Motorola Moto Z

合体するスマホ ~モトローラ、Moto Zシリーズを国内発売~ 前編

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by [2016年10月07日]

Motorola Moto Z

Motorola Moto Z

最近では薄型化が進んだこともあってあまり見かけなくなりました(※注1)が、少し前までのノートパソコンでは「ドッキングステーション」「ウルトラベイ」などと称してノートパソコン本体には携行で必要最小限となる機能だけを搭載し、それ以外の機能を本体と接続、一体化して動作するベース状の周辺機器に割り振る、という構成の機種が珍しくありませんでした。

 ※注1:本当はそういった薄型の機種こそ必要な筈なのですが…。

周辺機器と接続するためのUSBポートなどの接続端子にしろ、ディスプレイ出力端子にしろ、光学ドライブにしろ、本格的に必要となるのはデスク上での利用の際の筈だという割り切りによって誕生したこの種の構成は確かに便利で、タブレットでのキーボード搭載カバーというのもある意味この種の機器の子孫と言えそうなのですが、流石にコンパクトであることが重視されるスマートフォンでは、この種の「本体とドッキング・一体化して機能を拡張するタイプの周辺機器」はバッテリー内蔵ケースを別にすればこれまでほとんど市販されることはありませんでした。

これは恐らく、こうした周辺機器を機種毎の機能・性能、そして筐体サイズに合わせて専用で設計せねばならないのに、その本体の製品としてのライフサイクルが半年~1年足らずで、販売数を読むのが難しいこと、ここ数年接続に利用できるインターフェイス規格がどんどん拡張され高性能化していったためコネクタ規格を含め短期間で急速に陳腐化する恐れがあったこと、そもそも周辺機器を多数ぶら下げて利用できるほどスマートフォンそのものの性能が高くないこと、またそんな余計な機能をつける位ならそのスペースを使ってバッテリーを増量しろ、性能を強化しろという声が強いことなどの事情によるものと推測できますが、ともあれ男の子の大好きな内蔵フックやラッチ、専用コネクタなどによる「合体」は少なくともスマートフォンに限って言えば、実質禁じ手に近い状況となってきたのです。

しかし、接続に利用できるインターフェイス規格が事実上USB 3.xに収斂し、ディスプレイサイズもある程度の範囲に収まり、プロセッサ性能も下位のパソコンやタブレットに比肩するかこれを上回るほどのレベルに達するようになってくると話は違います。

そしてこのほど、世界有数の大手パソコンメーカーであるLenovoの傘下に入ったモトローラから、この「合体」を取り入れたMoto Z・Moto Z Playの2機種と、そのオプションであるMoto Modsが日本で発売されることになりました。

今回はこれらについて考えてみたいと思います。

主な仕様

Moto ZとMoto Z Playの記事執筆時点で公表されている主な仕様は以下のとおりです。

まずはMoto Zから。

 Moto Z フロント側

Moto Z フロント側

  • OS:Android 6.0.1 Marshmallow
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 820(1.8 GHz クアッドコア)
  • サイズ:75.3×153.3×5.19 mm
  • 重量:136g
  • メインスクリーン
    • 種類:有機EL(AMOLED)
    • 解像度:1,440×2,560ピクセル(WQHD解像度)
    • 画面サイズ:5.5インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:4GB LPDDR4 SDRAM
    • フラッシュメモリ:32GB/64GB
    • 拡張スロット:microSD (最大 2 TB)
  • Moto Z 背面下部に並ぶ16個+αの金色の接点がMoto Modsとの接続端子である

    Moto Z 背面
    下部に並ぶ16個+αの金色の接点がMoto Modsとの接続端子である

  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n(2.4GHz/5GHz)
  • Bluetooth:Ver.4.1 LE
  • SIMカードスロット:Nano SIM
  • 電池容量:2,600mAh
  • 防水:撥水コーティングあり
  • 防塵:なし
  • NFC:対応
  • TVチューナー:なし
  • 生体認証:指紋認証

次はMoto Z Play。

Moto Z Play フロント側エクステリアデザイン的にはMoto Zとほぼ同一である

Moto Z Play フロント側
エクステリアデザイン的にはMoto Zとほぼ同一である

  • OS:Android 6.0.1 Marshmallow
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 625(2.0GHz オクタコア)
  • サイズ:76.4×156.4×6.99 mm
  • 重量:165g
  • メインスクリーン
    • 種類:有機EL(Super AMOLED)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:5.5インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:3GB LPDDR3 SDRAM
    • フラッシュメモリ:32GB
    • 拡張スロット:microSD (最大 2 TB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:16メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Moto Z Play 背面当然ながらカメラ部と接続端子の位置関係はMoto Zに揃えられている

