ファーウェイ P10 Plus

ファーウェイの本気~DSDS対応Androidスマートフォン『P10』『P10 Plus』~

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2017年4月17日]

ファーウェイ P10

ファーウェイ P10

ここ数年のスマートフォン市場でのファーウェイ(Huawei Technologies:華為技術有限公司)の躍進ぶりには目を見張るものがあります。

数年前までならば、ファーウェイと言えば日本市場では大手3キャリア向けに低価格の端末やモバイルルーターを出しているメーカーという印象が強かったのですが、あれよあれよという間に技術が向上し、気がついてみるとAndroid搭載スマートフォン市場でサムスンを猛追する中国メーカーの筆頭格といった位置づけになっていました。

元々同社はイーサネットハブやルーター、基地局、あるいはデジタル交換機といったネットワークインフラに関わる技術・製品に強みのある会社で、その製品の低コストさ故に採用する事業者が多い一方で中国企業、それも創業者が人民解放軍との関係の強い人物であった事から、バックドアを製品に設けて人民解放軍や中国共産党が通信傍受に利用しているのではないかとアメリカなどから疑われ、排除対象とされてきたメーカーでもありました。

そんな逆境をはねのけるように、同社のスマートフォンは急速にその性能・品質・デザインを向上させてきたのですが、そんな上り調子のファーウェイを象徴するように、先日ハイエンド機種として発表されたのが「P10」「P10 Plus」の2機種です。

今回はこれら2機種についてみてゆきたいと思います。

主な仕様

ファーウェイ P10 Plus

ファーウェイ P10 Plus

「P10」「P10 Plus」の記事執筆時点で公表されている主な仕様は以下の通りです

  • OS:Android 7.0
  • チップセット:HUAWEI Kirin 960
  • サイズ:69.3×145.3×6.98 mm(P10)・74.2×153.5×6.98 mm(P10 Plus)
  • 重量:145 g(P10)・165 g(P10 Plus)
  • メインスクリーン
    • 種類:TFTカラー液晶
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(P10:フルHD解像度)
    • 1,440×2,560ピクセル(P10 Plus:WQHD解像度)
    • 画面サイズ:5.1インチ(P10:対角線長)・5.5インチ(P10 Plus:対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:4 GB(P10)・ 4・6 GB(P10 Plus)
    • フラッシュメモリ:32・64・128 GB(P10)・ 64・128・256 GB(P10 Plus)
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量256 GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:20メガピクセル(カラー) + 12メガピクセル(モノクロ)
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2.4GHz/5GHz)
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • USB:USB3.1 Type-Cコネクタ
  • SIMカードスロット:Nano SIM デュアル
  • 電池容量:3,200mAh(P10)・ 3,750 mAh(P10 Plus)
  • 認証:指紋認証

ご覧のとおり、「P10」と「P10 Plus」ではディスプレイパネルサイズとその画素数、そしてパネルサイズに影響される筐体サイズとバッテリー容量に差があります。

独自色の強いプラットホーム

まずは心臓部であるプラットホーム(SoC)から。

「P10」「P10 Plus」ではプラットホームとしてファーウェイ傘下の半導体メーカーであるHiSilicon Technology (海思半导体有限公司) 社が開発した「Kirin 960」が搭載されています。

これら2機種でのCPUコアの動作クロック周波数やCPUコアの構成については記事執筆時点で明確ではありませんが、Hisilicon社が2017年2月に行った「Kirin 960」の発表時に明らかにした仕様に従っていれば、ARM Cortex-A73 2.4GHz 4基 + Cortex-A53 1.8GHz 4基を組み合わせた、いわゆる「big.LITTLE」によるハイローミックスのオクタコア構成で、GPUは同じくARMの最新モデルであるMali-G71 MP8、メインメモリはLPDDR4であるということになります。

HiSilicon Technology社は元々ファーウェイのルーターやスイッチングハブなどで用いるASIC(Application Specific Integrated Circuit:特定用途向け集積回路)と呼ばれる、ファーウェイ社内で使用する製品に搭載するカスタム半導体の開発を担当していた部門が分離独立してできた企業で、その製品の出荷先は基本的にファーウェイ向けに限定されています。

