SHARP AQUOS K SHF31ご覧の通り見た目は全く伝統的な二つ折り構造の携帯電話そのものである。

本音はLTE移行の促進? ~auケータイ『AQUOS K SHF31』が示す通信事情~

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by [2015年1月28日]

SHARP AQUOS K SHF31ご覧の通り見た目は全く伝統的な二つ折り構造の携帯電話そのものである。

SHARP AQUOS K SHF31
ご覧の通り見た目は全く伝統的な二つ折り構造の携帯電話そのものである。

新年になってauが発表した同社端末の2015年春モデルは、Infobarの復活や、高齢者/子供向けスマホの発売といったトピックもあったものの、全体的なとしては2014年冬モデルに引き続いて従来機種の正常進化というべき機種が目立つ状況となっていました。

しかし、そんな中にあってただ一つ、最新のInfobarよりも強烈な個性を放つ機種がありました。

その名は「AQUOS K SHF31」。

Android搭載のスマートフォンを二つ折り式でテンキーのついたガラケー(フィーチャーフォン)の筐体に押し込んで、スマホのハードウェアでガラケーの使い勝手を実現してしまった、ある意味大変な野心作です。

この機種、「スマホ」+「ガラケー」で「スマケー」か、それとも「ガラケー」+「スマホ」で「ガラスマ」か、といった割とどうでも良いようなことが一部で盛り上がったりしていたのですが、実はこれまでの「ガラケー」ではサポートされなかった/できなかった機能がいくつか実現しています。

それは、インターネット接続で4G LTE通信に対応したことと、利用可能であればWi-Fi接続に通信をオフロードできること、そしてテザリング機能に対応することの3点です。

今回はこれら3つの機能を中心に、「AQUOS K SHF31」に迫ってみたいと思います。

主な仕様

記事執筆時点で公表されている「AQUOS K SHF31」の仕様は以下のとおりです。

  • OS:Android 4.4
  • チップセット:Qualcomm MSM8926 Snapdragon 400(1.2GHzクアッドコア)
  • サイズ:約51×113×16.9mm
  • 重量:約128g(電池パック含む)
  • メインスクリーン
    • 種類:液晶
    • 解像度:540×960ピクセル(QHD解像度)
    • 画面サイズ:3.4インチ(対角線長)

     

  • 内蔵メモリ
    • RAM:1GB
    • フラッシュメモリ:8GB
    • 拡張スロット:microSD HC card(最大容量:32GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13.1メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 b/g/n
  • LTE:
    • 転送速度:下り最大150Mbps/上り25Mbps
    • キャリアアグリゲーション:非対応
  • テザリング:対応(最大10台)
  • Bluetooth:Ver.4.0
  • 電池容量:1,410mAh
  • 防水:IPX5/IPX7
  • 防塵:非対応
  • 開発製造担当:シャープ

以上の仕様からも明らかなように、これは筐体こそ二つ折り構造のガラケーですが、中身は最近のSIMフリースマホでおなじみのSnapdragon 400を搭載したAndroidスマートフォンそのものです。

ガラケーであるということ

この「AQUOS K SHF31」は、上部にカーソルキーを配し、その下にテンキーを並べた典型的なガラケーのボタン配置を踏襲していますが、実はテンキーの部分に静電容量方式のタッチセンサーが搭載されていて、このセンサーに対応したアプリではフリックやタップといった操作がここで行えるようになっています。

実は過去に登場したAndroid搭載かつ携帯電話スタイルの端末では、ここでディスプレイパネルにタッチセンサーを搭載し、画面をタッチ操作するようなUIを採用していたのですが、これは主に片手持ちで使用される携帯電話の利用実態を全く考慮しない実装で、タッチ操作の度に握り方を変えねばならないなど、はなはだ使いにくい物でした。

この「AQUOS K SHF31」は、そうした過去の失敗の教訓からこのような構造を採用したと考えられ、ガラケーの使い勝手を保ちつつスマートフォンの操作性を取り入れた格好です。

なお、この機種はガラケーとしての体裁を整えていますが、当然ながらというべきか、OSが異なることからauのガラケーで事実上の標準であったBREWアプリやEZweb対応のサービスは一切動作しません。

さらに、先に述べたようなユーザーインターフェイスの特殊性もあってかGoogle Play非対応で、auスマートパスで提供される対応アプリのみがインストール可能とされています。

つまり、Androidのアプリを動かすプラットホームとしてみた場合には、この「AQUOS K SHF31」は制約だらけの使いにくい端末、ということになります。

AQUOS Kの利点

従来のガラケー用アプリ・サービスが動かずGoogle Playに対応しないとなると一体誰がこんな端末を買うんだ、という話になってしまいますが、実のところこの機種の真価は、ガラケーの操作性のままで4G LTE通信やWi-Fiを利用可能とし、一般的なPC向けサイトやスマホ向けサイトが閲覧でき、しかもテザリングにも対応する、という通信系の高速化・高機能化の部分にこそあると言えます。

