています。

このように車両も施設も色々特徴の多い江ノ電ですが、東京から東海道本線で約1時間程度と適度に近く、両終点がJR線に接続し、しかも沿線の観光地に加えてこうした車両群や施設も魅力となっていることから乗客数は非常に多く、休日などには基本となる2車体連接車1編成にもう1編成増結した4両編成でも乗客の積み残しがでたり、あまりの乗客の乗降でダイヤが乱れるほどの活況(※注2)を呈します。

 ※注2:もっとも2編成4両でも定員が300名足らずですから、おおむねJR在来線などで一般的な20m級通勤電車2両分相当の輸送力となります。

江ノ電500形電車江ノ電の現行最新型。交流モーターのインバータ制御、シングルアームパンタグラフ、LEDによる行先表示、フルカラー液晶ディスプレイによる車内案内装置など最新モード満載である。

江ノ電500形電車
江ノ電の現行最新型。交流モーターのインバータ制御、シングルアームパンタグラフ、LEDによる行先表示、フルカラー液晶ディスプレイによる車内案内装置など最新モード満載のハイテク電車だが、そんなことに関係なく狭い道路上を遠慮無く走る。

ある意味、古風であることがセールスポイントの江ノ電ですが、実はこの会社は規模は小さいものの新しもの好きな部分があったりします。

例えば1979年から新造しはじめた1000形という電車では、大小さまざまな最新機構を満載して業界を震撼させ、また最近では大手私鉄でも導入例の少ない室内灯へのLED照明導入に踏み切ったりしています。

そんな新しもの好きな江ノ電が、このほど夢現舎、ユニティベル、芳和システムデザイン、それにアウリスの4社の協力を得て、「江ノ電なび」というiOS対応アプリの提供と、それに連携するiBeaconを利用した情報発信サービスの試験運用を開始しました。

そこで今回はこの「江ノ電なび」について、実際にこのアプリをインストールしたiPhoneを持って江ノ電に乗車してみた際の動作状況を踏まえて考えてみたいと思います。

「江ノ電なび」はこんなアプリ

「江ノ電なび」そのものは、江ノ電に関係の無いところでインストールしてもヘルプが参照できる程度で実質的になにもできない、iBeaconによる電子タグから受信した情報を検知・表示するためのランチャーアプリです。

つまり、対応するiBeaconの電子タグにこのアプリをインストールしたiPhoneを持ったユーザーが接近し、その電波を受信できるようになって初めて項目がリストに追加され、またそこで提供される情報にアクセスできる仕組みとなっています。

iBeacon機能をサポートするiOS 7以降のiOSを搭載し、かつBluetooth 4.0のLow Energyモード(BLE)に対応しiBeaconをサポートする機種でないと動作しない、というのはまさにこうした機能・仕組みによる制約で、記事執筆時点でAndroid版が提供されていないのも、Android搭載スマートフォンでBLEによる電子タグに対応する=Bluetooth 4.0に対応する機種がiOSに比べて少ない現状(※注3)を反映したものであると言えます。

 ※注3:iPhoneの場合は2011年11月発表のiPhone 4SよりBLEがハードウェアレベルで標準サポートされるようになっており、さらにこれ以降の世代の端末ではiBeaconをソフトウェア的にサポートするiOS 7以降へのOSアップグレードが進んでいることから、Android搭載スマートフォンと比較してiBeacon対応端末の台数が多い状況にあります。

そしてこのアプリは、iBeaconからの応答を常時監視するため、Bluetooth機能を有効に設定しておく必要があります。

実際にも、アプリをインストールしBluetooth機能を有効にしたiPhoneを待機状態にして携行していたら、唐突に通知が入って「江ノ電なび」がとある店のiBeaconを受信・検出したと通知されたことがありました。

