ZenFone 3・ZenFone 3 Deluxe各機種

気がつけば一大勢力~ASUSTek ZenFoneシリーズ~前編

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by [2017年5月10日]

ZenFone 3・ZenFone 3 Deluxe各機種

ZenFone 3・ZenFone 3 Deluxe各機種

日本でMVNO(Mobile Virtual Network Operator:仮想移動体通信事業者)による低価格通信サービスの普及が本格的に始まったのは、インターネットプロバイダ事業者としてIIJ社がこれに参入した2012年春頃からの話です。

これにより、それまでNTTドコモ、au(KDDI)、ソフトバンクモバイルの大手キャリア3社による寡占状態でスマートフォンの新製品≒3キャリアいずれかからの販売となっていたのが崩れ、様々なメーカーによる大手キャリアの支配下から外れた、俗にSIMフリー端末と呼ばれるタイプのAndroid搭載スマートフォンが市場に投入され、特に低価格端末については激戦区となりました。

市場が寡占状態の大手キャリアによるコントロール下から脱し、正常な競争状態が成立すればそうなるのは市場経済のメカニズムからして当然の結果であると言えるのですが、そうして競争状態となると、価格、ブランド力、製品そのものの性能や機能、それにデザインといった要素において優位に立つ機種を投入できたメーカーがシェアを拡大するのは必然であると言えます。

そうしてそのような激戦区で勝ち残り、シェアを拡大してきたメーカーの1つに、台湾に本拠を置くエイスースことASUSTek Computer社があります。

1990年代からのいわゆるDOS/Vパソコンブームの時代からパソコンを自分で組み立ててきた人には今更ですが、そうした自作パソコン市場において、中でも特に当時数十社以上が参入し今のスマートフォン市場以上の激戦区であったマザーボード(メイン基板)の分野において、スピーディな製品投入とユーザーからの苦情に迅速に対応しマザーボード上に搭載されたBIOS(Basic Input Output System)と呼ばれる小規模なソフトウェアの修正を小刻みに行うことでユーザーの支持を集め、トップメーカー※注1となったのがこのASUSTek社でした。

※注1:同社がトップシェアを占めるようになった頃の、例えばSocket 7時代のP/I-XP55T2P4(Intel 430HXチップセット搭載)やSlot 1時代のP2B-F・P3B-F(いずれもIntel 440BXチップセット搭載)といった製品群を懐かしく思い出す方もおられることでしょう。

そんなASUSTek社はいわゆる自作パソコンブームが下火になる頃にはOEM/ODMでノートパソコンなどを各社へ供給する事業に軸足を移してそちらで成功を収め、2007年~2010年頃にかけて一時的に大きな盛り上がりを見せた「ネットブック」と呼ばれる低価格ノートパソコンのブームの際には「Eee PC」というシリーズ名でその有力メーカーの1つとして知られるようになっていました。

こうして時流に乗って次々に市場を渡り歩きながら広義のコンピュータ製品市場のあちこちで大きなシェアを確保してきたASUSTek社が現在恐らく最も力を入れているのが、タブレット・スマートフォン市場です。

元々、OEM/ODM市場での大きなシェアを背景とする強力な部材調達能力と製品開発能力、それらによる低価格・高品質・高性能を武器にしてきたASUSTek製品が台頭するのはある意味当然の結果だったと言えるのですが、そんな同社製品は今や日本のMVNO向けSIMフリースマートフォン市場では最大手の一角を占めるまでに至っています。

今回はそんなASUSTek社のスマートフォン「ZenFone」シリーズの現行機種について見てゆきたいと思います。

ローエンドからハイエンドまで幅広い製品ラインナップ

ASUSTek社はパソコン向けマザーボードメーカーだった時代から、製品ラインナップを幅広く展開して価格帯の上から下まで何らかの製品を出す、という網羅的な製品ラインナップが特徴でした。

そうした「どの価格帯、どのジャンルを見てもASUSTekの製品が販売されている」ことが同社の知名度、言い替えるとブランド力の向上に大きく寄与してきたことは疑う余地がありません。

そしてそんな網羅的な製品展開の一方で、ある特定ユーザー層にのみ訴求する「尖った」、先鋭的な製品をどの世代でも1機種は用意するのが常でした。

その伝統は今のスマートフォン製品でも受け継がれており、ASUSTekの日本サイトで公式に紹介されているものだけを見ても、価格競争力の点から存続している旧世代の製品を含むとはいえ何と16機種が掲載されています※注2

※注2:ただしこの中にはZenFone ARのように記事執筆時点で未発売の製品も含まれており、また世代交代で実質的に製品としてEOL(End Of Life)寸前、つまり「終わった」状態のものもあるようで、公式オンラインショップで販売されているのは半分の8機種(カラーバリエーションを除く)となっています。

正直、これだけ多数の機種が存在すると、性能的なヒエラルキーがどうなっているのかよく判らない、そもそも機種名にMaxやらDeluxeやらUltraやら凄そうな名前がついているけど一体どれが一番凄いのかさっぱり判らないという状況になってしまっているのも致し方ありません。