ガラケーで通話とメール、インターネットサイトのブラウジング、それにメッセージサービスを利用し、同時にモバイルルーターを携行してノートパソコンのインターネット接続に利用していたようなユーザーが機種変更を行う場合ならば、ガラケーとモバイルルーターはこれ1台で代替できてしまうわけです。

付け加えて言えば、既存のガラケーでこの「AQUOS K SHF31」ほど高性能なプロセッサを搭載した機種は無く、13メガピクセルクラスのカメラを搭載した現行機種もまたありませんから、その点はこの機種の強みであると言えます。

もしガラケーからスマホへの機種変更を検討していた2年前にこの機種があったなら、筆者は迷わずこの機種を選んでいたでしょう。

auにとっての位置づけ

ある意味中途半端かつ微妙で、それでいて一部のユーザーには直球ストライクの「AQUOS K SHF31」ですが、auサイドから見ると恐らく全く様相が異なってきます。

現在日本国内の携帯電話市場の約半分に当たる6000万台以上も契約があるとされ、端末出荷台数的にも年間1,000万台レベルで推移しているとされるガラケーですが、これは通信事業者の立場からすると通信速度が非常に低速でしかも回線の利用効率が今となっては非常に悪く、4G LTEで通信を行う現在の一般的なスマートフォンのユーザーに通信帯域の観点で負担を強いる契約が、漸減傾向にあるとは言えまだ6000万も残っているということを意味します。

しかも、これらのガラケーでは通信をWi-Fiにオフロードすることもできないため、通信中は常時貴重な3G回線の帯域を無駄に圧迫し続けます。

一方、最近のVoLTE、つまり4G LTE回線経由でデジタルデータ化した通話音声のやりとりを行うサービスに対応したスマートフォン各機種では、これをサポートする代わりに従来の3G回線経由での通話機能が非搭載となっています。

要するに、3Gの通信は通話を含めて全部なくしてしまいたい/可能な限り減らしたいというのが各キャリアの本音ということで、現状ではプロセッサの処理能力の問題もあってかスマートフォンの上位機種でしか対応していませんが、将来的には恐らく販売される全ての機種がVoLTEに対応し通信帯域的に効率の悪い3Gの通話機能を持たなくなることでしょう。

そういう状況でいつまでもガラケーが3G回線で通信し続けるのは結構大問題なわけですが、困ったことには現在生産されているガラケーのチップセットでは4G LTE通信をサポートしておらず、また今更これに対応するチップセットを開発してくれるような酔狂なメーカーもありません。付け加えて言えば、何年も前に事実上開発が終了し製造プロセス的にも大幅に旧式化しつつある現行のガラケー用チップセットが、いつまでも供給され続ける保証もまたありません。

そのため、顧客のガラケー需要に対応しつつ、しかも3G回線を極力使わないような端末を作ろうと思えば、今回の「AQUOS K SHF31」のようにAndroid搭載スマートフォンを基本としつつユーザーインターフェイス部分をガラケー相当とした機種とするより他はないと言えます。

その意味では、この「AQUOS K SHF31」は最終的に3G回線を淘汰するための戦略機種であり、同時にガラケーを求める顧客の声にどうにかして応え続けるための苦心の作、と見ることができるでしょう。

売れて欲しいような、売れて欲しくないような

以上、「AQUOS K SHF31」について見てきましたが、未だこなれきっていない部分もあるものの「4G LTE通信に対応するAndroid搭載スマートフォンにガラケーのふりをさせる」という開発コンセプトは、ガラケーにまつわる様々な問題を解決する卓抜なアイデアであると言えます。

既存のガラケー用アプリ資産やサービスに対応しないのは残念ですが、これらの開発やサポート、あるいは運営が次第にフェードアウトしつつある現状を考えると、無理に(例えばBREWのOSをソフトウェア的にエミュレーションすることなどによって)それらのアプリやサービスに対応するのも工数やコスト的に、また将来性の点でも賢明な策ではないため、ガラケー相当のユーザーインターフェイスで動作するAndroidアプリをauスマートパスで提供し、主立ったそれらのアプリやサービスを肩代わりさせよう、という方向性は間違っていません。

今後、この種の端末がどの程度の成功を収めるかは定かではありませんが、恐らくauの本音としては通常のスマートフォンの市場を侵食するほど成功して欲しくはないものの、ガラケーの市場を蹂躙する程度には成功して欲しい、最終的にこの種の端末をVoLTE対応として3G回線そのものを全廃できるところまで持って行きたい、といったところではないでしょうか。

ガラケーの延命策を考える上で、今後のこの機種の動向から目が離せません。

▼参考リンク
主な特長|AQUOS K SHF31|au製品ラインアップ :SHSHOW
新世代ケータイ説明会を開催|発表会レポート:シャープ
「AQUOS K」および「料金プラン」、「auスマートパス」の詳細について | 2015年 | KDDI株式会社
国内初、「4G LTE」に対応したauケータイ「AQUOS K」 | 2015年 | KDDI株式会社

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