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よみがえるSC-88Pro!ローランドの『SOUND Canvas for iOS』をMIDI音源として使ってみた

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by [2015年2月09日]

 昨年11月に行なわれた楽器フェアで参考出品され、多くのDTMユーザーの注目を集めたRolandのSOUND Canvas for iOSが満を持してリリースとなりました。早速その全貌をレポートしていきましょう。文:内藤 朗(有限会社FOMIS)

SOUND Canvasとはどんな機材だったか?

 まずSOUND Canvas for iOSの元となったSOUND Canvasシリーズについて紹介しないわけにはいきません。
 デジタルシンセの進化が著しかった1990年代初期~中期は、鍵盤部を持たずに音源部のみで構成されるモジュール形式のシンセサイザーが興隆を極め、1台で何パートも演奏可能なマルチティンバー音源を各メーカーが競ってリリースしている時代でした。また同時に、コンピュータを使用した自動演奏システムも徐々に実用的なものとなり、プロミュージシャンの間ではMacintoshを使用した音楽制作に移行しつつあったため、セッティングがシンプルかつ効率良く曲作りを行なえる音源モジュールが重宝されたのです。

SC-88pro

SC-88Pro 通称ハチプロ。約40MBのウェーブメモリーボリュームを装備し、内蔵プリセット音色数:1,117音色、最大同時再生パート数:32パート、最大同時発音数:64音と、1台で曲作りできる音源モジュールとしては十分な性能を有する(もっともウェーブメモリーの大きさについては、およそ20年後となる現在のソフト音源などとは比較にはならないが…)。

 そういった需要の中で1990年代初頭に日本の電子楽器メーカー、ローランドからリリースされたのがSOUND Canvasシリーズです。初期に登場した『SC-55 MkII』は多くのミュージシャンやアマチュアのユーザーの間でマストアイテムとして使用され、その後1996年に登場した『SC-88Pro』はSC-55 MkIIを大きく上回る性能で、当時のDTM機材におけるデファクトスタンダードとなりました。
 このSC-88Proは、現在でも通信カラオケのMIDIデータ制作には欠かせない機材として、何台もバックアップ用に持っている、というクリエーターも多いようです。

 SC-88Proの後継機としてはSC-8820、SC-8850と続き、その後、DAWソフトでオーディオ編集が容易になった時流の中でリリースされたSD-20、SD-90などのSDシリーズがありましたが、ソフト音源が主流となってきたこともあり、本格的なDTM音源としてはSDシリーズ以降のリリースはなく、今日に至っています。
 このようにSOUND CanvasシリーズはDTMブームとは切っても切り離せない関係にありますから、ユーザーの多くは当時制作したMIDIデータを「いい音で更に納得いくまで作り込みたい」と思っていることでしょう。また、iPhoneやiPadで手軽に音楽を楽しみたい、DTM的なことをやってみたい、というDTM未体験の人も潜在的に多いように思います。本製品の登場は、両方のニーズを満たしてくれる製品として、まさに最適なアプリなのではないでしょうか。

SOUND Canvas for iOSの機能をチェック!

 それではSOUND Canvas for iOSの全体を一通りチェックしてみましょう。
 起動して現れる画面はSC-88Pro風のデザインで実機のユーザーであればマニュアル要らずでそのまま使える位の雰囲気が感じられます。基本となる操作画面は、音楽制作時に適したデザインのSOUND Canvasスキンと、MIDIデータ再生に最適化されたデザインのプレイヤースキンの2画面で構成されています。

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iPadで表示したSOUND Canvasスキン

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iPadで表示したプレイヤースキン

 iPadとiPhoneでは、機能的には変わらないものの、デザインがやや異なります。操作を行なう際にiPhoneの場合、SOUND Canvasスキンの時にミキサー部分やソングリストをスワイプで表示させる点が異なるのですが、知っておけば大丈夫といった程度の違いだと言えます。


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iPhoneで表示したSOUND Canvasスキン

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iPhoneで表示したミキサー画面

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iPhoneで表示したプレイヤースキン

 さて、SOUND Canvasスキン時の試奏感ですが、アプリ単体で操作を行なってみた所、各パートのボリューム、パン、コーラス、リバーブといった基本的な設定は画面上で十分に操作が行なえます。各パートの音色を切り替えたい場合にもプレビュー機能がありますので、おおよその音色キャラクターを確認することができます。この音色数については、実は一番感動した部分でもあるのですが、音色数は1,600音色、ドラムキット数は63キットとSC-88Proの音色数を大きく上回っていることです。実際のスペック的には前述のSC-8850より若干少ない位で、動作性能的にはSC-8820相当の演奏が可能となります。また、SCシリーズの特徴であった従来機種との音色互換を図るためのマッピングが用意されていたのですが、本製品ではSC-8820マップ、SC-88Proマップ、SC-88マップ、SC-55マップ、GM2マップ、CM-64マップ(PCM)、CM-64マップ(LA)が用意されており、設定で自由に切り替えることが可能です。

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システムメニューから音色マップの変更が可能

 続いてプレーヤースキンの方はというと、こちらはMIDIデータ再生を快適に行なえるように意図したデザインで、再生時に欲しくなる機能が的確に装備されている、と言った印象を受けました。一つはマイナスワン機能で、ボーカル、ギター、ベース、ドラムスといった楽器パートがボタンのオンオフのみで手軽に行なえるものです。これは楽器の演奏を曲のデータに合わせて行ないたい時や市販されているMIDIデータをカラオケとして使用したい場合には大変便利です。また曲の部分的な練習などもよく行ないますが、その際にはリピートの設定が手早くできることが不可欠な要素となります。本製品のリピート機能では、始点と終点が何小節の何拍めというように音楽的な尺度で簡単に設定できるため、ユーザーのニーズを十分汲んでいる設計で大変評価したいポイントです。

