サムスンの台湾向けGalaxy Note 7製品紹介ページに掲載のmicroSD/SIMカード複合トレイ日本向け製品紹介ページに掲載のものと異なり、左のmicroSD用スペースに「SIM2/microSD」の文字がありデュアルSIM対応モデルであることがわかる

これがスマホの“全部入り”!?~Galaxy Note7を考える~その2

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by [2016年9月02日]

前回は、Galaxy Note7のプロセッサやストレージを見てきました。今回は、カメラや通信周りなどをチェックしていきましょう。

カメラは12メガピクセルに戻ったが…

Galaxy Note 7 背面上部中央にあるのが12メガピクセルデュアルピクセルカメラモジュールである。センサーサイズ大型化と光量増大、それに大口径レンズ搭載などの理由から若干大きめのカメラモジュールとなっている

Galaxy Note 7 背面
上部中央にあるのが12メガピクセルデュアルピクセルカメラモジュールである。センサーサイズ大型化と光量増大、それに大口径レンズ搭載などの理由から若干大きめのカメラモジュールとなっている

さて、このGalaxy Note 7や同世代のGalaxy S7・S7 Edgeではメインカメラの画素数が16メガピクセルから12メガピクセルに減少しています。

以前の記事でもご紹介しましたが、サムスンは自社で独自に「ISOCELL」と命名された裏面照射型(Back Side Illumination:BSI)CMOSセンサーを開発、2014年発表のGalaxy S5よりこれの画素数16メガピクセルモデルの搭載を開始していました。

この「ISOCELL」は何か問題があったのかどうか、次世代のGalaxy S6・S6 Edgeでは黙ってソニー製「Exmor RS for Mobile」との混用、それもどの個体にいずれのカメラモジュールが搭載されているのか蓋を開けてみないことには判然としないというおみくじ同然の状態での搭載となり、最新のGalaxy S7・S7 Edge・Note 7の世代で遂に画素数12メガピクセルのカメラモジュールに逆戻りという変遷を辿っています。

ただ、これは単純に画素数が減って画質が低下したというネガティブな話ではなく、デュアルピクセルと呼ばれる画素数を犠牲にして画質やオートフォーカス性能を向上させる新技術が搭載されています。

これはキヤノンのデジタル一眼レフカメラであるEOS 70D(2013年発表)などで既に採用例のあった技術で、Galaxy Note 7の場合、実際には公称値の2倍となる24メガピクセル分のフォトダイオードを搭載し、1画素を2つのフォトダイオードを用いて撮影するような光学設計とすることで、全画素において2つのフォトダイオード間で位相差を検出する像面位相差AFを実現、従来よりも飛躍的に高速なオートフォーカス性能を実現するというもの(※注7)です。

 ※注7:仕組みとしては、1画素を担当する2つのフォトダイオードの信号を比較しそれが一致すればピントが合っていると判定できるため非常に簡単で、必然的に高速な合焦が実現します。

これまで実用化されてきた像面位相差AF用CMOSセンサーでは、像面位相差を検出するフォトダイオードはセンサー面上に一定間隔で分散して配置されていて数もそれほど多くありませんでした。そのため、全画素で合焦検出ができるようになるこの技術は高速かつより正確なAFの実現に大きく寄与します。

また、このデュアルピクセルカメラモジュールでは、1画素に2つのフォトダイオードを割り当てるため必然的に1画素単位で画素間の間隔を増えたフォトダイオードの寸法の分だけ大きくし、CMOSセンサーそのものもそれに合わせて大型化する必要が生じます(※注8)。

 ※注8:これは個々のフォトダイオードの物理的なサイズそのものは従来型モジュールと変わらないためです。

しかしそれは見方を変えると、レンズサイズも大型化した結果大口径のレンズが利用できるようになり、これを生かして絞り値F1.7(※注9)と大変明るいレンズの搭載が実現、1画素あたり照射される光量が増えるということです。

 ※注9:Galaxy S5・S6系の各機種に搭載されていた16メガピクセル級センサー搭載カメラモジュールでは、絞り値がF1.9のレンズが搭載されていました。この種のカメラ用レンズでは開放絞り値の数字を小さくすればするほど大口径のレンズを前玉に使用し、構成が複雑なレンズ群を組み合わせなければなりませんから、F値換算でわずか「0.2」の差とはいえ、実際のレンズ設計では寸法や構造に相当な差が生じることになります。

