Galaxy Note 7はサムスンにとって久方ぶりのスマッシュヒットとなりつつある。果たしてこの勢いは日本市場でも続くだろうか

これがスマホの“全部入り”!?~Galaxy Note7を考える~その3

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by [2016年9月07日]

前回は、Galaxy Note7のカメラや通信周りを見てきました。今回は、防水防塵機能やSペン、Gear VRなどをチェックしていきましょう。

防水を実現した筐体

Galaxy Note7ではIP68準拠の防水・防塵性能を実現しています。

これは各キャリアによって公表されているGalaxy S7 edgeのスペックから防水がIPX5/IPX8、防塵がIP6Xの条件を満たしているものと考えられ、現在市販されている一般的な防水防塵対応端末の中では最高レベルの高度な防水防塵性能を実現していると言えます。

防水防塵はかつてサムスン製Galaxyシリーズの弱点だった機能で、裏蓋を外して電池交換が可能だったためもあるのでしょうが長年にわたって、それも全国的に降雨量が多くこの機能への対応が切実に求められていた日本の大手キャリア向けモデルでさえ、要望が強かったにもかかわらずサポートされないまま長い間放置されていたもの(※注13)でした。

 ※注13:そのためもあったのでしょうが、既に防水防塵が当たり前だった当時の日本メーカー各社は自社製品の防水防塵対応を優位点として強くアッピールしていました。

それだけに、近年サムスンのワールドワイドモデルでさえ当たり前に防水・防塵対応が謳われるようになったのは、日本国内での実用を考えると非常に喜ばしい事と言えます。

本体に格納可能なSペン

Galaxy Noteシリーズではスタイラスペンが本体に内蔵可能という特徴があるのですが、このGalaxy Note7でも忘れず「Sペン」と称するスタイラスペンが内蔵されています。

これだけ大画面化と画素密度向上が進むと、タッチパネル上で指のみを用いて操作を行うのはいささか厳しく、その点で本格的なスタイラスペンが付属し、しかも本体に内蔵できるこのGalaxy Noteシリーズの設計・構造は操作性の改善と付属品の紛失防止の観点で大いに歓迎できるものです。

一般的にはスタイラスペンというと手書き入力やイラスト作成の際などに用いるものという印象があるかと思いますが、皮脂が弱くタッチパネル上で幾ら指でタップしても反応しない状態になりがちな高齢者をはじめとする人々にとっては、タッチパネル操作が基本となるタブレットやスマートフォンを実用的に使用する上で最後の頼みの綱となるツールです。

Galaxy Note7と付属のSペンのイメージ双方の防水対応実現により、このような過酷な状況での手書き認識対応が可能となった

Galaxy Note7と付属のSペンのイメージ
双方の防水対応実現により、このような過酷な状況での手書き認識対応が可能となった

ちなみにこのSペン、書き味の改善のためにペン先の軸部太さの縮小など様々な改良が施されている一方で、本体の防水対応に合わせてこちらも防水対応化が実現されていて、一見特にこれと言って特徴のなさそうな外観形状ながら実用性が大幅に強化・向上しているのも見逃せません。

これはつまり、土砂降りの雨の中であってもこのGalaxy Note7で手書き入力によりメモを取る事も可能となったということなのです。そんなシチュエーションで利用されるケースが果たしてどの程度あるのかは定かではありませんが、荒天の屋外などタッチパネルを操作するには厳しい環境で利用したいユーザーには間違いなく歓迎される改良点です。

Type-Cコネクタ化されたUSB端子

防水の所でも少し触れましたが、このGalaxy Note7ではデータ送受信やバッテリー充電・給電などに使用されるUSB端子としてキャップレス防水構造のType-Cコネクタが採用されています。

このコネクタ、表裏区別なくさし込んで利用でき、高速なUSB 3.x接続だけでなく動的なピンの割り当て変更によりDisplay Portによる映像出力にも対応するという、大変高機能かつ高価なものです。これについてはようやく、あるいはやっと普及が始まったかといった印象が強いのですが、問題は仕様上この端子がどの規格で利用できるのか明記されていないことです。