とはいえ、こうした場当たり的な命名が取っつきを悪くしている部分があるのも確かで、ASUSTek社はもう少し製品の型番に付与するグレード名について考え直した方が良いかも知れません。

こうしたグレードを示す名の中には、ロングバッテリーライフに特化したMaxのように他と異なったベクトルで尖っていて凄い製品もあるので、ASUSTek社としては性能の序列に従い一列にずらっと並べてラインナップを説明できないためこうなってしまっているのは判るのですが、とりあえず基本的な機種では上から順にDeluxe>Ultra>無印>Laser>GOという序列だと念頭に置いておくと、従前よりも理解しやすくなるでしょう。

そしてそんな機種の中で、ハイエンドに位置づけられる「尖った」機種としてZenFone 3 Deluxe※注3が提供されています。

※注3:ZenFone 3 DeluxeにはZS570KLの他、プラットホームとしてQualcomm Snapdragon 625を搭載しディスプレイが5.5インチSuper IPS液晶のZS550KLという型番のモデルが存在しています。このため、購入時には型番の確認が必要となりますが、公式オンラインショップであるZenFone Shopでのお値段がZS550KLは60,264円、ZS570KLは96,984円ですから間違えることはまず無いでしょう。

ハイエンド機「ZenFone 3 Deluxe」

まず、ZenFone 3 Deluxe(ZS570KL)の主な仕様を確認してみましょう。

  • OS:Android 6.01
  • プラットホーム:Qualcomm Snapdragon 821(2.4GHzクアッドコア)
  • サイズ:約77.4×156.4×7.5mm
  • 重量:約172g
  • メインスクリーン
    • 種類:有機EL(Super AMOLED)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:5.7インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:6GB
    • フラッシュメモリ:256GB
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量2TB。nano SIMスロットと排他利用)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:23メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • USB:3.0(Type Cコネクタ搭載)
  • SIMカードスロット:micro SIM×1+nano SIM×1(micro SDXCと排他利用)
  • 電池容量:3,000mAh
  • NFC:あり

半導体製造プロセスが14nmで製造されるSnapdragon 821搭載ということで、2016年秋冬登場のハイエンドモデルに相応しいハイスペックを実現しています。他社製品でスペック的に近い機種を探すとすれば、あのサムスン「Galaxy Note 7」あたりが近い印象です。

カメラの画素数が公称で23メガピクセルとあることから、ソニーの「Exmor RS for mobile」でも単純に画素数を最大限増やした、Xperia Z5(2015年)に搭載のカメラモジュールとほぼ同クラスのモデル※注4が搭載されている事が判ります。

※注4:型番はIMX318。レンズの開放絞り値もF2.0でXperia Z5(IMX300搭載)と同等となっていますが、IMX300は1/2.3型、IMX318は1/2.6型で一回り小さくなっており、さらにIMX300の場合は画素数が実際には25メガピクセル、IMX318は22.5メガピクセルを四捨五入して23メガピクセルと公称しているため、似て非なる性能・特性と言えます。ちなみにオートフォーカスでは複数のAF方式を組み合わせて使用し、各条件での最適解を得るハイブリッドオートフォーカスに対応する後発のIMX318の方が有利です。

「Exmor RS for mobile」については、ソニーは当然ながら自社のXperiaへの搭載を最優先としていてこの種のハイエンドモデル搭載用のカメラモジュールの他社製品への供給は良否はともかく総じて周回遅れの傾向がある※注5のですが、それでも約1年遅れですからこの「ZenFone 3 Deluxe」は、そしてASUSTek社はかなり優遇されている部類に入ると言えるでしょう。

※注5:他社向けではそもそもそんな高解像度データを受け取っても画像処理エンジンが処理しきれないといった事情もあって、1ランク落とした画素数16メガピクセルのモジュールが供給されているケースが大半を占めています。

また、ASUSTek社製スマートフォンではmicro SDXC対応スロット搭載製品について対応する最大容量を一律SDXCの規格で論理的に定められている上限値である2TBとしています。

現時点で出回っているSDXCメモリカードの容量は最大でも512GBですから、そもそも確認できていない容量に対応すると宣言していることになります。

これは言い替えれば、将来2TBのメモリカードが発売された際にそれを搭載して例え何らかの問題が出たとしても、スマートフォン本体内蔵ソフトウェアのバージョンアップなどによって対処するという方針の表明とみることができます。

このあたりのサポートの手厚さはマザーボード製品のみの時代からのASUSTek社の美点で、他社の場合は既に製品が存在し検証できた容量について公称上限としていて、発売時に発表されたその値から変更しない≒より大きな容量のメディアについて以後の動作/互換性検証を一切行わない、ほとんど売り切りの扱いで製品を出している会社が多いのと対照的です。

もっとも、この「ZenFone 3 Deluxe」(ZS570KL)はデュアルSIMデュアルスタンバイ(DSDS)対応で、しかもmicro SIMに対応するSIM 1スロットとnano SIMに対応するSIM 2スロットの内、SIM 2スロットとmicro SDXCスロットが排他利用、つまりどちらかの機能しか利用出来ない構造となっています。

