Moto G 5 Plus背面メインカメラ部ごらんのとおりメインカメラのレンズは一段奥まった場所に取り付けられており、ぶつけた場合にレンズを傷つける可能性を予防している。また、メインカメラは保護リング中心よりやや上にオフセットしている

注目のミドルレンジ!モトローラのSIMロックフリー端末『Moto G 5 Plus』

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by [2017年4月03日]

モトローラ Moto G 5 Plusミドルレンジの機種だが、アルミニウム合金製筐体となったこともあってか、なかなかの質感である

モトローラ Moto G 5 Plus
ミドルレンジの機種だが、アルミニウム合金製筐体となったこともあってか、なかなかの質感である

それなりに長い歴史をもつようになってきたIT業界にあって、モトローラほど大きな変化を経験しなおも存続している企業・ブランドは少ないのではないでしょうか。

古きよき時代のアメリカ車をご存じの方には、そのダッシュボードに収まったカーラジオでモトローラの社名を知ったという方や、70年代中盤のCB(Citizen Band)トランシーバブームで無線通信機の有力メーカーの一つであったモトローラの製品に憧れを抱いた方もおられるでしょう。また70年代後半から1980年代にかけてのマイコンブーム世代にとっては富士通の名機FM-8に搭載されたCPUのオリジナルであるMC68B09を開発したメーカーであり、さらにバブル期までの各社オリジナルパソコンを知る世代にとってはSUN 3やソニー NEWS、あるいはNeXTといったワークステーション※注1、あるいはApple Macintoshやコモドール Amiga、アタリ 1024ST、あるいはシャープ X68030といった個性派パソコン群※注2のCPUであるM68000シリーズのメーカー、つまりはあのIntelと熾烈なシェア争いを行った半導体メーカーという印象が強く残っていると思います。あるいは、1990年代に同社が構築した66機の通信衛星による壮大な衛星通信システムと、それを運営したイリジウム・コミュニケーションズ※注3、そしてその通信端末でモトローラの名を記憶している方もおられるかも知れません。

 ※注1:2017年の時点では「ワークステーション」というとCPUにXeonを積んでNVIDIA QuadroシリーズなどのGPUを搭載したPCワークステーションを指すのが一般的ですが、この時代にはワークステーション=MC68020かMC68030を積んだ独自アーキテクチャのLAN内蔵UNIX系OS搭載マシンというのが通り相場で、x86系CPU搭載機は少数派でした。
 ※注2:仕様的に同時代のIntel製CPUよりも大容量メモリを扱いやすい/リニアにアクセスできるアーキテクチャであったことから、1980年代中盤から1990年代中盤位までの時期に造られたグラフィック機能を重視した各社の独自規格パソコンでは、このM68000シリーズ、具体的にはMC68000やMC68020、MC68030、あるいはMC68040といったモトローラ製のCPUを搭載する例が大半を占めていました。
 ※注3:当初77基の通信衛星による協調動作で通信ネットワークを構築する予定(実際には本務66機+軌道上予備6機体制で運用)であった事から原子番号77番のイリジウムが社名に選ばれました。衛星通信の通信料が高かった事などから利用が低迷し1999年に倒産、2000年に一旦全サービスが停止しました。もっとも、これは海洋上の船舶からの通信通話用途では唯一無二のサービスを提供していたことなどもあって一定の需要が存在しており、この通信衛星ネットワークはイリジウム・サテライト社が継承し2001年に運用が再開、日本では空白期間が生じた後、2005年以降KDDIがサービスを提供しています。

このように、「モトローラ」という社名・ブランドは時代ごとに事業売却を繰り返すなど様々な変化を経験してきたわけですが、現在は携帯端末やセットトップボックスの事業を引き継ぐ「モトローラ・モビリティ」とその他の事業を引き継いだ「モトローラ・ソリューションズ」の2社に分かれ、前者は一時Google傘下に入った後に売却され、中国企業であるレノボ傘下の携帯電話・スマートフォンメーカーとなっています。

そんなモトローラ(・モビリティ)ですが一時の不振もなんのその、レノボの傘下に入ったあとは同社の資材調達力や製品開発力、生産力、販売網、それに資金的なバックアップもあって、「Moto」の名を冠したスマートフォンを矢継ぎ早に製品化し次第に復活を遂げようとしています。

