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【鉄オタ暴走注意】auスマートパス版「電車でGO! 山手線編」を遊んでみた

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by [2014年8月14日]

その名を聞いてまず戸川純やサエキけんぞうの歌声を思い起こすようなコテコテのニューウェーブ/テクノ歌謡愛好家な人はともかくとして、一般的には「電車でGO!」というタイトルは鉄道車両の運転シミュレーターゲームとして広く認知されていると思います。

1996年にアーケードゲーム業界でも老舗のTAITOからゲームセンター向けアーケードゲーム機の一機種として発表され、その後PlayStation、PlayStation 2、PlayStation Portable、Nintendo 64、Wii、Sega Saturn、Dreamcast、ワンダースワン、ゲームボーイカラー、Nintendo DS、Windows、それに携帯電話(ガラケー)と多種多様なゲーム機やモバイル機器に移植され、あるいは新規路線で開発されて提供されてきたこのゲームのキモが「普段決して運転することのできない電車(あるいは気動車や蒸気機関車など)を自分の手で思うがままに運転できる」ことにあることは、今更指摘するまでも無いでしょう。

移植対象となった据え置き家庭用ゲーム機各種とパソコン向けに実物の鉄道車両で用いられている運転台のマスコン(マスターコントローラ:主幹制御器)を模した専用コントローラが別売りあるいはセット販売で提供され、それらがこの種の専用コントローラとしては異例なほどの販売実績を残し、さらに販売終了後もネットオークションでプレミアがつくほどの人気である(※注1)という事実自体が、このゲームにどれほど根強い需要(あるいは支持)が存在しているのかを雄弁に物語っています。

※注1:この背景には、ソフトの対象となる路線・車種によってマスコンおよびブレーキ弁のハンドル形状が異なっていたり、あるいは力行・制動ノッチ数(段数)が異なっていたりするので、各ソフトごとに適切な形状・仕様の専用コントローラを接続しないと臨場感が得られない、という事情があります。

そんな電車でGO!ですが、このほどAndroid搭載スマートフォン向けに移植が行われ、「電車でGO! 山手線編」としてauスマートパスでの提供が始まりました。

そこで今回は、このauスマートパス版「電車でGO! 山手線編」について、色々遊んでみることにします。

移植元になったのは?

車種は3系列から選べるが、当初は現行のE231系500番台しか使用できない。

まず、今回の移植では、山手線一周(内回り・外回り)が運転線区に選ばれ、103系・205系・E231系500番台の3つの車両系列が選択可能(※注2)となっています。

※注2:103系および205系はアーケードモードでそれぞれ内回りと外回りを1周ずつ走らせて「全区間走破」を達成すると、スタッフロールが表示されて利用可能となります。

このことや、プレイ時の駅間距離が実際よりも短くなっている(=実際よりも短時間でプレイできる)等の特徴から、大本の移植元となったのはPlayStation 2およびWindowsパソコン向けに2004年に発売された「電車でGO! FINAL」の山手線編(※注3)と考えられます。

※注3:他のいくつかのタイトルでも山手線が取り上げられていますが、3系列を全て収録するのはこの「FINAL」と山手線命名100周年記念で2010年になって発売されたNintendo DS向け「電車でGO! 特別編 ~復活!昭和の山手線~」の2タイトルのみで、後者は駅間距離が現実の山手線のとおりになっているという特徴があります。なおそれらとは別に、今回のAndroid版と同じ「電車でGO! 山手線編」というタイトルでiPhone版が2011年に発売されていますが、これも「FINAL」の移植作と考えられます。

それでは、このタイトルはどのように移植されているのでしょうか。以下で順に見てみたいと思います。

山手線以外の対向列車が皆無な以外は忠実な移植

E231系500番台を選び、マスコンを操作に使用する場合の画面表示
左下に表示されている濃紺の棒状のものがマスコンハンドルで、これに指先を合わせて上下にスライドさせることで加減速操作を行う。

まず、肝心のゲーム画面そのものですが、タッチパネル対応でマスコンハンドル(およびブレーキハンドル)やボタンが画面上に表示されることを除くと、グラフィック面では概ねオリジナルに忠実な移植であるようです。

