Google Nexus 6カラーバリエーションはダークブルーとクラウド ホワイトの2色が用意されている。

最後の32ビットSnapdragon搭載Nexus? ~Google『Nexus 6』

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by [2014年11月04日]

Google Nexus 6
カラーバリエーションはダークブルーとクラウド ホワイトの2色が用意されている。

Googleの『Nexus』シリーズが、初代機である『Nexus One』(2010年発売。HTC製)以来OS開発元自身によるAndroid搭載スマートフォン/タブレットとして、そのリファレンスモデルの役割を果たしてきました。

素の、つまりトップページのGUIなどを一切いじらない標準状態の、そして発売時点で最新バージョンのAndroidを搭載して出荷され、各種アプリケーション開発でも動作の基準と見なされるこのシリーズは、同時に開発時点でGoogleが想定する標準的な、あるいは今後標準となるべきハードウェアスペックを与えられてきたことでも知られています。

そしてこのたび、その『Nexus』シリーズの最新作として、スマートフォンの『Nexus 6』とタブレットの『Nexus 9』の2機種が発表されました。

もっとも、これらは同時発表ながら全く異なったハードウェア構成で、その性質、あるいは期待されていると考えられる役割も大きく異なっています。

そこで今回はまずその内のスマートフォン、『Nexus 6』について考えてみたいと思います。

主な仕様

記事執筆時点で公表されている『Nexus 6』の主な仕様は以下のとおりです。

  • OS:Android 5.0
  • チップセット:Qualcomm APQ8084(2.7GHzクアッドコア)
  • サイズ:82.98×159.26×10.06mm
  • 重量:184g
  • メインスクリーン
    • 種類:AMOLED(アクティブマトリクス方式有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ)
    • 解像度:1,440×2,560ピクセル(QHD解像度)
    • 画面サイズ:5.9インチ(対角線長)
    • アスペクト比:9:16
  • 内蔵メモリ
    • RAM:非公開
    • フラッシュメモリ:32GB・64GB
    • 拡張スロット:なし
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:2メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 ac(2×2 MIMO対応)
  • Bluetooth:Ver.4.1
  • NFC対応
  • 電池容量:6,700mAh
  • 防水:非対応
  • 防塵:非対応
  • 開発製造担当:モトローラ

もちろん、この機種における最大のトピックは2011年11月登場の『Android 4.0 Ice Cream Sandwich』以来3年ぶりのメジャーバージョンアップとなる『Android 5.0 Lollipop』(ARM v7対応版)を出荷時搭載OSとしていることです。

一方、ハードウェアについては大画面高解像度の有機ELディスプレイや32ビットCPUコア搭載のSnapdragonシリーズとしては最上位に位置するSnapdragon 805を搭載しており、約6インチというそのサイズからスマートフォンというよりはファブレットと呼ぶべき性質を備えているものの、ARM v7系命令セット準拠の32ビットCPU搭載Androidスマートフォンのトップに立つ性能・画面解像度となっています。

ようやく実現したSnapdragon 805搭載スマートフォン

ハードウェア面で最も注目されるのが、2013年に発表されながら今年夏頃までスマートフォンに搭載されずに来た、Qualcommの32ビットCPUコア搭載Snapdragonシリーズとしては最上位モデルとなるSnapdragon 805の搭載です。

CPUコアそのものはSnapdragon 800/801に搭載のKrait 400のマイナーチェンジバージョンであるKrait 450を4コア搭載でさほど強化された印象がないのですが、LP-DDR3 SDRAMメモリインターフェイスをSnapdragon 800/801の2倍に当たる4ch搭載し、Snapdragon 800比で2倍、Snapdragon 801比でも約1.7倍、と暴力的なほど強化された25.6GB/sに達する広帯域メモリ転送性能と、同じく大幅強化されたGPU(Adreno 420)の演算能力の組み合わせにより、4K2K解像度ディスプレイへの描画・映像出力が当然のように行えてしまうこの機種は、今のスマートフォンに搭載するにはオーバーキルな、完全に過剰性能のプロセッサであると言えます。