そしてこのたび、日本国内で同社から正式に発売される新機種として「Moto G 5 Plus」が発表されました。

今回はこの「Moto G 5 Plus」について見てみることにしましょう。

主な仕様

「Moto G 5 Plus」の記事執筆時点で公表されている主な仕様は以下の通りです

Moto G 5 Plus背面Motoシリーズ共通の丸いレンズ部保護リングが目立つ

Moto G 5 Plus背面
Motoシリーズ共通の丸いレンズ部保護リングが目立つ

  • OS:Android 7.0(Nougat)
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 625
  • サイズ:74×150.2×7.7~9.7 mm
  • 重量:155 g
  • メインスクリーン
    • 種類:非公開
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD)
    • 画面サイズ:5.2インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:4 GB LPDDR3
    • フラッシュメモリ:32 GB
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量128 GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:12メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11a/b/g/n
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • USB:Micro USB Type-B
  • SIMカードスロット:Nano SIM デュアル
  • 電池容量:3,000mAh
  • NFC:対応
  • 認証:指紋認証

ミドルレンジとしては定番のCPU・GPU

Qualcomm Snapdragon 625 製品紹介ページSnapdragonのラインナップ中でも「中の中」的な位置にある機種のためか、特に高性能を訴求することもなくあっさり目の記述となっている

Qualcomm Snapdragon 625 製品紹介ページ
Snapdragonのラインナップ中でも「中の中」的な位置にある機種のためか、特に高性能を訴求することもなくあっさり目の記述となっている

仕様で示したとおり、この「Moto G 5 Plus」が搭載するプラットホーム※注4はQualcomm Snapdragonシリーズ中でもミドルレンジのほぼ中央付近に位置づけられるSnapdragon 625となっています。

 ※注4:最近Qualcommは自社のSnapdragonシリーズについて「プロセッサ」と呼ぶのを止め、「プラットホーム」と呼ぶ様に変更しはじめています。Snapdragonシリーズの実態がCPU・GPU・DSPなどよりなる、いわゆるSoC(System on a Chip:1個のチップ上のシステム)であって各種プロセッサ群の集合体であることを考慮すれば、この変更は妥当なものと言えるでしょう。

このSnapdragon 625はARMのCortex-A53、つまりARM v8系アーキテクチャによるARM純正の64ビット CPUとしては最小規模かつ最下位に位置づけられるCPUコアを8基搭載し、この「Moto G 5 Plus」ではこれを最大2.0GHzで駆動するカタログスペック通りの実装としています。

一頃ミドルレンジ機で流行ったSnapdragon 617ですとCPUコアは同じCortex-A53 ×8ながら最大クロック周波数は1.5GHzに抑えられていましたから、単純比較で25パーセントの性能増が期待できます。このあたりは半導体製造プロセスが最新の14nm FinFET(14nm LPP)となった恩恵が一番大きく出ている部分で、高クロック周波数化による性能向上と低消費電力化が両立して実現できています。

GPUはQualcomm 独自開発のAdreno 506で、これはカタログスペックにおいて定番のOpen GL ES 3.1やOpen CL 2.0だけでなく、DirectX 12、つまりMicrosoft Windows 10において対応が推奨されるAPIにも対応する機種です。

もちろん、ここが対応していたからと言ってこのプラットホームそのものがWindows 10対応となるという訳ではありませんが、GPUとしてDirectX 12へ対応というのは現状、NVIDIAとAMD、つまりGPUメーカーの大手2強がまともに出来ている以外はIntelのCPU内蔵GPUがかなりの機能制限ありでサポートしている位で、対応を謳えるというだけでもかなり大変な状況であったりします※注5

 ※注5:DirectX 12どころか3代前のDirectX 9でさえ、当時存在したGPUメーカーの多くが脱落、あるいは撤退の判断を強いられたほどで、このAPIの要求する機能はほぼその時点での最新3Dグラフィックス描画技術が反映されたものとなっていて、そのため「対応」を謳いその機能をまともにサポートするドライバを提供するだけでも非常に高い技術を要求します。

このあたりについては本筋から外れるので詳細は省きますが、DirectX 12で提供された新機能はいずれもより効率の良い3Dグラフィックス描画を実現するために用意された機能で、これらが部分的にサポートされているだけでもかなりの効率向上をもたらすことが期待できます。

