ONKYO DP-CMX1 “GRANBEAT”オーディオメーカーであるオンキヨーが世に送り出す高音質スマートフォン第一号機

オーディオメーカーが本気で作ったスマホ ~オンキヨー、SIMフリースマホGRANBEAT発表~ 前編

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by [2017年2月10日]

ONKYO DP-CMX1 “GRANBEAT”オーディオメーカーであるオンキヨーが世に送り出す高音質スマートフォン第一号機

ONKYO DP-CMX1 “GRANBEAT”
オーディオメーカーであるオンキヨーが世に送り出す高音質スマートフォン第一号機

最近のAndroid搭載スマートフォンでは、サウンド出力機能に「ハイレゾ」つまり96KHz 24ビットや384KHz 32ビットといった、これまで一般的に用いられてきたメディアで標準的なフォーマット※注1よりも高いサンプリング周波数・量子化ビット数で音声データを取り扱うフォーマットに、スマートフォン(およびタブレット)の内蔵PCM音源が対応するのが珍しくないようになってきています。

※注1:現在も広く用いられている音楽CDは44.1KHz 16ビット、DAT(Digital Audio Tape:デジタルオーディオテープ)あるいはDVD Videoの音声部は48.0KHz 16ビットで、ハイレゾ音源で利用されるサンプリング周波数は96KHz、192KHz、384KHzとこれらの内DATの48.0KHzを2n倍した値が主流となっています。

これは、スマートフォン/タブレット用チップセットメーカーであるQualcommなどがチップセット標準のオーディオCODECでこの種のフォーマットをサポートするようになったことがまず大きく影響しています。

さらに、先行してポータブル音楽プレイヤーでのハイレゾ音源対応が一定程度以上進んでいて、このフォーマットに対応するミュージックライブラリの整備が進んできたことなどの影響も無視できません。

この種の新しいメディアの誕生とその普及の過程では、鶏(ハードウェアのハイレゾ対応)が先か、それとも卵(ハイレゾ対応楽曲)が先か、ということで普及に当たってどちらを先にするのかという問題がありますが、ポータブル音楽プレイヤーで先に市場の構築や整備が熱心に行われていたため、幸か不幸か、スマートフォン/タブレットでのサポート普及はこうした問題に直接関わらずに済んできました。

そんなハイレゾ音源対応ですが、実のところ多くのスマートフォン/タブレットではその真価を最大限発揮することもないままに放置されてきました。

これは、ハイレゾ音源対応そのものはハードウェア/ソフトウェア的に可能となっても、その「音」の最終的な出力を行うデジタル・アナログコンバータ(Digital Analog Converter:DAC)やヘッドフォンアンプ回路などのアナログ回路部分の性能、言い替えれば音質や特性を充分良くするには様々なノウハウや技術が必要で、また見かけ上のスペックが良くならない割に部品や加工などで恐ろしいほどにコストかがかるためです。

このあたりはとりあえずチップメーカーの指摘通りの部品を指定通りの配線でつないで指定された電圧・電流量を供給する電源から給電すれば機能するデジタル回路とは全く異質な世界・異質な文化であると言える※注2でしょう。

※注2:だからこそ、スマートフォン/タブレットの有力メーカーの幾つかは、オーディオメーカーと提携したり、あるいはオーディオメーカーそのものを買収してしまったりして、そうしたメーカーの持つノウハウを自社製品のサウンド回路部分の品質改善に役立ててきたのです。具体的には、BeatsAudioブランドで知られたBeats Electronics社を一旦は手中にして音質改善に役立てたものの経営難から手放し(その後Beats ElectronicsはAppleが買収)、その後の製品ではスピーカーメーカーとして知られたJBLと提携したHTCや、そのJBLを傘下に置いていたHerman Internationalを昨年買収したサムスン電子など、自分たちのもつそれとは異質な技術・文化を持つオーディオメーカーに助けを求めるスマートフォン/タブレットメーカーは少なくありません。

