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SIMフリー端末では貴重な、ファーウェイのハイエンド機「Ascend Mate 7」

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by [2014年12月11日]

中国の通信機器メーカーで日本で最も馴染み深い企業の1つ、ファーウェイが、このほどMVNOによる低価格通信サービス向けとしてSIMフリー端末の新機種を日本国内で発売することを発表しました。

実はファーウェイは、ここしばらくこの種のSIMフリー端末の発売に力を入れていて、今年6月のAscend G6、それに8月のAscend P7と2機種を発売し、同社自身が期待以上とコメントするほどの販売実績を残していました。

そうした先行機種での実績と、最近のMVNOによる低価格通信サービスの普及を受けて登場した今回の機種ですが、とにかく低価格な端末を求める層と、ある程度以上高性能な端末を求める層に分かれつつある昨今の端末需要を考慮し、ローエンドの「Ascend G620S」とハイエンドの「Ascend Mate 7」の2機種が発売されることになりました。

今回はこの2機種、特にSIMフリー端末では従来なかったハイエンドの「Ascend Mate 7」を中心に考えてみたいと思います。

ファーウェイ Ascend Mate 7

ファーウェイ Ascend G620S

主な仕様

まず「Ascend G620S」の公表されている主な仕様は以下のとおりです。

  • OS:Android 4.4 Kit Kat / Emotion UI 2.3
  • チップセット:Qualcomm MSM8916(1.2GHzクアッドコア)
  • サイズ:72.1×142.9×8.5mm
  • 重量:153g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶(IPS方式)
    • 解像度:720×1,280ピクセル(HD解像度)
    • 画面サイズ:5.0インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:1GB
    • フラッシュメモリ:8GB
    • 拡張スロット:microSD(最大32GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:8メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:2メガピクセル
  • LTE:
    • 転送速度:下り最大150Mbps・上り最大50Mbps
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 b/g/n
  • テザリング:対応(最大8台)
  • Bluetooth:Ver.4.0
  • ワンセグ・フルセグ受信:非対応
  • 電池容量:2,000mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応

次に「Ascend Mate 7」の仕様は以下のとおりです。

  • OS:Android 4.4 Kit Kat / Emotion UI
  • チップセット:Hisilicon Kirin 925(1.8GHz/1.3GHzオクタコア)
  • サイズ:81×157×7.9mm
  • 重量:185g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶(IPS-NEO™方式)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:約6インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2GB
    • フラッシュメモリ:16GB
    • 拡張スロット:microSD(最大32GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • LTE:
    • 転送速度:下り最大300Mbps・上り最大50Mbps
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n
  • テザリング:対応(最大8台)
  • Bluetooth:Ver.4.0
  • ワンセグ・フルセグ受信:非対応
  • 電池容量:4,100mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応

ご覧の通り、Ascend G620Sは先日ご紹介したASUSTekのZenFone 5や富士通のARROWS M01などと同様にSnapdragon 400を統合プロセッサとして搭載した低価格設定のHD解像度モデル、Ascend Mate 7はオクタコア構成のハイエンドプロセッサと6インチの大画面IPS-NEO方式によるフルHD液晶を搭載したハイエンドモデルとなります。

Kirin 925って何だ

Ascend G620Sが搭載するSnapdragon 400については先日来何度かご紹介しているのでここでは省きますが、Ascend Mate 7が搭載するHiSiliconのKirin 925というプロセッサについてはメーカー名も型番も見慣れない方が恐らく大半を占めているものと思います。

実はこのHiSilicon、元々はファーウェイのカスタムASIC設計担当部門が独立してできた同社傘下の半導体メーカーで、ARMからのライセンス供与を受けて統合プロセッサの開発製造を行っている会社です。

つまり、事業部制をとるSamsungがGALAXYシリーズの統合プロセッサとして自社半導体部門が開発したExynosシリーズを搭載しているのと同じように、自社傘下の半導体メーカーで自社の必要とするスペックの統合プロセッサを開発させて搭載している訳です。

このKirin 925では1.8GHz駆動の高速コア4基と1.3GHz駆動の低速コア4基、それに230MHz駆動の超低速コアが1基搭載されていることが明かされており、その仕様からSamsungのExynos 5430と同様、1.8GHz駆動のCortex-A15×4と1.3GHz駆動のCortex-A7×4、それに型番不詳の230MHzコア×1という構成になっているものと推測されます。

この構成ではCortex-A15とA7を1基ずつペアにして4セットのbigLITTLE構成プロセッサとして利用可能ですが、特にbigLITTLEについての言及がなく仕様上「オクタコア」としていることから、8コアとも同時動作するような構成となっている可能性(※注1)があります。

 ※注1:また、ここで「オクタコア」としていることから、残る1コアはOSレベルでは通常見えない、システム管理などで利用されるCPUコアであることがわかります。

いずれにせよこうしたCPUコアの構成から、このKirin925はARMv7系の32ビットCPUとしては最速級の性能を備えていることがわかります。

初採用となったIPS-NEO

ディスプレイについてはサイズ・解像度の相違がありますが、いずれも視野角の点で有利なIPS(In-Plane-Switching:横電界)方式の液晶を搭載しています。

ただし、Ascend Mate 7については日本のジャパンディスプレイ(JDI)が今年7月に発表したばかりのモバイル製品向け液晶パネルの新モデル、IPS-NEOを搭載していることが明記されています。

このIPS-NEOは元々医療用などに開発されていたもので、液晶製造時に液晶の向きを揃える配向プロセスについてJDI独自の光照射技術を用いることでコントラストや視野角特性、それに製造歩留まりの向上が得られるとされる新しい技術です。

