iPhone 6(左)とiPhone 6 Plus画面サイズと解像度に差はあるが,デザインは完全に統一されている。

iPhone 6とiPhone 6 Plusを読み解く

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by [2014年9月12日]

既報のとおり、AppleからiPhoneの新型モデルが発表されました。

これまで初代iPhoneの320×480ピクセルから極力整数倍になるように、あるいは一辺のピクセル数を固定してもう一辺のみピクセル数を増やして縦横比を変更する、といった形で、極力従来機種との画面表示の互換性を保ちやすいように画面サイズの拡大を繰り返してきたiPhoneですが、このたび遂にその原則が破られることになりました。

しかも、4インチのスリムな画面サイズからの脱却が合わせて図られ、4.7インチ 1,334×750ピクセルの液晶を搭載するスタンダードモデルのiPhone 6と、5.5インチ 1,920×1,080ピクセルのフルHD解像度液晶を搭載するファブレット相当のiPhone 6 Plusの2本立て構成となり、画面の物理的なサイズの面でも大変革が行われることとなりました。

そこで今回は、これらiPhone 6とiPhone 6 Plusについて、先行機種であるiPhone 5sからどこが変わったのか、なぜ変わったのかを中心に、主にハードウェアに焦点を当てて考えてみたいと思います。

主な仕様

iPhone 6とiPhone 6 Plusの公表されている主な仕様は以下のとおりです。

●共通部分:

  • OS:iOS 8
  • チップセット:A8+M8(仕様非公開)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:容量非公開
    • フラッシュメモリ:16/64/128 ギガバイト
    • 拡張スロット:なし
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:8 メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:1.2 メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
    • 対応周波数:2.4GHz、5GHz
  • LTE:
    • 対応バンド:
      • モデルA1549(iPhone 6:GSM)・A1522(iPhone 6 Plus:GSM):1・2・3・4・5・7・8・13・17・19・20・25・26・28・29(LTE)
      • モデルA1549(iPhone 6:CDMA)・A1522(iPhone 6 Plus:CDMA): 1・2・3・4・5・7・8・13・17・18・19・20・25・26・28・29(LTE)
      • モデルA1586(iPhone 6)・A1524(iPhone 6 Plus):1・2・3・4・5・7・8・13・17・18・19・20・25・26・28・29(FDD-LTE)、38・39・40・41(TD-LTE)
    • Bluetooth:Ver.4.0
    • 電池容量:容量非公開

    ●iPhone 6:

  • サイズ:67.0 × 138.1 × 6.9 mm
  • 重量:約129g
  • メインスクリーン
    • 種類:Retina HDディスプレイ
    • 解像度:750×1,334 ピクセル
    • 画面サイズ:4.7 インチ(対角線長)

    ●iPhone 6 Plus:

  • サイズ:77.8 × 158.1 × 7.1 mm
  • 重量:約172g
  • メインスクリーン
    • 種類:Retina HDディスプレイ
    • 解像度:1,080×1,920 ピクセル
    • 画面サイズ:5.5 インチ(対角線長)
  • 例によってかなりの部分の具体的な数字が伏せられていますが、これらよりiPhone 6とiPhone 6 Plusの基本的な設計が共通であることが判ります。

    なお、搭載液晶パネルはIPS液晶であることが明らかにされており、LTEの対応の関係から日本ではソフトバンク・au・NTTドコモの3キャリアすべてで同じモデルA1586(iPhone 6)とA1524(iPhone 6 Plus)が発売されることになっています。

    またNTTドコモとau向けではキャリアアグリゲーションに対応し、NTTドコモではVoLTEが利用可能で、auではWiMAX2+に対応することが発表されています。ちなみに、そういった話題のないソフトバンクですが、実はiPhone 5sで非対応だったバンド41(ソフトバンクがAXGPで使用)のTD-LTEがサポートされたのでLTEの実用性が大幅向上するという地味にうれしい改善があったりします。

    A7よりも低消費電力・高性能化したA8

    今回のiPhone 6/iPhone 6 Plusで目立たないながらも注目されるのが、搭載される統合プロセッサがiPhone 5sのA7+M7からA8+M8となり、完全刷新されたことです。

    特に、A7では28nmの半導体製造プロセスでトランジスタ数が膨大なARM v8系64ビットCPUコアを2基搭載するという無理を行っていたため、筐体サイズに起因するバッテリ容量の制約もあって、連続動作時間の維持にさえ困難が伴う状況でした。

    元々、28nmプロセス向け設計ではチップサイズとトランジスタ集積数のバランスなどから、処理能力と低消費電力をバランスさせた64ビットCPUコアの実現は難しく、A7での64ビットCPUコアの採用は、実のところかなり無理があったのです。