なお、メインメモリの対応規格はLPDDR3となっています。折角14nmプロセスで作るのだからより新しくより性能が高く消費電力が低いLPDDR4メモリにすれば良いのにと思ってしまう所ですが、このあたりはメモリチップの入手性や価格のバランスが大きく影響する部分で、LPDDR4メモリを積んでもコストの制約で1GBや2GB止まりになるなら、価格的にこなれてきているLPDDR3メモリで4GB積んだ方が実用上はむしろ良いパフォーマンスが得られる可能性があるのです。

Snapdragon 625、ひいてはその搭載機種であるこの「Moto G 5 Plus」のターゲットとする価格帯を考えると、ここはLPDDR3で4GB搭載とする設計が妥当と言えるでしょう。

特徴的な筐体・カメラ部デザイン

Moto G 5 Plus背面メインカメラ部ごらんのとおりメインカメラのレンズは一段奥まった場所に取り付けられており、ぶつけた場合にレンズを傷つける可能性を予防している。また、メインカメラは保護リング中心よりやや上にオフセットしている

Moto G 5 Plus背面メインカメラ部
ごらんのとおりメインカメラのレンズは一段奥まった場所に取り付けられており、ぶつけた場合にレンズを傷つける可能性を予防している。また、メインカメラは保護リング中心よりやや上にオフセットしている

この「Moto G5 Plus」でもっとも特徴的なのが、丸い保護リングに囲まれた背面メインカメラ部の筐体デザインです。これは従来の機種から踏襲されてきたものですが、カメラのレンズ部やフラッシュなどの各部品を保護し、さらに形状に特徴を持たせシリーズとしての統一感や連続性を実現する、なかなか巧いデザインであると言えます。

カメラ部のデザイン的な処理はどのメーカーも苦労している部分で、大抵のメーカーはレンズそのもののベゼル部を保護用に大きめにデザインし、フラッシュやセンサーは別途独立して搭載する形を採るのですが、そうした中でやや大きめの保護リングを設けその内側にカメラに関わる各機能を集約搭載したMotoシリーズのデザインは設計的に色々制約もあるでしょうが安い機種でもそれなりの高級感を演出する事に成功していて、この機種もその例に漏れません。

ちなみにこの保護リングを含むカメラ部は一段飛び出した形状であるため他の部分よりも2mm厚くなっています。この厚み=奥行きはレンズの光学設計で無理をする必要を低くしており、こうした余裕を持たせたお陰かこの機種ではメインカメラのレンズ開放絞り値がF1.7とかなり明るく設計できています。

まぁ、直径もレンズ鏡胴部長さも他より大きく取りやすいデザインとなっているのですから当然と言えば当然の話なのですが、この内蔵レンズの開放絞り値F1.7という値は35mm判のカメラ用広角レンズではかなりどころではなく明るい部類に入るもの※注6です。

 ※注6:一般に単焦点の一眼レフ用交換レンズでは20mm~24mmクラスの明るいものでもF2.0程度ですから、いかにこの機種のカメラが「明るい」レンズを搭載しているかがお解りいただけようかと思います。

カメラそのものの解像度はメインカメラが12メガピクセル、フロントカメラが5メガピクセルでミドルレンジ機としては一般的なレベルで、Snapdragon 625のカメラ機能を限界まで使いきるような設計とはなっていません※注7

 ※注8:Snapdragon 625は最大24メガピクセルのカメラの接続までサポートしており、つまりこの「Moto G 5 Plus」ではメインカメラを最大性能の半分の画素数に抑えていることになります。

実際のところ、このクラスのCPUを搭載する機種でむやみにカメラの画素数を増やして上限一杯まで使う様にしても、例えば連写性能が著しく低下するであるとか、そもそもプレビューの表示まで時間がかかるであるとか、実用性に難が生じる可能性が少なからずあって、下手に解像度を上げるよりもある程度の画素数で抑えて応答性を向上させた方がよほど実用的になる傾向があります。

恐らくはそうしたことも考慮してのこの画素数と考えられます。ただしメインカメラの12メガピクセルという値はiPhone 7・7 Plusのそれと同等ですから、スペック的には決して悪い数字ではありません。

なおこの「Moto G 5 Plus」の筐体はアルミニウム合金製で、こうしたカメラ部を別にしても価格帯を考えれば相当頑張った感じで手の込んだ造りとなっており、相応以上の高級感が演出できています。