MIDIデータ再生を行なってみた

(1)手持ちのMIDIデータを再生させるには

 一通り機能をチェックしてみると、単体で使用する場合にはマルチ音源内蔵のMIDIデータプレイヤーといった印象が強く感じられましたが、実際の再生ではどうなのでしょうか。
 本体インストール時に聴けるデモソングのMIDIデータ以外を読み込ませたい場合は、iTunes経由で行なうかメールの添付ファイルでデバイスに送るのが、簡単な方法と言えます。iTunes経由の場合は、アプリのファイル共有を選択して、演奏させたいMIDIデータをSound Canvasへドラッグ&ドロップすることでデバイス側にファイルを送りこむことができます。

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iTunesを経由して手持ちのMIDIデータを送る。

soundcanvas_8 メール転送の場合は、自分のメールアドレス宛に再生したいMIDIデータを添付した状態で送信し、そのメールを受信したら、添付したMIDIデータを選択すると動作を尋ねられますので、Sound Canvasで開くを選ぶ、という手順となります。
 この他にDropboxなどのクラウド環境を使用したファイル共有や、OpenInに対応したアプリケーションを利用しての共有なども行なえますが、これらの環境が十分に整っていない場合には、あまりオススメな方法ではないように思います。※あくまでも筆者の個人的な意見です。

(2)データ再生インプレッション

 かつて私が作ったオリジナル曲のMIDIデータを送って、iPhoneのメールで受信して再生してみました。
 演奏は多少ニュアンスが違う部分もあるのですが、オリジナルの実機で制作した雰囲気は十分に再現されていました。しかしながら、じっくりそのサウンドやレスポンス等、細部に渡って注意深く聴き直してみると、オリジナルの実機よりも各音色の解像度が高いことに加え、アタック感を持ちつつも全体的にリフレッシュされたサウンドであることに気がつきます。おそらく、既存のSC-88Proユーザーが日頃求めている「ハチプロの音でもっといい音」というニーズそのものズバリと言えます。
 こうなってくると、当時未完成だったデータをリファインして作り直したくなってくるのは、サウンドクリエータの性なのですが、続いてMIDIデータ編集を行ってみた感想を紹介しましょう。

MIDI音源として使ってみた

 SOUND Canvas for iOSは、Inter-App AudioやAudiobusには現状未対応ということで、今日的なiOSベースでのDAW制作環境で十分活用するには少々厳しいでしょう。
 しかし、ハード音源と同じように使用することはできますので、今回はiPadにインストールした本製品をMIDI音源として使用してみました。
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 接続方法は、iPad(今回はiPad Air 2)にオーディオ/MIDIインターフェイスを接続、Windows 8.1環境のPCとオーディオ/MIDIインターフェイスを接続し、両方のインターフェイスを介してMIDIの送受信やiPadからのオーディオ出力を図のように結線します。

SOUND Canvas for iOSをMIDI音源として使用する場合の接続例
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  1. 1 音源:SOUND Canvas for iOS(iPad Air 2 Or iPhone 6)
  2. 2 DAW:Steinberg『Cubase』(Windows 8.1)
  3. 3 オーディオ/MIDIインターフェース:PreSonus『AudioBox iTwo』
  4. 4 オーディオ/MIDIインターフェース:RME『Multiface』
  5. 5 MIDIキーボード・コントローラー:Roland『A-49』
  6. ※一般のFireWireケーブルを使用しているが、データ転送プロトコルはRME独自規格による信号が扱われている。

 最近はソフト音源を使用することが多く、DAWソフト上のオートメーションで様々な表現を行なうことがほとんどで、MIDIデータを緻密に打ち込んで演奏を作ることも少なくなりましたが、このセッティングで制作を進めていくと、コントロールチェンジやエクスクルーシブメッセージ等を使用したオーソドックスな打ち込み作法での曲作りが行えます。
 また、本製品はSC-8820のエクスクルーシブメッセージに対応しているので、SC-8820のマニュアルに記載されているMIDIデータフォーマットを参考に音色のカスタマイズやトラック設定等を調整するのも良いと思います。

次はぜひVST化を

 MIDIデータ制作の全盛期をリアルに体験した者としては、懐かしさもあって絶賛したい製品であることは言うまでもありませんが、それだけに更なる進化も期待してしまいます。
 例えば本製品は16パート仕様ですが、やはり88Proや8850などの32パートや64パート仕様の実機同等の自由度は欲しい所です。また、クリエーター目線で希望したいのは、本体の各パートのMIDIチャンネルを画面上で自由に変更したいことと、何といってもVSTインストゥルメント※化に尽きると思います。今日主流の高音質大容量サンプルソフト音源はもちろん音楽制作には不可欠なものですが、一方で作曲やアレンジのメモやスケッチをちょっと行いたい、という時に手早く準備できる環境も欲しいもので、本製品がそういうツールとして進化してもらえると嬉しいのは筆者だけではないはずです。
※VSTに対応したパソコン向けのDAWソフトで使える、プラグイン形式のソフト音源。VST(Virtual Studio Technology)は、Steinbergが提唱した規格で、現在では事実上の業界標準となっている。

SOUND Canvas for iOS
Cubase
AudioBox iTwo
Multiface
A-49

アプリ基本情報

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SOUND Canvas for iOS

配信元:Roland Corporation

iOS価格:2,000円

  • バージョン iOS:1.0.1

※記事内の情報はすべてレビュー時(2015年02月09日)の情報です。

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