そのため、DSDS機能を利用したい場合にはこれほど大容量のmicro SDXCメモリカードへの対応も宝の持ち腐れとなります。

このZS570KLの場合は内蔵ストレージ容量が256GBと大きな容量が確保されているため、その利用に当たってそこまで大容量のメモリカードが必要となる可能性は低いのですが、常時挿したままとはならなくとも、何らかの理由でmicro SDXCメモリカードを用いてデータなどを他とやりとりせねばならないことはあり得ます。そのためその観点ではメモリカードを選ばず、とりあえず搭載すれば動作するようになっていることは大きなメリットと言えます。

この機種には「ZenEar S」と名付けられたハイレゾ対応インナーイヤーヘッドフォンが同梱されています。お値段が5,000円前後のハイレゾ対応を謳うインナーイヤーヘッドフォンとしては廉価な製品ですが、ハイレゾ音源対応のスマートフォンでこうした製品が同梱されることは割と珍しいことです。ただ、ミドルレンジの上位といった価格設定だったZS550KLならばともかくハイエンドの価格設定となったZS570KLのユーザー層を考えると、この機種を購入するユーザーがこのクラスの価格帯のヘッドフォンを購入するというのは少々考えがたく、ハイレゾ音源再生の「お試し」程度にしか使われない可能性が結構あるように思います。これを同梱する位ならば要らないのでその分安くして欲しいというユーザーも多そう※注6です。

※注6:逆にZS550KLのユーザー層ならば大歓迎されそうです。

ミドルレンジ機としては充実の「ZenFone 3」

ZenFoneシリーズではその初期から同世代の他社製品よりも充実したスペックを謳う機種が多かったのですが、そんな歴代ZenFoneの中でも飛び抜けて強烈なお買い得感を漂わせているのが、現行のZenFone 3です。

ZenFone 3(ZE520KL・ZE552KL)の主な仕様を確認してみましょう。

  • OS:Android 6.01
  • プラットホーム:Qualcomm Snapdragon 625(2.0GHzオクタコア)
  • サイズ:約73.9×146.8×7.69 mm(ZE520KL)
  •    :約77.38×152.59×7.69 mm(ZE552KL)
  • 重量:約144g(ZE520KL)/約155g(ZE552KL)
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:5.2インチ(ZE520KL)/5.5インチ(ZE552KL:いずれも対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:3GB(ZE520KL)/4GB(ZE552KL)
    • フラッシュメモリ:32GB(ZE520KL)/64GB(ZE552KL)
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量2TB。nano SIMスロットと排他利用)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:16メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • USB:2.0(Type Cコネクタ搭載)
  • SIMカードスロット:micro SIM×1+nano SIM×1(micro SDXCと排他利用)
  • 電池容量:2,650mAh(ZE520KL)/3,000mAh(ZE552KL)
  • NFC:なし(ZE520KL)/あり(ZE552KL)

5.2インチディスプレイ搭載のZE520KLと5.5インチディスプレイ搭載のZE552KLでは、メインメモリ・内蔵ストレージ容量、バッテリー容量、それにNFCサポートの有無で差がありますが、それら以外は同一となっています。

仕様的にはSnapdragon 625搭載端末として標準的なもので、取り立てて目立つ点はありませんが。メインカメラの画素数が16メガピクセルとミドルレンジの価格帯の機種としては高性能なセンサー※注7が搭載されている点は注目に値します。

※注7:ソニーのIMX298を搭載。ちなみにこのカメラは中国Xiaomiのフラグシップ機種Mi5に搭載されていたのと同一品です。

ZenFone Shopでの価格がZE520KLは42,984円、ZE552KLは46,224円でその差は3,240円となりますが、それらの差異を考えると、ZE552KLの方が明らかにお買い得感が高いと言えます。

なお、ZE520KLの方がメインメモリ容量が1GB少なくなっていますが、これは内蔵バッテリー容量がZE552KL比でおよそ1割ほど少なくなっていることと無縁ではないでしょう。

メインメモリとして常時定期的なリフレッシュ作業を必要とするDRAM(LDDR3 SDRAM)を搭載するため、メインメモリ容量の増強は端末全体の消費電力増大とほぼ等価です。

また、ZE520KLはZE552KLと比較してディスプレイパネルそのもののサイズが一回り小さい≒ことや、それでも連続待ち受け時間などの動作時間がZE552KLよりも短くなっていることを考えると、ZE520KLでメインメモリ容量が3GBに抑えられているのは、消費電力および内蔵バッテリー容量のバランス調整が主因と推定できます。

とは言え、現状のAndroidではメインメモリを3GB以上消費する巨大アプリが常用されるような機会はほとんどないため、実用性を考えればZE520KLでメインメモリ容量を3GBに抑えたのは妥当であると言えます。

以下、後編に続きます。

▼参考リンク
すべての製品 | | ASUS 日本
ZenFone 3 Deluxe | スマートフォン | ASUS 日本
ZenFone 3 (ZE552KL) | スマートフォン | ASUS 日本
ZenFone 3 (ZE520KL) | スマートフォン | ASUS 日本

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