この辺の仕組みは注意喚起の点では有効ですが、対応するiBeaconの電子タグに接近すると問答無用で通知されるので、なかなか心臓に悪い部分があります。

江ノ電に乗って「江ノ電なび」を使ってみた

そんなわけで、このアプリの挙動を確かめたかったら藤沢なり鎌倉なりに赴いて、実際に江ノ電に乗ってみるのが一番です。

そこで筆者は手持ちのiPhoneに「江ノ電なび」をインストールし、東京駅から東海道本線の普通に乗り、藤沢へ行ってみることにしました。

JR改札を出たらまず案内が・・・

江ノ電藤沢駅ビルJR藤沢駅とは手前のペデストリアンデッキで連絡する。

江ノ電藤沢駅ビル
JR藤沢駅とは手前のペデストリアンデッキで連絡する。

実はJR東海道本線・小田急電鉄江ノ島線の藤沢駅と江ノ電の藤沢駅はちょっと離れた位置にあって、歩道橋(ペデストリアンデッキ)で連絡するようになっています。

そんな立地であるため、「江ノ電なび」が反応するのはきっと江ノ電の藤沢駅が2階に入っている小田急百貨店藤沢店の入り口付近に近づいてからに違いない、と勝手に思っていたのですが、JR藤沢駅からペデストリアンデッキへ向かう出入り口の部分で早速反応がありました。

「江ノ電なび」湘南藤沢コンシェルジュ リスト表示ごらんのように、iBeaconでタグが検出されると自動でリストに項目が追加され、iBeaconから離れるとリストから削除される。

「江ノ電なび」湘南藤沢コンシェルジュ リスト表示

曰く、「湘南藤沢コンシェルジュへようこそ! バレンタインアイランド江の島開催中」と。

…それは義理チョコ一つ貰えない俺に対する嫌みですかそうですか。

などと少々暗澹たる気分になったのですが、そういえばJR藤沢駅には「湘南FUJISAWAコンシェルジュ」として江ノ電沿線の情報発信拠点が開設されていて、筆者の立ち位置はちょうどその目の前になっていたのでありました。

ともあれ、これで「江ノ電なび」のアプリが正常に各店舗などの情報を受信できることが確認できました。

コストパフォーマンスの高い1日乗車券

江ノ電藤沢駅切符売り場運賃表に示されているように初乗り運賃は190円、全線乗車時の運賃は300円となるため、1日乗車券の利用価値は結構高い。

江ノ電藤沢駅切符売り場
運賃表に示されているように初乗り運賃は190円、全線乗車時の運賃は300円となるため、あちこちうろつきたい観光客には1日乗車券は結構お買い得。

そこでせっかくなので江ノ島電鉄が発売している1日乗車券「のりおりくん」(600円)を券売機で購入し、江ノ電に乗車してみることにしました。

この1日乗車券は全線1往復あるいは3回~4回の乗車で元が取れ、途中下車をすればするほどお得になる運賃設定です。

先にも触れたように江ノ電沿線は観光地だらけで、駅名を見ても「腰越」や「由比ヶ浜」、さらには「和田塚」など、平家物語や吾妻鏡を読み込んだ歴史ヲタな筆者には辛抱たまらん駅名が並んでいるため、こういった乗り降り自由の1日乗車券は大変ありがたいものです。

改札手前でまず一つ

江ノ電の藤沢駅改札前にある「江ノ電の珈琲屋さん」江ノ電の子会社である江ノ電商事が運営するこの店も当然今回のiBeacon試験運用に参加している。

江ノ電の藤沢駅改札前にある「江ノ電の珈琲屋さん」
江ノ電の子会社である江ノ電商事が運営するこの店も当然今回のiBeacon試験運用に参加している。

改札口手前の切符売り場に向かう途中で、早速iPhoneに通知がきました。

見ると改札口手前にある「江ノ電の珈琲屋さん」の「江ノ電アイススイーツ」の案内でした。

モータリゼーションの嵐が湘南エリアを襲い江ノ電が鉄道線の全廃を検討したとされる1960年代、同社線を救ったのが(そもそも江ノ電沿線に電車代行路線バスを走らせられるようなまともな道すら無くてどうにもならなかったことと併せて)同社が1940年代末から観光事業をはじめ様々な事業に手を出して多角経営化を図っていたことであったというのはよく知られています。

