304SH

AQUOSブランド統合の意味 ~シャープAQUOS Xx 304SH~

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by [2014年5月07日]

今年2014年の夏モデルの先陣を切って、シャープからソフトバンク・モバイルコミュニケーション向け最新機種の発表がありました。

通常であればソフトバンク自身の手により大々的な夏モデル発表会が行われるところですが、今年は2年前と同様に各機種個別の発表会が行われるのみの予定となっています。

そんないささか寂しい状況ですが、シャープは手を抜いてきませんでした。

さらに、これまで用いてきたAQUOS PHONEというブランドを廃止し、液晶テレビブランドであるAQUOSに統合する、というブランド戦略面での重要トピックもあったため、今回の機種は今後のシャープ製スマートフォンの行方を占う上で重要な立ち位置にあると判断できます。

そこで今回は、そんなシャープのソフトバンク向け最新機種である「AQUOS Xx 304SH」について考えてみたいと思います。

主な仕様

公表されている「AQUOS Xx 304SH」の主なハードウェア仕様は以下の通りです。

  • OS:Android 4.4
  • チップセット:Qualcomm MSM8974AB
    “Snapdragon 800″(2.3GHz クアッドコア)
  • サイズ:約72 × 135 × 9 mm
  • 重量:137g
  • メインスクリーン
    • 種類:16,777,216色 IGZO液晶
    • 解像度:1,920×1,080 ピクセル
    • 画面サイズ:5.2 インチ(対角線長)
  • 内蔵メモリ
    • RAM:2 ギガバイト
    • フラッシュメモリ:32 ギガバイト
    • 拡張スロット:microSD XC card(最大容量:128ギガバイト)
  • カメラ
    • メインカメラ解像度:13.1 メガピクセル
    • フロントカメラ解像度:2.1 メガピクセル
  • Wi-Fi:
    • 対応規格:IEEE 802.11 a/b/g/n/ac
    • 対応周波数:2.4GHz、5GHz
  • LTE:
    • 通信方式:FDD-LTE/AXGP
    • 転送速度:下り最大110Mbps/上り最大15Mbps(SoftBank 4G)
    •     :下り最大112.5Mbps/上り最大50Mbps(SoftBank 4G LTE)
  • Bluetooth:Ver.4.0
  • 電池容量:2,600 mAh(電池交換不可)
  • 防水:IPX5/IPX7

ハードウェア的には、これは2013年冬モデルであった「AQUOS PHONE Xx 302SH」の改良後継機種にあたり、OSがAndroid 4.2からAndroid 4.4に、統合プロセッサが同じSnapdragon 800でも改良・高クロック化バージョンに、そして何より液晶パネルが同サイズながらS-CG Silicon液晶システムからIGZO液晶に、それぞれ変更されてブラッシュアップが図られています。

特に、液晶の変更による効果は劇的で、CPUコアの最大動作クロック周波数が2.2GHzから2.3GHzへ引き上げられているにもかかわらず、302SHであれば「余裕の2日間」と謳っていた稼働時間が「3日間超え」を謳うほどに延長・増大しています。

ここ数年のハイエンドスマートフォンではひたすらバッテリー容量の増大によって、プロセッサ性能引き上げに伴う消費電力増大を補うような設計が大流行していたのですが、この304SHの場合は静止画表示時の画面リフレッシュを止めてしまえるIGZO液晶のメリットを最大限に生かすことで、在来機種と同容量のままでの稼働時間大幅延長に成功している(※ただし2,600mAhなので、元々かなり多い部類に入ります)わけです。

もちろん、動画表示を行う場合には他の機種と大差ない連続稼働時間となってしまうわけですが、普段使いでそこまで延々と動画を見続けるというのは考えにくいですから、実用上は「他の機種よりも格段に稼働時間が長い」という理解で良いでしょう。

なお、この機種でも302SHと同様にフルセグメントでの地上波デジタルテレビ放送の受信機能が備えられています。

破格の軽量設計

この機種のハードウェアで注目すべきは、5.2インチの大きめの液晶パネルを備えているにもかかわらず、137gとかなり軽くまとまっていることです。

これを他社製品と比較すると、例えば5.0インチ液晶搭載で同じSnapdragon 800搭載のSONY Xperia Z1は3,000mAhの大容量バッテリー搭載が祟って約170gでしたし、これをHD解像度の4.3インチ液晶にして小型化したXperia Z1fでさえ、2,300mAhバッテリー内蔵で約140gでした。

