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価格とクオリティの狭間で ASUSTek ZenFone 5(A500KL)

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by [2014年11月19日]

最近のMVNO事業者による格安SIMの普及で、これまで大手キャリアでは見られなかったようなメーカーによる低価格スマートフォンが急増してきました。

大手キャリアの場合、スマートフォン全般の傾向としてラインナップ的にどうしてもハイスペックのハイエンドモデルに偏る傾向が強くて、必然的に価格帯も高止まりになっていた(※注1)のですが、とにかく低価格であることを求められる格安SIMの場合、スマートフォンとして最低限必要な機能を満たしていればそれで十分、ということでローエンド寄りの機種に偏る傾向が強くなっています。

 ※注1:もっとも様々な割引などの販売政策によって実際に支払う端末価格が意図的に低く抑えられていたため、ユーザーがこれを強く意識することはあまりありませんでした。

そのため、最近では中国などの新興メーカーがMediaTekなどのプロセッサメーカーの提供するリファレンスデザインに従って設計した、いわゆる中華スマートフォンと呼ばれる低価格機種を見かける機会が増えてきました。

リッチな3Dグラフィックが高速描画される必要のあるようなゲームを遊ばないなら、あるいはガラケーの単純置き換えのレベルでかまわないのならば、そうした機種でもそれはそれなりに使えるし遊べるレベルの性能が得られるようになってきているのです。

もっとも、そうした機種の大半は通信機能がLTE非対応で、より高速で通信したい、となるといささか力不足の感がありますし、細部の作り込みも今ひとつで、かつての安かろう悪かろうだった時代よりは格段に品質やデザインの水準が向上しているものの、それでも全体としては今一歩詰めが甘い、というのが筆者の正直な感想です。

そんな中、安くてシンプルでそれでいてしっかり作り込まれたSIMフリーのスマートフォンが欲しい、というニーズに応えようという動きが見られるようになってきました。
今回はそんなSIMフリースマートフォンの一例として、パソコンメーカーとしても著名な台湾のASUSTek社の最新作、ZenFone 5(A500KL)を取り上げてみたいと思います。

主な仕様

公表されているZenFone 5の主な仕様は以下のとおりです。

  • OS:Android 4.4.2
  • チップセット:Qualcomm Snapdragon 400 (1.2GHz クアッドコア)
  • サイズ:72.8×148.2×10.34mm
  • 重量:145g
  • メインスクリーン
    • 種類:TFT液晶(IPS方式 LEDバックライト)
    • 解像度:1,280×720ピクセル(HD解像度)
    • 画面サイズ:5.0インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2GB
    • フラッシュメモリ(eMMC):16GB・32GB
    • 拡張スロット:microSD XC
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:8メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:2メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 b/g/n
  • LTE:
    • 転送速度:下り最大150Mbps/上り50Mbps
    • Bluetooth:Ver.4.0
    • 電池容量:2,110mAh(リチウムポリマー二次電池)

    ローエンドと侮るなかれ

    Qualcomm Snapdragon 400
    かつてのSnapdragon S4 Plusの後継モデルにあたり、Kraitコアのデュアル、あるいはCortex-A7コアのクアッド搭載に対応する。

    以上からも明らかなように、若干ロースペック気味ですが、それでもHD解像度のIPS液晶ディスプレイにクアッドコアCPU、それにメモリ2GB搭載、しかもメモリカードはmicroSD XC対応で最大64GBまで搭載可能、となかなかの充実ぶりです。

    この機種に搭載された統合プロセッサのQualcomm Snapdragon 400はローエンド市場にLTEを普及させるための戦略機種として用意されたチップセットで、詳しい話は別項に記しますが、低クロック動作ながらCPUコアをクアッドコア搭載としつつCategory 4で下り最大150MbpsのLTE通信をサポートし2011年末~2012年初頭頃のハイエンドスマートフォン用プロセッサに匹敵するかそれ以上の性能を備える、ローエンド向けという触れ込みとは裏腹のなかなか凄いチップです。

    さすがに、Wi-Fi周りは5GHz系の対応が省略されて802.11 b/g/nのみの対応となっていますが、Wi-Fiルーターではモバイルルーターや低価格機種を中心に5GHz系をサポートしない機種が今でも結構たくさんありますし、802.11 nでは2.4GHz帯での利用の場合最大150Mbpsでの通信がサポートされていますから、これは過剰性能を追い求めず現実的な選択とした、とみるべきでしょう。

