ZenFone 3 Max(ZC520TL)

気がつけば一大勢力~ASUSTek ZenFoneシリーズ~後編

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by [2017年5月16日]

前編では台湾のASUSTek社と同社が展開しているスマートフォンのブランドであるZenFone、その中でもZenFone 3の名を冠するハイエンドとミドルレンジの上に位置する機種をご紹介しました。

後編ではASUSTek社のスマートフォン事業の屋台骨を支える、ZenFoneでもローエンドからミドルレンジに位置する機種や若干古いもののASUSTek社のチャレンジ精神を消長するような機種を見てゆきます。

長時間動作に特化した「ZenFone 3 Max」

ZenFone 3 Max(ZC520TL)

ZenFone 3 Max(ZC520TL)

ZenFoneのシリーズ中ではその用途に応じて幾つかの特化・派生機種が用意されているのですが、その中でも目につく機種の1つに、ZenFone 3 Maxがあります。

これは大容量バッテリーと低消費電力に振った特性のプラットホームを組み合わせて搭載し、連続待ち受け時間を最大限延長する、ロングライフバッテリー特化の機種です。

この「ZenFone 3 Max」も5.5インチディスプレイ搭載モデル(ZC553KL)と5.2インチディスプレイ搭載モデル(ZC520TL)の2種に分かれるのですが、ここまでご紹介してきたZenFone 3などとは異なり、これらZC553KLとZC520TLは、メモリ容量や画面解像度だけでなく、機能の中核を担うプラットホームさえ異なる機種を選択・搭載しています。

これら2機種の具体的な仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 6.01(ZC553KL)・Android 6.0(ZC520TL)
  • プラットホーム:Qualcomm Snapdragon 430(1.4GHzオクタコア:ZC553KL)
  • MediaTek MT6737M(1.25GHzクアッドコア:ZC520TL)
  • サイズ:約76.2×151.4×8.3mm(ZC553KL)・約73.7×149.5×8.55mm(ZC520TL)
  • 重量:約175g(ZC553KL)・約160g(ZC520TL)
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶(IPS方式)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度:ZC553KL)
    • 720×1,280ピクセル(HD解像度:ZC520TL)
    • 画面サイズ:5.5インチ(対角線長:ZC553KL)・5.2インチ(対角線長:ZC520TL)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:3GB(ZC553KL)・2GB(ZC520TL)
    • フラッシュメモリ:32GB(ZC553KL)・16GB(ZC520TL)
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量128GB。nano SIMスロットと排他利用:ZC553KL)
    • micro SDHC(最大容量32GB。nano SIMスロットと排他利用:ZC520TL)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:16メガピクセル(ZC553KL)・13メガピクセル(ZC520TL)
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル(ZC553KL)・5メガピクセル(ZC520TL)
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 b/g/n
  • Bluetooth:Ver.4.1(ZC553KL)・4.0(ZC520TL)
  • USB:micro USB
  • SIMカードスロット:micro SIM ×1+nano SIM×1(micro SDと排他利用)
  • 電池容量:4,100mAh
  • NFC:なし

ご覧のとおり、5.5インチモデルであるZC553KLと5.2インチモデルであるZC520TLは全くの別物で、同じ「ZenFone 3 Max」とされているのが不思議なほどです。

搭載されているプラットホームはZC553KLもZC520TLもローエンド寄りのモデルですが、いずれも低消費電力の観点で優れた性能の機種が選ばれており、ASUSTek社の技術陣が開発時点で最善の選択肢を追求したことが見て取れます。

さすがに「Max」を名乗るだけあってこれら2機種は内蔵バッテリー容量は共に4,100mAhと非常に大きくなっており、ZC553KLの場合はバッテリー残量10%でも連続待ち受け時間が30時間も確保出来るなど驚異的なロングバッテリーライフです。もっとも、その代償でハイエンド機並の重量となっているため、使い勝手の点では若干不利な印象です。