SONY NW-ZX1Android搭載高音質デジタルオーディオプレーヤーとしてみた場合の先行例の一つ

SONY NW-ZX1
Android搭載高音質デジタルオーディオプレーヤーとしてみた場合の先行例の一つ

実際、日本市場に限っても、有力スマートフォンメーカーでしかも自前で高音質なオーディオに関する技術やノウハウを保有していたのは、下はウォークマンから上は数十万・数百万円クラスのハイエンドオーディオ機器、あるいはプロ用の録音機材まで手がけてきたソニーを別にすると、せいぜいテクニクスブランドを擁しているパナソニック(既にスマートフォン市場からは撤退)があった程度で、それにしてもそのノウハウや技術をスマートフォンに投入したという話が出ないままに終わっていました。

そんな訳で、これまでスマートフォンで本格的にオーディオの技術やノウハウを導入した製品は存在してこなかった※注3のですが、このほど日本のオーディオメーカーであるオンキヨーが「GRANBEAT」とブランディングを行って高音質を前面に打ち出したハイエンドSIMフリースマートフォンを発表しました。

 ※注3:技術的にも近しいAndroid搭載ポータブルオーディオ機器ならば、ソニーのウォークマン「NW-ZX1」「NW-ZX2」など大変高価ながら素晴らしい音質を実現した製品が存在していますが、モデム機能を搭載するスマートフォンの分野では存在しませんでした。

これは「ハイレゾ音源対応のデジタルオーディオプレーヤーをそのままスマートフォンに」とその設計コンセプトが示されており、これまでのスマートフォン業界になかった視点・発想を盛り込んだ形で、新しいAndroid搭載スマートフォンが世に送り出される事になったわけです。

そこで今回は、この「GRANBEAT」ブランドのスマートフォン第一号機である「DP-CMX1」について色々考えてみたいと思います。

主な仕様

DP-CMX1の記事執筆時点で公表されている主な仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 6.0(Marshmallow)
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 618(MSM8956:Cortex-A72 1.8 GHz デュアルコア + Cortex-A53 1.4 GHz クアッドコア)
  • サイズ:72×142.3×11.9 mm
  • 重量:234 g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFTカラー液晶(IPS方式)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(FHD解像度)
    • 画面サイズ:5.0インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:3 GB
    • フラッシュメモリ:128 GB
    • 拡張スロット:micro SDXC(最大容量256 GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:16メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • Bluetooth:Ver.4.1
  • SIMカードスロット:Nano SIM×2
  • 電池容量:3,000mAh
  • TVチューナー:なし

