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戦車マニアが『World of Tanks Blitz』を遊んでみる

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by [2014年7月09日]

普段日常生活の中で運転、あるいは操縦できない乗り物を操ってみたいという願望は、ゲームのテーマとしては割と一般的なものの一つです。

中でも特に戦車は、日本では陸上自衛隊にでも入隊しない限りまず本物を操縦する機会は得られないため、それはそれなりに大きな需要があったはずですが、これを題材にした3Dシミュレーター系の運転・操縦を行うタイプのゲームはなかなか現れませんでした。

その理由は色々ありそうなのですが、筆者の記憶する限りはじめて「まともに遊べる」3D戦車シミュレーターとなったのがPlay Station・Dream Cast用ゲームである「Panzer Front」(1999年)で、このゲームでは戦車の操作にコントロールパッドについている多数のスティック・ボタンのほぼ全てを駆使しなければならなかったことを考えると、本物だと最低でも3人、多い車種だと6人もの乗員を要する戦車の複雑な操作体系が邪魔した面があったと言えそうです。

そんな、割と難儀でマニアックなゲームになりがちな3D戦車ゲームですが、このほど、ベラルーシのWargaming.net社によって開発され、全世界で8千万人の登録プレイヤーを抱えるとされるパソコン用(Windows版)「World of Tanks(WoT)」をiOS向けに移植した、「World of Tanks Blitz」が提供開始されました。

今回はそんな「World of Tanks Blitz」に迫ってみたいと思います。

まずはユーザー登録から

起動時に表示されるログイン/新規登録案内画面
ここでも示されているように、WoTをプレイするために作成したアカウントでそのままログインできるようになっている。

このゲームはWargaming.net社が設置したサーバに対して各ユーザーの端末にインストールされたクライアントソフトウェアがアクセスすることで、プレイが進行する仕組みとなっています。

このため、各ユーザーは最初にこのサーバ上でユーザーアカウントを作成・登録する必要があります。

ただし、すでにパソコン版WoTで遊んでいてそちらのアカウントを持っている人なら、そのままそのアカウントでログインできるようになっています。

チュートリアル

試験場全景
遮蔽物が多く戦車の機動には厄介な場所である。

アカウントを作成しログインを行うと、「試験場」を舞台としたチュートリアルが始まります。

ここでユーザーが使用するのはアメリカが開発し第二次世界大戦中の同国陸軍で主力戦車であったM4“シャーマン”中戦車です。

マニアックなことを言えば、これは転輪側面が完全に露出するHVSSサスペンションを装備し、一枚板の前面装甲にほぼ垂直に切り立った側面装甲板を溶接組み立てした構造から車体は砲弾誘爆対策の施された後期型で、細身で短い砲身を備える扁平な砲塔を搭載していることから75mm砲搭載のタイプと考えられます。

M4“シャーマン”中戦車
見るからに弱そうな量産戦車の代表例だが、これでさえまだしも強力だったことが後で発覚する。

ちなみに、パソコン版のWoTにも同様のチュートリアルが用意されているのですが、こちらではドイツ軍の後期の主力戦車であったV号戦車※が登場していて、こっそり差がつけられていたりします。※パンター(豹)戦車とも。長砲身7.5cm砲搭載で装甲も強固で、同じ中戦車と言ってもまともに戦えば75mm砲搭載のM4とは比較にならないほど強い。

このチュートリアルでは、このM4戦車を画面で指示されたとおり、画面上の仮想ジョイスティックなどをタップしたりスワイプさせたりして操作することで各種操作を学びます。

チュートリアル画面
左下の仮想ジョイスティックを用いて車体の信地旋回操作や前後進などを操作する。チュートリアルそのものはご覧のとおりなかなかわかりやすく構成されている。

基本的には、車体の回転や前後進などと、砲塔の回転操作、精密射撃を行うためのスナイパーモードのオンオフ、それに砲撃の4つの要素を操作することで、戦車を砲撃に適した地点まで移動させ、砲塔を旋回させ、さらに狙いをつけて敵戦車を攻撃する、という本物の戦車の行動を再現しているのですが、実はこれが思ったよりも難しくなかなか指示通りの操作ができません。

本物の戦車の場合、左右の履帯(※いわゆるキャタピラ)の回転数差で進行方向を変えたり、あるいは左右で逆回転させることでその場での方向転換(※これを信地旋回といいます)を実現したりしているのですが、画面の物理的なサイズが小さいiPhoneの場合、仮想ジョイスティックのサイズが小さいこともあってどこまで指をスワイプさせれば前後進し、どこに指を置けば信地旋回が始まるのかがかなり判別しにくいのです。

このあたりは習うよりは慣れろで、回数をこなせば体で覚えられそうな気もするのですが、結構ハードかつタイトな操作が必要で、ここで脱落したり挫折したりする人もいそうです。

いきなりラスボス登場

前方中央に停車中のIII号ないしはIV号戦車

ともあれ、このチュートリアルを進めてゆくと、まずドイツ軍のIII号ないしはIV号戦車(※「Pz.III/IV」と表示され、どちらかは判然としません)が停車状態で現れ、これに攻撃を行うことが指示されます。