    もちろん、性能面で見ると命令セットの整理・洗練が進んだ64ビットのARM v8アーキテクチャを採用するA7(およびそれに対応する64ビットOS環境)が、Cortex-A15などのARM v7系32ビットCPUコアを採用するクアッドコア構成の各プロセッサと比較して有利なのは言うまでも無いことなのですが、少なくともiPhone 5sについては、「1クォート(約1リットル)のガソリンタンクしかないホンダ」という(メモリを大量に必要とするGUI環境なのにメインメモリ容量が非常に小さく、実際にも実用上問題が頻出した)初代Macintoshを見たときのアラン・ケイのコメントを想起させる程度には、アンバランスな設計であったと言えます。

    そうしたiPhone 5s+A7プロセッサの状況を踏まえて見ると、20nmプロセスでの生産となった今回のA8プロセッサのCPUコアは、「半導体製造プロセスの20nmプロセスへの移行によりようやく真価を発揮できるようになった」A7という位置づけと言えそうです。

    Appleの公表している情報によれば、このA8プロセッサは「20nmプロセス・トランジスタ数20億個」で、CPUパフォーマンスが初代iPhone比で最大50倍、GPUパフォーマンスは同じく最大84倍に達し、エネルギー効率がA7比で50パーセント向上しているとしています。

    また、A7比ではトランジスタ数約2倍、チップのダイサイズが13パーセント縮小、CPU性能が25パーセント増、GPU性能が50パーセント増と謳われており、にもかかわらず筐体サイズ拡大によるバッテリ容量の増強もあって、連続稼働時間がiPhone 5s比でiPhone 6が1.25倍、iPhone 6 Plusでは何と2倍となっています。

    これらから、CPUコアについては製造プロセスのシュリンク(縮小)やCPUコアそのものの設計見直し・機能強化などによって2コア構成のままで25パーセント性能向上を実現するにとどめて、消費電力低減と性能向上のバランスをとっていることが推測できます。

    正直なところ、iPhone 5sの場合、A7プロセッサの仕様を訊いただけでも「これはちょっと見送りかなぁ」と個人的に思っていたのですが、今回のiPhone 6シリーズについてはA8の製造プロセス縮小によって期待される電力節減効果と画面サイズ拡大による筐体平面積の増大、それに公称連続稼働時間の関係から内蔵バッテリ容量も大幅に増えていることが予測できるため、「これならば欲しいなぁ」と筆者は思い始めています。

    性能5割増しのGPU

    iPhone 5s以降に搭載のPowerVR Series 6系GPUのロードマップ
    ローエンドからハイエンドまで1シリーズで対応していたSeries 6に対し、2世代目では若干構成を変えて上位機種となるSeries 6XTと下位機種のSeries 6XEが提供されている。

    一方、GPUについては、iPhone 6でさえ画素数がiPhone 5s比で約37パーセント増、フルHD化したiPhone 6 Plusに至っては何と約185パーセント増となっていることや、競争相手となるAndroid搭載スマートフォン向けプロセッサでGPUの急激な性能向上が続いていることなどを踏まえて、一挙に50パーセントの性能増強を実現しています。

    これについては、A7でImagination Technologies社のPowerVR Series 6に属するPower VR G6430という4クラスタ構成(4つのGPU最小構成単位を束ねた)のGPUコアを搭載していたとされることなどから、Power VR Series 6の後継に当たるSeries 6XT、中でも単純にGPUクラスタ数が1.5倍で6クラスタ構成の最上位モデルであるPower VR G6650を搭載している可能性が高いと筆者は推測します。

    正直、このクラスのGPUだと画面ピクセル数がiPhone 6 Plusのおよそ半分しかないiPhone 6には完全に過剰性能となってしまうと考えられるのですが、現在20nmプロセスでチップ生産を行えるメーカーが極端に限られ、しかもその製造キャパシティも逼迫している状況を考慮すると、iPhone 6と6 Plusでプロセッサを作り分けるのは合理的ではないため、また割と変則的な倍率の液晶パネルを搭載するiPhone 6の場合、後述するハードウェアによる画面スケーリングでの負荷が結構大きくなることなどを勘案して、そのまま同じGPU構成となっているのでしょう。

    なお、画面サイズがこれだけ拡大していることから、少なくともiPhone 6 Plusについては、そして恐らくはiPhone 6も、iPhone 5sよりメインメモリ容量が増強されている可能性が高いと考えられます。

