ASUSTek ZenPhone 2ZenFoneシリーズのハイエンドモデルにして、初のIntel Atomおよび64ビット版Android搭載モデル。

64ビットCPU搭載の伏兵、現る~ASUS「ZenFone 2」

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by [2015年1月19日]

ASUS ZenFone 2 ZenFoneシリーズのハイエンドモデルにして、初のIntel Atomおよび64ビット版Android搭載モデル。

ASUS ZenFone 2
ZenFoneシリーズのハイエンドモデルにして、初のIntel Atomおよび64ビット版Android搭載モデル。

Androidとしては初めて64ビット版が公式提供されるバージョンとなったAndroid 5.0 Lollipopですが、その発表の時点で実際に64ビット命令セットを利用可能なスマートフォン・タブレット用のプロセッサはごく限られた機種しか存在していませんでした。

その一つが先日ご紹介したNexus 9に搭載されたNVIDIAの『Tegra K1』(Denverコア搭載)であり、それ以外にはこの時点でまだ出荷の始まっていなかったQualcommの『Snapdragon 810』(Cortex-A57+Cortex-A53搭載)に代表されるARM純正のCortex-A57・A53を適宜組み合わせて搭載した各社のプロセッサ群であったわけですが、「64ビット命令セットに対応しAndroid搭載のスマートフォンやタブレットに利用出来るモバイルプロセッサ」という括りで見ると、実はもう一つ有力な選択肢がありました。

それはインテルのAtomシリーズと呼ばれるプロセッサです。

実を言うとAtomシリーズはコードネーム「Bonnell」として知られる第一世代の機種から既にIntel 64、つまり一般にx64命令セットと総称される一連の64ビット命令セットをサポートしていて、スマートフォン向けのモデルでも「Merrifield(メリーフィールド)」と呼ばれるマイクロアーキテクチャを採用したZ3460・3480の2機種(2014年第一四半期発売開始)以降は64ビット命令セットのサポートが有効化されていました。

つまりこれらのプロセッサを搭載し、しかもAndroid 5.0発表以前にAndroid 4.x搭載で発売されたスマートフォンやタブレットは、そのプロセッサ性能をフルに発揮しない/できない状態で使用されているということなのです。

もっとも、それらの内の少なくない機種はDellのVenue 8シリーズのようにメインメモリ1GB搭載の低価格モデルだったりしたので、今更64ビット版OSへのアップグレードというのも厳しいのですが、要するにIntel Atom搭載機種に限っていえばCPU側は64ビット対応なのにOS側の対応が遅れていたわけです。

それが昨年末のAndroid 5.0の発表でようやく解消され、Intel Atom Z34x0/Z35x0搭載で64ビット版Android 5.0をインストールするスマートフォンやタブレットの製品化が待望される状況となっていました。

そしてこのたび、CESにてASUSがZenFoneシリーズのハイエンド機種として、現行最新のIntel Atom Z3560/Z3580を搭載する『ZenFone 2』(ZE551ML)を発表しました。

そこで今回は、初の64ビット版Lolipopが動作するIntel Atom搭載スマートフォンということで注目を集めるこの機種について考えてみたいと思います。

ZenFone 2の主な仕様

記事執筆時点で公表されている『ZenFone 2』の主な仕様は以下のとおりです。

  • OSAndroid 5.0 Lollipop
  • チップセット:Intel Atom Z3560/Z3580(1.8GHz/2.3GHzクアッドコア)
  • サイズ:77.2×152.5×10.9mm
  • 重量:170g
  • メインスクリーン
    • 種類:IPS液晶
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:5.5インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2GB/4GB(LPDDR3)
    • フラッシュメモリ:16GB/32GB/64GB
    • 拡張スロット:microSD card(最大容量:64GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • LTE:
    • 転送速度:下り最大150Mbps/上り50Mbps(UEカテゴリ4)
  • Bluetooth:Ver.4.0
  • NFC:対応
  • 電池容量:3,000mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応
ASUS ZenFone 2はグラシアグレー、オスミウムブラック、グラマーレッド、セラミックホワイト、シアーゴールドの5色のカラーバリエーション展開が行われる。

ASUS ZenFone 2はグラシアグレー、オスミウムブラック、グラマーレッド、セラミックホワイト、シアーゴールドの5色のカラーバリエーション展開が行われる。

現状ではキャリアアグリゲーションやテザリングへの対応の可否など幾つか判然としない箇所もありますが、端的に言ってスマートフォンとしては現状最強レベルの機能・性能を実現していることがわかります。

