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復活のHTC ~HTC J butterfly HTL23~

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by [2014年8月22日]

幹部やデザイナーの背任に退社、FacebookとコラボレーションしたHTC Firstの大惨敗、HTC Oneの部材調達手配ミスによるスタートダッシュ失敗、そして営業成績の赤字転落に伴うBeats Electronics株式の放出、とここ1年ほど目を覆いたくなるほど散々なニュースの続いていた台湾HTCですが、身の丈に合わなかったBeats Electronicsを手放したことが効いたのか、それとも社内の背任者たちを一掃できたことが効いたのか、低空飛行ではありますがどうにか立ち直ってきました。

筆者はHTCの先行きを危惧していたのですが、幸いなことにこのほどauとの共同開発による新機種、HTC J butterfly HTL23の発表にこぎ着けました。

そこで今回はこのHTC J butterfly HTL23(※以下HTL23と表記)について考えてみたいと思います。

主な仕様


HTL23の主な仕様は以下のとおりです。

  • OS:Android 4.4
  • チップセット:Qualcomm MSM8974AC(2.5GHzクアッドコア)
  • サイズ:約70×145×10.0mm
  • 重量:約156g
  • メインスクリーン
    • 種類:16,777,216色TFT液晶(Super LCD3)
    • 解像度:1,080×1,920ピクセル(フルHD解像度)
    • 画面サイズ:約5.0インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2GB
    • フラッシュメモリ:32GB
    • 拡張スロット:microSD XC card(最大容量:128GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:5メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • LTE:
    • 転送速度:下り最大150Mbps/上り12Mbps(2GHz)・下り最大75Mbps/上り25Mbps(800MHz)
    • キャリアアグリゲーション・テザリング機能(最大8台)対応
  • WiMAX 2+:
    • 転送速度:下り最大110Mbps/上り10Mbps
  • Bluetooth:Ver.4.0
  • Miracast・ワンセグ受信録画・フルセグ受信対応
  • 電池容量:2,700mAh
  • 防水:IPX5/IPX7
  • 防塵:IP5X

以上から基本的なハードウェア構成は、Snapdragon 801搭載のフルHD解像度端末として一般的なスペックを満たしていることが判ります。

ちなみに、同名の先代機種であるHTC J butterfly HTL21(※以下HTL21と表記)は解像度同一ながら統合プロセッサがクアッドコアのSnapdragon S4 Pro 1.5GHzで防水防塵がIPX5準拠の防水のみ、フラッシュメモリが16GB、拡張スロットはmicroSD HCで公称最大32GBまで、といった仕様でした。このHTL21の発売から約二年を経て登場した、つまりau的には筆者のようなHTL21ユーザーの機種変更を相応に期待したと考えられるこの機種では、まずまず順当なスペックアップを果たしています。

(HTL21+HTL22)/2≒HTL23?

今回のHTL23の筐体デザインは、中央部をやや厚く、両端を薄くして持ちやすくしていたHTL21のそれを概ね踏襲しています。

ただし、HTL21には搭載されていた縦画面時ディスプレイ下の3つのハードウェアボタンは省略され、画面上下(※横画面時には左右)端に細長いスピーカー開口部を設けて本体のみでのステレオ音声出力を実現しています。

このあたりのデザインはHTCのメインストリーム向けスマートフォンとしては前作にあたるHTC One(※日本向けはHTC J One HTL22)のそれを踏襲しており、HTL21以後の新しい設計が取り込まれています。

またHTL21にあったmicro USBポート防水蓋が廃止され、USBコネクタそのもののキャップレス防水構造化(※micro SDカードスロットとSIMカードスロットは開閉頻度が低くまた開けっ放しにして使うことも考えにくいためか、そのまま防水蓋使用となっています)が実現しており、HTL21で苦情の種となっていた、USBケーブルやサードパーティ製クレードルの接続時に折れ曲がったまま塑性変形を起こして簡単に防水蓋のヒンジが折れる/防水蓋そのものが割損する、という防水性能維持と実用を考えるとかなり深刻かつ重大な問題点(※実際、筆者私物のHTL21でもサードパーティ製クレードル常用開始後一週間ほどで防水蓋が割損・脱落しています)が解消されています。

なお、HTL21では本体内蔵だったTVチューナーアンテナが、このHTL23では「HTC TVアンテナケーブル01」という付属アンテナケーブルによる外付け形態に変更されています。

HTC J One HTL22(※以下HTL22と表記)ではヘッドフォン端子に付属ステレオイヤフォンマイクを接続し、そのケーブルをアンテナとして利用することで受信性能を確保していたのですが、後述するようにJBL製のまともなヘッドフォンを付属するこの機種ではそうした小細工はできなかったらしく、素直に外付けアンテナを利用するように設計されています。

ちなみにHTL21ではワンセグですら東京都内の中心部でまともに受信できない局があるという結構悲惨な受信感度だったので、ワンセグだけでなくフルセグに対応したこの機種では煩雑でもアンテナ外付けの方が実用性が高いと判断されたのでしょう。

個人的には、ソニーのXperiaシリーズなどで採用されているように伸縮可能のロッドアンテナを収納式で搭載してほしい気がしますが、それをすると筐体の端の部分を薄くするのが難しくなるため、痛し痒しといったところです。

デュアルセンサー化で被写界深度をコントロール
できるようになったDUO CAMERA

HTL23背面
上部中央にタンデムに配されているのがサブ(上)・メイン(下)の2つのカメラモジュールよりなる「DUO CAMERA」である。

このHTL23で最大の特徴、それは2つのセンサーモジュールを搭載し三角測量の要領で被写界深度情報を管理できるようになったメインカメラの「DUO CAMERA」でしょう。