通信まわりは要チェック

「Moto G 5 Plus」はいわゆるSIMフリー端末として販売される機種です。

そのため、当然サポートされている周波数帯が気になる訳ですが、FDD-LTEがバンド1/3/5/7/8/19/20/28、TD-LTEがBand38/40/41で、3Gの帯域は850/900/1900/2100MHz(W-CDMA)となっており、バンド11・18つまりKDDI(au)系の割当て帯域が複数サポートされておらずCDMA2000系の3G通信も仕様に掲載がないなど、相変わらずKDDI系の冷遇が目立ちます。

まぁ、MVNO事業者の多くがNTTドコモの通信回線を利用してサービスを提供している現状を考えればこれでも殆ど問題ないのですが、この機種をauの回線で利用するのは色々難がありそうです。

また、一瞬見落としかけたのですが、この機種はWi-Fiでの対応が2.4/5.0GHzのIEEE 802.11 a/b/g/nまでで、IEEE 802.11 acは対応していません。この規格は従来の規格と比較して同じ周波数帯域でもより効率的に、高速で通信を安定的に行うためのもので、規格としての1チャネルあたりの最大伝送速度が867Mbpsとなるため、動画視聴などでWi-Fiを多用するユーザーならば出来れば対応していてほしい規格※注9です。

 ※注9:Snapdragon 625の仕様ではこのIEEE 802.11 acはサポートされているため、この「Moto G 5 Plus」では恐らく送受信関係の周辺回路のコストダウンの都合でこの規格のサポートが外されたものと推測されます。なお、Snapdragon 625自体のWi-Fiでの公称最大伝送速度は433Mbpsとなります。

また、LTE自体もカテゴリ6、つまり下り最大300Mbpsの通信規格まで対応する事が明示されていますが、これもSnapdragon 625の場合ダウンリンク(下り)カテゴリ7、アップリンク(上り)カテゴリ13に対応しています。

下りで見るとカテゴリ6・7は最大受信速度が同一であるため一見特に害は無さそうなのですが、実は単純なカテゴリ6の場合上りが最大50Mbps、カテゴリ13だと最大150Mbpsとなるため、データ送信を多用するユーザーの場合は結構無視できない差があります。

LTE通信の対応規格の詳細については明示されていないため、上り側の最大送信速度がどの位なのか明らかではないのですが、カテゴリ6とのみあることから下り300Mbps、上り50Mbpsと考えておいた方がよろしいでしょう。

いずれにせよ、この機種の場合このあたりの通信機能に低コスト化のしわ寄せが行っているのは一目瞭然です。

競合機種との関係は一進一退

以上、モトローラが発売する「Moto G 5 Plus」について見てきました。

総じて言えば「ミドルレンジ」の機種としてよく考えられた、バランスの取れた設計の機種であると言えます。

最後に記した通信機能の性能が低めに抑えられている事は残念な感じですが、金属製の筐体を採用し最新の半導体製造プロセスによるミドルレンジプラットホームを搭載するこの機種は、2017年3月31日発売予定で発売前の予約段階で価格が税込38,308円となっており、同じSnapdragon 625を搭載するSIMフリースマートフォンの競合機種であるASUSTekの「ZenFone 3」(ZE520KL)よりも若干低めの設定となっています。

そしてその「ZenFone 3」はカメラの画素数がメイン16メガピクセル、フロント8メガピクセルと「Moto G 5 Plus」よりもそれぞれ1ランク上となっている一方でメインメモリが1GB少ない3GBとなっていて、IEEE 802.11 acをサポート、ただし搭載OSがAndroid 6.1で1世代古く、バッテリー容量が「Moto G 5 Plus」より約1割少ない2650mAhとなっています。

つまり、スペック・性能的に「Moto G 5 Plus」とは一進一退というか得手不得手が違っている状況で、モトローラとASUSTekの両社がそれぞれ違う部分でコストダウンを図っていることが判ります。

そのため、これらの機種の購入を検討する場合には、自分に必要な機能が何なのか、どの機能なら妥協できるのかを事前に充分比較検討しておく必要があるでしょう。

▼参考リンク
Moto G Plus (5th Gen.) | Motorola
Premium For All: Meet the new Moto G⁵ and Moto G⁵ Plus – The Official Motorola Blog
Snapdragon 625 Processors with X9 LTE Specs and Details | Qualcomm

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