DP-CMX1の基本的なスマートフォンとしての機能については、以上の通りとなります。

しかし、この機種のスペック欄については、これまでのスマートフォンでは考えもしなかったような仕様が「Audio Player」として別途掲載されています。

ONKYO DP-CMX1 “GRANBEAT” 背面一見普通のスマートフォンだが、これまでの機種では見たことのなかったダイヤルが右上に備わる

ONKYO DP-CMX1 “GRANBEAT” 背面
一見普通のスマートフォンだが、これまでの機種では見たことのなかったダイヤルが右上に備わる

  • DAC & HP Amplifier:ESS Technology SABRE DAC “ES9018C2M”×2 & SABRE “9601K”×2
  • 音楽再生可能ファイル:DSD / DSF / DSD-IFF / MQA / FLAC / ALAC / WAV / AIFF / Ogg-Vorbis / MP3 / AAC
  • 対応サンプリング周波数及び量子化ビット数:
    • DSD:11.2MHz / 5.6MHz/ 2.8MHz 1bit
    • PCM:44.1kHz / 48kHz / 88.2kHz / 96kHz / 176.4kHz / 192kHz / 352.8kHz / 384kHz
      16bit / 24bit (*32bit float/integerは24bitにダウンコンバートして再生)
  • 入出力端子;
    • 2.5 mm 4極 バランスヘッドホン出力
      (BTL/ACG切替、Line outモード対応、ジャック挿抜検知ON/OFF可能) (※アサイン:端子先端より R-/R+ /L+ L-)
    • 3.5 mm 4極 アンバランスヘッドホン出力
      (マイク機能付イヤホン対応(CTIA規格準拠)、Line outモード対応、ジャック挿抜検知ON/OFF可能)
    • Micro USB /OTG 出力 (*充電・データ転送入力端子兼用)
  • 実用最大出力 (JEITA):
    • 75 mW + 75 mW (Unbalanced)
    • 150 mW + 150 mW (Balanced)
  • 全高調波歪率:0.01 % 以下
  • S/N比:115 dB以上
  • 再生周波数帯域:20 Hz 〜 80 kHz
  • インピーダンス:
    • Unbalanced: 16 〜 300Ω
    • Balanced: 32 〜 600Ω

これらは概ね「オーディオ機器としてならば書かれていて当然」の仕様・特性ばかりですが、スマートフォンの仕様ではまずお目にかかることがないものばかりなのでちょっと新鮮です。

なお、「アンバランス(Unbalanced)」「バランス(Balanced)」という見慣れない言葉がありますが、これについては後の節で触れることとします。

「ミドルレンジの上」「ハイエンドの下」に位置するプロセッサ

Qualcomm Snapdragon 821製品紹介ページSnapdragonシリーズの現行ハイエンドモデル

Qualcomm Snapdragon 821製品紹介ページ
Snapdragonシリーズの現行ハイエンドモデル

まずはスマートフォンとしての基本的な機能・性能について触れておきましょう。

この機種で搭載されているプロセッサはQualcomm Snapdragon 618で、ARMのCortex-A72コアを2基とCortex-A53コアを4基搭載した、Snapdragonシリーズのラインナップ中でも中の上、上の下といった位置づけのモデルです。

実はQualcommのSnapdragonシリーズの場合、供給能力の関係等様々な事情から、大手の有力メーカーでないとハイエンドモデルであるSnapdragon 820などの供給契約を結ぶのは難しく、新規参入メーカーとなるオンキヨーがこのSnapdragon 618を選択したのも、恐らくはこの契約を結べない状況下にあって選択できる中で要求を満たす最良のモデルということでこの機種となったと推測できます。

もっとも、中の上とは言ってもいわゆるARMの「big.LITTLE」対応で、ARM製64ビットCPUコアとしては現行最新のCortex-A72を2基、低消費電力コアとしてCortex-A53を4基搭載するそれなり以上に強力なプロセッサであると言えます。

そのため、メモリを3GB搭載している事と合わせて、スマートフォンとしての基本性能面での不安はほとんど無いと考えてよろしいでしょう。

2SIMによるDSDSだが制約の多いSIMスロット

DSDS対応を紹介するDP-CMX1製品紹介ページ2枚のSIMを載せたSIMトレイ(左)がmicroSDスロットと独立して用意されている。ただし、この構造故にmicroSDの入れ替え、着脱の際にはSIMトレイを引き抜かねばならない

DSDS対応を紹介するDP-CMX1製品紹介ページ
2枚のSIMを載せたSIMトレイ(左)がmicroSDスロットと独立して用意されている。ただし、この構造故にmicroSDの入れ替え、着脱の際にはSIMトレイを引き抜かねばならない

このDP-CMX1はいわゆるSIMフリー端末で、SIMスロットはnano SIMスロットを2基備えており、Dual SIM Dual Standby(DSDS)に対応することがメーカーから公表されています。

もっとも、搭載プロセッサの開発時期の関係もあってか、2基のSIMスロットについては1基が4G LTE/3G対応、もう1基が3G/2G対応という比較的古い仕様で、一方のSIMを用いた通話・通信中にもう一方のSIMは使えない仕様となっています。