このため、この全画素像面位相差AFに対応したCMOSセンサーでは従来のセンサーが苦手としていた暗部ノイズの載りやすい暗い場所でも、これまでより格段にノイズの少ない写真撮影が可能となっています。

このように最終的に得られる画面の解像度が下がる以外は一見して良いことずくめのデュアルピクセルカメラモジュールですが、実は1つ大きな弱点があります。オートフォーカス駆動のために処理すべき画素が一挙に全画素となったため、12メガもある各ピクセルそれぞれで合焦判定が必要で、1つ1つの処理は単純ながらあまりに膨大な量になることから、余程高速なプロセッサを搭載した機種でなければ実用的な撮影が行えないのです。

今回、ハイエンドの3機種にこのモジュールが搭載されたのも正にこの必要とされるプロセッサ性能のあまりの高さ故のこととみて良いでしょう。

また、このAF処理の重さは必然的にカメラ撮影時の消費電力増大を招くことになります。このあたりの実態については公表されていないようですが、動画撮影などでは使い方によってバッテリーの持ちに差が出る可能性があるということになります。

いずれにせよ、マーケティング的にはセンセーショナルな24メガピクセルではなく、額面上の画素数は減るものの実用的なデュアルピクセル12メガピクセルを選んだということで、そうであればこそサムスンのカメラ開発に携わっている部門が未だ自社での高性能カメラモジュール開発を諦めておらず、どうにかして現状のスマートフォン向けカメラモジュール市場でトップシェアを占めるソニーの「Exmor RS for Mobile」に打ち勝とうと、ソニーの持つCMOSセンサー関係の特許を回避しつつ何とかして良い画質のセンサーを作ろうと努力を続けていることが伝わってきます(※注10)。

 ※注10:以前の記事でも指摘しましたが、ソニーのExmor RSシリーズのBSIセンサーはこの種のセンサーで色を扱う上で最大の難問である混色問題を原理的に排除することに成功しており、こと色再現の点では大きなアドバンテージがあります。一方、その特許を回避するために別構造を採用したサムスンのBSIセンサーでは混色を完全に無くすことができず、同一条件の下では色特性的にExmor RS for Mobileシリーズと同等性能を得るのが大変困難になっています。

ただ、この12メガピクセル解像度のデュアルピクセルカメラモジュールについては、海外で発売されたGalaxy S7・S7 edgeではソニー製のやはり全画面像面位相差AF対応モジュールであるIMX260が採用されているとの分解報告が出ていて、市場のトップを事実上独走するソニーのセンサー技術の凄みを見せつける状況となっています。

今回のGalaxy Note 7では果たしてGalaxy S7・S7 edgeと同様にソニー製IMX260の搭載が踏襲されるのか、ISOCELLが搭載されるのか、それともGalaxy S6世代でそうであったように両機種が混用されるのかが注目されます。

虹彩認証の採用

このGalaxy Note 7で特徴的なのが、セキュリティ対策としての個人認証のメカニズムとして虹彩認証を採用したことです。

これも以前の記事でご紹介しましたが、富士通がかなり以前から研究を続け2015年冬に発表された自社の「ARROWS NX F-04G」で世界に先駆けて実用化していた技術です。

虹彩周辺の概念図瞳孔は濃い色であるがこれは単なる「暗い孔」で、その奥にある水晶体に入力される光量がここの口径変化で決定される。虹彩はこの瞳孔の開口量を調節するための膜状筋肉組織であり、その筋組織に浮かび上がる模様は個々人で異なり、しかも基本的に生涯変化しないため個人認証に適する

虹彩周辺の概念図
瞳孔は濃い色であるがこれは単なる「暗い孔」で、その奥にある水晶体に入力される光量がここの口径変化で決定される。虹彩はこの瞳孔の開口量を調節するための膜状筋肉組織であり、その筋組織に浮かび上がる模様は個々人で異なり、しかも基本的に生涯変化しないため個人認証に適する

この技術では人間の眼球に備わる虹彩、中でも特に光=映像を取り込む瞳孔の周囲に王冠状に形成される「自律神経冠」と呼ばれる瞳孔の絞り制御を行う部分から外周に広がる枝状の筋組織、つまり絞りのアクチュエータに相当する筋組織が形成する皺状の模様が人間の生誕から死没までの間何か事故でもない限りは変化せず、また固有性が高く他人のそれと一致する確率が非常に低い事を利用しています。