また、この機種はその大容量バッテリーを生かして、他のスマートフォンやタブレットに給電する「リバースチャージ」という面白い機能を搭載しています。タブレットなどを利用していてバッテリー切れ寸前の状態に陥り、さらには充電出来る場所が見当たらない、といったシチュエーションで、こちらは最低限の通話機能が利用出来れば良いと割り切れるのであれば、この機能は非常に有益です。

オートフォーカス性能を訴求する「ZenFone 3 Laser」

ZenFone 3 Maxが連続使用時間を最重視するのに対し、カメラのオートフォーカス性能に特化したとされるのが、ZenFone 3 Laserです。

この機種の具体的な仕様は以下の通り。

  • OS:Android 6.01
  • プラットホーム:Qualcomm Snapdragon 430(1.4GHzオクタコア)
  • サイズ:約76×149×7.9mm
  • 重量:約150g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶(IPS方式)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:5.5インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:4GB
    • フラッシュメモリ:32GB
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量128GB。nano SIMスロットと排他利用)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 b/g/n
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • USB:micro USB
  • SIMカードスロット:micro SIM×1+nano SIM×1(micro SDと排他利用)
  • 電池容量:3,000mAh
  • NFC:なし

ご覧のとおり「ZenFone 3 Max」の5.5インチモデル(ZC553KL)に近似の仕様ながらメインメモリ容量が4GBに増強されるなど細かい部分でそれを上回るスペックとなっています。

実はこの機種で最大の訴求ポイントであり、製品名の由来となったレーザーオートフォーカス機能は発売時期の遅いZC553KLでは反映されて搭載されていて、それどころかそちらの方が画素数が1ランク多くなっています。

しかし、これらはプラットホームとして同じSnapdragon 430を搭載しているため、イメージング処理の負担などを考えると画素数の増加は善し悪しで、データを処理する際に利用するメインメモリ容量ではこの「ZenFone 3 Laser」の方が勝っていることや自重が25gも違っていることなどを考えると、カメラ機能で気軽にバンバン写真を撮るような使い方ではやはり「ZenFone 3 Laser」の方が使い勝手が良いように思えます。

このあたりの仕様の調整の巧さというか絶妙さは流石ASUSTek社というべきで、ユーザーの細かいニーズをきちんとくみ取って製品ラインナップを展開していることが見て取れます。

Snapdragon 430搭載ということはそれなりに低スペックのミドルレンジ~ローエンド寄りの機種となる筈ですが、それでも5.5インチフルHD解像度液晶をディスプレイとして搭載していること※注8も含め、安い機種でも安いなりにユーザーが充分満足できるような工夫が散見され、なるほど、こういった心配りが出来るからこそのシェア拡大なのか、と感心させられます。

※注8:低価格機種だから安い小型の低解像度パネルを搭載するというのは全くメーカー側の都合でしかありません。ユーザーからすれば安い機種でも大きく充分な解像度の画面で例えばネットブラウジングやSNSツールの利用を行いたいことには変わりは無く、またこの機種のようにカメラ機能が売りの機種であれば、自分が撮影した写真を確認するためにもそれなりに高解像度大画面のディスプレイが欲しいという話になります。

大画面に特化した「ZenFone 3 Ultra」

ZenFone 3のシリーズラインナップ中でもやや異色な立ち位置にあるのが、ZenFone 3 Ultraです。

「Ultra」といういかにも凄そうな名称を与えられたこの機種ですが、主な仕様を見ると所々「??」なところがあったりします。

この機種の具体的な仕様は以下の通り。

  • OS:Android 6.01
  • プラットホーム:Qualcomm Snapdragon 652(1.8GHzオクタコア)
  • サイズ:約93.9×186.4×6.8mm
  • 重量:約233g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶(IPS+方式LEDバックライト)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:6.8インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:4GB
    • フラッシュメモリ:32GB
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量2TB。SIMスロット2と排他利用)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:23メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • USB:USB 2.0(USB Type-Cコネクタ)
  • SIMカードスロット:nano SIM×2(SIMスロット2はmicro SDと排他利用)
  • 電池容量:4,600mAh
  • NFC:なし