同系のプロセッサを搭載し開発面では同世代の機種であるGalaxy S7 edgeのNTTドコモおよびau向けモデルで公開されている仕様ではUSB 2.0となっていることから考えると、この機種でも最悪の場合はそれらの機種と同じようにType-Cコネクタを使用しながらUSB 2.0で動作させるという非常にもったいない使い方をしている可能性があります。

USB 2.0でしか使わないのであれば、本当にこのコネクタは「リバーシブルに挿し込める」こと以外、ほとんど新しい機能が生かされず、メリットが無いということになってしまいます。

このあたりは消費電力との兼ね合いもあるため仕様上設定されているフルスペック対応を実現すればそれで良いという話でも無くて色々難しいのですが、それでも筆者個人としてはこれはあまりにもったいない使い方であると思います。

アメリカ向けGalaxy Note7製品紹介ページに掲載されているハードウェア仕様USBがUSB3.1であることと搭載されるプロセッサがSnapdragon 820であることが見て取れる。これにより、少なくともこの組み合わせではUSB 3.1に対応することがわかる

アメリカ向けGalaxy Note7製品紹介ページに掲載されているハードウェア仕様
USBがUSB3.1であることと搭載されるプロセッサがSnapdragon 820であることが見て取れる。これにより、Exynos 8890搭載時の対応は定かではないものの、少なくともSnapdragon 820を搭載したモデルでは何らかの形でUSB 3.1に対応する/対応可能であることがわかる

もっとも、Snapdragon 820を搭載するアメリカ向けモデルの仕様を確認してみると、その製品紹介ページでUSB 3.1への対応が明記されています。

ただ、Snapdragon 820自体はQualcommの製品紹介ページにてUSBについてUSB3.0 とUSB 2.0への対応となっています。USB 3.0自体はUSB 3.1規格に包含されていて、現在ではUSB 3.0相当の転送速度の規格はUSB 3.1 Gen.1として扱われる様になっていますし、少なくとも現状の技術では高速動作故に高発熱とならざるを得ないUSB 3.1 Gen.2ではなくまだしも消費電力・発熱量共に少ないUSB 3.1 Gen.1対応となっていると考えるのが妥当でしょう。
こうしたことを勘案すると、アメリカ向けモデルでの仕様表記は恐らくこのUSB 3.1 Gen.1≒USB 3.0を指すものと推測されます。

ただし、Gen.2のUSB 3.1比で半分の転送速度しか出ないUSB 3.0相当としても、これまでのUSB 2.0インターフェイスと比較すれば飛躍的な高速化となります。特にストレージデバイスの接続では大きな威力を発揮しますし、Type-Cコネクタを使用する意味も出てきます。

このため、同様にSnapdragon 820が搭載される可能性が高く、しかもUSB経由で様々なストレージ系デバイスを接続して利用するユーザーの多い日本市場向けモデルでもUSB 3.1のサポートを特に強く希望しておきたいところです。

HDRビデオ再生への対応

記事執筆時点で公開されていたサムスンの日本語公式製品紹介ページでは触れられていないのですが、このGalaxy Note7では従来のビデオよりも画質の表現力が大幅に向上するHDR(High Dynamic Range)ビデオ再生がサポートされています。

これは映像信号に含まれる輝度情報、つまり各画素の明るさを表す情報を従来の8ビット(256階調)から10ビット(1,024階調)、12ビット(4,096階調)と拡張し、これを量子化変換などの工夫によって従来の8ビットで記録するフォーマットの中に畳み込んで記録、再生時に再度拡張することで、リニアに10ビットなり12ビットなりの輝度を記録する場合よりは再現性に劣るものの、従来の8ビットの場合よりも輝度の表現力を高めて動画再生できるようにした技術です。

当然ながら、映像をデコードするCodecだけこの技術へ対応してもGPUの映像出力やディスプレイ側の映像入力が従来通りの8ビット輝度信号にしか対応しないのでは全く無意味(※注14)ですから、ディスプレイパネル側でも拡張された輝度信号に対応する必要があって、そのためGalaxy Note7ではディスプレイ側の色空間拡張も合わせて実施され、HDR10、つまり10ビットで1024階調に拡張された輝度信号でのHDRビデオ再生に対応しています。