    具体的にいうと、Android搭載のフルHDディスプレイ搭載スマートフォンが、その先駆となったHTC J butterfly HTL21以降メインメモリの2GB以上搭載を墨守していることや、OSが64ビット化されて必要メモリ量が増えていることなどから、最低でも2GBのメインメモリを搭載している可能性が高いと言えます。

    実のところ、CPUコアとOSの64ビット化はメインメモリの増強にこそ恩恵があって、メモリ3GB~3.5GB以上搭載してはじめて真価を発揮すると言える(※注1)のですが、なぜかAppleは64ビットCPU搭載初号機となったiPhone 5sでもメインメモリ増強には消極的であった(たった1GBしか搭載しなかった)ことが知られています。

     ※注1:32ビットCPUで同時に扱えるメモリ容量の最大値は232バイト=4GBですが、ARM系CPUを含め現在の一般的なプロセッサでは、GPUやストレージなどとのデータをやりとりする場所もそのメモリ空間内に割り当てられるため、1GB~1.5GB程度のメモリ空間がそうしたデータのやりとりに消費され、メインメモリは2.5GB~3GB以上積んでも認識されません(こうした方式をメモリマップドI/Oと呼びます)。現行の32bit CPU搭載Androidマシンでメインメモリが最大3GB搭載なのはこれに起因します。そのため、メモリ1GB~2GB搭載ならば、実のところ無理をしてCPUやOSを64ビット化する必要はそれほど大きくありません。むしろ、プログラム本体の64ビットコードへの置き換えによるメインメモリ圧迫の方が問題なくらいです。

    これは先にも述べたようにiPhone 5sがA7プロセッサの製造プロセスゆえに消費電力的な縛りが極端に厳しかったことを勘案すればやむを得ない措置であったと言えるのですが、20nmプロセス化によりそうした制約の解消されたA8プロセッサを搭載するiPhone 6/6 Plusならば(解像度増大によるメインメモリのビデオメモリへの容量割り当て増大も勘案すると)メインメモリはそれこそ4GB搭載されていても罰は当たらない(筆者としてはそうあってほしい)、ということになります。

    なお、今回の機種では内蔵ストレージの容量で32GBのモデルが廃止となり、代わりに128GBのモデルが設定されています。

    新機能が追加されたM8

    A8が半導体製造プロセスのシュリンクのおかげでA7と比較して大幅な性能向上を果たした一方で、モーションコプロセッサのM8は3軸ジャイロ・加速度センサー・近接センサー・環境光センサーといったおなじみのセンサーに加えて、気圧計が追加された程度の改良にとどまっています。

    これは元々M7の段階で十分コンパクトかつ低消費電力で必要十分な性能が備わっていたことを考えると当然の結果と言えます。もっとも、先述の通り最近のウェアラブル機器で流行している気圧計の追加は実現しており、ここではAndroid搭載スマートフォンなどでのトレンドに追従する形となっています。

    高解像度・大画面化したディスプレイ

    iPhone 6(左)とiPhone 6 Plus
    画面サイズと解像度に差はあるが、デザインは完全に統一されている。

    さて、今回の機種で恐らくもっとも注目を集めているのが、大型化してRetina HDと命名されたディスプレイです。

    iPhone 6では対角線長4.7インチで1,334 x 750ピクセル、つまり326ppiの画素密度を実現した特殊な解像度の、iPhone 6 Plusでは対角線長5.5インチで1,920 × 1,080ピクセル、すなわち約401ppiの最近のAndroid搭載ファブレットでは比較的一般的な解像度とサイズの、IPS液晶パネルをそれぞれ搭載しています。

    iPhone 6 PlusのフルHDパネルは入手性や画素の密度などからその仕様となったことが理解しやすいのですが、問題はiPhone 6のパネルです。

    おそらくはiPhone 5sまでの1,136 × 640ピクセル、つまり縦横比71:40に可能な限り近い比率を維持しつつ拡大された画面サイズでも近似の画素密度を維持し、しかもなるべくきりの良いピクセル数となる値、という条件で画素数を決定したものと思われますが、この結果各軸方向にそれぞれ約1.17倍という微妙に中途半端な倍率での画素数増強となりました。

    もっとも、縦横比がほぼ同じでずっと入手性の高いHD解像度(1,280 × 720ピクセル)のパネルを採用した方が(コスト的に)圧倒的に良さそうな感じですが、そこはAppleのこだわりだったのでしょう。

    一方、iPhone 6 Plusの縦横それぞれ約1.69倍というのも微妙な倍率ですが縦横比が16:9で、こちらもiPhone 5sやiPhone 5の画面解像度の縦横比に極力近似の縦横比を保てる解像度となっています。