さすがにiPhone 5sの112gには敵わないものの、あちらは4.0インチ液晶搭載でその数字ですから、この304SHの5.2インチ液晶搭載で137gという値は破格の軽量設計であると言えます。

解像度がやや下がったが
実用性は向上したメインカメラ

額面上のスペックにおいて、304SHが302SHに劣っている点が一つだけあります。

それは、メインカメラの解像度が16.3メガピクセルから13.1メガピクセルへ若干低下したことです。

反対にフロントカメラは解像度が1.2メガピクセルから2.1メガピクセルへ引き上げられています。

このカメラ解像度の変更は、内蔵カメラモジュールの機種変更によるものと推定されますが、ハイエンド機で額面上のスペックを下げてでも変更したからには、相応の理由があると考えるのが妥当です。

302SHのメインカメラでは、「BrightEye」と称する開放絞り値F1.9でこの種のスマートフォン内蔵カメラ用レンズとしては相当に大口径の明るいレンズを搭載していて、そのレンズの光学的な性能によって暗部撮影性能を引き上げ、さらにそれに加えて「NightCatch」と称するノイズリダクションシステムを組み合わせることで、「夜景もキレイに撮れる」ことを謳っていました。

しかし、ソニーが1/2.3型で20.1メガピクセルの画素数を実現した高感度センサーのExmor RS for mobileと、画像処理エンジンBIONZ for mobile、それに開放絞り値F2.0のGレンズを組み合わせて実現した、単独で「ろうそくの光しかない環境でも撮れる」クラスの凄まじい暗部撮影性能の前では、これはやや見劣りを否めませんでした。

もっとも、だからといって単純に光学系の性能を引き上げただけでは、大形センサーの投入や専用画像処理エンジンの開発など自社の開発力をフルに投入して凄まじい暗部撮影性能を実現したソニーのカメラモジュールに対抗するのは難しく、今回の304SHにおけるメインカメラ解像度引き下げも、おそらくは同じセンサーチップの面積で1画素あたりのセンサーサイズを大型化することでセンサーの感度を引き上げた結果そうなったと推定できます。

今回の304SHではHDR撮影時に「逆光や夜景などの難しいシーンもAUTOモードでちゃんと撮れる」ことを謳い、また「逆光による白トビ・黒つぶれを緩和するHDR撮影が、リアルタイムな処理に進化」したと強調していることから、プロセッサ性能の向上、あるいは専用ハードウェア回路の付加でノイズリダクションをリアルタイムで処理できるようになったと考えられ、その処理負荷を軽減しまた消費電力を低減する意味で、画素数を若干減らす必要があったと考えられます。

ちなみに「NightCatch」についてはフラッシュONとOFFで複数枚撮影し、合成処理することで鮮明な画像を得られるとしているのですが、手ぶれや被写体の動きを考えるとこの機能が一体どのくらい実用になるのか、個人的には正直疑問(※もちろん、内部処理はそんなに簡単なものではなく、複雑な色比較処理を行っているものと思いますが)です。

このあたりのカメラの性能は色々トレードオフの関係が成立するのですが、これまで特にハイエンド~ミドルレンジのモデルでは画素数を増やして明るいレンズを採用する方向で全力疾走してきたシャープが額面上のスペック向上を止めて暗部撮影性能の向上に取り組むように方針転換したことは、今後のスマートフォン用メインカメラの進化する方向を占う上で重要なトピックであると言えるでしょう。

使い勝手の向上した文字撮影→検索システム

さて、こうしたカメラの方針転換の一方で、そのカメラによって撮影された画像を利用する仕組みも、304SHでは強化・改善されています。

シャープ AQUOS 304SHの「検索ファインダー」機能イメージ
指で画面上をなぞり、その選択エリアに含まれる文字列を検出・検索エンジンに入力する。

元々302SHの段階で、「翻訳ファインダー」としてカメラで撮影した画面上に表示された英語テキストをOCR処理して日本語に翻訳する機能(※304SHでは英語、中国語、韓国語からの翻訳に対応しており、この機能も進化しています)が搭載されていたのですが、今回の304SHではこれに加えて「検索ファインダー」としてカメラでリアルタイムに撮影・画面表示中の画像の上で指でなぞって選択した文字列を検索する新機能が搭載されました。