統合プロセッサもメモリ容量も内蔵ストレージ容量もメーカー出荷時オプションにて選択可能であるため、最低スペック設定時には結構残念な仕様にできてしまうのですが、その反面フルスペック設定時には現状でこれに追従出来る機種が無いほどの高い性能・機能を実現しています。

ただし、現状では稼働時間が一切公表されていないため、『Intel Atom Z3560/Z3580』の真の実力が見えない状況です。

とはいえ、第三世代Atomの「Silvermont」マイクロアーキテクチャは従来遅い遅いといわれてきたIn Order命令実行型のCPUアーキテクチャを回路構成が複雑になるもののより高速動作するOut of Order命令実行型のアーキテクチャに変更されるなどアーキテクチャに大幅に手が入れられ、半導体製造プロセスルールも22nmにシュリンクされているため、サーバ向けバリエーションモデルなどを中心に従来モデルより高速化されているのが確認されています。

また、同系プロセッサを搭載したタブレットなどでの(32ビット版OSでの比較になりますが)体感性能も結構高いレベルに達しているため、この『ZenFone 2』でもそれなりに期待できそうです。

遂に4GBに到達したメインメモリ

この『ZenFone 2』で特に注目されるのは、メインメモリ容量として4GBが選択可能なことです。

これはOSが64ビット命令セット対応になった効果が最も顕著に現れた部分であると言えます。

というのも、32ビット命令セット対応OSでは特別な手法を用いない限り、扱えるメモリ空間が32ビットアドレッシング=2の32乗バイト=4GBまでとなり、それ以上の容量のメインメモリを積んでもOSで認識できず、それどころか同じメモリ空間をGPUやその他の周辺デバイスのデータ授受などにも利用するため、実際には2GB~3GB以上いくら積んでも意味がないというかなり悲惨な状態となっていた(※注)ためです。

 ※注:これはスマートフォンやタブレットよりも一足先に搭載メモリ量の大容量化と64ビット化が進んだパソコンで2000年頃から「大枚はたいて買ってきた4GBのメモリが2.5GBしか認識しない」などといった形で大問題となっていたため、ご記憶の方もおられることと思います。これはメモリマップドI/O方式を採る32ビットプロセッサの抱える宿痾でありました。

事実、この問題があるためにAndroid 4.x以前のARM v7命令セット対応CPU搭載スマートフォンやタブレットなどではメインメモリがハイエンド機種で2GB、一部の限られた機種でも3GB搭載にとどまっていて、それ以上の容量のメモリを搭載した機種が存在しませんでした。

そうした問題が、64ビット命令セット対応OSでは解決するのです。

理論上、64ビット命令セットに対応するCPUでは64ビットアドレッシング、つまり2の64乗バイト=16エクサバイト≒170億GBという気が遠くなりそうなほどの天文学的メモリ空間が利用可能となっています。

そのため、64ビットOS環境ではこれまでの32ビットOSの下では4GB以下のアドレスに割り当てられていたメモリマップドI/Oのためのメモリ空間がより高位の実メモリに邪魔にならないアドレスに移動され、4GBのメモリを搭載すればそのまま4GBのメモリとして認識されるようになります。

今回の『ZenFone 2』の最大メモリ容量4GBというのはそうした64ビットOSの特性を有効に生かして設定されたもので、Intel Atom Z3560/Z3580のサポートする最大メモリ容量が4GBであることから、CPUのスペックを最大限に生かした容量設定であるわけです。

iPhone 6よりも一世代古いGPU

仕様では示さなかったのですが、この『ZenFone 2』に搭載されているGPUはイギリスのImagination Technologiesの「Power VR Series 6」の中でもミドルレンジに位置づけられるG6430となっています。

このG6430という型番を目にして、どこかで見たような、という印象を持たれた方もおられるかも知れません。

実は、AppleのiPhone 5sなどに搭載されたA7プロセッサに搭載されていたGPUが、(さまざまなベンチマークテストの結果などから)このG6430と見られているのです。

現行の『iPhone 6/iPhone 6 Plus』に搭載のA8プロセッサではこの後継にあたる「Power VR Series 6XT」のGX6450に変更されたと考えられていますから、『ZenFone 2』はことGPU性能についてはそれなり以上に高性能ではあるものの、iPhone 6 Plusなどを上回るほど飛び抜けて高性能というわけではない、という推測が成り立ちます。

