SONY Xperia A2 SO-04E

よりコンパクトに、より高性能に ~Xperia A2 SO-04F~

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by [2014年5月29日]

SONY Xperia A2 SO-04F

2013年夏のNTTドコモによる「ツートップ」戦略は、結果としてNECカシオモバイルとパナソニックの2社がスマートフォン事業から撤退する引き金となった、という点で歴史的転換点となった経営方針でした。

この「ツートップ」戦略は大々的に喧伝された割に、NTTドコモが2013年秋にApple iPhoneの取り扱いを開始したこともあって、以後はしれっと「なかったこと」にされてしまった(※そのため、この「ツートップ」戦略は結果的にこれまでNTTドコモの携帯電話事業を長く支えてきた、股肱の忠臣と言うべきNECカシオとパナソニックの2社をスマートフォン市場から無慈悲に追い出した以上の効果は無かったと言えます)のですが、選ばれた2機種、つまりソニーの「Xperia A SO-04E」とサムスンの「GALAXY S4 SC-04E」は、他にも優れた機種がある中で「ツートップ」に選ばれたがゆえに厳しい比較の目にさらされ、またその販売実績が強く認識されることともなりました。

SAMSUNG GALAXY S4 SC-04E


SONY Xperia A SO-04E

結果的には値段差(といっても実売で1万円ほどでしたが)もあってか、Xperia AがGALAXY S4にダブルスコアの大差(※2013年8月の段階でGALAXY S4が55万台に対してXperia Aは110万台を販売)をつけて、素人目にも明らかなほどの圧倒的大勝利となったのですが、こちらの記事でもご紹介したとおりXperia Aは普及機にありがちな安かろう悪かろうの機種ではなく、むしろ枯れた部品でハイエンド機のXperia Zのエッセンスを上手に取り入れつつ部分的にはそれを上回りさえするという、絶妙なバランスの設計となっていたものでした。

そして2014年夏、そのXperia Aの名を引き継いだコンパクトモデルとして「Xperia A2 SO-04F」が発表されました。

果たしてXperia Aからどこが変わり、どこが守られたのか。今回はそんな「Xperia A2 SO-04F」について見てみることにしましょう。

主な仕様

プレスリリースおよび展示会などにより現時点で公表されている「Xperia A2 SO-04F」の主な仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 4.4
  • チップセット:Qualcomm MSM8974(2.2GHzクアッドコア)
  • サイズ:約65×128×9.7mm
  • 重量:約138g
  • メインスクリーン
    • 種類:16,777,216色TFT(トリルミナスディスプレイfor mobile)液晶
    • 解像度:1,280×720ピクセル(HD解像度)
    • 画面サイズ:約4.3インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2GB
    • フラッシュメモリ:16GB
    • 拡張スロット:microSD XC card(最大容量:128GB)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:20.7メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:2.2メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
  • LTE:
    • 対応周波数帯:2.0GHz、1.7GHz、1.5GHz、800MHz
    • 転送速度:下り最大150Mbps/上り50Mbps
    • テザリング機能対応(最大Wi-Fi:10台、Bluetooth:5台、USB:1台まで)
    • Bluetooth:Ver.4.0
    • 電池容量:2,300mAh
    • 防水:IPX5/IPX8
    • 防塵:IP5X

    この仕様を見て、「はて、自分はこれに酷似した機種を半年ほど前に見なかったか?」と思われた方も恐らく少なくないことでしょう。

    SONY Xperia Z1f SO-02F
    Xperia A2とほぼ同一スペックの先行機種。背面メインカメラやボタンなどがXperia A2と全く同じ位置に配置されており、基板設計が共通であることを強く示唆する。

    実はこの機種、ハードウェア的には2013年秋・2014年冬モデルでXpreia Z1の小型版として発売されたXperia Z1fとほぼ同一の機能・性能を備えています。