    元々、iPhone 5で採用された1,136 × 640ピクセルという解像度自体が、iPhone 4Sまでの960 × 480ピクセルという解像度の一方の値を保ったままでHD/フルHD解像度のディスプレイに近い縦横比となるように、画面の拡大縮小処理が可能な限り単純に行えるように選ばれた値であったことを考えれば、このあたりの解像度が選択されたのは一応納得できる話ではあるのですが、それはそれとしても本当に半端な倍率です。

    こうした半端な倍率が採用できるようになったのは、GPUの高性能化によりハードウェアによる画面解像度のスケーリング(拡大縮小処理)機能が十分高性能になって、無理にきりの良い倍率とせずともプロセッサに負担をかけずに画面をスケーリングできるようになったことによると考えられますが、それと同時に、ゲーム用Metal APIと呼ばれる、WindowsにおけるAMD提唱の「Mantle」と呼ばれるソフトウェア階層の薄いグラフィックAPI(※注2)と同じ考え方の新グラフィックAPIの採用と合わせて、iOS 8で画面の表示に関する考え方あるいは方針が変わった可能性も示唆します。

     ※注2:Windowsの場合、現在一般で用いられているDirect XとよばれるAPIでは互換性維持などの必要からハードウェアを可能な限り抽象化して処理を行うようになっており、様々な事情から複雑な階層構造をとっています。そうした構成はオーバーヘッドが大きく、またGPUの性能・機能向上で各社のGPUごとのばらつきが少なくなってきたことから、極力ハードウェアを直にアクセスさせて処理を簡素化しよう、というのが基本コンセプトのAPIです。この考え方はAppleのMetalの他、次世代のDirect X 12でも導入が予定されており、グラフィック描画についての最新トレンドの一つとなっています。

    これまでの場合、例えば16 × 16ピクセルなど画面のピクセル構成を絶対値として扱ってきたわけですが、これをソフトウェアの内部処理として仮想的な値として、(アウトラインフォントのように)ベクトルデータとして持たせるようになった可能性があるのです。絶対値として扱う場合、拡大縮小するとジャギーが目立ちますが、ベクトルデータならばそれが起きずまたGPU内での描画処理でも扱いやすいわけで、十分にGPU性能が向上した今回のA8や前世代のA7のようなプロセッサの場合、下手に固定解像度の画像データよりベクトルデータの方がずっと簡単に扱えるとも言えます。

    実際、やけに端数なパネル解像度とする一方で縦横比16:9(あるいはその近似値)を死守していることから、恐らくこうした考え方が設計コンセプトの根底にあると考えられますが、そうなってくると気になるのは次期iPadです。

    まさか、そちらでも縦横比16:9とするとは考えられませんから、これまで通り縦横比4:3が維持されると推測できますが、そうするとソフトウェア的にはiPhone系の16:9とiPad系の4:3が併存する形になります。

    もちろん、これでも完全に制御不能で混沌と化しているAndroid搭載スマートフォン・タブレットの画面解像度と比較すれば格段にシンプルで、開発もかなり楽だと推測できますが、ターゲットとなる端末によって二種類の縦横比を想定する必要がある、というのは少々考え物で、特にLightning端子経由でのHDMI映像出力では縦横比16:9は事実上前提となっていることを考えると、基本的にはiPhone系の16:9で固定してアプリ開発を行うようにした方が話が簡単になるのではないでしょうか。

    このあたりについてのAppleの考え方を知るには、次世代iPadでどのような画面解像度が採用されるかを注目する必要があるでしょう。

    解像度を変えずに性能向上を図ったカメラ

    メインカメラたるiSightカメラのレンズ位置は背面左上で変化はない。

    今回の2機種でも、メインカメラであるのiSightカメラの画素数はiPhone 4S以来の8メガピクセル構成の裏面照射形センサー搭載のままとされました。

    しかも、レンズは5枚構成、解放絞り値(F値)は2.2でサファイアクリスタル製レンズカバー搭載、と額面上のスペックではiPhone 5sのそれと全く同一です。

    しかし、今回はFocus Pixelsと呼ばれる新しいオートフォーカス機構が搭載され、合焦速度が向上したとされ、そのほか動画撮影機能の強化が図られています。

    このFocus Pixels、説明を読む限りでは最近のデジカメで搭載が流行しつつある像面位相差オートフォーカスという技術にApple流の命名を行ったものと推測できます。

