Google Nexus 5X(左)・Nexus 6P(右)

新型Nexusの指し示す道 ~Google、Nexus 5XとNexus 6Pを発表~

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by [2015年10月01日]

Google Nexus 5X(左)・Nexus 6P(右)

Google Nexus 5X(左)・Nexus 6P(右)

よく知られているように、GoogleのNexusシリーズは最新版Androidの動作するリファレンス機としての役割を担っています。

そのため、メジャーバージョンアップ前の開発版リリース時にはまずNexusシリーズのいずれかの機種に対応したバージョンが提供されてたたき台となるのが常ですし、新バージョンが提供されればその時点で製造販売されているNexusのプリインストールOSもそれに合わせてバージョンアップされるのが慣例となっているわけですが、ほとんど素に近い、Googleによるアプリ以外ほとんど何も入っていないこれらNexusシリーズ各機種は、そうであるが故にその時点でGoogleがどのようなハードウェアをリファレンスと見なしているのかを雄弁に物語ることになります。

シンプルで何も余計なものがついていないからこそ、GoogleがAndroidマシンとしてのそれらの端末に何を求めているのかが鮮明に浮き彫りになってしまうのです。

そして今回、長らくコードネーム”M”と呼ばれてきた最新版Android 6.0 “Marshmallow”の登場に合わせてNexus 5XとNexus 6Pの2種類の「Nexus」が発表されました。

その型番からも明らかなように、それぞれNexus 5とNexus 6の後継機種となるもので、いずれもARM v8命令セットをサポートする64ビットCPUコアを搭載しています。

昨年(2014年)にNexus 6が発表された際に、筆者はその紹介記事のタイトルを「最後の32ビットSnapdragon搭載Nexus?」と題し、記事中で「ぼくのかんがえたきゅうきょくの32びっとあんどろいどすまほ」を具現化したものである、とこの機種を紹介したのですが、予定通りというか何というか、今年のNexusの新機種2機種はいずれも64ビット版CPUコア内蔵の統合プロセッサ搭載となり、プリインストールされているOSもAndroid 6.0の64ビット ARM版ということになりました。

つまり、昨年の予想は見事に当たったということなのですが、これは既定路線通りにことが進んできたというだけの話で、特にどうというものではありません。

Googleにとっても、むしろ今のこの段階で32ビット版Android 6.0搭載のNexusをリリースせねばならないとすればそれは大問題で、それがそうなっていないということは概ね同社の想定していたとおりに64ビットプロセッサへの移行が進んでいると考えて良いでしょう。

いずれにせよ、今回登場したNexus 5XとNexus 6Pは64ビット版Android 6.0搭載スマートフォンの普及促進のため、そのリファレンス機として重大な役割を担うことになります。

そこで今回は、これら2機種のハードウェア仕様の検討を通じて、これらがどのような意図で設計されたものであるのかに迫ってみたいと思います。

Nexus 5Xの主な仕様

Google Nexus 5X

Google Nexus 5X

記事執筆時点で明らかにされているNexus 5Xの主な仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 6.0
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 808(MSM8992:1.8GHz ヘキサコア Adreno 418 GPU搭載)
  • サイズ:72.6×147×7.9mm
  • 重量:約136g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:5.2インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2GB(LPDDR3)
    • フラッシュメモリ:16GB・32GB
    • 拡張スロット:なし
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:12.3メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2×2 MIMO対応)
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • NFC対応
  • 電池容量:2,700mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応
  • 開発製造担当:LGエレクトロニクス

Nexus 6Pの主な仕様

Google Nexus 6P

Google Nexus 6P

記事執筆時点で明らかにされているNexus 6Pの主な仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 6.0
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 810 v2.1(2.0 GHz オクタコア Adreno 430 GPU搭載)
  • サイズ:77.8×159.3×7.3mm
  • 重量:178g
  • メインスクリーン
    • 種類:AMOLED(有機EL)
    • 解像度:1,440×2,560ピクセル(WQHD解像度)
    • 画面サイズ:5.7インチ(対角線長)
    • アスペクト比:9:16
  • 内蔵メモリ
    • RAM:3GB(LPDDR4)
    • フラッシュメモリ:32GB・64GB・128GB
    • 拡張スロット:なし
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:12.3メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:8メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac(2×2 MIMO対応)
  • Bluetooth:Ver.4.2
  • NFC対応
  • 電池容量:3,450mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応
  • 開発製造担当:華為技術有限公司(ファーウェイ)