この機種、画面サイズは6.8インチとほとんど小型タブレット並※注9ですが画面解像度はフルHDとされており、プラットホームはミドルレンジの上位に位置づけられるSnapdragon 652搭載であるなど、Ultraと称しながらも実態は「開発時点でのミドルレンジ上位機種の画面サイズを引き延ばした」構成となっています。

※注9:その扱いやすさから各所で愛用されたGoogleのNexus 7より一回り小さい程度と言えばそのスマートフォンとしての破格の巨大さがご理解いただけようかと思います。自重はさすがにNexus 7(2013)などより軽く作られていますが、これをスマートフォンだと言い張るのは若干無理がある気がします。

ちなみにこのディスプレイパネル、画面解像度はフルHD止まりなのですが「Tru2Life+」というASUSTek社が独自開発した4K2Kテレビ向けディスプレイ用プロセッサを搭載しており、大画面化したが故に目立ちがちな動画再生時などの画面のぶれを抑制しコントラストなどの色情報も最適化して出力できる設計です。

ここまでやっておいて画面解像度がフルHDのままなのは、恐らくプラットホームに内蔵のCPUコアあるいはDSPコアの性能が十分ではないため※注10と考えられます。

※注10:これまで製品化されたWQHD解像度(1,440×2,560ピクセル)あるいは4K2K解像度に対応するスマートフォンでは例外なくその製品の開発時点で最新最強のプラットホームが搭載されており、それでも性能的には充分とは言いがたい状況でした。こうした事情を考えると、ミドルレンジのCPUコアを搭載するプラットホームを使用する限り、画面解像度をフルHDより上に引き上げるのは困難であると言えます。

もっとも流石にそれだけでは「Ultra」を名乗れないと考えたのか、この機種はメインカメラとして画素数23メガピクセルのカメラモジュールを搭載し、通常のスマートフォンではまずお目にかかることのないDTS HD Premium SoundやDTS Headphone:Xといったサラウンド音響のための機能がサポートされるなど、周辺機能についてはプラットホームの許す範囲で充実しており、ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)と同様にハイレゾ音源対応の「ZenEar」が同梱されています。

光学3倍ズームを実現した「ZenFone Zoom」

ASUSTek社は元々パソコン系のメーカーであったことから、Intelとの関係が深くZenFoneでも前世代のZenFone 2ではIntelのAtomプロセッサ及びそのチップセットをプラットホームとして搭載していました。

この世代の機種はもう生産完了でZenFoneShopでも取り扱いがなくなっているのですが、非常に興味深い機構を備えていたため、ここでその特徴を簡単にご紹介しておきましょう。

この「ZenFone Zoom」はその名のとおり、3倍光学ズームレンズを搭載しています。

これだけだと何だその程度か、となってしまうのですが、実はこのレンズを含むカメラ機構は薄い本体内に収まり、レンズの鏡胴が本体から飛び出すような構造にはなっていませんでした。

実はこのカメラ、本体背面に露出したレンズから入った光を三角断面のプリズムで直角に折り曲げて本体内に導き、ここに並んだ非球面レンズやガラスレンズによるレンズ群を経由して再度プリズムにより光軸の向きを直角に折り曲げて最初入ってきた方向と正反対の向きにしてからイメージセンサーでその光を受け取り撮影するという大変独創的な構造になっています。

こうすることで各レンズ間に充分な間隔を確保出来るためレンズや駆動系の設計に無理をせずに済み、さらにオートフォーカスの精度や応答速度を高めることも可能となった※注11のです。

※注11:レーザーオートフォーカスとの組み合わせで合焦速度は最速時で約0.03秒を実現しています。また、光学系の設計に余裕がある事からマクロ撮影性能も改善され、被写体まで約5cmの距離まで迫って撮影する事も可能となりました。