このため、これまでのHiSilicon Technology社とファーウェイの製品発表実績から類推する限り、「Kirin 960」はその発表直後に発表されたファーウェイの最新スマートフォン、つまり「P10」「P10 Plus」のために開発されたと考えるのが妥当で、HiSiliconによる「Kirin 960」の仕様は特段の事情が無ければそのまま「P10」「P10 Plus」に適用されると推定できます。

これが正しいという前提で話を続けると、高速側のCPUコアであるCortex-A73はARMによる現行最新の高性能CPUコアで、これまでこの種のCPUコアを率先して採用してきたサムスンがExynosシリーズでExynos Mシリーズとして自社開発のCPUコアを搭載するようになってしまい、またミドルレンジ以下ではARM純正CPUコアを多用しているQualcommもことハイエンドモデル向けは基本的に自社オリジナル設計のCPUコアを採用していてこともあって、この記事の執筆時点では他にほとんど採用例のない最新鋭、かつ高性能の機種となります。

またGPUはExynos 8895でも採用されていたARM純正のMali-G71ですが、Exynos 8895がシェーダークラスタ数4のMP4を採用していたのに対し、こちらはシェーダークラスタ数が8の上位モデルであるMP8を選択しており、より高い3Dグラフィックス描画性能を期待できます。

言い替えれば、この「Kirin 960」は周辺回路にファーウェイ/HiSilicon社独自の回路を含んでいるとはいえ、心臓部は現時点での最新鋭ハイエンド向けプロセッサを組み合わせたARMの推奨構成となっているということです。

ちなみにKirin 960の製造はTSMCが担当している由で、Mali G71が確認できる範囲で14/16nm FinFETプロセスか10nm FinFETプロセス向けとなっていることから、消去法で同社の16nm FinFETプロセスによって製造されている※注1ことになります。

 ※注1:TSMCは記事執筆時点で16nm FinFETプロセスまででのチップ量産を実施しているため、必然的にこのプロセスとなります。なお、ARMの公式サイトで公表されているMali G71の動作クロック周波数やスループットの値は16nm FinFETでのものとされています。

メモリ容量は基本的には4 GBですが、「P10 Plus」については一部のモデルに6 GBのものが設定されています。

LPDDR4メモリは低消費電力がセールスポイントの1つですが基本的にはDRAMですから常時全記録領域について定期的なリフレッシュ動作が必要で、同じ半導体製造プロセスによるチップを搭載する場合は容量増=その増加比率に比例した消費電力増となる性質があります。各社がメインメモリの容量増によるパフォーマンス改善を知りながら容量増強に消極的なのは、まさにこうした消費電力増≒連続動作時間の短縮を嫌ってのものと考えられます。

ただ、記事執筆時点での状況から言えばメインメモリ4 GB搭載でも充分大容量の部類に入っており、何か特別多くのメモリ領域を占有して動作する様なアプリを使用しない限りは、現状ではメモリを6 GB搭載する事によるメリットを実感する機会はそれほど多くはない※注2でしょう。

 ※注2:そもそもの話として、日本市場向けでメインメモリ6 GB、内蔵ストレージ容量256 GBのシリーズ内最上位構成モデルが発売されるかどうか、現時点では判らないのですが。

なお、この「Kirin 960」がサポートするLTE通信規格はLTEカテゴリ12/13で、他社の競合プラットホームでカテゴリ16のサポートが始まっている事を考えると若干見劣りしますが、それでも下り方向の通信速度は最大600Mbpsとなり、充分な速度が出ています。

いずれにせよ、これらの仕様から類推できる「Kirin 960」の性能は相当高いと言えます。

ライカの協力を得たカメラ

ファーウェイのスマートフォンでは、前世代の「P9」シリーズでドイツのカメラメーカー、ライカの協力を得てメインカメラをデュアルカメラ化していましたが、今回の「P10」「P10 Plus」でもこれが当然のように踏襲されています。

このデュアルカメラは2基のカメラモジュールを搭載している点で他の各社の類似カメラ機構と共通します。

もっとも類似のカメラを搭載する他社製品、例えばAppleの「iPhone 7 Plus」のそれが広角~標準画角のレンズと望遠レンズの組み合わせで光学ズームの利用可能範囲を拡大しデジタルズーム使用による画質劣化を可能な限り軽減することを重視して設計されているのに対し、この「P10」「P10 Plus」のそれは同じ焦点距離のレンズを搭載したカメラモジュールを2基並べて搭載していて、メインがカラー撮影可能なのに対し、サブのカメラモジュールはモノクロ撮影専用として設計されています。