64ビット化にあわせて大幅強化された統合プロセッサ周り

上掲の主な仕様でも明らかですが、ミドルレンジ機のリファレンスといった位置づけのNexus 5Xとハイエンド機のリファレンス…というよりはiPhone 6 Plus/6s Plusへの対抗心が露骨なまでに剥き出しのNexus 6Pの組み合わせで、搭載CPUコアからGPU、メモリ容量やその種類まで見事なまでに格差が設けられています。

もっとも、実際に販売されている各社の製品を見ていると、概ねこれに近い形で性能や仕様がセグメント化されていますし、そもそも前世代機であるNexus 5とNexus 6の関係もこれに近いものでしたから、前作を踏襲しつつ実態に即した仕様を与えられたリファレンス機であると言えるでしょう。

Qualcomm Snapdragon 810製品紹介ページ発熱など幾つか問題があるが、現状で最強クラスの統合プロセッサの1つであることは間違いない

Qualcomm Snapdragon 810製品紹介ページ
発熱など幾つか問題があるが、現状で最強クラスの統合プロセッサの1つであることは間違いない

なお、Nexus 6Pの統合プロセッサが「Snapdragon 810 v2.1」とされており、「Snapdragon 810」のマイナーチェンジバージョンであることが示されています。

2015年春から夏にかけて発売された「Snapdragon 810」搭載スマートフォンでは大なり小なり動作時の深刻な高発熱が指摘されて問題となっていましたから、恐らくそのあたりの問題解決を図られたバージョンと考えられますが、GoogleのNexus 6P製品紹介ページではいっそ清々しいまでに搭載される統合プロセッサについての紹介をスルーして他の機能ばかりを前面に押し出した構成となっており、少なくともGoogleにとってはこの機種の搭載する「Snapdragon 810 v2.1」については触れて欲しくないということのようです。

もっとも、熱の問題を別にすれば「Snapdragon 810」系は現在Android搭載スマートフォンで利用可能なARM命令対応統合プロセッサとして最強クラスの機種の1つです。

Nexus 6PはWQHD解像度とかなり高解像度の有機ELディスプレイパネルを搭載していますが、搭載されるメインメモリ容量が3GBとなり、しかも現行最新のLPDDR4メモリが搭載されているため、GPUを含めそのスペックに見合った性能が期待できます。

言い替えれば、フルHD解像度のパネルを搭載し、内蔵されるGPUコアの性能もNexus 6PのAdreno 430より格下のAdreno 418となっているNexus 5XがLPDDR3メモリを2GB搭載するのは、その性能や想定価格に見合った構成が採用されている、ということです。

とはいえ、Nexus 5Xのスペックでもかなり高性能な部類に入るのは確かで、これらの機種で約束されている2年間のOSバージョンアップ保証期間中のAndroidのメジャーバージョンアップにも十分耐えることでしょう。

画素数12.3メガピクセルとなったメインカメラ

Nexus 5Xの製品紹介ページ絶賛に近い形で新メインカメラモジュールが紹介されている

Nexus 5Xの製品紹介ページ
Nexus 6Pのページでも同様で、絶賛に近い形で新メインカメラモジュールが紹介されている

今回のNexus 5X・6Pで注目される点の1つに、メインカメラの画素数があります。

これらの機種では共に有効画素数12.3メガピクセルのメインカメラが搭載されているのですが、有効画素数8メガピクセルからのスペックアップとなったNexus 5Xはともかく、Nexus 6Pは有効画素数13メガピクセルからの1ランクダウンで、額面上のスペックを見るだけならば性能低下していることになるのです。

しかし、Googleの公式製品紹介ページでは、このNexus 6Pのカメラについて、「A powerful camera that catches more light」、つまりより多くの光を捉える強力なカメラであるとし、それどころか「The best all-around camera we’ve ever put into a Nexus」、すなわち「私たちがこれまでにネクサスに搭載した中で最高のカメラ」とまで言い切って手放しで褒めちぎっています。

この有効画素数12.3メガピクセルのカメラモジュールの正体は言わずと知れたソニーの「Exmor RS for mobile」であるとのことで、つまりAppleがiPhone 6s・6s Plusに搭載したカメラモジュールの同系機種ということになります。

どちらの機種も4K解像度動画撮影機能をサポートしていますから、恐らくはその機能に対応するカメラということで必然的に選択肢が狭まったものと思われますが、ここでもソニー製カメラモジュールがキーデバイスとなっているわけです。