このレンズユニットは光学レンズメーカーであるHOYAとの協業によって生み出されたもので、構造的な制約から最厚部で11.95mmとそれなりの厚みが必要でしたが、沈胴式のレンズを搭載した機種のように使用時にレンズが飛び出すこともなく、4枚のガラスレンズと4枚の非球面レンズよりなる本格的な光学系設計が実現できています。

これはプリズムを2回通過することによる光学的な減衰があって、更にレンズユニットの設計製作で非常に高い精度が要求されるため、おいそれとは使えない手法です。

しかしスマートフォン内蔵カメラの性能向上を考える上では実に野心的かつ先駆的な、それでいて光学設計の観点では至って正攻法な設計※注12であったと言えます。

※注12:異なる2つの焦点距離の単焦点レンズを並べて搭載し、それぞれで同時に取得した画像からソフトウェア的な処理を行って擬似的にズーム処理を行う、といった昨今流行の手法とは異なり、純粋に光学系の可変によりズーミングを行うため、見かけはともかく実態は大変に真っ当な設計であったと言えます。

残念ながら、現行のZenFoneシリーズではこのレンズモジュールを搭載する製品は存在しませんが、薄くて高性能なズームレンズ搭載カメラを作る上では1つの理想解と言える設計ですから、機会があれば是非再チャレンジして欲しい機能です。

色物もあるが根底は手堅い

以上、ASUSTek社のスマートフォン「ZenFone」シリーズについて見てきました。

当初はMVNO向けの格安製品でスタートしたこともあって、また途中で自社の取引の関係もあってかIntelのAtomプロセッサを積極的に採用したこともあって、「ZenFone」シリーズはどうしてもAndroid搭載スマートフォンの本流とは見なされてこなかった部分があります。

しかし、Intel Atomプロセッサのスマートフォン向け市場からの事実上の撤退を受けてZenFone 3シリーズでQualcomm Snapdragonシリーズに切り替えた後、比較的短期間で中小メーカーには供給されないSnapdragon 821を搭載した製品の発売に漕ぎ着けたことが示すように、大きな生産力と技術力を併せ持つASUSTek社の市場での存在感・影響力は非常に大きく、そのシリーズ展開は今後のAndroid搭載スマートフォン市場の動向に大きな影響を及ぼす可能性があります。

先にも少し触れたとおり、ASUSTek社は「仕様が似ているが微妙に違う」、特定のユーザー層に強く訴求する製品を複数ラインナップすることでユーザーの支持を集めてきた※注13訳ですが、そんな製品でも要点をきちんとおさえた設計となっており、それも支持を集める一因となっています。

※注13:もっともそれは詳しくないユーザーにとって「種類が多すぎてどれを買えば良いのか判らない」という結構厄介な問題を起こしているのですが。

最後に触れた「ZenFone Zoom」もそうでしたが一見色物に見える製品でも際限なく真面目に作り込まれていて、重要な部分では手抜きが無いのがASUSTek社製品の美点です。

このあたりは開発リソースも資金力も劣る中小メーカーには真似の出来ない部分で、どの分野でも気がつけばいつの間にか市場の有力プレーヤーとなっていた、というのもこうした手堅くきちんとした製品開発や手厚いユーザーサポートに対する有形無形の信用・支持が背景にあると言えます。

ZenFone 3 DeluxeでSnapdragonシリーズのハイエンドモデル搭載が実現しある意味盤石の体制となったASUSTek社ですが、今後もそうした美点を守りつつ「ZenFone Zoom」のような先鋭的な実験作も出して欲しいものです。

▼参考リンク
すべての製品 | | ASUS 日本
ZenFone 3 Max (ZC553KL) | スマートフォン | ASUS 日本
ZenFone 3 Max (ZC520TL) | スマートフォン | ASUS 日本
ZenFone 3 Laser (ZC551KL) | スマートフォン | ASUS 日本
ZenFone 3 Ultra (ZU680KL) | スマートフォン | ASUS 日本
ZenFone Zoom (ZX551ML) | スマートフォン | ASUS 日本

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