具体的には赤外線を眼球に照射して虹彩部の赤外線写真を撮影し、検出された虹彩パターンを登録してあるパターンと照合、一致した場合にロック解除するという仕組みとなっています。

指紋認証の場合は意外と正しく認識されなかったり、寒冷地などで(たとえタッチパネル対応のものであっても)手袋をはめたままでは認証が行えなかったり、と意外に制約が多く、声紋認証でも風邪を引いたら正しく認識されなかった、録音した本人の声を再生したらあっさりロック解除された、といった結構厄介な問題や回避策が存在するのですが、この虹彩認証の場合は目を開けていればそれだけで認証が行え、しかも指紋や声紋のように採取して偽装することや、それらを用いた不正な手段によるロック解除が非常に難しいという特徴があります。

そのあたりを考えると、虹彩認証は技術的なハードル(および他社特許)をクリアできる技術がありさえすれば非常に有用かつ確実性や信頼性の高いセキュリティシステムです。

今回Galaxy Note 7に搭載された虹彩認証システムが果たしてサムスン独自開発なのかそれとも富士通の取得したこの技術に関わる特許を利用したものなかは明らかではありませんが、オンライン決済システムの普及もあってスマートフォンやタブレットのセキュリティ強化が強く求められる昨今の情勢を考えると、理にかなった新機能であると言えるでしょう。

長辺が事実上エッジレスとなったディスプレイ

ディスプレイの長辺端部の角を落として限りなくエッジレスに近い構造を実現したGalaxy Note 7のディスプレイ周り問題の端部への光の回り方でも明らかなように、この部分の曲面化は複雑な光の反射やディスプレイ表示の屈折による歪みなどをもたらす。また、通常のパネルと異なり、端部に表示されたメニュー操作などで誤操作を行う可能性が皆無ではない

ディスプレイの長辺端部の角を落として限りなくエッジレスに近い構造を実現したGalaxy Note 7のディスプレイ周り
問題の端部への光の回り方でも明らかなように、この部分の曲面化は複雑な光の反射やディスプレイ表示の屈折による歪みなどをもたらす。また、通常のパネルと異なり、端部に表示されたメニュー操作などで誤操作を行う可能性が皆無ではない

今回のGalaxy Note 7では、「Edge」の名を冠した機種のようにディスプレイの長辺の端を折り曲げるようにして追加されたガジェットなど表示のためのサブディスプレイは搭載されていませんが、カバーガラスの端を丸めて事実上ディスプレイ長辺の額縁状部分をほぼ無くした、サムスン自身が「Dual Edge」と呼ぶエッジレスディスプレイパネルが搭載されています。

この構造だと、視線の角度によっては画面端が歪んで見えることになる、曲面となる端部に表示されたメニューなどの操作で誤操作が起きる可能性がある、といったこの構造故の弱点もあるのですが、ディスプレイ長辺のまわりがすっきりするため、デザイン的には有利です。実際、Galaxy Note 7ではなかなか洗練されたデザインの筐体となっており、このディスプレイ構造のメリットが見て取れます。

ただ、角が丸くなってエッジレスになったということは、角のエッジに指を引っかける様にして掴む持ち方ができないということで、いかにサイズの大きなファブレットで片手持ちが元々やりにくかったにせよ、持ち方や取り扱いには一工夫要りそうな印象です。

なお、画面解像度そのものは在来の「Galaxy Note」シリーズと変わらず2,560×1,440ピクセル(WQHD解像度)で、パネルはSUPER AMOLEDとサムスンが呼ぶ自社開発の有機EL方式を採用しています。

このあたりはもう解像度と画素密度を上げる位しか改良点が無いような状況なのですが、サムスンの有機ELではこの上位にSUPER AMOLED plusとして全画素RGB発光としたモデルが過去(※注11)に存在しました。現行のSUPER AMOLEDでは解像度引き上げと各色発光素子間での寿命差に起因する画面色調の変化を最小限に抑えるため、ペンタイリングと呼ばれる特定の色の発光素子の配置を省いた色配列メカニズムが採用されていて、言わば間引きの状態がここ何年も続いています。これだけ画素数を多くできるようになったのですから、そろそろ色特性改善の手段としてSUPER AMOLED plusの復活を期待したいところです。

 ※注11:Galaxy S IIの世代まで。Galaxy S IIIで同じ画素密度のまま画面ピクセル数を増やし更に経年変化による色バランスの変動を抑制する手段としてタイリング技術が採用され、それが現在まで続いています。