何にせよ、この「Exmor RS for mobile」は従来のNexus 6に搭載されていた有効画素数13メガピクセルのカメラよりも効率的に光を集めることで、より美しい写真撮影を行えるとGoogleから評価されたということになります。

Nexus 6に搭載されていたカメラモジュールのメーカーがどこであったのかは定かではありませんが、ハイエンド機種を中心とするスマートフォンにこうまで「Exmor RS for mobile」ばかりが採用されているのを見ると、パソコン事業を切り捨ててでもカメラ用CCDセンサーをはじめとする半導体製造事業を残し強化を進めたソニーの経営判断は正しかったのだ、と思わざるを得ません。

いかにソニーがCCDを世界で初めて製品化したメーカーであり、この種のセンサーやレンズの設計で何歩も、いやそれどころか周回遅れにするほど他より先に進んでいるとしても、正直スマートフォンメーカーとしてみれば商売敵に他ならない各社からここまで圧倒的な支持を集めるというのは意外ですが、「Exmor RS for mobile」のあの画質を見るとそれも当然の結果なのでしょう。

指紋認証機能の導入

指紋認証機能が搭載されたことを示すNexus 6Pの機能紹介ページこの機種では本体背面上部中央に円形の指紋認証デバイスが搭載されている

指紋認証機能が搭載されたことを示すNexus 6Pの機能紹介ページ
この機種では本体背面上部中央に円形の指紋認証デバイスが搭載されている

これまで、Android搭載スマートフォンでは、ユーザーの固有情報による個人認証の仕組みが標準化されてきませんでした。

これは、身も蓋もないことをいえば指紋認証を標準化しようとした目の前で同技術で業界最大手であったAuthenTecがAppleに会社そのものを買収されてしまい、同社の保有していた特許を基礎とする技術による指紋認証デバイス製品の他社への外販が強制的に打ち切られてしまったためです。

この業界、最大手のAuthenTec以外はどんぐりの背比べのような状態でしたから、その最大手を引き抜かれてしまうとその代わりを直ちに行えるような企業は無く、おかげでそれ以来指紋認証は長らくAppleの独占技術のようなことになってしまっていたのでした。

その結果、旧AuthenTecの指紋認証技術の代替となり得る技術の開発を巡ってAndroid陣営は様々な方法を模索し、中には富士通が先日実用化した虹彩認識のようなほとんどSFじみた手法まで開発されるに至ったのですが、結局の所手軽さと確実さで指紋認証以上のものはなく、旧AuthenTecの特許に抵触しない技術を用いた指紋認証デバイスが、標準的な個人認証デバイスとしてAndroid 6.0でようやく採用されたわけです。

Fingerprint Cards AB公式サイトご覧のとおり、ここの指紋認証デバイスはAuthenTec買収後各社のAndroid搭載スマートフォンに採用されている

Fingerprint Cards AB公式サイト
ご覧のとおり、ここの指紋認証デバイスはAuthenTec買収後各社のAndroid搭載スマートフォンに採用されている

ちなみに、今回Nexus 6Pの開発元となっているファーウェイはこれまでも指紋認証デバイスをスマートフォンに搭載していて、スウェーデンに本社を置くFingerprint Cards AB(FPC)の製品を採用していました。

実は、2012年のAuthenTecの買収でスマートフォンに搭載する指紋認証デバイスを調達できなくなった富士通がF-07Eでこの会社製のデバイスに切り替えたという話もあったりします。

いずれにせよ、こうしてNexusシリーズで標準搭載されるようになったからには、今後Android 6.x以降搭載のスマートフォン・タブレットでは指紋認証デバイスの搭載が当然となってゆくのでしょう。

時期尚早? USB Type-Cに変更されたUSBコネクタ

USB Type-Cコネクタケーブルと各種ソケット様々な用途が想定されて複数のソケットが提供されている。

USB Type-Cコネクタケーブルと各種ソケット
様々な用途が想定されて複数のソケットが提供されている。

新機能ではないのですが、今回のNexus 5X・6Pではこれまでにない新しい規格の導入が行われています。

それは、これまでUSB micro-Bコネクタが一般的に搭載されてきた、本体の充電・データ授受用USBコネクタが、最新のUSB Type-Cコネクタに変更されたことです。