元のゲームが10年前開発のPlayStation 2向けであったことから、3D描画としてみるとポリゴンのテクスチャ貼り付けやエフェクトのかけ方など、最早古典的といって良いような古色蒼然たる手法が満載なのですが、今時の最新技術でゴージャスにやってしまうとGPUに大きな負荷がかかるため、おおむねSnapdragon S4からSnapdragon 801あたりまでのプロセッサをターゲットとするのであれば、この程度に抑えておくのが恐らく賢明なのでしょう。

初回起動時に表示されるデータファイルダウンロード画面
ご覧の通り、約240MBと結構大きめのデータが追加ダウンロードされている。

もっとも、こうしたPlayStation 2クラスの3Dグラフィック描画であっても表示オブジェクト数の増加によるGPU・メモリ負荷の増大は厳しい(※注4)ようで、このゲームで登場する列車はプレイヤーの操作するE231系・205系・103系のいずれか1種類に限られています。

※注4:「アーケード」モードでは東京-品川など主要駅ごとに分けてプレイするようになっていて、区間クリアごとに路線データのロードが行われています。

元々、初代のアーケード版「電車でGO!」が山陰本線上を舞台とし、DD54形ディーゼル機関車(※注5)など設定された時代では既に廃車となっていた車両を対向列車として登場させてその筋のマニア層を唸らせ、その後の作品でもその路線に見合ったマニアックな対向列車を走らせていたことを考えると実に残念なのですが、auスマートパスで対象となる端末の内、このアプリが対応する機種の性能下限を考慮すると、そうした「お遊び」の部分を削るのも致し方ないのでしょう。

※注5:旧西ドイツから変速機やエンジンの技術を導入して開発された1820馬力級エンジン搭載の箱形機関車で、山陰本線や福知山線、それに播但線で使用。高度な技術で設計されたエンジンや変速機を当時の日本側メーカーも国鉄も使いこなせなかった結果、トラブル続出により製造から僅か10年ほどで全車廃車となり、「悲運のディーゼル機関車」と呼ばれました。ドイツ国鉄の機関車に範を取ったとみられる、日本離れした美しいデザインの車体を備えていたことで知られています。

原宿付近では埼京線(画面右側)が併走するものの、そちらには列車は全く通りません。
ちなみに、画面右奥に見えるホームは皇族ご乗用列車の発着専用に建設された通称「宮廷ホーム」で、こんなものまで再現されています。

ただ、その結果山手線と併走する埼京線や中央本線、京浜東北線、東海道本線、東海道新幹線、東京モノレール、あるいは立体交差する京浜急行電鉄本線や東京急行電鉄東横線(※注6)、それに京成電鉄本線といった路線群に列車が一切走らない、非常に寒々しい光景となってしまっています。

※注6:元になったゲームが東横線地下化以前に開発されたため、山手線をまたぐ地上線時代のトラス橋が登場します。

山手線では結構な頻度で対向列車がやってくるため、せめて車両的に大差の無い上に結構な距離を併走する京浜東北線や埼京線(※注7)くらいは車両を走らせても罰は当たらなかったのではないでしょうか。

※注7:いずれも山手線と同様、20m級の4扉ロングシート車を使用しています。ただし、E231系の世代では京浜東北線は山手線のE231系より1世代新しいE233系、埼京線は一世代前の山手線で使用されていたのと同じ205系、あるいはその代替用のE233系を使用しており、いずれも山手線とは異なった系列となります。もっともE233系は中身はともかく前面以外の外部形状がE231系とほぼ同じであるため、モデリング面での負担は全く形状の異なる私鉄各社や新幹線などよりは軽くなります。

3つの使用系列

103系0番台
長らく山手線の主だった「ウグイス色の電車」。ARCADEモードで内回りを全区間走破すると使用可能です。

さて実際のプレイですが、時間制限と速度制限があり、規定時間を超過するとゲームオーバーとなる「ARCADEモード」と、そうした制約の特にない「FREE RUNモード」の2種類のモードが選べ、前者で東京駅始発の内回り・外回り各1周を「全区間走破」達成するとそれぞれ103系と205系でのプレイが可能となります。

なお、これら各系列は

●E231系500番台:2002年より使用。三相交流誘導電動機(MT73)・可変電圧可変周波数(Variable Voltage Variable Frequency:VVVF)制御器・純電気ブレーキ搭載、運転操作は前後操作式のワンハンドルマスコン。軽量構造ステンレス車体。