    現在のデジカメで一般的に使われているオートフォーカスは位相差オートフォーカス、つまり被写体から得られた光をミラーを用いて2分割して結像させ、それぞれの光の強度分布を比較して差があれば焦点が合っていないと判定する、アメリカのハネウェル社が考案した特許に由来する仕組みを採用しています。もっとも、この方式はその原理からも判るとおり分光用ミラーなど非常に大がかりな光学系が必要で、性能的には優秀でもとても薄いスマートフォンの筐体に収まるようなカメラに採用できるものではありませんでした。

    像面位相差オートフォーカスはこの問題を解決する画期的な技術で、要するにデジカメの心臓部であるCMOS画像センサーの各撮像素子の上(像面)にこの位相差オートフォーカスのためのセンサーを作り込んでしまうことで光学系に余計なミラーを付加せずに画素(Pixel)単位で位相差オートフォーカスを実現してしまうものです。

    この技術はデジカメでもCMOS画像センサーを製造する半導体製造プロセスが十分微細化して回路的にも余裕のできた2010年にようやく実用化したばかりのもので、それが約4年を経てようやくスマートフォンに搭載できるレベルまで小型化してきたわけです。

    ピントの甘い超高解像度画像とピントの合ったそこそこの解像度の画像のどちらの方が良いのかについては議論がありますが、スマートフォンでのカメラ機能の利用実態を考えると後者の方が望ましいのは少なくとも現時点では自明のことではないかと思います。

    先日ご紹介したHTC J butterfly HTL23での「DUO CAMERA」もそうですが、カメラの光学系の設計を自社で行えないと考えられる日本国外メーカーが揃って画素数向上以外の手法による画質向上策を講じていることには、興味が湧きます。

    なお、iPhone 6 Plusについてはこれまでデジタル補正のみであった手ぶれ補正に、ハードウェアによる光学式手ぶれ補正が別途追加されており、このことからもAppleがメインカメラのピンぼけ対策を特に重視していることが見て取れます。

    初搭載となったNFC機能

    さて、今回のiPhone 6シリーズでは、これまで搭載されていなかったNFC機能が搭載されました。

    これは「Apple Pay」と呼ばれる独自の決済機能との連携のために搭載されたもので、既存のクレジットカード情報を電子化してiPhone内に保存し、指紋認証(Touch ID)と組み合わせて非接触での簡便な決済機能を実現するためのものです。

    もっともこの機能、現状では北米大陸限定でのサービス提供となり、そのためか日本のApple公式サイトではこのNFC機能については全くといって良いほど触れていません。

    また、現段階でNFCを搭載しているのに公式サイトでほとんど触れていない、という事実から、このNFC機能では日本国内で販売されているAndroid搭載スマートフォンのNFC機能ではおなじみのFeliCaへの対応が省略されている可能性が高いと考えられます。

    NFCは決済関係だけではなく、周辺機器連携やペアリングにも利用できるため、仮にApple Payが日本でサービス提供されなくても一定のメリットがあるとは思いますが、Android搭載スマートフォンからの乗り換えを考えると、FeliCa非対応の可能性が高いことはネックとなるかも知れません。

    着実に前世代機の弱点をつぶしてきた

    iPhone 6シリーズではゴールド、シルバー、スペースグレイの3色が提供される。

    以上、今回の2機種の仕様をざっと見てきたわけですが、総じてiPhone 5sでネックとなっていた部分が改善あるいは改良されており、非常に完成度の高い機種であるとの印象を受けました。

    もちろん、大型化による弊害も皆無ではないですし、競争相手となるAndroid搭載スマートフォンでは4.7インチクラスでフルHD解像度の液晶搭載の機種もあるため、スペック的には無敵というわけではありません。

    実際、今回採用の画像解像度は最近のハイエンドAndroid搭載スマートフォンでのそれと比較するとやや低い印象があるのですが、筆者の経験から言うと正直5.0インチでフルHD解像度でもかなり操作性に難がある(画素が小さすぎてボタン選択などの操作しにくい)ため、それより少し画素密度を下げたiPhone 6 Plusの画面サイズおよび解像度は十分納得の行くものですし、iPhone 6のそれも(特殊解像度パネルの安定調達は大丈夫なのかという不安要素はあるものの)、画素密度を既存機種から極力変えずにサイズ拡大を行っており、操作性に対するAppleのこだわりを感じさせます。

    付け加えて言えば、これまでの機種とは異なり筐体のエッジ部分を丸くデザインすることで大型化による威圧感を抑え、さらに薄く設計することでワイシャツの胸ポケットに入れて使う時の実用性にも配慮が見られ、このあたりのデザイン処理の巧さには正直感心させられました。

    後は、防水防塵対応となれば完璧なのですが、さすがにこれは無理なのでしょうか…。

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