同じ焦点距離のレンズを一定間隔をおいて2組搭載するということは、視差による三角測量で被写界深度を容易に算出することができるということです。

スマートフォンの内蔵カメラは一般にメインカメラもフロントカメラも筐体厚の制約から絞り値を開放値で固定した設計となっていて、通常のデジタルカメラのように絞り値を制御するAE機構を用いた被写界深度制御はできません。

このファーウェイ/ライカによるデュアルカメラはこの問題に1つの解決策をもたらすもので、視差があることを利用して画素単位で三角測量処理を行う事で被写界深度をソフトウェア的に変える=絞り値を撮影後に変更できる様にしたり、あるいは同じく視差を利用する事でオートフォーカス機能を強化したり、と様々な応用が行われています。

また、レンズ間隔が固定である事を利用し、視差を計算し補正処理を行うことで同位置で撮影した場合のモノクロ・カラー映像を取得、これらを演算処理することでより高精度の写真撮影を可能※注3としており、この方式はカメラモジュールを2組搭載することによるコスト増はあるもののセンサーの画素数向上が難しい状況で従来よりも良い画質の画像が得られる点で、大きなメリットがあります。

 ※注3:光の三原色(RGB)と墨版(B/W)を組み合わせるため、通常のRGB情報だけで構成された映像にない、独特の色調・描写表現が可能となります。

このあたりの構成・設計の巧さは流石レンズ設計技術で天下にその名を轟かせたライカというべきでしょうか。

普通の考え方ならばサブのカメラモジュールもメインのモジュールと同様カラーとしていたはずで、これをモノクロとして視差などの演算処理を軽減し処理速度が低下するのを防ぎつつ、それをむしろ積極的な画質改善に結びつけるというのはカメラとそのレンズの挙動を知り尽くした光学メーカーならではの発想・手法であると言えます。

なお、これらメインカメラの2セットとフロントカメラの3セットのカメラに組み込まれているレンズはこうした特別な構成もあってレンズ設計で定評のあるライカが(これらの用法を前提として)その設計を担当しており、この点からも撮影した写真の画質に期待が持てます。

ただ、今回の2機種で気になるのは「P10」と「P10 Plus」で搭載されている焦点距離27mmのメインカメラ用「SUMMARIT-H」レンズの開放絞り値が異なっていることです。前者はF2.2、後者はF1.8でより大型の「P10 Plus」の方が明るいレンズを搭載している=別のカメラモジュールを搭載しているのです。

同じ画素数・同じ画角のレンズで開放絞り値が異なるというのはつまり、撮影対象の方からやってくる光を受け取るレンズの口径その他の設計が異なりより明るい「P10 Plus」の方が大直径あるいはより性能の良い晶材を使用していて一般にカメラモジュールそのものも大型化しているということなのです。

いずれの機種もデュアルカメラのため通常の単一カメラモジュール搭載機種と比較してカメラモジュールの大型化による占有スペース増大比率が単純計算で2倍となり、特にサイズの小さな「P10」の場合はその影響が相対的に大きくなります。

そのため、レンズの開放絞り値に差が付けられているのは恐らくこうした筐体容積に関わる物理的な制限が主因で「P10」の筐体には「P10 Plus」のカメラモジュールが物理的に搭載できないためと考えられますが、他の部分は概ね両機種で同等仕様となっている事を考えると、これは少々残念な部分※注4です。

 ※注4:ただし一眼レフカメラの交換用レンズを考えると、同じ焦点距離でも無理に明るく設計した高価なレンズよりも、一段か二段暗くても無理なく設計された安いレンズの方が画質が良いことは多々あって、筐体の厚さが同一である=レンズ鏡胴部長さが変えられないことも考えると、「P10」よりも「P10 Plus」の方がカメラの写りが良いという保証はありません。レンズの仕様で示される開放絞り値や焦点距離は撮影できる写真の光学的な条件は決定しますが、画質を保証するものではないのです。

3GとLTEのDSDS動作に対応したデュアルSIMスロット

今回の「P10」「P10 Plus」ではSIMカードトレイがnano SIMデュアル搭載可能な構成で、内2枚目のSIMカード搭載スペースがmicro SDメモリカードスロット兼用となっています。