また、気になるLTEの対応周波数帯はバンドB1/3/7/8/19/26と公表されており、日本国内で利用する範囲ではバンド7・11・18・21・28と欲しい帯域が結構抜けている気もするものの、少なくとも致命的に接続できないという状況にはならない選択となっています。

この機種のターゲット層を考えるとそこまでサポートする必要はない、ということかも知れませんが、他社製品では大概サポートされているバンド18・21あたりが抜けているのは少々意外と言え、できればサポートして欲しかったところです。

定番の選択となったメインカメラ

スマホとしての機能で、最近では避けて通れないカメラによる写真撮影機能については、メインカメラが16メガピクセル、フロントカメラが8メガピクセルで最近の機種としては無難な、そしてSnapdragon 618の性能を考慮すればほぼ上限一杯の選択となっています。

ただ、興味深いのはその仕様において搭載カメラモジュールをソニーの積層型CMOSセンサーであるExmor RS IMX298であると型番まで明記してある※注4ことです。

 ※注4:その一方でフロントカメラについては型番が示されていません。供給状況によって変更する可能性があるのか、それとも取り立ててアッピールするほどのものでは無いと判断され省略となったのかは明らかではありません。ただし、このクラスの機種でメインカメラとフロントカメラで別メーカー製とする=供給元を変えるケースは珍しいため、恐らくこれもソニー製と考えられます。

これも部品の供給次第では、かつてサムスンのGalaxy S5などで大騒ぎになったことがあったように、平然と搭載カメラモジュールの種類・供給メーカーを変えて特にアナウンスなしに画質が(それもそれが「売り」の筈の製品で)がらりと変わってしまうことも珍しくないスマートフォンとしてはこれまで見たことのないパターンであると言えます。

言い替えると、少なくともこの機種のメインカメラについては、ロットによる画質の大きな変動が基本的にはないと判断して良いということになります。

Sony Semiconductor Solutions のサイトで公開されているIMX298の概要DP-CMX1にはこのカメラモジュールがメインカメラとして搭載されている

Sony Semiconductor Solutions のサイトで公開されているIMX298の概要
DP-CMX1にはこのカメラモジュールがメインカメラとして搭載されている

なお、動画撮影機能はメインカメラが4K UHD(2160p)、フロントカメラがフルHD(1080p)とされ、動画記録フォーマットはMP4となっており※注5、現在の標準的なスペックを満たしていると言えます。

 ※注5:動画撮影時の最大フレームレートについては記載がありませんが、搭載されているIMX298についてはソニーの子会社であるSony Semiconductor Solutionsのサイトにて概要が公開されており、1/2.8型で積層型構造かつ裏面照射型CMOS、動画撮影においては4K解像度で最大30fps、フルHD解像度で60fpsでの撮影が可能なことが明示されています。このため、DP-CMX1はハードウェア的には4K解像度で30fpsの動画撮影が可能となります。

オーディオを見据えたストレージ容量

このDP-CMX1のストレージ容量は内蔵が128GB、micro SDスロットで最大256GB(SDXC、exFAT)とされています。

内蔵の128GBは仕様でも明記されているとおりOSであるAndroid 6.0のシステムファイル・フォルダが占有する部分があるためその全てをユーザーが利用できる訳ではありません。

しかしトータルで最大384GB -α、実態としては恐らく300~320GB程度の空き容量となると考えられるため、後述するDSD 11.2での利用には不安があるものの、ロスレス圧縮したハイレゾPCM音源データの利用ならば、実用上充分な容量と言えるでしょう。

以下、後編に続きます。

▼参考リンク
GRANBEAT | SMARTPHONE | ONKYO
GRANBEAT | SMARTPHONE | ONKYO
Dual SIM 対応 SIM フリーハイレゾスマートフォン“GRANBEAT”を新発売(PDF)
IMX298 | Sony Semiconductor Solutions Corporation

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