ここでは案外あっさりと前面装甲を貫通して敵を撃破し、「あれ? イージーエイトやファイアフライ(※共にM4の長砲身76.2mm砲搭載型で強力)以外のシャーマンってこんなに強かったっけ??」と首をかしげながら次へ進むと、スナイパーモードの使用を促すガイダンスが表示されます。

どうやら、前方の岩陰に敵戦車がいるようです。

そこで早速スナイパーモードボタンをタップし、件の敵戦車に照準を合わせてみると、とんでもない敵がいました。

車体後方上部に作りつけられた、大きくて斜めに傾斜した装甲板で覆われた戦闘室と、その前面から突き出した長く雄雄しい砲身、そして機銃のない車体前面。

スナイパーモードの使用を促すダイアログ表示
遠距離だと敵戦車のシルエット判別が難しいため、このスナイパーモードは砲撃では必須の機能である。

Sd.Kfz.184 フェルディナント
フェルディナント・ポルシェ博士設計の試作重戦車(VK4501(P))をベースとして開発された重駆逐戦車。ちなみに車体前面左に車載機銃がないのでこれは後期改造型のエレファントではない。

Sd.Kfz.184、ティーガー(P)戦車駆逐車、あるいはフェルディナント。

製造された90両全車が第653・654重戦車駆逐大隊に集中配備されて独ソ戦史上、いや世界史上最大の戦車戦となったツィタデレ作戦に参加し、最激戦区にピンポイントで投入されては並みいるソ連軍戦車の攻撃をほぼすべてはじき返し、それらを文字通り「駆逐」してソ連軍将兵を恐怖のどん底に叩き落した、第二次世界大戦中でも有数の凶悪重駆逐戦車がそこに鎮座ましましていたのでありました。

…貧弱なM4中戦車でいきなりフェルディナントを撃破しろとか、どんな無理ゲーだよ。

操作法などを案内するチュートリアルだから以後のゲームプレイには直接影響しないとはいえ、画面上に表示された「敵戦車を撃破せよ」の文字を見て途方にくれたのは、おそらく筆者だけではないでしょう。

結論から言うと、フェルディナントは普通にやってM4たった1両で「撃破」できる相手じゃありません。

ありがちなRPGに例えれば、装備が「ぬののふく」に「ひのきのぼう」しかなくて経験値ゼロの初心者がいきなりダンジョンのラスボスたるドラゴンにエンカウントしたようなもので、全く勝ち目がありません。

それでもチュートリアルの指示だから何らかの意図があるに違いない、と考えて指示通りスナイパーモードに切り替えて砲撃を開始したのですが、何度砲弾を側面装甲に直撃させてもろくに装甲強度を示す数値が減りません。

まだしも薄いとされる側面装甲でこれなのですから、第一次世界大戦期の巡洋戦艦の装甲にも匹敵する200mm厚の重装甲を備えた前面なら、当てても完全に弾かれるのがオチ(※本物のフェルディナントでも、敵戦車の砲撃で前面装甲を貫徹できた例はほぼ皆無であったという報告が残っています)でしょう。

果たして、何度か砲撃を繰り返すと「側背面を狙え」と表示され、別の場所へ移動して砲撃を行うよう指示されました。

…わかっちゃいたことですが、第二次世界大戦後期のドイツ重戦車の装甲強度は法外です。

移動する敵戦車に砲弾を直撃させよ

もっとも、ここで指示通りの場所に移動して砲撃を行っても、M4の貧弱な戦車砲ではフェルディナントを撃破することはできず、それを取り繕うように背後を通過してゆく他の戦車を狙うよう指示が変更されます。

苦労して移動する敵戦車に砲弾を命中させ、撃破した直後
手間はかかるが、達成感はそれなりに大きい。ちなみにフェルディナントは左に健在のままである。

ここで登場するのはIV号戦車、つまり第二次世界大戦中を通してドイツ軍機甲師団の主力であり続けた中型戦車です。

さすがにこのクラスになると、M4でも砲弾を要所に何度か直撃させれば撃破できるのですが、このIV号戦車は意外と高速移動するため、弾着時の敵位置を計算して予測射撃を行わねば砲撃がかすりもせず、いつまでもチュートリアルが終わらない、ということになってしまいます。

この予測射撃は敵戦車の移動速度や自分の戦車の戦車砲の初速などから命中させるのに必要な砲の向きや砲弾の発射タイミングを理解していないとなかなか当てるのが難しく、ここでも挫折する人も多そうです。