ちなみに江ノ電は今は「江ノ島電鉄」という社名ですが、その頃は名は体を表すというのか「江ノ島鎌倉観光」というとても鉄道会社とは思えないような社名でありました。

この「江ノ電の珈琲屋さん」もそうした多角化経営の伝統に連なる店なのでしょうが、店名といい商品名といい、「江ノ電」のブランド力の強さが感じられます。

電車に乗る

江ノ電藤沢駅構内いかにも昭和の電鉄駅といった風情。

江ノ電藤沢駅構内
いかにも昭和の電鉄駅といった風情。

券売機で1日乗車券を購入しホームへ向かうと、線路の両脇に降車ホームと乗車ホームが並びドーム状の上屋がホームと線路を覆う、どこか懐かしい感じの駅構内になっていました。

こういうドック形と呼ばれるホーム配置で百貨店ビルの2階などに高架線で線路が突っ込むタイプの電鉄駅は、大手の代表格であった阪急三宮駅の震災による崩落・解体や東急渋谷駅の地下化などもあって今や絶滅危惧種になりかかっていますから、鉄道ファンでもある筆者としてはこれだけでも満足度が高いです。

そこで待つことしばし、途中駅で大勢の乗客の乗降があったとかで定時よりやや遅れてやってきた2編成4両の電車に乗り込むと出発進行です。

いつもより多く曲がっております

江ノ電2000形2051今回乗車した電車の一つ。

江ノ電2000形2051
今回乗車した電車の一つ。前面の視界が広く乗車すると線路が曲がりくねっているのが嫌でも理解できる。

江ノ電がカーブだらけだという話は事前に知っていたつもりでしたが、普通のご家庭の塀や建物すれすれのところをすり抜け、右に左に急カーブを繰り返す線路上をくねくねと走り、一部で2車線の歩道もないような狭い道の真ん中に突っ込んで路上で直角に曲がる姿にはさすがに唖然としました。

なるほど、この状態から線路改良もできないほど用地取得が難しいのなら、バス転換が物理的に不可能に近かったというのも納得です。

ちなみに藤沢と鎌倉の間に13ある途中の駅は有人駅と無人駅が混在しているのですが、駅員配置の有無に関わりなくiBeaconタグが各駅に設置されているらしく、おおむね各駅のホームが目の前になると「江ノ電なび」のリストに項目が追加され、各駅近隣にあって今回のイベントに参加している各菓子店のおすすめ商品の情報にその店の基本情報、そしてアクセスマップが表示され、最後に各駅の電車発車時刻表が表示されます。

窓の閉まっている電車内に座っていても電車が駅に近づくだけで情報が受信でき、さらに少しでもホームから離れると情報がリストから削除されるのですから、これはかなり電波の指向性や到達距離がコントロールされていて、実用性の高いシステムであると言って良さそうです。

「江ノ電なび」リスト画面駅によってはこのように通常の情報に加え、参加店舗独自の情報提供が行われる場合がある。

「江ノ電なび」リスト画面
駅によってはこのように通常の情報に加え、参加店舗独自の情報提供が行われる場合がある。

「江ノ電なび」各駅画面トップイベント参加店舗名を案内し、それに続いて各店舗とその商品情報を表示する。

「江ノ電なび」各駅画面トップ
イベント参加店舗名を案内し、それに続いて各店舗とその商品情報を表示する。

「江ノ電なび」参加店舗商品案内イベント参加各店舗一押しの商品画像が表示される。

「江ノ電なび」参加店舗商品案内
イベント参加各店舗一押しの商品画像が表示される。

「江ノ電なび」参加各店舗地図Google Mapsを利用した各店舗周辺の地図が表示される。

「江ノ電なび」参加各店舗地図
Google Mapsを利用した各店舗周辺の地図が表示される。

「江ノ電なび」各駅時刻表各駅情報の最後にその駅を発着する電車の時刻表が表示される。ご覧の通り早朝深夜は24分間隔、それ以外は12分間隔で電車が運転されている。

「江ノ電なび」各駅時刻表
各駅情報の最後にその駅を発着する電車の時刻表が表示される。ご覧の通り原則的に早朝深夜は24分間隔、それ以外は12分間隔で電車が運転されている。