    Moto Z Play 背面
    当然ながらカメラ部と接続端子の位置関係はMoto Zに揃えられている

  • Wi-Fi:
    • 対応規格:未公開
  • Bluetooth:Ver.4.1 LE
  • SIMカードスロット:Nano SIM
  • 電池容量:3,510mAh
  • 防水:撥水コーティングあり
  • 防塵:なし
  • NFC:対応
  • TVチューナー:なし
  • 生体認証:指紋認証

プロセッサとメモリ

まずは、両機種の搭載するプロセッサとメモリについて見てみるとしましょう。

単純に搭載プロセッサとメモリのグレードだけで言えば、同じQualcommのSnapdragonシリーズでも最新最強のハイエンドモデルである820を搭載しメモリも消費電力面で有利なLPDDR4 SDRAMを搭載するMoto Zの方が、ミドルレンジに位置する625搭載でメモリもLPDDR3 SDRAMで一世代古く容量も3GBと少なめなMoto Z Playよりも有利となります。

しかし、プロセッサの半導体製造プロセスルールの観点で言えば820と625は同じTSMCの14nm FinFETを利用して製造されているためこの点では差は無く、また高性能なKryoコアを搭載するとはいえ、そのKyroコアを2基とCortex-A53コアを2基搭載し最大1.8 GHzで駆動する820とCortex-A53コアとはいえ8基を搭載ししかも最大2.0 GHzで駆動する625とでは、使用状況によってはむしろ625の方が有利なケースもあり得ます。

もちろん、本当にシングルタスクの負荷が「重い」ゲームアプリなどを動作させるならば820が地力を発揮することが期待できるのですが、CPUコアの並列度が優先されるようなアプリの場合はコア数が多い625の方が構造的に有利になる(※注2)でしょう。

 ※注2:今のAndroid搭載スマートフォン/タブレットでのアプリ利用の実態を考えると、そこまで多数のCPUコアを酷使するようなアプリは、ベンチマークテストの類を除くとほとんど無いと言えますが。

なお、Moto Zでは本来最大2.2GHzで駆動可能なSnapdragon 820を最大1.8GHzで使用していますが、これは画面解像度が対応上限より低いWQHD解像度となってある程度熱的に余裕のあるGPUと合わせて、発熱量過大となることを避けたものと考えられます。

最近の統合プロセッサでは半導体製造プロセスルールの制約から発熱面で難しい問題を抱えている機種が少なくなく、このSnapdragon 820もその1つです。下位のSnapdragon 625搭載機種よりさらに1段最大動作クロック周波数を下げざるを得なかったあたり、熱的な問題を実用的なレベルに収めるために苦労したことが判ります。

また、Moto Z Playでメモリが一世代古いLPDDR3なのは、Snapdragon 625のメモリインターフェイスが933MHz駆動のこのタイプのものしかサポートしていないためです。

これに対しSnapdragon 820の場合はLPDDR4で1866MHz駆動、しかもデュアルチャネル動作をサポートしていますから、格段にデータ転送帯域性能が向上していることが見て取れます。

画面サイズに合わせたGPU

もっとも、これらSnapdragon 820・625に内蔵されたGPUの性能や、接続されるディスプレイパネルの解像度を考えると、Snapdragon 820搭載のMoto Zは余裕が無いわけではありませんが、それはそれでぎりぎりの設計と言えそうです。

というのは、Moto Z搭載ディスプレイのWQHD解像度とMoto Z Play搭載ディスプレイのフルHD解像度で画素数を比較するとMoto Zの画素数はMoto Z Playのそれの約1.78倍となり、メモリの帯域性能やプロセッサ内蔵のGPUの性能も同程度引き上げねば体感速度で劣る結果になるためです。

また、扱う画面解像度が約1.78倍ということは3Dグラフィクス処理で使用されるメモリ量も増えるということで、メインメモリ容量の1GB増量は全部が全部グラフィックス処理に利用されるわけではないにせよ、一定程度はこの解像度差によって消費されることに留意する必要があります。