    また、カメラもメインが解像度8メガピクセルでフロントが2メガピクセルと昨今の標準的な水準に達しています。

    総じて現在のスマートフォンの一般的なスペックは十分満たしていると考えて良さそうです。

    長時間使用に耐える

    さらにバッテリー容量は2,110mAhで、これは2012年頃のハイエンド機種並みの値です。そのため、CPUコアが1.2GHzと低クロック動作である事を合わせて考えると、かなりの長時間動作が期待できます。

    実際、カタログ上でも1080PのフルHD解像度動画を連続再生する、という結構ハードな条件の下でWi-Fi接続時で約11時間、同条件のモバイル通信時で約6.5時間、さらに連続通話時間では3G接続で約20時間30分、という公称値となっています。

    2012年末時点で同程度のバッテリー容量を備えたハイエンド機種として販売されていたHTC J butterfly(HTL21:バッテリー容量2,020mAh)だと(動作条件は公表されていませんが)公称連続通話時間が約12.5時間となっていましたから、HTL21がより高性能なCPUコア(Qualcomm Krait 1.5GHz クアッドコア)やフルHD解像度のIPS液晶ディスプレイを搭載しているといった条件を考慮しても、このZenFone 5がかなりの低消費電力設計となっていることは明らかでしょう。

    ちなみに、2012年頃のスマートフォンだとHTL21を含めてLTEの通信速度は最大75Mbpsの機種が珍しくなく、統合プロセッサに内蔵されるベースバンドプロセッサ(※注2)の世代も必然的に古く消費電力が今の機種よりも大きかった訳ですから、この時代の機種からの乗り換えならばCPU性能が若干低くとも150Mbps通信がサポートされるZenFone 5の方が大幅に長時間快適に利用できる可能性があります。

     ※注2:3G回線やLTE回線といった無線通信機能を司るための専用プロセッサでQualcommでのシリーズ名は「Gobi」。LTEの規格が新しく高速=このプロセッサの世代が新しい、となるため概ね対応通信規格が新しく高速な機種ほどこのプロセッサも新しいモデルとなり、製造プロセスも統合プロセッサに優先して、より微細で低消費電力が期待できる最新プロセスを優先して割り当てられる傾向にあります。

    海外版では日本のLTE回線が満足に利用できない

    なお、このZenFone 5は先行して海外版が発売されている機種なのですが、そちらとこの日本向けモデル(A500KL)では3G・LTEで利用可能な周波数帯域が異なっており(※注3)、海外版だとバンド1、つまりNTTやauがLTEに割り当てている2,100 MHz帯がサポートされていません。

     ※注3:LTEの場合、A500KLでは2、100 MHz(バンド1:NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクモバイルの3社が使用)、1,800 MHz(バンド3:NTTドコモが使用)、2,600 MHz(バンド7)、900 MHz(バンド8:ソフトバンクモバイルが使用)、800 MHz(バンド19:NTTドコモが使用)の5バンドがサポートされています。

    逆に言えば、国内発売されるA500KLは国内大手3キャリアやMVNO事業者のLTE回線を利用できるように意図してバンドを選んで搭載してある(※注4)ということで、海外版を並行輸入などでわざわざ求める理由は(国内で利用する限り)皆無となったと考えてよろしいでしょう。

     ※注4:3G回線についてはW-CDMA(HSPA+)のサポートしか記載されていないため、携帯電話としての音声通話は通信規格としてCDMA2000を使用するauの回線ではできないことになります。

    OSはKitKat

    さて、このZenFone 5では上記のとおりOSにAndroid 4.4.2「KitKat」が搭載されています。

    4.4系で最新の4.4.4ではなく4.4.2なのは、基本となる海外版の発売時期やOSの移植作業に必要な時間、それに次世代のAndroid 5.0「Lollipop」の登場が予告される中での日本向けバージョン発売であることなどの事情によるものと推測できますが、既に色々互換性問題が発生していると伝えられる5.0の現状(※注5)を考えると、これは低価格設定で大量販売される見込みの機種に採用するにはかなりリスキーで、サポートコストもばかになりません。

     ※注5:例えばシャープのGalápagos Storeアプリは本記事執筆時点で5.0での動作に問題があることと、その対応にしばらく時間がかかるためアプリを利用するにはOSのバージョンアップは控えるようアナウンスされています。

    そのため、この機種が「電話機」としてなるべくトラブルは避けた方が望ましいスマートフォンであることも併せて考えると、概ね「枯れて」いて問題の出にくい4.4系搭載としたのは妥当な判断でしょう。
    なお、5.0系へのバージョンアップについては対応そのものを含めて明らかになっていません。