このあたりはやや残念ですが、プロセッサの開発時期と関わる話であるため致し方ない、といったところでしょうか。

フルHD解像度となったディスプレイ

この『ZenFone 2』では5.5インチサイズのフルHD IPS液晶ディスプレイパネルが搭載されています。

これだけ贅沢なスペックの機種ならば同じ5.5インチでもLGエレクトロニクスのG3のように画面解像度1,440×2,560ピクセルのIPS液晶パネルを搭載しても良さそうに思えますが、前述のように標準搭載されているGPUの性能が突出して高性能とは言い難いという事情もあってか、1ランク下のフルHD解像度とされています。

もっとも5.5インチでフルHD、つまり403ppiという画素密度は実用を考えると結構バランスの良い密度で、筆者の経験からいうと、これ以上高密度にすると細かい文字などを読む場合にかなり目に負担がかかります。

そのあたりのことを考慮するとこれは実用性を重視した解像度選択と言っても良いかも知れません。

一般的な水準を上回るカメラ性能

ASUSはZenFoneシリーズで「PixelMaster」と称する独自の高画質化技術を投入したカメラを搭載しています。

もっとも、メインカメラの画素数が13メガピクセルで開放絞り値がf2.0であることから日本のS社の製造したカメラモジュールが搭載されている可能性が高いと考えられます。

このあたりの光学系ハードウェア、特にレンズ周りの設計はおいそれと独自設計に切り替えられるようなものではありません。

そのため、海外メーカーはほぼ例外なく各社とも宛てがい扶持のカメラモジュールから取得されたRAWの画像データをどのようにして処理し、最終的な画像として出力するか、という部分の改良に血道を上げることになります。

実際、「PixelMaster」で列挙された各種機能を検討する限り、ASUSTekもその例に漏れないようで、仕様に列挙された各種機能をみてみるとカメラ本体には一切手を付けずにその周辺で処理できる機能がずらりと並んでいます。

これは日本メーカーからカメラモジュールを購入・搭載しているAppleのiPhoneでも同様の傾向で、今やカメラモジュールが海外メーカーにとっては一種のブラックボックスと化していることがわかります。

どこまでソフトウェア互換性が保たれるのか、それが問題だ

以上、『ZenFone 2』をざっと見てきましたが、総じて完成度の高い、隙の無い機種との印象を受けました。

特に、このクラスのハイエンド機種ながらmicro SIMカードスロットをデュアルで搭載してあることは、SIMカードを挿しっぱなしにして使い分けられるということで、好印象です。

しかし、この機種は現状ではまだまだこなれていないAndroid 5.0をOSとし、しかもGoogleの提供しているNDKを用いて各CPUアーキテクチャに固有のネイティブコードにてコンパイルされたアプリケーションソフトの場合、適切なバイナリコンバータが搭載されていない限り、ターゲットとするCPUアーキテクチャ以外のCPUアーキテクチャをサポートするCPUを搭載するマシンでは動作しない恐れがあります。

ソフトウェアの互換性問題は、ARM v8命令セットに対応するものの内部ロジックが他と大幅に異なるNVIDIA Tegra K1(Denverコア搭載)でも起きており、新しいOSでしかも異なったCPUアーキテクチャへ移行することの難しさを物語っているのですが、そうするとそもそも命令セットもアーキテクチャも全く異なるx86/x64系プロセッサを搭載するこの『ZenFone 2』でも同じことが起きる可能性は十分あり得るわけです。

いずれにせよ初物のCPUと初物のOSの組み合わせにはそういうリスクがあることは覚悟しておかねばなりません。

購入は日本向けモデルの発表を待つのが吉か

また、現状では世界中で販売される、いわゆる海外版モデルが発表されただけで、以前のZenFone 5のように日本向けにカスタマイズされたモデルが登場したわけでは無いため、特にローカライズによる影響が出やすいLTE通信機能については評価を避けますが、ZenFone 5のワールドワイドモデルとは異なり、こちらの機種では海外版モデルでも日本の大手キャリアが使用しているLTE通信バンドが概ね網羅してサポートされています。

そのため、例によって例のごとく3Gの音声通信規格としてCDMA2000を利用しているauの回線で携帯電話としての音声通話を行えないということと、日本語入力に用いる日本語IMEが標準搭載されていない事以外には海外版モデルでも問題はなさそうです。

しかし、この種の通信機器はきちんとメーカーによる検証を受けてローカライズされたものでないとトラブルが出やすいことを考慮すると、買うのならばやはりきちんとカスタマイズ/ローカライズされた日本向けモデルが発売されるのを待った方が良さそうです。

▼参考リンク
Phones – ZenFone 2 (ZE551ML) – ASUS

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