Hasselblad True ZoomとMoto Zの着脱イメージご覧のとおり、不使用時にはレンズの鏡胴は本体内に格納され保護シャッターが閉じる構造となっている。これもコンパクトカメラの文法通りの設計である

合体するスマホ ~モトローラ、Moto Zシリーズを国内発売~ 後編

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

by [2016年10月11日]

前編ではモトローラMoto Z・Moto Z Play本体について見てきました。後編ではこれらに対応、「合体」する純正オプションであるMoto Modsについて見ていきます。

2機種の可能性を広げるMoto Mods

Moto ZにJBL SoundBoostを装着した状態(中央上)元々薄い筐体の機種だが、かなり分厚くなっている

Moto ZにJBL SoundBoostを装着した状態(中央上)
元々薄い筐体の機種だが、かなり分厚くなっている

さて、今回のMoto Z・Moto Z Playで注目される新機能が、本体背面下部に設けられたコネクタ経由で接続され、本体に磁石によって固定される専用周辺機器であるMoto Modsとの接続機能です。

この機能により、大容量バッテリーを一体で利用できるようになったり、Moto Z/Moto Z Play本体をコンパクトデジカメの一部として機能させられるようになったり、外部スピーカーが接続できたり、あるいはプロジェクター機能を利用できるようになったり、と現時点で提供が発表されている5機種の「Mods」を見るだけでも、かなり可能性が感じられます。

現時点で発表されているのは

  1. JBL SoundBoost(スピーカー)
  2. Incipio offGRID™ Power Pack(ワイヤレス充電対応外付けバッテリーパック)
  3. Moto Insta-Share Projector(最大70インチまで対応のプロジェクター)
  4. Hasselblad True Zoom(10倍光学ズームレンズ搭載のカメラ)
  5. Moto Style Shell(異種素材による外装パネル)

の5種です。

ソニー DSC-QX100スマートフォンと組み合わせて利用する「レンズスタイルカメラ」の鼻祖となった2機種の1つ。カール・ツアイスのレンズを搭載する

ソニー DSC-QX100
スマートフォンと組み合わせて利用する「レンズスタイルカメラ」の鼻祖となった2機種の1つ。カール・ツアイスのレンズを搭載する

実のところ、例えば「Hasselblad True Zoom」ならば過去にソニーの「DSC-QX10」「DSC-QX100」あるいはオリンパスの「AIR A01」のようにファインダー機能その他制御系のハードウェアを取り払ってスマートフォンのタッチパネルスクリーン経由で操作するようにした、いわゆる「レンズスタイルカメラ」というジャンルが存在していた訳で、他のものも独立した単発の製品としてならば過去に既に存在したようなものばかりだという話もあります。

しかし、それを複数種のスマートフォンの間で共通規格化したコネクタ経由で接続(※注5)し、しかもある程度以上確実に一体として扱えるような機構を搭載して製品化したとなると話は違ってきます。

 ※注5:一部にはこのコネクタ経由で直接本体と接続せず、無線接続としている製品もあります。

実際、先に挙げた「Hasselblad True Zoom」は平面積がいささか大きいものの、コンパクトデジカメそのものと言って良いような造作とすることができていて、レンズスタイルカメラでありがちな繁雑さを感じさせませんし、「JBL SoundBoost」もやや厚みが増えるものの本格的なステレオスピーカーが背面に搭載されていてさらにバッテリーも内蔵しているため、使い道はかなり限定されそうな気もしますが、はまれば実に有用なサウンドプレーヤーとして利用できるようになっています。

Moto ZにMoto Insta-Share Projectorを組み合わせた状態中央の銀色の四角板の左側面に開口した四角の穴の奥にレンズがあり、ここから映像が映写される。映像出力部が小さいDLP方式だからこそ実現出来た薄型構造だと言える

Moto ZにMoto Insta-Share Projectorを組み合わせた状態
中央の銀色の四角板の左側面に開口した四角の穴の奥にレンズがあり、ここから映像が映写される。映像出力部の小さいDLP方式だからこそ実現出来た薄型構造だと言える

また、輝度や解像度は(本体ディスプレイと比較して)かなり下がる(※注6)ものの、これまでスマートフォンでは考えもしなかったようなポータブルなプロジェクターによる画像投影を実現するバッテリー内蔵プロジェクタである「Moto Insta-Share Projector」はこれまでのスマートフォンでは難しかった、「同じ動画などを何人かの人間で同時に視聴する」という使い方を可能とするもので、さすがに内蔵バッテリー容量の都合で長時間映画などを見る、といった使い方はちょっと厳しそうですが、それでも新しい提案が出てきそうな製品であると言えます。