「江ノ電なび」参加各店舗個別情報店舗によってはこのように自店舗個別の紹介ページを提供している。

「江ノ電なび」参加各店舗個別情報
店舗によってはこのように自店舗個別の紹介ページを提供している。

iBeaconの電波が届かない

江ノ電鎌倉駅構内決して広くはないがいかにもターミナル駅らしい風情が漂う。

江ノ電鎌倉駅構内
決して広くはないがいかにもターミナル駅らしい風情が漂う。終点であるこの駅を除くと、鎌倉寄りの各駅ではiBeaconの受信に問題が多かった。

もっとも、今回の試験運用が万全の状態で機能しているかと言えばそうではない、と筆者は考えます。

というのは、少なくとも電車に乗車している限り、稲村ヶ崎・極楽寺・長谷の3駅については「江ノ電なび」でiBeaconの電波を掴めず、それ以外の駅でも乗車位置によっては受信できない(iBeaconのタグの設置されているであろう改札口付近でしか受信できない)ケースがあったためです。

今回のiBeaconの試験運用はどちらかと言えばその駅で降車した、あるいはこれから乗車しようとする客に情報提供することを重点に置いているようですが、筆者のように1日乗車券を持って、その場のノリで降車を決めたりする乗客の場合、iBeaconによる情報提供はできれば電車の駅到着より少し手前から行われていた方が望ましく、またホームの停車位置によって情報を受信できる/できないという差が極力生じないように工夫する必要があると思います。

標準化が必要だが早急な普及が望まれる

iOSの「設定」に追加される「江ノ電なび」の設定画面このようにアプリ単位での位置情報送信やモバイルデータ通信の可否を設定できる。

iOSの「設定」に追加される「江ノ電なび」の設定画面
このようにアプリ単位での位置情報送信やモバイルデータ通信の可否を設定できる。

以上、「江ノ電なび」とそのiBeacon試験運用についてみてきましたが、幾つか細かい問題点はあるもののこのアプリの提示した情報提供の仕組みは、今後の公共交通機関における情報提供・広告のあり方を一変させるほどインパクトのあるものです。

特に駅ごとにiBeaconを設置して各駅時刻表を提供する仕組みは、例えば各社局のホームページで各駅時刻表を探させる方法と比べて非常に有用性が高くまたわかりやすく、これだけで良いからアプリを業界で標準規格化して早急に全国の鉄道駅・バス停留所に設置して欲しい、と思うほどです。

現状、iOS端末でしか使えない状況ですが、これほど有用であるならAndroid搭載スマートフォンなどでも、iBeacon相当の電子タグを利用できる環境を整備すべきでしょう。

この仕組みで問題があるとすれば、この種のアプリが乱立し執拗に広告の類いが表示されることになりかねないことです。ビーコン検知の有効無効の設定や、通知や位置情報のオンオフをアプリごとに設定できるようになっているのは、そのような事情を考慮してのものと思われます。

いずれにせよiBeaconによる情報提供の仕組みが非常に有用かつ強力なものであるのは明白で、今後の本格実用化が期待されます。

▼参考リンク
江ノ電からのお知らせ
江ノ電×iBeacon 『江ノ電なび』 | 株式会社夢現舎
iOS:iBeacon について

アプリ基本情報

「江ノ電なび」ホーム画面

江ノ電なび

配信元:Enoshima Electric Railway Co.,Ltd

iOS価格:無料

  • バージョン iOS:7.0

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年02月25日)の情報です。

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