LG電子 G2 L-01F背面メインカメラ部メインカメラの直下に音量調整ボタン(上下)に挟まれる形で電源ボタンが突き出して置かれている。音量調整ボタン(上)操作時にメインカメラのレンズ部に指が触れる可能性が高いレイアウトになってしまっている。

ボタン配置の変更が物語る設計の真意 ~G2 L-01F/isai LGL22~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2013年10月17日]

NTTドコモ向け G2 L-01F(左2台)とau向けisai LGL22(右4台)
同じワールドワイドモデルを基本とする姉妹機種だが、その筐体設計はコンセプトレベルから大きく異なる。

スマートフォンに限らず、手で操作する機器全般に共通する問題の一つに、利き腕による操作性の変化があります。

例えばパソコンのマウスに特に顕著なのですが、形状やボタンの配置を意図的に左右非対称にして、「右腕が利き腕の人間には使いやすい」ようにデザインされた機器が、この世の中にはあふれかえっています。

それどころかバリアフリーが謳われ、車椅子の利用者には配慮して幅を広くした改札口が用意されるのが一般的な駅の自動改札機でさえ、その投入口やタッチパネルが進行方向向かって右側、つまり右利きの人間に都合が良いように配置されていて、左利きの利用者に対する配慮は欠片ほどもなかったりします。

かように冷遇されている左利きですが、マウスなどでも左右対称の形状・ボタン配置としてユニバーサルデザインが叫ばれるような昨今の情勢下ではこれを無視できなくなってきたらしく、今夏に韓国LG電子が開発・発表したG2というワールドワイド端末で右利き・左利きに関係なく同等の操作が行える新しいボタンレイアウトが登場、この種の新しい操作系に関心の強い人々の間で注目を集めていました。

しかし、実際に発表された端末の仕様や構造を子細に検討してみると、どうもこの新しいデザインは左利きのユーザーに配慮した、というよりはむしろ別の意図でこうなったように見えます。

そんなG2ですが、このたび2013年―2014年冬・春モデル扱いでNTTドコモがほぼワールドワイドモデルのまま「G2 L-01F」として、auが2013年冬モデル扱いで筐体デザインを大きく変えて「ユニバーサルでない」右利き特化の操作体系とし、その他一部仕様も変更の上で「isai LGL22」としてそれぞれ国内発売するという意外な展開となりました。

そこで今回は2キャリアのモデルでどのような違いがあるのかを、特に操作体系と構造を中心に検討してみたいと思います。

LG電子が提案するユニバーサルな操作体系

左利きでも右利きでもどちらでも問題なく使える操作体系、と大仰に書いてしまいましたが、実のところワールドワイドモデルのG2およびNTTドコモ向けのG2 L-01Fで採用されたボタン配置は、それほど難しいことをしているわけではありません。

LG電子 G2 L-01F背面メインカメラ部
メインカメラの直下に音量調整ボタン(上下)に挟まれる形で電源ボタンが突き出して置かれている。音量調整ボタン(上)操作時にメインカメラのレンズ部に指が触れる可能性が高いレイアウトになってしまっている。

単に、これまで一般的な端末で左右非対称な配置、具体的には縦置き時に筐体右側面となる位置に置かれるのが通例であった音量ボタンを、背面上部中央(縦置き時)に置かれたメインカメラの直下に、音量調整(上)・電源・音量調整(下)の順でタンデムに配置しただけです。

言葉にすればたったこれだけのことですが、こうすることで物理的なボタン配置が左右対称となるため、左右どちらが利き手でも同じ操作性が得られるのです。

筆者個人の実体験として、側面の音量ボタンは筐体を握る際に間違って押してしまうことがままあって、もう少し何とかならないものか、と常々思っていました。そのため、端末筐体を掴んで持つ可能性のある場所からボタンを排除したこのレイアウトは、なかなかよく考えられた合理的なものだと思います。

ただしこのG2の場合、音量調整(上)の直上に連続してメインカメラがマウントされているため、音量調整の操作などでこのボタンを手探りで押そうとした際に間違ってカメラのガラス面に触れてしまう可能性があります。

手探り操作で判別しやすいように電源ボタン部分を盛り上げた形状としてあるのですが、カメラと音量調整(上)の間にもストッパーとなる突起などを設けるべきではないでしょうか。

LG電子 isai LGL22メインカメラ部
姉妹機種であるG2とは異なり、ボタン類を一般的な筐体側面に配置しており、メインカメラ直下にはLEDによるフラッシュ/ライトや赤外線通信ポートが置かれている。メインカメラのレンズ鏡胴部の長さを確保するため、レンズ周辺が盛り上がったような形状となっていることに注意。

一方、このあたりの問題を危惧したのかどうか、au向けのisai LGL22ではメインカメラ位置は背面中央のまま変更せずに音量ボタンと電源ボタンを一般的な位置に戻し、メインカメラ直下にはフラッシュ用LEDや赤外線通信ポート(※NTTドコモ版G2は赤外線通信に対応しません)をタンデムに配置する、というオーソドックスなデザインに変更しています。

このレイアウトというか筐体デザインはauオリジナル、つまりLG電子の提案ではなくau側の主導で決定されたのものとのことですが、それはLGの提案したG2のユニバーサルデザインをauが拒否したとも取れます。

現時点でこのあたりのことについてau側はコメントを出していないようなのですが、両利き対応というG2のレイアウトについてauがどのように捉え、評価していたかは是非知りたいところです。