    相違点は搭載OSがAndroid 4.2からAndroid 4.4に変更されたことと、搭載アプリが順当にアップデートされたこと、MicroSDカードスロットが最大で128 ギガバイトのMicroSD XCカードに対応した(※これはどちらかと言えばソフトウェアの問題です)こと、それに筐体外装部のデザインがリアパネルに強化ガラスを用いていたXperia Z/Z1相当のものから合成樹脂を用いるXperia A相当(※ただし、細部を見ると結構変更されています)のものに変更され、それに応じて外形寸法や重量が変化したことなどです。

    つまり、ざっくり言ってしまうとこの機種は「外装をXperia A相当に変更してソフトをアップデートしたXperia Z1f」ということになります。

    なお、記事執筆時点(2014年5月29日)で発表されている範囲では、この機種についてはこの夏モデルで目玉とされているVoLTE機能は非対応とされています。

    Z1fのハードウェア流用は手抜きを意味しない

    Xperia Z1fのハードウェアを流用したということは、即ちこのXperia A2のハードウェア性能が2013年秋モデルと同等のレベルにとどまることを意味します。

    しかし、それが悪いかと言えば全くそんなことはありません。

    SONY Xperia Z1 SO-01F
    Xperia Z1fの基本となった5.0インチフルHD液晶搭載機。

    元々Xperia Z1fは、5.0インチフルHD解像度液晶搭載のフラグシップモデルたるXperia Z1の小型化バージョンとして開発された機種であり、ディスプレイ解像度が低いことや小型な分だけ内蔵バッテリー容量が小さいことなどを除くと、ほぼXperia Z1に準じた機能・性能を与えられていました。

    つまり2013年秋の時点で最善を尽くして開発された、大変に贅沢な設計のコンパクトモデルであり、このクラスのサイズのスマートフォンとしては突出した高性能機でもありました。

    そもそも、HD解像度のディスプレイを搭載するスマートフォンでは、Xperia Aに搭載されたクアッドコアCPUであるSnapdragon S4 Pro 1.5GHzでさえ過剰性能気味でした。そこに、4K2Kディスプレイ出力やHDオーディオに対応可能なほどのプロセッサパワーを備え、さらに低消費電力かつ高速なLPDDR3-1600メモリインターフェイスを2チャンネル搭載した、フルHDディスプレイ搭載機種ですら過剰性能に思えるほど高性能なSnapdragon 800を搭載してしまったのですから、Xperia Z1fのプロセッサ周りの回路設計は、こと基本性能という観点ではこれ以上の性能向上は費用対効果の観点でほぼ無意味と断じてしまえるほどのレベルに到達してしまっていたのです。

    付け加えると、今後ARM v7系からv8系へ、つまりCPU命令セットの32ビットから64ビットへの移行という大きなパラダイムシフトを目前に控えメーカー各社がARM v8対応統合プロセッサやその搭載端末の開発を急いでいる現状では、既存の32ビットアーキテクチャに基づくプロセッサを搭載する各製品での大幅な設計改変や新規開発はあまり合理的ではありません(※そのため、この夏モデルではプロセッサ周りについては従来機種の設計を踏襲した機種が少なくありません)。

    Qualcomm Snapdragon 800
    ARM v7系アーキテクチャ準拠ではQualcomm製統合プロセッサ(SoC)のシリーズラインナップ中でも上位に位置するハイエンドプロセッサ。Snapdragon S4 Proを基にしつつ各部の強化により非常に重装備なプロセッサとなっている。

    実際、QUALCOMMでもSnapdragon 800の後はCPUコアとGPUコアの双方で高クロック周波数での動作を可能とした(≒Snapdragon800よりも消費電力の大きい)マイナーチェンジモデルであるSnapdragon 801、あるいはSnapdragon 800を基本としつつメモリインターフェイスをLPDDR3 2チャネルから4チャネルに倍増して弱点であるメモリ帯域性能の不足を補ったSnapdragon 805の2機種しか32ビット命令対応のハイエンドプロセッサを開発しておらず、今更これ以上大きくプロセッサ周りの回路設計に手を入れても益が薄い状況にあります。