つまり、メモリが増えたといってもその一部をGPUに割り当てるメモリ共有の仕組みを利用している現在のスマートフォンの場合、画面解像度が引き上げられればあっという間にその増分は相殺されてしまうということなのです。

そうした観点では、これら2機種の統合プロセッサとメモリ、それに画面解像度の組み合わせはそうした事情に最適化した構成であるとみることができるでしょう。

Moto Z Playのディスプレイパネルは「Super」AMOLEDと明記されている

Moto Z Playのディスプレイパネルは「Super」AMOLEDと明記されている

一方、ディスプレイパネルについては、Moto Zが「AMOLED」という表記であるのに対し、Moto Z Playにはわざわざ「Super AMOLED」と記載されており、この相違が正しければ前者は画面解像度からも恐らく韓国LG電子、後者は韓国サムスンのパネルを搭載している可能性が高い(※注3)と推測できます。

 ※注3:先日、シャープが有機EL生産のための設備投資を発表しましたが、現状ではこれら韓国メーカー2社が有機ELパネル生産では最大手です。

レーザーオートフォーカスが採用されたメインカメラ

さて、Moto Z・Moto Z Playでは画素数こそ異なるものの、メインカメラのオートフォーカスにレーザーセンサーが利用されています。

Moto Z Play カメラモジュール レンズ群構成イメージご覧のとおりイメージセンサーの前に6枚のレンズが並んでいる。この機種には光学式手ぶれ補正機能は搭載されていない

Moto Z Play カメラモジュール レンズ群構成イメージ
ご覧のとおりイメージセンサーの前に6枚のレンズが並んでいる。この機種には光学式手ぶれ補正機能は搭載されていない

興味深いのは、プロセッサスペックが若干低いMoto Z Playの方がより高い解像度と像面位相差オートフォーカスを実現したカメラを搭載する一方で、Moto Zには画素数が13メガピクセルと若干少ないものの光学式手ぶれ補正機能を搭載したカメラモジュールが搭載されていることです。

これもまた、両機種のカメラモジュールがメーカーさえ異なる可能性があることを示唆するものですが、これら2機種の搭載カメラモジュールについてモトローラは一切公表しておらず、明らかになっていません。

ただ1つ言えるのは、これだけ違うと撮れる画にも同条件下で結構な違いが発生する可能性があるということで、両機種の実機を店頭で比較してから購入したいというユーザー、中でも特に写真を結構頻繁に撮る方の場合は、これらの機種のメインカメラで写真を撮ってみるなどして、それらの特性差を把握の上でどちらを選ぶかを決めるべきでしょう。

折角のデュアルSIMスロット搭載機種なのだが…

さて、これら2機種はハードウェア的には2基のnano SIMスロットを搭載していて、中国など一部の国では両方とも利用できるものの、それ以外の国では同時に両スロットに挿したSIMカードを利用することは出来ないという仕様になっています。

このあたりの事情から、これら2機種はデュアルSIM同時利用可能なのは2Gと3G/4Gを併用する場合のみ、という古いDSDS(Dual SIM/Dual Standby)タイプである可能性が考えられます。

ちなみに、最近の機種ではデュアルSIMスロット搭載でもGalaxy Note 7がそうだったように一方のSIMスロットが実はmicro SDメモリカードインターフェイスと排他利用、つまりmicro SDを利用する場合はデュアルSIMスロットで利用出来ないタイプの機種が大勢を占めているのですが、Moto Z Playについてはmicro SDスロットが別に独立して存在する設計となっています。事実上シングルSIMでしか使えない日本ではどちらでも構わないようなものですが、より画素数の多いカメラを搭載するMoto Z Playでそのような仕様となっていること自体は素直に歓迎できるものです。

なお、これら2機種ではそのmicro SDスロットについて最大2TBまでのメディアが利用可能であるとされています。

もっとも、現状では市販されている最大容量のmicro SDXCカードでも容量200GBといったところ(※注4)ですから、この数字は単にmicro SDXCの規格上の上限値を案内しているのみなのでしょう。

 ※注4:モトローラ公式サイトの両機種製品紹介ページでは注意書きとして「現時点で利用できる最大容量は200GBです」とアナウンスしています。

以下、後編に続きます。

▼参考リンク
Moto Z | Motorola
Moto Z Play | Motorola
Moto Mods Landing Page | Motorola

Snapdragon 820 Processor with X12 LTE | Quad-Core CPUs | Qualcomm
Snapdragon 625 Processors with X9 LTE Specs and Details | Qualcomm

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