HTCは前作HTL22で画素数4.0メガピクセルと低解像度ながら画素ピッチサイズを大きくした=1画素分のセンサーが受け取る光量を大きくして暗部ノイズに対する耐性を高くしたUltraPixelセンサーを搭載していました。

このUltraPixcelセンサー、実は部品供給難でHTC Oneがスタートダッシュ失敗した一因となったとされていました。そのためか、普遍的で調達の容易なデバイスを使用してより高画質・より高機能なカメラを実現すべく、今回は汎用のセンサーモジュールの複数搭載というアイデアが採用されたもののようです。

ちなみに、このデュアルセンサーは13.0メガピクセルのメインセンサーと2.0メガピクセルのサブセンサーを組み合わせて構成されており、内蔵の専用アプリで任意の被写界深度に設定して最終的な画像を得るようになっています。

もっとも、このような手法が出てきた背景には、スマートフォンなどの内蔵カメラモジュールのレンズ部分が基本的に絞り値固定で、一眼レフなどのちゃんとしたカメラでは撮影時に操作可能な被写界深度を変えたくとも変えられない、という事情があります。

だからこそ、デュアルセンサー搭載とGPGPUにより被写界深度の調整に伴う演算を実用上十分な速度で実行できるほど高性能化された統合プロセッサの威力により、こうしたアイデアが実現する必要があったわけです。

実際、Snapdragon 801クラス以下のプロセッサでこの種の演算処理を行わせるのは結構大変な話で、今のスマートフォンだから実現できた手法といえるでしょう。

もっとも、閲覧時に被写界深度をいじるたびに「現像」のプロセスでプロセッサに負荷がかかるわけですから、消費電力や発熱の面では手放しで喜べる技術でないともいえます。

なお、この機種のサブカメラ(インカメラ)は解像度5メガピクセルとこの種のカメラとしては異例の高解像度設計となっており、最近流行の自画撮りを綺麗に実現できることを特に重視していることが判ります。

beats audioを手放したらJBLがやってきた

プレスリリースなどでは特に触れられていないのですが、このHTL23ではHTCがBeats Electronics社の株式を手放したことの影響で、HTL21・HTL22に搭載されていたbeats audioチューンのアンプやDSPの搭載がなくなり、サウンドエフェクト機能もこれに伴い変更されています。

もっとも、「ちゃんとした」オーディオ専業メーカーの助言なり協力が必要だということはbeats audioとの協力の過程でHTC自身痛感していたとみえて、このHTL23ではアメリカのハーマン・カードン社との協力が公表されており、ハーマン・カードンのスピーカーブランドであるJBLの名を冠した専用ヘッドフォンが付属しています。

JBL、創業者であるジェームズ・バロー・ランシング(James Bullough Lansing)の頭文字を並べたこのブランドの持つ重みは、オーディオに興味のある方には説明するまでもないでしょう。Project K2 S9900、DD55000 Everest、4000番台のナンバーを与えられたモニタースピーカー、そして何より伝説の名機 D44000「Paragon(パラゴン)」とこのブランドのスピーカーは、イギリスのTANNOY(タンノイ)社製スピーカーと共に長い間オーディオマニアのあこがれの的であり続けています。

もっとも、そうしたため息の出るようなハイエンド機種のラインナップの一方で、JBLは割と低価格帯の機種もたくさん出している(※中にはCompaq(現・Hewlett Packard)社製低価格パソコンの付属スピーカーなんて製品すらありました)のですが、そうした機種でも「価格の割に良く鳴る」良くできたスピーカーが結構あって、このブランドが安いスピーカーでも安いなりにいい音が出るようにする、老舗ならではのノウハウを持っていることがわかります。

当然ながら価格的な制約があるため、このHTL23のサウンド機能も過大な期待はすべきではないでしょうが、わざわざJBLの名を冠したヘッドフォンを付属してきたということは、HTCにも開発に協力したハーマン・カードン社にも相応に自信があると考えられ、これはちょっと期待して良さそうです。

スペックを捨てて実を取った

以上、HTC J butterfly HTL23について見てきましたが、現在HTC J butterfly HTL21を使用している筆者の目には、現在のハイエンド32bitプロセッサ搭載Androidスマートフォンの標準的なスペックを踏襲しつつ、HTC J One HTL22の成果を巧く取り込んでHTL21の弱点をつぶしてきた正統派の後継機、という印象を受けました。

そのため、額面上のスペックでは無難な、あるいは厳しい言い方をすれば凡庸といっていいような数字が並んでいるのですが、新機軸を打ち出したメインカメラをはじめ、「数字では推し量れない」ような機能があちこちに散見され、「実際に使ってみなければ良さがわかりにくい」、「名より実を取った」機種であるといえそうです。

HTL23 Dot View Case
au+1 collection扱いで発売されるHTL23専用純正ケース。

ただ、HTL21ユーザーの立場で言うと、HTC(とau)は最初から新しいHTC Sense(HTCオリジナルのホーム画面)を搭載していたHTL22についてはAndroid 4.1から4.2を経て4.4へのアップグレードを予告する一方で、古いタイプのHTC Senseを搭載するHTL21については国外版のHTC butterflyが新バージョンへのアップグレードを実施されたにもかかわらず、国内版はAndroid 4.1のまま2年近く放置され続けました。また各機種のクレードルをはじめとする純正オプションは、予告だけして長期間未発売のまま放置した後、au+1 collectionとして少量限定に近い形で発売したこと(※ネット上ではこの件についてはAmazonのレビューをはじめ各所で怨嗟の声が渦巻いていました)もありました。

HTCとauには、こうしたオプション品の安定供給やOSサポートなどのアフターケアに万全を期することを特に強く強く要望したいと思います。

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