Fairisia

玩具メーカーの作った女子向けスマホ「Fairisia」はどこに勝機を見いだしたのか?

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by [2014年6月04日]

最近、MVMO(仮想移動体通信事業者)と呼ばれる、回線を他社から借り受けて自社独自のSIMカードでその回線を利用可能とするサービスを提供する通信事業者と、そうしたSIMカードを自由に利用可能な、いわゆる「SIMフリー端末」を組み合わせて提供するサービスが増えています。

この流行に乗って、先日ご紹介したポラロイドの「ポラスマ」のように、トイザらス経由でペアレンタルロック機能を強化した子ども向けAndroid搭載スマートフォンを発売する、といった動きが現れ始めています。

このほど、そんな子ども向け市場、それも小学生から中学生の女子を明確にメインターゲットに据えたAndroid搭載スマートフォン「Fairisia(フェアリシア)」が発表されました。

メーカーはメガハウス。最近でこそ大きなお友達向けフィギュアなどで有名ですが、元々は通電ものの教材・玩具メーカーを出自とする、バンダイナムコのグループ会社です。

今回はそんな「Fairisia」がどのような特徴を備え、どのようにして独自色を打ち出しているのか、そのあたりを中心に見てみたいと思います。

主な仕様

現時点で公表されているFarisiaの主な仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 4.2
  • CPU:MTK6572 Dual Core 1.0 GHz
  • サイズ:127.7×62.5×9.7 mm
  • 重量:126g
  • メインスクリーン
    • 種類:静電式タッチパネル搭載IPS液晶
    • 解像度:480×800 ピクセル
    • 画面サイズ:4.0 インチ
  • 内蔵メモリ
    • RAM:512 メガバイト
    • フラッシュメモリ:4 ギガバイト
  • ネットワーク
    • 3G(800 MHz~2,100 MHz 対応)
  • 通信:
    • WiFi:IEEE 802.11 b/g/n
    • Bluetooth:バージョン不明
  • センサー:GPS
  • カメラ:
    • 背面:2メガピクセル
    • 前面:0.3メガピクセル
  • 外部端子: microSD(最大32ギガバイト), microUSB, 3.5mmオーディオジャック
  • 電池容量:1,350 mAh
  • 筐体カラー:ラベンダー、ホワイト

以上からも明らかなとおり、単純にスマートフォンとしてみるとこの機種には特筆に値する要素は皆無です。ポラスマよりも更に少ないメモリとコア数が少なく非力なプロセッサを搭載するこの機種は、ハードウェア的にはいわゆる中華スマホベースの端末の中でもミドルレンジ~ローエンド寄りのもので、22,990円(税抜)と発表された定価もそれを反映して低価格設定となっています。

強いて言えば、そんな低コスト仕様、しかも800×480ピクセルの低解像度でもポラスマと同様に高コストだが視野角の広いIPS液晶の搭載を死守したのは評価に値しますが、今時(視野角の狭い)VA液晶などを搭載する端末を探すのは困難ですから、これとて特筆に値するほどのものでもありません。

後発かつ低スペックの端末にどんな勝機があるのか?

以上の通り、この「Fairisia」にはハード面でアドバンテージとなるような要素は事実上皆無で、付け加えていえば、これは「SIMフリー」端末ではなく、専用SIMでないと動作しない「SIMロックされた」端末でもあります。

つまり、スペックなどから読み取れる要素や、ただ「安い」ことだけでは、今この時にこの端末を発表したメガハウスの意図が全く見えません。それでは、メガハウスはこの端末にどのような付加価値を与えたのでしょうか?

まず、特筆すべきは標準で専用のセキュリティアプリと、Wi-Fiセキュリティアプリを搭載・常駐させていること。

前者はルーマニア・SOFTWINの「Bitdefender」という定評のあるセキュリティソフトのエンジン部分を利用して開発されたオリジナルのもので、後者はアメリカ・AnchorFreeの「HotSpot Shield」というVPN(仮想プライベートネットワーク)機能を実現するアプリを搭載しています。

大手キャリアの販売する一般的な端末では、例えばauでは「スマートパス」の一環として「ウィルスバスター」が提供されるなどしていますが、基本的にはこの種のセキュリティ対策の実施はユーザー側の判断にゆだねられています。それを専用アプリとして最初から搭載・常駐させるのは、セキュリティ問題に無防備な子ども向け端末としてある意味当然の配慮と言えるでしょう。

ちなみに後者の「HotSpot Shield」はVPNにより無線LANアクセスポイントの通信を暗号化するサービスで、標準のままであればアメリカで実施されているVPNサービスに接続する構成となっています。

次に、強力なロック機能が搭載されていること。

これはペアレンタルコントロールとしてポラスマでも謳われていた要素ですが、この機種では保護者の持つ端末からリモート操作で登録されている「Fairisia」端末の初期化を有無を言わせず行える「リモートワイプ」機能をはじめ、遠隔操作で端末を強制的に制御可能な機能の搭載が目を引きます。

トラブルが起きる可能性がある状況になったら、問答無用で初期化してしまえ、というのは何とも豪快な対処法ですが、携帯電話として重要な電話帳データを定期的に自動バックアップする機能と組み合わせて使用されるのであれば、ユーザーである子どもがインストールしたアプリも何も根こそぎ初期化して元通りにしてしまうこの機能は、「玩具」として保護者の手間をかけさせないという観点で「有り」の機能ではないでしょうか。

3つめは、IP電話機能の標準搭載。

NTTドコモの3G通信網を利用していても音声回線経由での通話に非対応でIP、つまりインターネット経由でのパケット通信の形で通話を実現するこの機能の搭載は、つまり同じIP電話機能を搭載する「Fairisia」同士の通話が(インターネット回線だけで通信を完結できるため)無料となり、それ以外の端末や固定電話との通話コストも低減されることを意味します。

最後に、GooglePlayに対応し、ChromeやGoogleマップをプリインストールしていること。

玩具とはいえ、独自仕様のブラウザや地図の搭載は後々の一般的なスマートフォンへの乗り換えを視野に入れると好ましいものではありません。その意味ではGoogle純正アプリの標準搭載やGooglePlay対応は歓迎されることでしょう。

もっとも、GooglePlay対応はすなわちウィルス・マルウェア対策をはじめとするセキュリティ対策が事実上必須、ということでもあって、そのため本機種では先に挙げたようなセキュリティ対策アプリをプリインストールすることでこれに対処しています。

低スペックにも意味があるのではないか

以上、「Fairisia」について見てきましたが、その過程で筆者は実は貧弱なスペックにもそれなりの意味があるのではないか、と考えるようになりました。

メモリが少なく、貧弱なストレージ容量しかなく、さらにプロセッサ性能が非力、ということは「重い」ゲームアプリの大半は動作しない、ということになりますし、また野放図に大量のアプリやデータをインストールあるいはダウンロードしておくことも難しくなります。

もちろん、ストレージについてはMicroSDカードスロットがあるためメモリカードを挿せばある程度解決できますが、それにしてもデータ保存先の割り振りなどを考えねばなりません。そのため、限られたハードウェアリソースの枠内でどのように端末を使うのか、スマートフォンとどう向き合ってゆくのかを自然と学ばせるという知育玩具的な観点で見れば、この低スペックは正当化できます。

その意味ではこの「Fairisia」は「玩具」の域を出ない性能であるがゆえに、玩具メーカーが手がけるのに相応しい製品となっている、と言えるのではないでしょうか。

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