カテゴリ12に対応したLTE通信機能

最近のスマートフォンではLTE通信機能の強化が著しく、LTE-Advancedのレンジに入るカテゴリ6以上の機能のサポートが目立つのですが、このGalaxy Note 7もその例外ではありません。

何とカテゴリ12、つまり最大600Mbpsでの通信を実現する高速通信規格がサポートされ、さらにWi-Fiでも2×2 MIMOによって最大620Mbpsでのデータ通信が可能となっています。

このあたりは搭載されているモデムやその周辺チップ、RFトランシーバ、それに内蔵アンテナなどの仕様や性能、それにそれらと接続されるプロセッサそのもののデータバス転送速度といった基本性能に依存する部分であって、更に言えば実際のデータ通信では通信中のエラー訂正処理その他によって公称値よりもかなり低い実効速度しか出ないケースが少なくありません。

そのため、この公称値だけを鵜呑みにすることはできないのですが、技術的なハードルのかなり高いカテゴリ12のLTE通信が当たり前のようにサポートされ、上限値とは言えこれほど高速での無線通信が可能となったことには、少々感慨があります(※注12)。

 ※注12:筆者はその昔もらい物の2400bpsモデムでパソコン通信をはじめ、その所要時間の長さとNTTから請求された通話料金の高額さに絶句したクチなので、どうしてもこの辺の高速化をみると隔世の感を覚えずにはいられません。

Micro SIMとnano SIMのサポートでDSDS対応?

サムスンの台湾向けGalaxy Note 7製品紹介ページに掲載のmicroSD/SIMカード複合トレイ日本向け製品紹介ページに掲載のものと異なり、左のmicroSD用スペースに「SIM2/microSD」の文字がありデュアルSIM対応モデルであることがわかる

サムスンの台湾向けGalaxy Note 7製品紹介ページに掲載のmicroSD/SIMカード複合トレイ
日本向け製品紹介ページに掲載のものと異なり、左のmicroSD用スペースに「SIM2/microSD」の文字がありデュアルSIM対応モデルであることがわかる

記事執筆時点での日本のGalaxy Note 7公式製品紹介ページでは一切触れられていないのですが、このGalaxy Note 7はSIMトレイがNano SIM1枚とMicroSDXC/Micro SIM兼用で1枚、計2枚搭載可能で、2系統で4G/3Gでの通信通話の同時待ち受けが可能なDSDS(Dual SIM/Dual Standby)タイプのデュアルSIM端末としての動作が可能な設計となっています。

このあたりは昨今の他社端末の流行に対応した形ですが、言い替えれば搭載される統合プロセッサや内蔵モデムなどのハードウェアが対応したからこそ、実現した機能であると言えます。

特に2系統同時待ち受けは通信回路を2系統搭載していなければ基本的には対応できない機能ですから、端末メーカーがいくら対応したいと考えても、搭載されるチップセット側が対応していなければどうしようもないのです。

もっとも、先行発表された台湾向けではデュアルSIM対応となっていますが、アメリカ市場向けはシングルSIM対応でさらにこの製品の日本語紹介ページで掲載されているMicro SD/SIM複合トレーはMicro SDとSIM 1とのみ表記のあるシングルSIM仕様であるため、例えばこの端末を販売するMVNO事業者側からのリクエストがあった場合を別にすると、日本市場で発売されるGalaxy Note 7は基本的にシングルSIM仕様となる可能性が高いと言えます。

なお、この機種の場合は複合トレーの構造や形状から仮にデュアルSIM動作に対応するとしても、その場合にはmicro SDメモリカードが利用できなくなるという制約があります。ストレージ容量を取るかそれともDSDS動作を取るかは難しい判断になりますが、もし日本向け製品で最初からシングルSIM仕様となっていてユーザー側で選択することができないのであれば、それは少々残念な気がします。

以下、その3へ続きます。

▼参考リンク
Samsung Galaxy Note 7 New Release, The Intelligent Smartphone
Galaxy Note7 | スマートフォン | Galaxy
Samsung Galaxy Note7 | Samsung US
Samsung Galaxy Note7 重點功能 – Samsung Taiwan
キヤノン:EOS 70D SPECIAL SITE イチガン新世界。
キヤノン:EOS 70D|デュアルピクセルCMOS AF紹介
虹彩認証搭載スマートフォンの試作機を開発 : 富士通
スマートフォン・タブレット・携帯電話(ARROWS NX F-04G) – FMWORLD.NET(個人): 富士通

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