    また周辺デバイスに目を向けると、Xperia A2/Z1fの場合は現在市販されているスマートフォンでは最大解像度となる有効画素数20.7メガピクセルのExmor RS for mobileをイメージセンサーとして搭載しているため、現状のイメージセンサー技術ではここからさらに性能を引き上げるのは困難と考えられます。なお、同じカメラモジュールを搭載しているXperia Z1でカメラの連続使用時に不具合が出やすいという指摘があった(※ただしこれはソニーの不手際とばかりは言えず、後発の上位機種であるSnapdragon 805でわざわざ該当箇所の大幅改良が実施されたことも踏まえて考えると、Snapdragon 800に内蔵のISP(Image Signal Processor)やCPP(Camera PostProcessor)といったカメラ撮影処理に用いる専用サブプロセッサの処理能力がソニー製の20.7メガピクセル級高性能カメラモジュールの画像送出性能に対して不足していた可能性が高いでしょう)ことなどから、現時点で既に競合他社が追いつけなくなっているイメージセンサー解像度などの性能アップに血道を上げるよりはむしろ、カメラアプリの改善や回路の細部設計の見直し、あるいはイメージセンサーなどのチップそのものの不具合の発見・修正などを行った方がユーザーにとってはよほど益となるでしょう。

    いずれにせよ、統合プロセッサもカメラ周りも性能は必要充分どころか過剰なほどであることからXperia Z1fのハードウェア設計流用にはデメリットは事実上皆無(※強いて改善すべき点を挙げるとすれば、液晶ディスプレイの画質位のものでしょう)と考えてよく、むしろほぼ同じ設計のメイン基板を継続的に量産することから端末の価格引き下げが期待できます。

    「A」であることの意味

    以上でも明らかなとおり、この機種はハードウェア的にはXperia Aの改良型ではなく、Xperia Z1fのマイナーチェンジモデルであることは疑いようもありません。となればXperia A2とするよりはむしろ、同時発表の上位機種であるXperia Z2に揃えてXperia Z2fとしても良かったように思えます。

    にもかかわらず、この機種はわざわざXperia Aに準じたデザインの新筐体を別途設計してまでして、「Xperia A2」と命名されています。

    であるならば、この命名は決して場当たり的なものではなく、キャリアであるNTTドコモあるいはメーカーであるソニーによる明確なマーケティング戦略なり設計方針なりに依拠したものである、ということになります。

    両社、特にソニーにとっては世界的にはベストセラーモデル(ということになっている)であるGALAXY S4を出し抜いて一泡吹かせるほどの大成功を収めたXperia Aのブランドイメージをそれと同等以上のコンパクトモデルに持たせることにはマーケティング戦略上重要な意味がありますし、そうでなくともXperia Aが一代で築いた「安くて小さいが、高性能」というブランドイメージは、それ単独でさえそのまま捨て去るにはあまりに惜しい、貴重な財産です。

    逆に言えば、そのブランドイメージを守るためであれば、本来ハイエンドモデルとして開発された高価なXperia Z1fのハードウェアをXperia A類似の筐体に収める、という無理を押し通すことでさえ正当化できるほどの重みが、Xperia Aというブランド(あるいはシリーズ名)には既にして備わっているのだ、とも言えます。

    ちなみに、筆者が販売店などで取材した範囲では、いわゆるガラケーからの機種変更でスマートフォンに乗り換えるユーザーの大半がこのクラスのコンパクトモデルをほとんど迷いなく選択している由で、iPhoneからの機種変更ユーザーも含めてコンパクトモデルには相当大きな需要がある、とのことでした。

    記事執筆時点ではこのXperia A2の販売価格などは発表されておらず、税抜き76,000円で販売されているXperia Z1fに対してどの程度安い価格に設定されるのかはわかっていません。

    正直、既存の回路設計を流用し、強化ガラスを用いた凝った筐体を止めて比較的廉価な樹脂パネルのみものとする程度のことで、どの程度安くなるのだろうかと思うのですが、わざわざXperia Aの後継となる型番を与えたからには、相応の価格設定、あるいは相応の実売価格となるような販売補助政策が採られる可能性が高いと言え、6月の発売時の価格設定が注目されます。

    docomo Xperia A2 SO-04F
    Snapdragon 800 processors

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