正直、バッテリー容量が2,700mAhのSnapdragon 801搭載フルHD機との比較で、ディスプレイの消費電力を無視できるディスプレイオフ状態での待ち受け時間でさえ100時間以上もの大差をつけられて敗北を喫していることを考えると、いくら高性能とはいえ、こんな電力喰らいのプロセッサをスマートフォンに搭載してどうするつもりなんだ、と思わずにはいられません。

しかし、今後GoogleがNexusシリーズで発売後1年半の間のOSバージョンアップを保証しているという条件と、今後64ビットCPUへの以降が急速に進むと考えられることや後述するようにこの機種がQHD解像度ディスプレイ搭載でメモリインターフェイス性能が特に重要になっていることなどを合わせて考慮すると、このくらいのスペックのプロセッサを奢っておく必要がある、ということなのでしょう。

もっとも、CPUコアがARM v7系命令セット準拠のKrait 450ということは、この『Nexus 6』は32ビットOSしか動作しないということになります。

Android 5.0で初めて64ビット命令セットがサポートされることを考慮すると、「抑え」の1台として従来通り32ビットCPUを搭載する機種が必要であることや、今後も低価格機種で32ビットCPU搭載機の販売が続きそのアプリケーション動作のリファレンス機が必要となることは理解できます。しかし、QualcommがこのSnapdragon 805を最後にARM v7系命令セット対応の32ビットCPU搭載Snapdragonの新規開発を行っておらず、ローエンドモデルにまで64ビットCPUコア搭載を展開しようとしている状況を踏まえると、少なくともQualcommの32ビットCPUコア搭載Snapdragonを搭載した『Nexus』の開発は、これが最後(※注1)となるのではないでしょうか。

 ※注1:総じて『Nexus』シリーズはハイエンドモデルとしての扱いを受けるラインナップとなっているため、そうなる可能性があります。

負担の大きなQHD解像度

この『Nexus 6』に搭載されたQHD解像度ディスプレイの2,560×1,440ピクセルという画素構成はパソコンでも結構な描画負荷のかかる解像度で、特に3D描画を行う場合にはフルHD(1,920×1,080ピクセル)などとは比較にならないほどメモリアクセスに大きな負荷がかかります。

実際、最近の高性能化したパソコン用GPUでさえ、QHD解像度以上となるとそのGPUに内蔵されたメモリインターフェイスの帯域性能が露骨にものを言う状態となっており、様々なデータ圧縮技術の適用やアクセスの最適化を図ってもなお、そのメモリインターフェイスのバス幅の影響(※注2)が非常に大きくなっています。

 ※注2:例えば記事執筆時点での現行機種だとAMDのRADEON R9 290Xが512ビットバス搭載で転送性能は320.0GB/s、NVIDIAのGeForce GTX 980が256ビットバス搭載で転送性能は224.0GB/sとなっており、メモリ性能の影響の出にくいフルHD解像度だとGPUコアそのものの設計がより新しいGeForce GTX 980がRADEON R9 290Xを上回る状況ですが、QHD解像度以上で重い処理をさせる場合は逆転されており、超高解像度域でのメモリアクセス負荷の重さがGPU性能発揮に大きな影響を与えていることがわかります。

特にCPUとGPUがメモリインターフェイスおよびメモリを共用するスマートフォン用統合プロセッサの場合、メモリインターフェイスを2ch構成としてもCPUとGPUがそのアクセス権を奪い合う様な状況となるため、GPUカードに1GB以上のビデオメモリが独立して搭載されるのが当然となっている今のパソコン用GPUと比較するとさらに悪条件(※注3)であると言え、この点でQHDディスプレイ搭載の『Nexus 6』での(4chのメモリインターフェイス搭載でメモリ帯域性能が大幅に向上した)Snapdragon 805の搭載は妥当であると言えます。

 ※注3:ただしローエンドのGPU統合形CPUの場合はスマートフォン用統合プロセッサと大差ないメモリ帯域性能となっており、使途によってはそれほど問題にならないケースもあります。もっとも、この共有によるアクセス競合に加え、メモリインターフェイスの帯域性能そのもので10倍以上の大差がついている訳ですから、根本的には決して良くはありません。なお、このメモリの帯域性能差はハイエンドGPUカードにおいてGDDR5 SDRAMという、(大消費電力ではあるものの)スマートフォンで一般に用いられている低消費電力タイプのLPDDR3 SDRAMとは比較にならないほど高クロック・高速転送可能なメモリを用いて高速化していることが主因です。