画面上に表示された文字列をユーザーに「なぞって選択させる」という1アクションを追加することで、いくらか制約はあるものの検索エンジンへのキーワード入力の手間を省くことに成功したのです。

この機能、地味でしかも精度の問題があるものの文字入力操作の煩雑なスマートフォンの実態を考慮すると非常に実用性が高く、また特に高解像度カメラを搭載する機種ほど検出精度を上げやすいため、今後ハイエンド機種を中心に同種機能が流行するのではないでしょうか。

ブランド統一の意味するところ

冒頭でも記しましたが、今回の304SHから「AQUOS PHONE」ではなく「AQUOS」のブランドでの発売となります。

「PHONE」の5文字が取れた背景には、スマートフォンの搭載液晶ディスプレイでフルHD表示が当たり前となって通常の液晶テレビと解像度面で格差がなくなったことや、搭載テレビチューナーのフルセグ化でテレビ受像機としての基本性能面でも通常のテレビとの差異がなくなったことで技術的な面でのテレビとスマートフォンの格差解消が図られたことがあり、シャープ自身は(AQUOS PHONEだけではなくAQUOS PADも含めて)今後ブランドを「高画質・高品質・高品位の象徴である『AQUOS』に統一する」とアナウンスしています。

もっともこれは、深読みすればシャープの独自ブランドとして「AQUOS」以外がさっぱり浸透・普及していないため、やむなくそうしたとも言えます。

シャープは過去にはソフトバンク向けスマートフォン端末で「GALAPAGOS」ブランドを使用したこともありましたし、最近ではかつてパソコンのブランドであった「Mebius」を復活させて「Mebius PAD」として新製品を発売していますが、前者は電子書籍リーダー端末としての「GALAPAGOS」の失敗で短期間で終了、後者は法人向けWindows搭載タブレットをAndroid搭載タブレットと区分・差別化するためにやむなくWindowsパソコンで使用していた「Mebius」のブランドを復活させたと考えられ、いずれにせよブランド力という観点ではかなり弱いものです。

また、携帯電話端末向けにテレビ受像器のブランドを利用する、というのは他社ではかつてソニー・エリクソンがフィーチャーフォンで「BRAVIAケータイ」あるいは「BRAVIA PHONE」ブランドを展開していたという例がありましたが、いずれにせよ基本となるブランドに「~ケータイ」や「~PHONE」とサブブランド名を付する場合、そのブランドが基本ブランドのサブセットでしかない=何らかの機能制限や性能制限があるという認知を招きがちです。

実際かつてのBRAVIA PHONEはテレビのBRAVIAの技術を盛り込んだと謳いつつも実際にはそれにほど遠いものでしたし、AQUOS PHONEの場合も、これまでの機種ではテレビ受像機としてみた場合、最近のフルHD・フルセグチューナー搭載機を別にすると、通常のテレビに大きく見劣りするものであったことは否定できません。

そうした観点では今回の「AQUOS」へのブランド統合は、海外での製品展開戦略上の要請という側面もありそうですが、それ以上にようやくにして「AQUOS」を名乗りうるクオリティにスマートフォンが到達した、というシャープの自信の表れと解することができるでしょう。

晴れてAQUOSとなったは良いが・・・

もっとも、これは言い換えればシャープがここまでスマートフォンの開発製造販売を続けてきた中で、スマートフォンとしてのアイデンティティ、言い換えれば固有のブランド確立に失敗してきたことを如実に示すものと言え、その点で「BRAVIA」の名の利用をあっさりと捨て去り「Xperia」という新ブランドを確立したソニーに大差をつけられています。

今後シャープがスマートフォン事業を続けてゆく上では、「AQUOS」のブランド力にばかり頼らず総合的な意味でのデザイン力をどこまで発揮できるか、そしてそれをどこまで首尾一貫できるかが重要となるでしょう。

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