    ATOKプリインストール

    格安の中華スマートフォンを購入する場合、一番困るのが日本語入力のフロントエンドとなるIMEです。

    日本の大手キャリア向けに各社が発売している機種ならば、UNIXワークステーション向け以来の長い歴史を持つiWnn(あいうんぬ)やソニー製端末に搭載されるPOBox、ジャストシステムのATOKなどのIMEが標準搭載されるのが一般的ですが、元々中国市場向けの製品をそのまま輸入しただけの中華スマートフォンではそんな結構なものは搭載されていないため、別途アプリを入手してインストールする必要があります。

    つまり、本格的な使用開始の前にまずまともな日本語IMEをインストールして使えるようにする必要があるわけで、それほど詳しくない人だとここで挫折しかねません。

    そのことに配慮したのか、このZenFone 5ではジャストシステムのATOKが標準IMEとしてプリインストールされています。

    正直、最近のAndroid版ATOKは長文入力時の誤変換がひどくて辞書もWindows版とは比較にならないほど貧弱(※注6)なので、Google日本語入力でもよかったのではないかという気もするのですが、入力のフロントエンド部分の出来は確かに良く、またカスタマイズも細かく出来るのを買ったのか、ATOKが選ばれています。

     ※注6:このあたりは個人差があるので一概に言えないのですが、筆者個人としては、インストールしたばかりで辞書に特に何もしていないWindows版(ATOK 2013)で当たり前に正しく意図通り変換されていた文字列がAndroid版で一体何がどうなったものかハナモゲラ語同然のひどい変換をされたときの衝撃は筆舌に尽くしがたいものがありました。ATOKをWindowsで使い込んでいるヘビーユーザーほど、そのずれがストレスになるのではないでしょうか。

    もっとも、入力データをどこにどんな風に送ってそれがどのように利用されているかも明らかでないクラウド変換機能搭載のIMEが情報漏洩等で社会的な問題になる昨今の情勢を考えると、外部のサーバに入力文字列を送らない、このATOKのようなスタンドアローン動作を基本とするIMEの方がセキュリティ上はよほどマシだと言えます。

    余計なプリインストールアプリがないのは好感が持てる

    このZenFone 5では、プリインストールされているのが主に電子書籍のリーダーアプリや画質・音質調整用アプリ、それにスケジュール管理アプリなど最低限に留められています。

    GoogleのNexusシリーズもそうですがプリインストールはこうした実用上最低限必要と思われるものに限定し、購入から廃棄までの間に一度も使いそうもない(そして見てくれだけは豪華そうな)アプリを、それもアンインストール不可の状態でプリインストールするといった嫌がらせ同然の最悪パターンに陥っていないこの機種のアプリ構成には、筆者としては好感が持てます。

    使いもしないようなアプリを山盛り状態でプリインストールしてマシンを出荷する、というのは恐らくWindows 95発売前夜の時期に日本の某パソコンメーカーが始めた販売手法ですが、本体に内蔵されるストレージ容量がそれほど多くない上にアップデート関係で負担の大きなスマートフォンの場合、これはあまり賢いやり方と思えません。

    低価格だがだからといって安物というわけではない

    以上、ZenFone 5について見てきましたが「ローエンド向け」を公称するプロセッサを搭載し、実際の販売価格も16GBモデルで(キャリアによる割引などが一切無い状態でも)3万円を切るレベル、と非常に低価格となっていますが、これは決して安物ではありません。

    それどころか、2012年末くらいまでの時期にハイエンドに位置づけられるような機種を購入したユーザーだと、この機種の方がほぼ全ての面で上回っている、ということになりかねません。

    そのため、ローエンドのGPUと今時のスマートフォンでは珍しいくらい低いCPUコアのクロック周波数=過剰に大容量のバッテリーを搭載せずとも長時間動作が可能であることを評価して、あえてこの機種を選ぶユーザーが出てきてもおかしくはありません。

    ノートパソコンでも同じような理由であえて低クロック動作のプロセッサを搭載する下位モデルをチョイスするユーザーが少なくなかったことを考えると、「確かにローエンドのプロセッサを搭載するが造りそのものはハイエンド並。結果として低消費電力・長時間動作・低価格」というこの機種が示した方法論は今後流行するかも知れません。

    ▼参考リンク
    Phone – ZenFone 5 (A500KL) – ASUS
    ニュースリリース – ASUS(「ZenFone™ 5」の並行輸入品についてのご注意)

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