このUSB Type-Cコネクタについては以前の記事でご紹介したのですが、表裏リバーシブルで(仕様上は区別があるものの)表裏どちらの向きで差し込んでも問題なく動作し、これまでよりも大幅にピン数を増やして(USB 2.0までの5本→表裏で12×2=24本)高速なUSB 3.1でのデータ転送やUSB 2.0での接続を維持しつつDisplay Portによる映像出力を行ったりと格段に高機能化したコネクタです。

VESAが公表したUSB Type-C端子のピンアサインこれまでのUSB端子とは一線を画する複雑な構成である

VESAが公表したUSB Type-C端子のピンアサイン
これまでのUSB端子とは一線を画する複雑な構成である

さすがに、当面はスマートフォンで積極的にUSB 3.x規格でのデータ転送がサポートされることはなさそうですが、フレキシブルな機能割り当てや接続方向によるコネクタ形状の相違が無いなど自由度が高く、さらにUSB Micro-Bコネクタではコネクタそのものを大型化せねば対応できなかった大電力給電も可能であるなど、速度以外のメリットも多いこのコネクタの採用は理にかなっています。

USB Type-Cソケット(左)とType-Aソケット(右)Type-Cソケットは上下左右対称の形状でコネクタがリバーシブルに差せるようになっている。

USB Type-Cソケット(左)とType-Aソケット(右)
Type-Cソケットは上下左右対称の形状でコネクタがリバーシブルに差せるようになっている。ちなみにこの2種のコネクタの価格差は搭載製品の価格で3,000円近かったりする。

ちなみにこのコネクタ、一見するとiPhoneなどで利用されているLightningコネクタとよく似ているのですが、流石に後発だけあって色々強化されており、むしろ上位のThunderbolt 2ポートに匹敵する機能がサポート可能であったりします。

まぁ、現状でこのコネクタを標準搭載しているパソコンはAppleのMac Bookくらいのもので、PCI Express対応のUSB 3.1カードでの搭載コネクタの違いによる価格差からこのコネクタはかなり高価な部品であることが判明しているため、当面は接続ケーブルのコストなどで色々苦情が出そうです。

アルミ筐体を採用したNexus 6P

今回のNexusで特徴的なのがNexus 6Pで筐体背面にアルミ材が使用されていることです。

発熱量の大きなプロセッサを搭載するNexus 6Pが放熱性の良いアルミ製筐体を採用するのは合理的ですが、この機種、NFC機能も搭載している訳で、NFCの認識は大丈夫なんだろうかとちょっと心配してしまいます。

もっとも、デザイン的な、あるいはレイアウト的な工夫により、カメラレンズだけが突き出すのを防ぎつつ十分な剛性と強度を持たせたこの筐体デザイン、これまでのファーウェイのスマートフォン歴代各製品にも見られない、他に無い全く新しい形に仕上がっていて、大変によい感じです。

失礼ながら、ファーウェイがこれほど新しいデザインを出してくるというのは正直予想外でした。

指紋認証デバイスの設置位置など、今後再検討を要する点もいくつかありますが、なるほどこれならばサムスンあたりがうかうかしていられないというのも納得です。

デザイン良し、性能よし、後は値段だが…

以上、Nexus 5XとNexus 6Pを見てきましたが、64ビット化完了と指紋認証デバイスの標準搭載により、Android 6.0搭載スマートフォンの進む先が少しずつ見えてきました。

カメラ解像度の件も考え合わせると、結局の所、AndroidもiOSも、ハードウェア的には最終的に1つの解に収斂してゆくのではないか、という気もするのですが、それはそれとしても筐体デザインなどにはまだまだ工夫の余地がたくさん残されているわけで、特にNexus 6Pのデザインには色々考えさせられました。

何より、他の何者にも似ていないというのは素晴らしいことで、これだけでもこの機種を買いたいと思わせるものがあります。

また、性能的にはカメラをはじめ決して突出はしていないのですが、各機能のトレードオフ関係を検討してみると、両機種とも合理的で無駄の無い仕様選定が行われていると言えます。

これら2機種で問題があるとすればそれは価格です。

さすがに、このスペックでNexus 6Pのストレージ128GBモデルが9万2800円(税別)というのはいくら何でもやり過ぎでは無いでしょうか。

購入を検討される方には、もしお急ぎで無いなら少し様子を見て値下がりされるのかどうかを見極めてから決断なさることをおすすめしたいと思います。

▼参考リンク
Nexus 5X – Google
Nexus 6P – Google
Fingerprints

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