●205系0番台:1984年から2005年まで使用。直流直巻整流子電動機(MT61)・界磁添加励磁制御器・電力回生ブレーキ併用電気指令式ブレーキ搭載、運転操作は2ハンドルでマスコンは前後操作式、ブレーキ制御弁は水平回転式。軽量構造ステンレス車体。

●103系:1963年から1988年まで使用。直流直巻整流子電動機(MT55)・電動カム軸式制御器(抵抗制御・直並列組合せ・弱め界磁制御)・発電ブレーキ併用電磁直通ブレーキ搭載・運転操作はマスコン・ブレーキ制御弁共に水平回転式。普通鋼製車体。

と3系列で(開発時期の相違故に)全く異なった特徴・性能を備えています。

額面上のスペックでは測れないE231系のすごさ

E231系500番台
現行の山手線専用車。205系以来の軽量構造ステンレス車体やボルスタレス空気ばね台車による軽量化に加え、VVVFインバータ制御による三相交流誘導電動機の採用といった新技術により、103系比約1/2の消費電力で走れます。まもなく後継となるE235系量産先行試作車が登場予定です。

各系列の主電動機出力は、1時間定格出力(※注8)で103系のMT55が110kW、205系のMT61が120kW、そしてE231系のMT73が95kWで、山手線で使用された各系列の編成中に含まれる電動車(主電動機搭載車)と付随車(主電動機非搭載車)の比率が103系6:4、205系6:4、E231系6:5であったことから、1時間定格出力を基準としてみると1編成の1両あたりの平均出力では205系が一番大出力であるように見えます。

※注8:1時間連続して保証できる出力値のこと。

しかし、実際にゲームで各系列をプレイしてみるとわかりますが、額面上の編成出力が低いはずの、そして付随車が1両余計に連結されているE231系が3系列中もっともダッシュ性能が高く、明らかに高性能です。

実はこれはE231系の場合、制御技術の進歩や設計方針の見直しにより1時間定格出力を低く抑える一方で短時間定格出力を150kW以上と高く設定できるようになり、実用上最も大きな出力の必要な起動加速の一瞬だけ大出力で動作する設計としてあるためです。

ボタン操作を選択した場合の表示
ご覧の通りノッチアップ・ノッチダウン・ニュートラル(N)の3ボタンが画面下に表示され、Nボタンを押すと問答無用でマスコンのノッチがニュートラルに戻されます。

ここまでで勘の良い方はお気づきかと思いますがこのゲーム、E231系でプレイすると割と簡単にクリアできます。

操作系もマスコンハンドルを中立位置(N)から後退(後ろに引く)で力行(=加速)、前進(前へ押し倒す)で制動(ブレーキ)という現行最新かつ最も操作の容易なタイプで、またブレーキも空気ブレーキをほとんど使用せず応答性能の高い純電気ブレーキとなっているため、初心者でも特に悩まず操作できるようになっているのです。

言い換えれば、最も古い設計で主電動機の実効出力が低く車体が重いため起動加速度も低い103系の操作が最も難しく、205系の操作は103系とE231系の中間程度の難易度となる、ということです。

古い設計の分だけ難度の高い103系

103系初期車(実車)
山手線に最初に導入され、ゲームでもモデルになっているのはこのタイプです。


実際、103系を選んでプレイしてみると、まずE231系と異なり、マスコンハンドルとブレーキハンドルが左右で別々になっていることにまごつきます。

これは最近のTバーハンドル型ワンハンドルマスコン搭載車を見慣れた目には奇異に見えるかもしれませんが、日本で本格的に高速電車の普及が始まった時代から長らく採用されてきた、伝統的な運転台機器配置であったりします。

なお、この系列(および205系)だと、発車前にまず右のブレーキハンドルをN(ニュートラル:中立)の位置まで回してブレーキを完全に緩め、然るべき後に左のマスコンのノッチを進めて加速を始めないと発車してくれません。

103系のマスコン表示画面
ご覧の通り形状の異なる2つの水平回転するハンドルを備え、いずれも画面右方向へ回転させることで作用が強くなります。出発時には、右の赤いハンドルを左一杯まで回して電磁直通ブレーキを解除しなければ、左の青いマスコンハンドルをどれだけ右に回しても発車しません。