 ※注6:画面解像度は854×480ピクセル、つまりいわゆるWVGAですから画素数だけで比較してもMoto Z Playの内蔵ディスプレイのそれの約1/5、Moto Z比では何と約1/9の画素数となります。また、輝度は50ルーメンですから、マグライトなどの懐中電灯と同程度の輝度でしかないということになります。

また注目されるのが、恐らくは「餅屋は餅屋」ということなのでしょうが、これらの製品の内モトローラ/lenovoの経験の薄いスピーカーとカメラ、それに外部バッテリーについて有名/有力ブランドと提携・共同開発としていることです。中でもスピーカーとカメラは詳しい人が聞けば納得するか驚くかするようなビッグネームが担当しています。

JBL SoundBoost

Moto ZにJBL SoundBoostを組み合わせた状態オレンジ色の横帯の上下にそれぞれ出力3Wのスピーカーユニットを内蔵する

Moto ZにJBL SoundBoostを組み合わせた状態
オレンジ色の横帯の上下にそれぞれ出力3Wのスピーカーユニットを内蔵する

アメリカの名門スピーカーメーカーであるJBL(現在はハーマン・カードン社のスピーカーブランド)はこれまでにも例えばコンパック向けのパソコン用スピーカー供給やHTCのスマートフォンのサウンドチューンへの協力など、比較的積極的にIT業界との関わりを持ってきたブランドですから、今回の企画で同社に白羽の矢が立ったことは容易に理解できます。

筆者自身、かつてそのコンパック製パソコンに付属してきたJBL製スピーカーを使ったことがあるのですが、安い部品を使いつつ音的に破綻なく、他の同クラス製品とは比べものにならないほど実に上手にまとめ上げられていて、ああ、安いは安いなりに良い設計というものは成り立つのだな、さすがは老舗の名門ブランドの名を冠するだけのことはある、と妙に感心させられた記憶があります。

そうした経験があるので、日本では約1.2万円での発売が予告されているこの製品が出してくる音には、筆者としては強く興味を引かれます。

そもそもスマートフォンサイズ、容量1,000mAhのバッテリー内蔵で出力3W+3W級ステレオスピーカー、しかも磁石で本体に固定という段階で価格的にも音質的にも恐ろしく厳しいハンデを課せられたようなものなのですが、一見してスマートにまとめ上げられています。

Hasselblad True Zoom

Moto ZにHasselblad True Zoomを装着した状態。本体が薄くやや幅広な事を除けば、ほとんどコンパクトデジカメとして違和感のない造作である

Moto ZにHasselblad True Zoomを装着した状態。本体が薄くやや幅広な事を除けば、ほとんどコンパクトデジカメとして違和感のない造作である

筆者が今回何より驚かされたのは、かつて6cm × 6cmサイズの中判フィルムを利用する超高級一眼レフカメラの名門として知られ、今も1台100万円以上もする高価な中判サイズデジタル一眼レフカメラを開発製造販売しているスウェーデンのハッセルブラッド社の名が、このModsのカメラモジュールに冠されていたこと(※注7)です。

 ※注7:ちなみにこのハッセルブラッド社製中判カメラは交換用レンズとしてドイツのカールツアイスのレンズを使用していることで有名ですが、今回の「Hasselblad True Zoom」では「バリオゾナー」といったツアイス製レンズ特有の名称が刻印されていないため、別設計のレンズを搭載していることが判ります。

正直、ハッセルブラッドに一体何があったのか、となるレベルなのですが、わざわざ同社の名を冠したということは画質や機能にそれ相応の自信があるのでしょう。

Hasselblad True ZoomとMoto Zの着脱イメージご覧のとおり、不使用時にはレンズの鏡胴は本体内に格納され保護シャッターが閉じる構造となっている。これもコンパクトカメラの文法通りの設計である

Hasselblad True ZoomとMoto Zの着脱イメージ
ご覧のとおり、不使用時にはレンズの鏡胴は本体内に格納され保護シャッターが閉じる構造となっている。これもコンパクトカメラの文法通りの設計である