2枚のSIMカードを搭載する場合は、3G通話とLTE通信の同時待ち受け、つまりいわゆるDSDS(Dual Sim Dual Standby)動作に対応しており、通話と通信でそれぞれ別のSIMを利用する、といった使い方ができます。

もっとも、2枚目のSIMカードはmicro SDメモリカードスロットと排他利用、つまりSIMカード#1 + micro SDメモリカードかSIMカード#1 + SIMカード#2のいずれかの構成でしか利用できないようになっているため、DSDS動作を常用し動画や音楽データなどを多数これら2機種に保存する場合には、内蔵ストレージ容量の大きなモデルを選択しておくのが望ましい※注5ということになります。

 ※注5:筆者個人の体験から言うと、ストレージ容量は例えばフルHD解像度の動画を多数保存する、あるいは写真を最高解像度で何万枚も撮影しそのまま保持するといった無茶をしなければ、128 GBもあれば特にmicro SDメモリカードを別途搭載する必要性はほとんどありません。

最近ではモトローラのMoto G 4のようにSIMカードトレイの形状とスロットの構造を工夫しSIMカード#2とmicro SDメモリカードを重ねてトレイに載せることでSIMカード#1 + SIMカード#2 + micro SDメモリカードで同時利用可能な構造の機種が現れ始めていますから、このあたりの改良は今後の機種に期待といったところでしょうか。

P10 Plus固有の機能

「P10」と「P10 Plus」では基本的に額面上のスペックが揃えられているのですが、そんな中で数少ない相違の1つに、「P10 Plus」にのみ搭載された「スマートリモコン」と呼ばれる赤外線学習リモコン機能があります。これは「P9 Plus」などファーウェイの過去の機種でもサポートされていたもので、分かりやすく言えばスマートフォン上で専用アプリを起動し万能赤外線リモコンとして利用可能とする機能※注6です。

 ※注6:「P10 Plus」本体の赤外線ポートに他のリモコンを向けてそちらのボタンを押して操作指示を行うことで、プリセットで登録されていない特殊な命令ボタンを登録することも出来ます。この種の学習機能については、かつてHAL研究所が発売していた「クロッサム」シリーズという学習リモコンをご記憶の方がおられるかもしれません。

非常に高機能・高性能だが問題は価格か

以上、ファーウェイの新機種「P10」「P10 Plus」について主立った特徴を見てきました。

総じて良くまとまった機種で、デュアルカメラなど筆者でも使ってみたいと思うような機能が幾つか搭載され、筐体デザインもかなり洗練されており、なかなか魅力的です。

記事執筆時点では日本市場向けの発売時期やその有無について発表されていませんが、前世代の「P9」は発売されているため、「P10」についてはこちらも日本で発売される可能性が高い※注7と言えるでしょう。

 ※注7:ただしCDMA2000非対応でau系の3G通話不可であるため、DSDS対応を考えるとドコモあるいはソフトバンク系の回線を利用するMVNO事業者などとの契約が前提となるでしょう。

問題は「P10 Plus」です。大手キャリアから発売されていないSIMフリー端末というとどうしても安い機種という印象があるのですが、「P10」が最初に発売されたユーロ圏でその時点での為替レートで換算して約8万円弱、「P10 Plus」だと最下位モデルでさえ8万5千円前後といったところで、フルスペックの最上位モデル(メモリ6GB + ストレージ256GB)だと日本で発売した場合10万円超の価格となることが予想されます。

そのため、競合機種が多く激戦区となっているこのクラスの価格帯を勘案すると、果たして「P10 Plus」が日本で発売されるのか、少々怪しくなってきます。もちろん、これだけの内容を備えているのですから相応の販売実績は期待できると思いますが、他社の同クラス価格帯製品を考えると、後一歩の所で何かが足りない印象があるのも確かです。

このため、「P10 Plus」が日本市場で今後どのように扱われるかが注目されます。

▼参考リンク
HUAWEI P10 Smartphone | Mobile Phones | HUAWEI Global
HUAWEI P10 Plus Smartphone | Mobile Phones | HUAWEI Global
Meet the HUAWEI P10, a Stunning Combination of Technology and Art | Huawei Latest News | HUAWEI Global

このエントリーをはてなブックマークに追加

タグ:
PageTopへ