ちなみに、同じくQHD解像度のディスプレイを搭載するLG電子の『G3』シリーズでも最新のLTE Category 6対応モデルである『G3 Cat.6』ではプロセッサが従来のSnapdragon 801からSnapdragon 805に変更(※注4)され、またやはりQHD解像度ディスプレイ搭載となったサムスンの『GALAXY S5 LTE-A』でも(額面上のCPUコアスペックではSnapdragon 805を上回るはずの)自社製オクタコアCPUであるExynos 5 Octa(Exynos 5422)に代えてSnapdragon 805が搭載されています。このことから、メーカーレベルではこのクラスの解像度のディスプレイについて、相応のメモリ帯域性能やGPU性能が必要か、さもなくばあった方が良いと考えられていることが見て取れます。

 ※注4:一方、『G3』のローカライズ派生モデルである『isai FL LGL24』(Snapdragon 801搭載)を販売している日本のauは2014年冬モデルとしてその後継モデルである『isai VL LGV31』を発表しましたが、これはSnapdragon 801を搭載しており、消費電力を優先するか性能を優先するかで判断が分かれた形となっています。

大型化と高解像度化を実現したディスプレイパネル

これまでにも触れてきたとおりこの『Nexus 6』ではディスプレイパネルとして、対角線長5.9インチ、縦横比16:9で2,560×1,440ピクセルのAMOLED(Active Matrics Organic Light Emitting Diode:アクティブマトリクス方式有機エレクトロルミネッセンス)パネルを採用しています。

通常のRGB配列とペンタイル配列の比較概念図

ペンタイル配列の方がサブピクセルの数そのものは削減できるため、この場合RGB方式の2/3のサブピクセル数で同じピクセル数の画面を構成できることになるが、実際にはグラデーションのかかった画像が正常に表示できず、また滑らかな曲線の表示などでジャギーが目立つことになる。

AMOLEDタイプのパネルは、その製造上の理由から画素の高密度化、つまり単位面積あたりのサブピクセルの数を増やすのが難しいという難点があって、そのためこの方式のパネルの搭載を標準としてきたサムスンのGALAXYシリーズでは多くのモデルで、各画素を構成するサブピクセルに用いる色素の種類や数を減らして擬似的に発色させる、ペンタイル(Pentile)配列という手法を用いることで画素数を減らし 見かけ上必要とされる解像度を実現するという一種の手抜き手法が最新のGALAXY S5まで講じられてきました。

これは光の三原色を構成する赤・青・緑の3色の有機色素を基板上に蒸着させ、必要に応じてそれぞれの色素に通電・発光させるタイプのAMOLEDパネルの場合、有機色素を蒸着させるプロセスで用いられるマスキング用のテンプレート(※所定の位置に穴の並んだ金属板)の穴のピッチを微細化するのに限界があった(※注5)ことによるものです。

  ※注5:サムスンのAMOLEDパネルでは概ね316PPI(Pixel Per Inch)がRGB配列を行える上限画素密度となっています。

しかも、この三原色有機色素を並べて蒸着させる方式の場合、それぞれの有機色素の寿命に差があることから、経時劣化により画面の発色が徐々にずれる、という問題もありました。具体的に言えば、青の有機色素の寿命が他よりも短かったため、徐々に画面が赤みががっかり緑がかったりする傾向が強かったのです。

Galaxy S4およびGalaxy S5などのFHD Super AMOLEDパネルに採用された「Diamond Pentile」配列の模式図。サブピクセルの数は従来のペンタイル配列と同様だが、G(緑)のサブピクセルの列とR(赤)・B(青)の列を半ピクセル分ずらして配置することで、より高解像度のディスプレイで大きな破綻無くサブピクセル数の削減を行えるようにしている。