5.2インチパネル搭載なのに5.0インチパネル搭載機並の筐体サイズ

LG電子 G2 L-01F(左)とisai LGL22(右)
同じ狭額縁のIPS液晶パネル搭載でも、余計なボタン類が側面に無いG2の方が額縁部が細く作れている。

さて、G2 L-01Fのこのボタン配置は、液晶パネルの裏側にスイッチ機構のための基板を重ね、さらにボタンのストロークを確保する必要があるため、筐体の厚みが必然的に増えるのですが、このG2の場合は光学手ぶれ補正機構を組み込んだメインカメラユニットを搭載しているため、レンズ鏡胴部の長さを確保する必要から筐体そのものに一定の厚みが必要となっています。

従って、それとの連続性を持たせて造形処理を行えば、ボタンのスイッチ機構を液晶パネルの裏面に配置してもそれによる厚みの隠蔽が可能で、実際にもそのような処理がなされているようです。

また、厚みは増えるものの筐体の細いエッジ部分にスイッチ機構やそのための開口部を設けずに済ませられるため、ボタンを裏面に配したこのレイアウトは筐体の強度設計上有利で、さらに開口部の補強など煩雑な処理も不要となるため、一般的な配置のisaiと比較して筐体構造そのものが単純化できます。

このエッジ部分に開口部を持たせつつ強度を確保するというのは筐体全体のコンパクト化要求を考えると実はなかなかの難事です。

CEATEC 2013で展示されていたSONY Xperia Z1用外周フレーム部の加工工程
側面に開口部がなければ、無理にここまでする必要はない。

例えば、先日ご紹介したソニーのXperia Z1ではアルミ合金の厚板から削り出しで枠状部材を形成するという力業で必要な強度を確保していたのですが、ここに余計な開口部を設けずに済むのなら、わざわざそんなコストも手間もかかる設計を採用する必要はありません。

また、筐体側面のスイッチ機構はディスプレイパネルの実装にあたっても障害となります。スイッチ部分だけに余計な部品が筐体内側へ向かって突き出すことになるのですから、パネルとそれらの部品が干渉するのは当然と言えば当然の話です。そのため、これを背面に逃がせるなら、それだけでも従来より更にスリムな筐体でより大きなディスプレイの搭載が可能となります。

事実、G2 L-01Fではオーソドックスなボタン配置のisai LGL22と比較して筐体幅が1mm小さくなっており、LG電子独自開発の狭額縁IPS液晶パネルを採用したこともあって、より5.2インチの大型パネルを搭載しながら5.0インチパネル搭載のHTC J butterflyなどとほぼ同幅でより背の低い筐体とすることに成功しています。

このあたりの設計・実装を見ると、G2系のこのボタン配置は単なる思いつきではなく、5.2インチパネル搭載で5.0インチパネル搭載機と同等の筐体サイズを実現するために、まるで詰め将棋のように周到なサイズ・構造の検討の末に選択された極めて合理的なレイアウトで、むしろ両利き対応というセールストークの方が結果論的に後付けで用意されたのではないか、と思えます。

また、そこまでできるメーカーがisai LGL22であえてG2で「売り」になっていた両利き対応を捨て、オーソドックスなボタン配置を選択していることから、そのレイアウトはデザインを主導したとされるauが意識的に行ったものではなく(※端末を特徴付けるデザインをわざわざ放棄させる理由はどこにもありません)、筐体サイズがG2よりわずかずつ大きくなっていることも含めて、防水設計の必要上からやむなくそうなったように見えます。

つまり、防水非対応でボタンが両利き対応のG2系も防水対応でボタンが右利き特化のisaiも、共に合理的な要求に従って理詰めで設計した結果、そうなっただけの話で、LG電子はユニバーサルデザインがどうこうという高邁な話は(少なくとも設計段階では)欠片ほども考えていなかったのではないか、と筆者は推測します。

キャリア2社の方針が明確となった両機種

以上、同時期開発の姉妹機種と言えるNTTドコモ向けG2 L-01Fとau向けisai LGL22について見てきましたが、両機種の各部設計を見る限り、5.2インチのパネルを5インチクラスの筐体に押し込むために、非常な困難があったことは想像に難くありません。

素人考えで、G2のボタン配置のままでisai相当の防水設計やmicro SDスロット(※実はG2では非搭載で、代用品としてSDメモリカードリーダ/ライタが同梱されています)の搭載ができなかったものなのだろうか、などと思ってしまうのですが、NTTドコモはこれまで販売してきた歴代のサムスン GALAXYシリーズ(※現行のGALAXY S4をはじめ、ラインナップに防水対応の派生モデルが用意されていてもそれを採用せず、防水非対応のカタログモデルを選択してきました)がそうであるように、国外メーカー製端末の防水対応をはじめとするハードウェア的なローカライズには全くと言って良いほど関心を示してきませんでした。

これは、あえて既にある筐体設計を大きく変更し、バッテリー容量を犠牲にしてでも防水対応を施すことをLG電子に要求したau(※auはHTC J butterfly HTL21の開発時にもHTCに防水対応を要求しており、海外メーカー製Android端末についても国内メーカー各社の端末と同様、防水対応に重きを置いています)の判断と対照的で、キャリアの両社がスマートフォンはどうあるべきだと考えているか、その方針が図らずも鮮明に示されたと言えます。

これら2機種の判断の相違がどのような結果をもたらすのか、両機種の今後の販売状況が注目されます。

コメントは受け付けていません。

PageTopへ