ともあれ、このIV号戦車を撃破できればチュートリアル終了で、いよいよ本格的なプレイが始まります。

M4が強力に見える初期配置の3戦車

Leichttraktor
ドイツが第一次世界大戦の敗戦後、極秘裏に開発した試作軽戦車。「こんな戦車で大丈夫か?」と言いたくなる程度には貧弱である。

チュートリアルが終わると画面はガレージに切り替わり、初期状態ではドイツ・アメリカ・ソ連の3国の戦車が表示されます。

まずはこれらを燃料や砲弾を補給したり、あるいは搭載機器の換装を行うなどして、そのうち1両を選んで出撃するわけですが、ここで筆者は愕然とすることになりました。

そこで表示されていたのは、ドイツ軍が「Leichttraktor」、ソ連軍が「MS-1」、そしてアメリカ軍が「T1 Cunningham」で、いずれも第一次世界大戦終了直後の時期に作られた、非力で小型の軽戦車ばかりだったのです。

ちなみに「Leichttraktor」というのはドイツ語で「軽トラクター」のことで、第一次世界大戦で敗戦しヴェルサイユ条約で戦車の保有を禁じられたドイツが、ソ連との間で秘密条約(ラパッロ条約)を結んで同国領内の演習場にこっそり持ち込んで試験していた、極秘開発の試作戦車2機種の一方に当たります。

人目をはばかって戦車ではなく「トラクター」である、と称したことでもわかるように、これは本当にトラクターに毛が生えた程度の習作というべき存在で、とても真正面から戦車戦を挑めるような代物ではありません。

MS-1
ソ連がフランスのルノーFT17戦車を模倣して開発した軽戦車。元が第一次世界大戦中の量産戦車であったため、3種の中では一番実用性が高い。T-18ともいう。

T1 “カニンガム”
アメリカ陸軍が試作した軽戦車。何度も改良型が開発されたがいずれも試作止まりで、量産されなかった。

他の2機種も似たり寄ったりで、つまり早急に戦闘でクレジットとEXP(経験値)を稼ぎ、強化なり何なりをしないとどうにもなりません。

ドイツの戦車技術ツリー
戦車の進化・改良過程がツリー構造で示される。もっとも、進化したら必ずしも良いとは限らないのがこの種の系統図の厄介なところである。

つまり、当面は敵戦車の撃破や敵陣地の占拠よりも何よりも、出撃した戦場で敵に撃破されず無傷でやり過ごすことが至上命題となります。

それのどこが楽しいのだ、と言われそうですが、十分なクレジットとEXPを貯めて少しでも強い戦車に乗り換えないことには、まともな戦闘にすらならないのですから仕方ありません。

このあたりはある程度各国戦車の発達史や改良の系統樹を知らないとどうしようもない部分で、この種の戦車ゲームのハードルを高くしている主因の一つなのですが、こうしたマゾゲーめいた峻厳なマニアックさ故にオリジナルのWoTは全世界で熱烈な支持を受けているというのですから、なかなかさじ加減の難しい部分です。

「プレイヤーを待っています」
この種のネットゲームではありがちな参加プレイヤー待ち画面だが、このゲームではよほど参加プレイヤー数が多いのか、ほとんど見る間も無く開始となる。

なお、この出撃の際には適宜戦場や参加プレイヤーが自動選択されるのですが、筆者の試した範囲ではほとんど待たされることはありませんでした。

この種のゲームではレベル的に見合ったプレイヤーを抽出してマッチングを行うのが結構な難問で、プレイヤー数が少ないとしばしば長時間待たされたりするのですが、この「World of Tanks Blitz」ではむしろ異様なほどスピーディに戦闘開始となっています。

よくできたゲームだが最大の問題は
プレイヤーに求められる基礎教養か

以上、「World of Tanks Blitz」のユーザー登録から序盤の戦闘開始までを見てきましたが、さすがに多くの登録プレイヤーを抱えるWoTのモバイル版だけあってかなりよくまとまった操作系とスピーディな応答が得られており、アプリとしての完成度はかなり高いとして良いでしょう。

問題は、現時点ではiOS版しか提供されておらずスマートフォンでは画面サイズの小さなiPhoneでしか遊べないことと、プレイするにあたって相当にマニアックな知識が基礎教養として要求されることの2点です。

筆者がプレイした限りでは、iPhone 5/5s/5cの4インチディスプレイでは密度感は十分なものの画面サイズが小さすぎて視認性にやや問題があり、ここはどうせなら5インチフルHD解像度が当たり前になっているAndroid搭載スマートフォンで遊びたい、と思ってしまいました。

また、最近ではアニメ「ガールズ&パンツァー」のおかげ(※ちなみにWoTもこの作品とタイアップキャンペーンを展開していたりします)で、戦車というものがどういう挙動をするものか、またどのような攻撃が有効なのか、といった事柄について以前よりもよほど知られるようになっていますが、このゲームの場合それではとても足りない程度にはマニアックな知識を要求される一面があって、何も知らない初心者がプレイするには相当厳しいのではないでしょうか。

もっとも、そのマニアックさこそがこのゲームの魅力の一つであるわけで、戦車に興味のある人にはぜひ十分な理論武装の上で挑んで欲しいと思います。

アプリ基本情報

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World of Tanks Blitz

配信元:Wargaming.net

iOS価格:無料

※記事内の情報はすべてレビュー時(2014年07月09日)の情報です。

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