 ※注14:単純な話として、折角Codecの部分で輝度信号を10ビットに拡張した映像データを生成しても、それを実際の映像信号として出力するGPUやそれを受け取るディスプレイパネル側が8ビット輝度信号対応のままでは、拡張した2ビット分が無視されてしまうばかりで場合によっては従来通りの輝度信号で出力するよりも画質が悪化する可能性すらあります。

この技術、要するに暗いところはより暗く、明るいところはより明るく表現できるようになるため、記録さえきちんとされていれば、これまでならば見えていなかったようなディテールまで見えるようになります。

実は撮影側ではこれまでのスマートフォンでも割と前からこのHDR動画撮影がサポートされるようになっていたのですが、再生は統合プロセッサ内蔵GPUの対応だけではなくディスプレイパネルの色空間拡張が必要となるため対応が難しく、これまで一般向け製品では実現できていなかったものでした。

その意味では、これはプロセッサからディスプレイパネルまで大半の主要部品を自社で内製するサムスンだからこそ、早期に対応できた技術であると言えます。

新設計されたGear VR for Galaxy Note7

さて、このGalaxy Note7では、様々な純正オプションが提供されています。

サムスン Gear VR for Galaxy Note7既発売のGear VRをよりサイズの大きなGalaxy Note7に合わせてモデファイしたモデル

サムスン Gear VR for Galaxy Note7
既発売のGear VRをよりサイズの大きなGalaxy Note7に合わせてモデファイしたモデル

中でも目を引くのが、サムスンがOculusと共同で開発したVRアダプタのGear VRです。

これ自体はGalaxy S6・S6 edgeの時点で既に存在していて、以後Galaxy S7・S7 edgeにも対応しているのですが、恐らくはプロセッサ性能その他の理由からGalaxy Noteシリーズにはこれまで対応してきませんでした。

それゆえ、今回のGalaxy Note7がGalaxy Noteシリーズでは初のGear VR対応機種となるのですが、問題はこのシリーズの画面サイズがGalaxy S6・S7系と異なり対角線長5.7インチで一回り大きく、従来のGear VRでは物理的に対応できないことです。

こうした事情から、今回Gear VR for Galaxy Note7として正規の対応モデルが別途提供されることになりました。

Gear VR for Galaxy Note7の端末装着部筐体サイズの大きなGalaxy Note 7では既存のGear VRに装着できなかったため、この周辺を再設計する形でこの製品が作られた。端末本体をがっちりホールドしてUSB接続を行うため、接眼レンズと端末ディスプレイ面の位置関係が変化しない

Gear VR for Galaxy Note7の端末装着部
筐体サイズの大きなGalaxy Note7では既存のGear VRに装着できなかったため、この周辺を再設計する形でこの製品が作られた。端末本体をがっちりホールドしてUSB接続を行うため、接眼レンズと端末ディスプレイ面の位置関係が変化しない

最近はボール紙などの厚紙工作と百円均一ショップで売られている製品についてくるレンズを組み合わせることで簡易なVRアダプタを製作してスマートフォンでVRアプリを楽しむケースが増えてきていますが、それらと比較して、Gear VRのコネクタに端末本体を接続するだけで対応アプリの自動ダウンロード・インストールまで行われ、Gear VR本体側面でタップ操作等が可能、レンズ部の焦点調整がダイヤルによる容易に行え、接眼レンズ周辺にパッドが付いていてベルトでがっちりと頭部にホールドされ、しかも周囲の光が回り込まないようになっていてコンテンツへ没入しやすいというGear VRのアドバンテージはかなり大きいと言えるでしょう。

このあたりの設計はOculusがRiftの開発で得たノウハウがフィードバックされたものであって、「Powered by Oculus」とされる所以なのですが、Gear VRはスマートフォンをコアとすることからGPUやCPUの性能でPC向けOculus Riftにどうしても見劣りするものの、またサムスンのGalaxyシリーズ専用で他社製スマートフォンでは利用できないものの、RiftではできないケーブルレスでのコンパクトなVR環境が実現できるという強みがあり、これは単なる「Poor Man’s Rift」、単なるVR入門機ではありません。