海外の報道などによればこの『Nexus 6』の5.9インチAMOLEDパネルはこのサムスン製パネルを搭載している由で、493PPIという高い画素密度からGALAXY S4・S5などと同様に、ダイアモンド・ペンタイル(Diamond Pentile)配列と呼ばれる緑色発光する有機色素の割合を大きくした色素配列パターンを採用したAMOLEDパネルを搭載していると見られます。

実は、このAMOLEDパネルについては、日本のジャパンディスプレイが白色発光する有機色素を利用し、その前面に液晶と同様のRGBカラーフィルターを置くことで通常のRGB配列(あるいはこれに白色フィルターを加えたRGBW配列)での高密度化と有機色素寿命のばらつき問題を一挙に解決したパネルの実用・量産化に成功していたりします。

このため、ペンタイル配列系パネルの発色に違和感を覚える筆者個人としては、どうせAMOLEDパネルを積むならサムスン製じゃなくジャパンディスプレイ製にして欲しいと思ってしまうのですが、このあたりは従来からの商取引関係も絡むため、なかなか難しいようです。

初採用となるBluetooth 4.1

今回の『Nexus 6』および『Nexus 9』では、OS側でサポートされたことから、BluetoothがIoT、「モノのインターネット(Internet of Things)」のサポートを重視した拡張を施されたBluetooth 4.1にマイナーアップデートされました。

もっとも、これはBluetooth 4.0をサポートしているBluetoothインターフェイスを搭載している機種であればOSのソフトウェアレイヤーおよびデバイスドライバレベルでのソフトウェア的な対応でサポートできるものであり、統合プロセッサに内蔵されたBluetoothインターフェイスそのものは、恐らく特段のハードウェア仕様変更はないものと推測されます。

このあたりは昨年12月のBluetooth 4.1発表時点で既に予告されていたことで、Bluetooth Low EnergyのサポートというBluetooth 4.0での大きな変更をより効率的かつ合理的に扱うための仕様変更ですから、妥当なところでしょう。

付け加えておくと、Bluetooth 4.xのサポートはIoTのみならずOpen Beaconへの対応をも意味しており、今後のAndroid搭載スマートフォンの方向性を占う重要な機能追加であると言えます。

32ビットAndroid搭載スマートフォンの到達点

以上、駆け足気味ですが『Nexus 6』の主な機能を見てきました。

期待されていた64ビットCPUコア搭載でないのは少々残念ですが、現在利用可能なARM v8対応の64ビットCPUコアがそのトランジスタ集積規模の大きさ故に省電力化が厳しい、というのはデュアルコアの64ビットCPUコア内蔵プロセッサであるA7・A8を搭載するiPhone 5s・6・6plusの連続通話時間や採用された製造プロセスなどを見れば容易に推測できることですから、少なくとも「今」このときであれば、実用上可能な限り長い通話時間が求められるスマートフォンのリファレンス機たる『Nexus 6』が、64ビットCPUコア搭載ではなく32ビットCPU搭載にとどめられたのはある意味当然でしょう。

もっともここまででも書いてきたように、この機種はBluetooth 4.1サポートなどAndroid 5.0でサポートされる新機能を押さえる一方で、明らかにARM v7系命令セット対応プロセッサ搭載機として物理仕様の許す極限に近い性能発揮が可能なよう、ハードウェアが構成されています。

つまり、同時発表のタブレット機である『Nexus 9』がNVIDIAのTegra K1(64ビット版)を搭載し、同じAndroid 5.0搭載ながら今後の64ビットOS環境のリファレンスとしての役割を求められているのに対し、この『Nexus 6』は、これまで蓄積されてきた32ビットプロセッサ搭載機の技術的な集大成として、いわば「ぼくのかんがえたきゅうきょくの32びっとあんどろいどすまほ」を具現化した、32ビットCPUコア搭載Android搭載スマートフォンの掉尾を飾るにふさわしい機種であると言えます。

問題があるとすれば、それらの充実した機能を詰め込んで高性能を実現するために、5.9インチディスプレイ搭載というAppleのiPhone 6 Plus(※5.5インチディスプレイ搭載)よりもさらに大きな、「スマートフォン」として見るにはいささか大きすぎるサイズとなってしまっていることくらいのものでしょうか…。

▼参考リンク
Nexus 6 – Google

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