しかも、マスコンのノッチを最上段まで回してもノロノロとしか加速せず、出発時には結構イライラさせられます。

もっとも、操作がやや面倒なものの速度指示に従って減速する際や駅停車時などのブレーキの効きは結構良く、「コスト優先で加速度を捨てて減速度を取った」と言われる本物の103系の特性がよく再現されています。

ともあれ、この種のマスコンとブレーキ制御弁が別々のタイプの車両の場合、ブレーキを解除して加速を開始しても、マスコン側でノッチを入れたまま(=加速を行ったまま)でブレーキハンドルを回す=ブレーキをかける操作が行えてしまうため、なめらかな加減速を実現するには左右のハンドル操作に神経を使う必要があります。

加減速度が目に見えて違う205系

205系0番台

この2ハンドル操作は103系と205系で共通(※注9)なのですが、実は103系と205系では中身が異なっていてその挙動も全く別物です。

※注9:ただし前述のとおり205系はマスコンハンドルが横軸式で手前に引くと力行、ブレーキハンドルは縦軸式で水平回転させると回転角に応じた強さでブレーキ作用、という構成のため、行っている内容は同様ですがハンドルの動きそのものは違っています。

205系マスコン表示画面
103系と異なり加速に用いるマスコンハンドルが丸い頭で手前に引く操作を行うタイプに変更されています。マスコンもブレーキも103系と比べて段数が増えていることに注目。

また、画面上のノッチ刻みを見ると明らかですが、103系と比較して205系の方がマスコンもブレーキ制御弁も共に段数が増えています。

これはそれだけ制御器もブレーキも制御が複雑・高度になったということで、新造直後の新車の時期にこの205系に実際に乗った筆者は、スムーズかつ高い加速度での走りにいたく感動した記憶があって、この205系でのプレイ中にそのことを思い出しました。

総じてよく出来たゲームだが少し寂しい

以上、auスマートパスで提供の始まった「電車でGO! 山手線編」を見てきました。

画面上に表示されるマスコンハンドルの操作にも違和感がほとんどなく、また3D描画の破綻や駒落ちなどもHTC J butterflyで遊ぶ限りは特に見当たらず(※注10)、総じてよくこなれた完成度の高い移植として良いかと思います。

※注10:ただし、auによれば対応機種でも機種によっては(=低性能の古い機種では)負荷が高くなると正常に画面表示しなくなったりする由で、GPU性能が大幅向上したSnapdragon S4クラス以上で無いと厳しいようです。

特に、主電動機の形式ごと、ブレーキの種類ごとにちゃんと別々に録音された実車の動作音が鳴るのはなかなか感動的で、3系列とも乗ったことのある筆者は「ああ、そうそう、103と205はこんなだった。懐かしいなあ」などとしばらく感慨にふけってしまいました。

一応、au側は「本アプリはあくまでもゲームであり、実物の山手線の挙動や風景、距離、運転時間等を正確に再現しているものではありません。」と断り書きをしていますが、実際に何度も山手線全線を回った筆者の感想としては、運転時間はともかくそれ以外はなかなかの再現度だと思います。

ちなみにこのゲーム、信号保安システムがATC化した後、東京駅の北陸新幹線乗り入れ対策としての中央線ホーム移設工事完了から東京駅丸の内駅本屋の復原工事開始までの時期(※注11)の山手線が舞台となるのですが、そんな「新しい」山手線をATC非搭載の103系で走るのは新鮮な感じです。


※注11:より厳密には品川に東海道新幹線の駅施設が見当たらないなどの特徴から、オリジナル版発売前の2000年~2002年頃がモデルと考えられます。

ただ残念なのは、先にも記したとおり他線の対向列車が全く走っていないことと、この時期には既に整備が進んでいた山手線各駅の発車時音楽再生が省略されていることです。

プロセッサ性能やストレージ容量に余裕のある端末ではそれを検出すれば済む話なので、そういった機種で追加再現するなどのサービスはあっても良いのではないでしょうか。

アプリ基本情報

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電車でGO! 山手線編

配信元:TAITO

Android価格:372

  • バージョン Android:2.3以降

  • 備考

    auスマートパスにて提供。※3Dグラフィック表示の必要から対応機種が限られています。

Androidアプリのアクセス内容

ネットワーク通信
インターネットへのアクセス
ストレージ
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電池への影響
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ネットワーク通信
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※記事内の情報はすべてレビュー時(2014年08月14日)の情報です。

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