無論、外部センサー接続といった大がかりな拡張も想定外で操作系も簡易化されていますから、HTC ViveのようにルームスケールVRとしゃれ込むのも厳しいのですが、Galaxy Note7には様々なセンサーが内蔵されているため、対応アプリ側の工夫次第ではなかなか面白い使い方ができるようになっています。

従来型のGalaxy S6・S7系対応のGear VRと比較するとどうしても本体サイズが大きい分だけ重くなるのですが、反面ディスプレイサイズが拡大されてレンズ回りの設計では余裕ができるため、一長一短といった印象です。

なお、Gear VR for Galaxy Note7の仕様を確認すると、そのUSB端子への接続対応機種として従来型Gear VRの対応機種、つまりGalaxy S6・S6 edge・S7・S7 edgeの名が列挙してあり、これらを装着して利用できる、つまり従来型Gear VRの上位互換製品となっている可能性があります。

この辺は単に同じ制御基板等を流用したから電気的には対応しているだけだ、という見方もできるのですが、サイズ調整してどの機種も対応できるのならば、商品在庫管理上は上位互換のGear VR for Galaxy Note7に製品を一本化するのも1つの手です。

最新トレンドを巧みに取り入れたハイエンドモデル

Galaxy Note7はサムスンにとって久方ぶりのスマッシュヒットとなりつつある。果たしてこの勢いは日本市場でも続くだろうか

Galaxy Note7はサムスンにとって久方ぶりのスマッシュヒットとなりつつある。果たしてこの勢いは日本市場でも続くだろうか

最近ではライカと共同開発したダブルカメラを搭載するファーウェイの「P9」をはじめ中国メーカー勢の実力が飛躍的に向上してきているため、少なくともAndroid搭載スマートフォン/タブレットで多少尖ったスペックの機種を作った程度ではユーザーの興味を引くのは難しくなってきています。

そのため、本当に贅を尽くし技術力の限りを尽くして作り上げたフラグシップとなるハイエンドモデルか、それともウェルバランスで巧妙に設計された低価格モデルでないと、なかなか話題にもならなくなってきているのですが、そんな中登場したこのGalaxy Note7は派手に人目を引くような特徴はあまりないものの、子細に観察してみれば、各部設計がよく練られていて高い完成度を実現していることがわかります。

まぁ、国内市場向けの正式製品発売が行われていないためか、記事執筆時点では公式ページでその仕様の詳細が明かされておらず、一番気になるDSDS対応の可否をはじめとする細部の仕様がわからなくなっているのですが、それを差し引いてもこの機種の完成度は高く、プロセッサ高発熱の心配や端部を丸めダブルエッジ構造としたディスプレイ形状故の持ちにくさなど、懸念点も幾つかあるものの、このクラスのAndroid搭載ファブレットとしては非常に良く出来た機種であると言えます。

あと、問題があるとすれば端末のコストです。

現行最新のARM v8系64ビットプロセッサの中では間違いなくハイエンドに位置づけられるSnapdragon 820あるいはExynos 8890を搭載し、さらに4GBのメインメモリや64GBの内蔵ストレージを標準搭載、さらには現状ではまだまだ高価なUSB Type-Cコネクタを備え解像度2,560×1,440ピクセルの有機ELディスプレイを内蔵するこの機種の仕様では、10万円前後の価格帯となる可能性が非常に高いと言えるでしょう。

もっとも、先行発売されている各国ではこの機種、14nmプロセスのチップ供給が逼迫していることもあってか既に製品供給が追いつかなくなるほどの大ヒットとなっている由で、日本でも値段によっては大ヒットとなる可能性が高いでしょう。

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▼参考リンク
Samsung Galaxy Note 7 New Release, The Intelligent Smartphone
Galaxy Note7 | スマートフォン | Galaxy
Samsung Galaxy Note7 | Samsung US
Gear VR Powered by Oculus | Oculus

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