これにより黒がより深い黒になり、広い視野角で寄り自然な発色が得られるとされています。

液晶の色特性やコントラスト、それに何より視野角の改善はなかなか難しい問題が多く、現在のモバイル機器用液晶で大勢を占めているIPS方式でさえ、斜め45度くらいの角度で画面を見ると結構色が変わったりコントラストが大幅に落ちたりしていました。

このIPS-NEOはまさにその部分にメスを入れて改良したということで、色特性の改善に大きく期待できそうです。

13メガピクセルのメインカメラ

カメラについては、Ascend G620Sはメインカメラに8メガピクセルのAFモジュールを、インカメラは2メガピクセルの固定焦点モジュールを搭載しています。

これはSnapdragon 400搭載機種としては標準的な仕様ですが、この機種では特にメインカメラにブルーガラスフィルターを装着して「本来の色を忠実に再現」したと謳っています。

こういう場合、レンズフィルターよりも先にセンサーモジュールかレンズのコーティングをいじっても良さそうなものなのですが、ファーウェイはカメラモジュールを外部メーカーから購入(※注2)しているためかカメラモジュール本体には手をつけず、その外側にあるレンズフィルターをいじって望む色特性を得ていて、カメラモジュールが一種のブラックボックスとなっていることがわかります。

 ※注2:後述するAscend Mate 7の例からソニーからの購入と考えられます。

また、Ascend Mate 7ではメインカメラについて、ソニーの第四世代裏面照射型CMOSセンサー(※注3)搭載で13メガピクセルの解像度と、開放絞り値F2.0の明るいレンズにより暗部でも綺麗な写真が撮れることをアッピールしています。

 ※注3:解像度その他のスペックから、ソニーのXperia Aなどに搭載のExmor RS for mobileと同系のカメラモジュールが搭載されていると推測できます。

また、インカメラについても解像度5メガピクセルとかなり高解像度の固定焦点方式裏面照射型CMOSセンサーの搭載(※注4)が明記されており、メインカメラもインカメラも昨今の大手3キャリア向けハイエンドスマートフォンと同等かやや落ちる程度のかなり高いスペックを実現しています。

 ※注4:これもExmor R for mobileの1モデルが搭載されていると推測できます。

最新仕様をサポートしないWi-Fi

これら2機種で意外なのが、IEEE 802.11 acを両機種ともサポートしていないことです。

都心部などでの3G/LTE回線の輻輳が極端で、Wi-Fi接続へのオーバーライドを積極的に行わねばならない日本ではLTEだけでなくWi-Fi接続についても高速化が重視されているため、端末でもルーターでもIEEE 802.11 acへの対応が積極的に進められているのですが、この2機種ではこのIEEE 802.11 acへの対応が行われておらず、上位のAscend Mate 7でIEEE 802.11 nのデュアルバンド通信による倍速化がサポートされるのみとなっています。

このあたりは、下位のAscend G620Sはともかく上位のAscend Mate 7で非対応となっていて、しかも同機種はデュアルバンド方式採用により通常よりも高速での通信をサポートしていることから、単純に統合プロセッサであるKirin 925かそれに接続されるベースバンドプロセッサの設計時期が古かったために新しい規格であるIEEE 802.11 acに対応していないためと考えられます。

ちなみに複数アンテナ搭載の恩恵はLTE通信にもおよんでおり、こちらもMIMOにより最大通信速度が下り300Mbpsと倍速化しています。

安くてSIMフリーで魅力的だが…

以上、ファーウェイの最新SIMフリー端末であるAscend G620SおよびAscend Mate 7を見てきました。

前者のスペックは総じて前回ご紹介の富士通ARROWS M01と似たり寄ったりですが、後者は2014年秋時点での大手3キャリアの現行ハイエンドAndroid搭載スマートフォンに迫るか部分的には上回ってすらいるという、かなりの高性能機です。

ただし、ハイエンドのAscend Mate 7の前面・背面ともにガラスで覆ったデザインや、ローエンドのAscend G620Sの外周を金属の枠状構造としたデザインなど、エクステリアデザインの処理がどうにもどこかで見たような意匠なのは気になります。

本機は、SIMフリー界隈において、選べる端末のまだまだ少ない現状では貴重な選択肢が提供されたと言えるのですが、メーカーであるファーウェイについて少々追記しておきましょう。同社は、国際的には、2012年10月に合衆国政府調達品からの排除・民間企業での取引自粛を求める勧告が出されたり、インド政府が同社製を含む中国製通信機器の禁輸措置を執る、といった評価を受けています(※注5)。

 ※注5:当然ながら中国政府もファーウェイもこの扱いに対して猛反発しましたが、当該各国政府はほぼ例外なく「安全保障上の理由」などを挙げています。

一方でファーウェイは、サイバー・セキュリティ保証のための質問リストを提言するなど、セキュリティへ取り組む姿勢も見せていたりもするのですが…いずれにしても、今後これらを購入される方には、ファーウェイがセキュリティに対してどのようなポリシーを持つ企業であるかを、あらかじめ承知しておく必要があるでしょう。

▼参考リンク
Huawei – 『Ascend Mate7』『Ascend G620S』12月12日(金)より発売開始 – ニュース&トピックス – ニュース
Huawei – Ascend G620S – 携帯電話 – 機能
Huawei – Ascend Mate7 – 携帯電話 – 機能
ファーウェイ、ICTベンダー選定の指針となる業界初のサイバー・セキュリティ保証のための質問リストを提言
Sony Japan | ソニーの半導体
ニュース&イベント : ニュースリリース | 株式会社ジャパンディスプレイ

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