実際、カメラの心臓部であるレンズ回りを見ると、3ピースの鏡胴による沈胴式のレンズ部には「3.5-6.5 / 4.5-45mm」の表記があることから、焦点距離4.5mm~45mmで開放絞り値がF3.5~F6.5のレンズを搭載していて、搭載されているセンサーはBSI CMOS、つまり最近のスマートフォンでおなじみの裏面照射型CMOSセンサーで、そのサイズが1/2.3インチと公称されていることから35mm判換算の焦点距離は25mm~250mm相当となり、広角のおいしいところから中望遠まで幅広くサポートする実用性の高いレンジを選んでいると言えます。

また、内蔵フラッシュが最近のスマートフォンで一般的な白色LEDではなく、伝統的なキセノンフラッシュとなっていてLEDのものよりガイドナンバーが大きく取られていると推定できることや、カメラ機能に「プロモード」と称してフォーカス・ホワイトバランス・fストップ・ISO・露光を手動設定できるようになっていること、それに何より撮影データを一般的なJPEGではなくRAW、つまりCMOSセンサーで撮影された生のデータのまま保存できる機能を搭載しているあたり、下手なコンパクトデジカメよりもずっと高度かつマニアックな造りになっています。

Moto Zフロント側からHasselblad True Zoomを見るこの角度で見ると、デジカメとしての薄さが際立つ。ただ、シャッターボタンはややチープかもしれない

Moto Zフロント側からHasselblad True Zoomを見る
この角度で見ると、デジカメとしての薄さが際立つ。ただ、シャッターボタンはややチープかもしれない

スマートフォンの内蔵カメラから卒業したならせめてこれくらいはやらなきゃね、というハッセルブラッド社の無言のメッセージが伝わってくるようなスペック・機能ですが、このカメラモジュール、驚いたことには日本で3万円を切る価格帯での発売が予告されています。ファインダーや画像処理エンジンなどの電子系でコストのかかる部分の大半をスマートフォンに任せられるからこそのこの価格と思いますが、それはそれとしても随分思い切った価格設定であるのは確かです。

一長一短、どちらが上位という訳でもない

以上、Moto ZとMoto Z Play、それにこれらに対応するMoto Modsを見てきましたが、仕様を見る限り、Moto ZとMoto Z Playの間では、必ずしもどちらが製品グレード的に上、と定まっているわけではないことがわかります。

もちろん、価格的には上位の高価なプロセッサを搭載しディスプレイ解像度も高いMoto Zの方が高くなるのはわかりきった話なのですが、実用を考えた場合、Moto Z Playの方が有利になる状況が意外と多くなりそうなのです。

特に、24時間動作するMoto Zに対し、外部バッテリーの接続なしでも45時間の動作を公称されるMoto Z Playの省電力動作ぶりはそれだけでもかなり大きなアドバンテージです。

また、画素数が多いものの手ぶれ補正のないカメラを搭載するMoto Z Playと画素数は抑えめであるものの光学式手ぶれ補正機能を搭載するMoto Zのどちらの方が実用的なカメラとなっているかについては、議論の分かれるところです。

これら2機種のいずれかを選ぶ場合には、こうした性格の違いを充分検討する必要があるでしょう。

Moto ZとMoto Modsこのシリーズの成否は対応スマートフォンをどれだけ出し続けられるか、Modsの種類をどれだけ増やせるかにかかっている

Moto ZとMoto Mods
このシリーズの成否は対応スマートフォンをどれだけ出し続けられるか、Modsの種類をどれだけ増やせるかにかかっている

また、新提案であるMoto Modsについては、これに対応するモトローラ製スマートフォンでは今後背面のコネクタ位置・ピンアサインと丸いカメラベゼル部分の形状・寸法が制約されることになりますが、この2点さえ抑えておけばほぼそれで済む設計となっているため比較的デザイン/設計面の自由度が高いと言え、今後の新機種でも対応が期待できます。

後は、モトローラがその対応スマートフォンをどれだけ発売し続けられるのか、またその接続に関わる仕様・規格をどこまでサードパーティに公開し普及に努められるのかがこの新しい周辺機器の成否を決めることになるのではないでしょうか。

いずれにせよ、これらはThinkPadのブランドの下でIBM時代から「合体」するノートパソコンを延々と発売し続けてきたLenovoの傘下に入ったモトローラらしい、実に野心的な製品群であると思います。

▼参考リンク
Moto Z | Motorola
Moto Z Play | Motorola
Moto Mods Landing Page | Motorola

PageTopへ